シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る   作:むーんしゃいん

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 遅くなりましたが100円の1ドル紙幣計算です。


完済人になろう

≪サマーアイス星系。首都惑星アズキ・キントキ≫

 

 宮廷の庭園。皇女クレハは月空の中雅な紫の衣を身にまとい。一人で舞を踊っていた。

 

 アンドロイドである皇女クレハに与えられた任は、地球へ到達後、ウイルスの散布である。

 地球圏内のすべての迎撃用小惑星ごと、地球要塞エリア・リスαを地球へ落とす。それが出来るウイルスを内包していた。

 そして、最後は、自分はエリア・リスαと共に自爆し、地球の滅亡で、その任務を完了させるはずだった。

 

 感が鋭いシャロン准将は、クレハはただの人形だと確信してここに戻された。

 

「ガハハハ。もっともってこい!素晴らしい料理だ」

 

 大騒ぎをしている。さぞ楽しい時間なのじゃろう。パイル中将は、勝ち誇った顔をしてアズキ・キントキの実権をにぎっていた。

 

 EDFからは、クーデターをしない代わりに、事後承諾でサマーアイス星系の星系最高執政官として任命した。

 

 あの中将に人質にされ、アズキ・キントキに戻されたことで、それはかなわず、ずーっと、皇女という名目で暮らしている。

 

「もうお役目も果たせまい…」

 

 クレハは、今自分が幸せかどうかは分からない。皇女クレハは、宮廷のテラスから、星々を眺めていた。

 

「…本当に変なやつじゃたな」

 

 頭上に光った流れ星の輝きを指先でなぞった。

 

 

≪地球。銀行前≫

 

 シャロン准将は、あの中将から奪い取った35億ドルを、都市銀行に入金する。

 

 シャロン准将は、全部、ワザと現金で持ってくる。

 一番高い紙幣である100ドル札を350,000,000枚用意してやった

 100ドル札100枚札束で括っても計3,500,000cm(35Km)もある。

 

 銀行券(お札)は無制限の強制通用力を有するので、法律的には問題はなく、都市銀行はパニックである。

 

 おまえのとこで二度と借りるか。早々に資産回収に回った銀行にブチギレて、シャロンは銀行から足早に出て来る。

 

 都市銀行の前に十数台と現金輸送トラックが連なっていた。

銀行で何個か頂いた飴を口に頬張る。あまい。

 

 シャロンの地球での休暇は、夏の暑い日。

街頭ディスプレイとセミが声がうるさい。でも、大気が嬉しい。

 

『大統領令により、バイル中将閣下を第一行政官と任命致しました。これにより、アズキ・キントキへの内政保護を実施する見込みで…』

 

「あー、重力が重い…」

 

 シャロン准将がプラプラと歩いている。偶然、ホワイトのセダンから見慣れた男性が現れる。

 

「おー。副長」

 

「ついでに家まで送ります」

 

偶然、シャロンの帰り道に停車してた涼しい車内に飛び込む。

 

 車内で、ルナと軍用PDAのアウラがさっそく遊んでいる。

スマホをいじりながらシャロンが口火を開く。

 

「ねぇー、副長。スマホ貸してー」

 

 副長は、何気なく偽装情報(カバーストーリー)用のスマホを渡す。

副長のスマホに、特別な電話番号を入力する。

 

「副長のボスに為替取引に興味ないか聞いといて」

 

 シャロンの紹介でしか入れない『佳味ログセンター』のOB会の電話番号だ。

実際、美味しいモノは一切でない模様である。

 

「私には、聞かないのですか?」

 

咄嗟(とっさ)に、こっちのスマホ渡してるようじゃねえー」

 

 シャロンは、スマホをいじった。

 

 サマーアイス星系の首都惑星アズキ・キントキの為替相場を見つめる。

その為替相場が徐々に登っていくのを指先でなぞり微笑した。

 

 シャロン准将は、ずっと買い注文をしていた。

 

 内情を知らないものは、地球圏にほぼ併合されたアズキ・キントキに対する期待買いだと思っている。しかし、実際はもっと複雑だった

 

 シャロン発起。EDFの猛者主導の為替による『報復のハゲワシ作戦』があと1年後に始まる。

 

 いま、シャロン准将を含めたマキャベリストたちが、惑星を動かす規模の紙幣がアズキ・ドルを買っていた。

 

 しかし、1ヶ月後には、アズキの紙幣価値は地に落ちる。何故なら皆が急に売り注文を集中させて、急落させるからだ。

 

 イチゴ・シロップなど鉱物資源輸出を主な収入源とする。アズキ・ドルにとって超打撃である。

 立て直そうとアズキ・キントキの中央銀行は介入する。介入した中央銀行のお金を買い占める。しかし、また売り注文をする。

 

 この投資家が売って為替下がる。

 中央銀行が買って為替が上がる。

 投資家が売って下がる。

 中央銀行が…上がる。

 

 この無限にも思える押し問答で売り逃げて、シャロンたちは大金持ちだ。

 

 地球に帰る場所がないバイル中将を含め。地球政府からの独立なんて考えた愚かなアズキ政府は、財政的に窮地に追いやられる。

 

 奴らは、未曾有の経済危機を迎える。

 

 シャロン准将たちは、弱ったモノを喰い物にするハゲワシになる。お金儲けは楽じゃないのだ。

 

 財政再建も危ういかもしれない…。シャロン准将を翻弄した罰である。

 

「やっぱ一矢報いなきゃねー」

 

「…やはりあなたは恐ろしい人だ」

 

 シャロン少将。至福のひと時。

 

 (かく)して35億ドルを返済し、シャロン少将は、めでたく完済人になった。

 





 資本主義とは、最も邪悪な人間たちが、
 すべての人々の最大の利益のために最も邪悪なことをするという驚くべき信念である。
 — ジョン・メイナード・ケインズ
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