お姉ちゃんは世界最強を目指します 作:カルピスウォーター
決意表明から数ヶ月が過ぎた今日。
私はとんでもない事態に今更気付いた。
「魔力量が増えている……?」
殆ど体感的にしか分からなかったけど、確かに私の魔力量は幼少期よりも格段に上昇していたのだ。本来魔力量は生まれつきか、アーティファクトのような魔法具を行使しなければ増える事なんて滅諦にないはず……。
「まあ、良いに越したことはないわよね」
過去の私だったらこんな事に一々思考を費やしたりはしなかったでしょうね。でも、今は違うわ。少しでも早く強くなる為には、模索の日々を続けなければ行けないのだから。
「お父様、今日もご相手よろしくお願いします」
「ハハハッ! そう畏まるなクレア!! 親子水入らずの訓練なのだから気を遣わずにドンと言っていいんだぞ!」
今日はハゲ親父との訓練。次いでに私の魔力の扱い方を完璧に熟知するつもりでいた。
こう見てもこのハゲ親父。魔剣士としては中の中ぐらいの実力はあるから、訓練の相手としては適任なのよね。
「……では、行きます」
「おう、何時でも来い!」
剣先を突きの構えに移し相手を見捉える。
流石に魔剣士家系の当主でもあるせいか、隙は殆ど見せない。……仕方ないわね。なら、こっちから仕掛けて隙を作るわ。
「──フッ!」
「おっ?」
足先に魔力を纏わせ、初速から全開で間合いを詰める。
「早いな、だがっ!」
勿論、相手も対応してくる。
間合いに入ると同時の腰部への横薙ぎ。
予測より速いわね……だけど、軌道が
「おっ? おおっ?!」
ジリジリと火花を散らせ、横薙ぎの剣と自身の剣を這わせながら一気に懐に潜り込む。相手もそれに驚きつつも、鍔迫り合いに持ち込むのか力み始めた。
「その手は食いません」
「!? なっ!!?」
這わせから横に流すように剣を打ち流す。
次いでに片方の脚を打ち流した遠心力を活かして軽く払った。そのお陰で相手は大きく体勢を乱し始める。これで数秒の隙が生まれる。懐に入った今それは致命的な隙に繋がる──
「一本です」
心臓に突き立てるようにゆっくりと刃先を添わせた。
もし、これが実践ならこのハゲ親父は心臓を抉られていたわね。
「ほほぉ〜、凄いじゃないかクレア!! 父さん感激したぞ! まさか、この俺相手に懐に潜り込むとは対した度胸だやられたぞ!! しかも足技を組み込んで来るとは実に面白い……」
ハゲ親父が手放しの賞賛で私の成長を喜ぶ。
まあ、こういう所は地味に嫌いにはなれないのだけど……。シド相手にもそう言う事をもっとしてくれないかしら。
「じゃあ、続きと行こうか。今度は父さん油断しないからな!!」
「ええ、此方もです──」
そのまま私たちは1時間後ぐらい剣戟を繰り広げて、今日は解散した。
魔力の扱い方に着いてはもう少し実践的な訓練が必要なようね。今日の残りの予定は……そう。
「シド、私が見てあげるわ。剣を持ちなさい……!」
唯一の楽しみである可愛い弟との剣戟だ。
「ええ……、姉さん明日で王都に経つんでしょう? 絶対に無理しない方が良いって」
「私が大丈夫って言ってるんだから良いのよ。それに、これから一緒に訓練できる機会も減るでしょう……?」
「ん? 今なんて言ったの?」
「別に関係ないわ。さあ、暫くはお姉ちゃんが相手に出来なくなるから、タップリとぶつかって上げるわよ〜!!」
「うっへぇ〜、マジかよ……」
気怠そうにしながらも剣を持ち、しっかり相手をしてくれる所を見るとペットのような愛くるしさを感じてしまう。
「さあ、行くわよ!!」
「……ん? あ、大丈夫だよ」
「──フッ!!」
そこからはいつもと同じように、シドが吹っ飛んで泣き言を喚くのを私が指摘する流れに入った。シドの成長ぶりが垣間見えないのは溜め息が着くけど、可愛い弟がそのままで居てくれるのは何だが安心感があるから別に構わない。
そんな優雅な時間も終わりを告げて、訓練で流れた汗を落とそうとお風呂に入りに行く。
「あっ、待って姉さん」
「どうしたのシド?」
珍しくシドから話し掛けられたことに内心喜びつつ、話を促す。数年ぶりに一緒にお風呂でも入りたいのかしら? 勿論、お姉ちゃんは大歓迎よ♪♪
「最近なんか姉さん、変わってきてない?」
「……え?」
「いや、深い意味はないんだよね。ただ、体に違和感とか覚えていたりしないかなーなんて。ほら、前に魔力が練りにくい時期とかあったでしょ?」
シドの言う通り私は一年前くらいに魔力が突然練れなくなる現象に襲われた事がある。
まあ、その時はシドの試した『すとれっち』のお陰で色々と満足の行く結果にはなったけど。
「……いや、今は別にないわね。何か新しい兆候でも見つかったの?」
「いや、別にないなら良いんだ。ごめんね、お風呂の前に邪魔して〜」
「あっ、シド! お姉ちゃんと久しぶりにお風呂……! 本当に足だけは速いんだから……っ」
少しだけ頬を含ませながら、私は洗面所で下着を脱いだ。
◇◆◇
その夜、私はある違和感を感じた。
「……誰か来る」
何者かの気配がこの部屋に近付いてくる。最近になってようやく身に付けられた、神経の一つでもある第六感を利用した周囲への警戒網。本当に人間ってやれば何処までもやれるのね。
「さて、どうしようかしら……」
謎の侵入者相手にどんな鉄槌を食らわせてやろうか考え込む。すると重大な事を思い出した。そうだ……あの夢で見た謎の連中。アイツらの正体を私は何も知らないんだった。
だけど、いずれ訪れる未来なら何かしらの兆候がある筈……。
「もしかして、コイツがその手先? いや、断定するには情報が無さすぎるわね。今はとにかく少しでも情報が必要ほしい……」
相手は夢の中で存在した謎の巨大組織の連中。
本当に存在するか眉唾の連中だけど、私には何故かアイツらが存在していると確信を抱いている。だって、アイツらが悠々自適に生きてると想像するだけで嬲り殺してやりたいと湧き上がるんだから。
──絶対に見つけ出して正体を暴いてやるッ。
けど、その為にも情報が必要不可欠なのは結局変わらない。私にその手で頼れるツテなんていないし。協力者なんて以ての外だ。
だから、選択肢はこれしかないみたい。
「──誘拐されるしかないわね」