シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る 作:むーんしゃいん
「どうしてでしょうか…、頭が…ぼーっとします」
コハク少尉が頭を押さえながら、ふらふらしている。ルナが目をそらしながら、コハクの袖に引っ張る。
「えっと…。後で調整したほうが…。きっと、いいよ!」
はぁ…?と、首をかしげるコハク少尉の手には、ハンドガンAQUA105が握られている。
「イケジョだから問題ない少尉。基地を奪還するぞ!ルナ!」
そんなの警察にまかせておけばいいのに。コハク少尉とルナは、シャロン准将にイヤイヤながらも思いっきり腰を屈め戦闘体勢のコハク大尉だ。
「こっちだよ」
案内表示板すらない同じような道をルナが先導をし始めた。
「なんだ?なんでわかるんだ」
「人質の戦略型ルーンラビットが教えてくれるの」
「こちらの動きに気が付いているみたいだよ。バックアップしてくれるって」
そうか、なら安心だ…。とシャロン准将たちが笑って、廊下の次の隔壁を開けた途端。3人は、T字路を曲がる。
倒れた警備兵の横にたたずむ戦闘型人型ロボットDOLLがこちらを見つめている。
そして、シャロン准将たちにめがけ発砲をしてきた。
コハク少尉が、とっさに、二人を廊下の影へと隠し、自分はハンドガンAQUA105で応戦する。
まじかよ…っ!シャロン准将が恐怖する。
「どこが安心なんだ!警備が、し、死んでたぞ!」
シャロン准将が、ルナの肩をつかみガクガクと振る。ルナは、あれー?と。首を傾げた。
「でもまあ、ここの戦闘型人型ロボットDOLLは警備ランクが低いから、『まだ』 電気ショッカーで気絶させてくるだけ…!」
かたわらでゴム弾が爆ぜる。
「おま、お前!まだってなんだ!この先、実弾も使ってくるのか」
シャロン准将は、戦闘型人型ロボットDOLLの銃撃から、全速力で頭を抱えて身を守る。
「シャロン准将!応戦射撃を…!」
「アァ…ッ!?」
必死に応戦するコハク少尉の正論は、シャロンのパワハラにらみで、封じられた。
「…いえ、マガジンをください!」
はい。と、シャロン准将が、トートバックから護身用のマガジンを取り出し、すべて差し出す。
「いまハッキングするからまって!」
ルナが戦闘型人型ロボットDOLLのハッキングを試みる。
お願いします!ルナ様。私たちをお救いください。口には出さないものの。シャロンは心の中で頭を下げ、願いを込める。
「ク…ッ!ハンドガンじゃ歯が立たない…!」
コハク少尉は、ハンドガンAQUA105をシャロンに放り投げ、自分の軍服のスカートの裾を破いた。私を置いて逃げる気か…!と、シャロンは、悲痛な顔で、コハク少尉を見つめる。
「シャロン准将、援護願います!」
コハク少尉は、格闘戦に持ち込むため、戦闘型人型ロボットDOLLへと突撃していった。
「肉弾戦!?」
驚くシャロン准将をよそに、ルナが口を開く。
「あー、コハクは、機械化してるし、近接打撃のほうが弱点狙えていいかも!」
シャロン准将は、黙って作業しろ!ルナの頭にチョップをくらわす。ルナの演算が少し止まった。
しかし、目の前で香港映画を披露しているコハク少尉を、援護しないわけにはいかない。上官として…。私だってやればできる…。渡されたハンドガンを手にした。
呼吸困難なほど上がった呼吸で。
片目をつむり。
肘を曲げる。
射撃姿勢をして…。
両眼をつむり。
あとはトリガーを引くだけ!放った弾丸は、コハク少尉の顔のすぐ真横を通過した。戦闘型人型ロボットDOLLにも当たらず、そのまま跳弾してルナのすぐ頭上をかすめる。壁に当たり、つぶれた弾丸がポテ。とルナの頭の上に落ちた。
「「え?」」
一瞬、時間が止まった。二人がシャロン准将を見つめる。
その静寂に、シャロン准将。必死の弁解。
「え、悪くない!私、全然、悪くないし!」
「コハク!」
誰かが気をそらしたため、コハクは呆然としていたに肩を強くつかまれ、身動きが取れない。
「助けてルナーっ!」
フリーズしたまま、戦闘型人型ロボットDOLLを見つめる。戦闘型人型ロボットDOLLは、今度はシャロン准将まで歩き出す。
シャロン准将は、耐ショック姿勢!と心の中で叫び、両手で頭を抱え、その場にふさぎ込んだ。戦闘型人型ロボットDOLLは、コハクを放して、ルナに両手を伸ばし肩車した。
「もう大丈夫だよ!」
ルナ様のお声が頭上から聞こえる。
ありがとうございます!ありがとうございます!と心で唱え。
「よくやった」
平然を装い、ルナの頭をなでながら、自分の涙目をぬぐった。
はぁーやってられない…。無茶な上官にコハク少尉は、ため息をつく。
「ルナ。戦略型ルーンラビットがリードしてくれてるのじゃないのかよ!」
シャロン准将の恐怖は、怒りへと転じ
この基地の司令、戦略型ルーンラビットに向けた。
「んー、この子は制御できてなかったみたい」
肩車をされたルナがシャロンを見下ろしながらわかりやすく答える。
「女王を失ったはぐれ蜂みたいな感じかな」
「おいおい…。そのルーンラビット。大丈夫かよ」
シャロン准将は、この大丈夫ではない状況で、戦略型ルーンラビットの性能に苦言を体した。
放された肩を痛そうに抑えていたコハク少尉は気絶した警備兵に近寄る。
そして、転がっていたアサルトライフルAR905Fを拾い上げるとシャロン准将に手渡す。かなり、高圧的な目だ。口には出さないモノの。覚悟して下さい。そう語りかける。
「…わかった少尉。本気で行こう」
シャロンの瞳に炎が宿る。がんばるぞー!と、肩車をされているルナも気合をいれる。そのあと、シャロン准将は、アサルトライフルAR905Fを渡した数分で。重いよー、これー。と駄々をこね始めた。