お姉ちゃんは世界最強を目指します   作:カルピスウォーター

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負の瞳

 

 

「オルバ様。諜報員がクレア・カゲノーの確保を遂行しました」

 

「そうか、今向かう」

 

 薄暗い室内に2人の声が響き渡る。

 

 オルバと言われた男は部下の報告を受け、クレアの居る牢の場所へ赴こうとした。

 

 すると、報告を終えた部下が逡巡した様子で立ち尽くしていた。

 

「なんだ? まだ報告する事があるのか?」

 

「……は、はい。実はクレア・カゲノー自身が互いに情報を共有したいと口にしており……この施設の指導者であるオルバ様にお会いしたいと申しております」

 

「なんだと……?」

 

 予想外の内容にオルバは思わず眉を顰めた。誘拐された身でありながら、そのような事を口にするなど、頭がおかしくなったのか、それとも相当肝が据わっているのか。

 

「直ぐに牢屋へ案内しろ」

 

「はっ!」

 

 部下の後ろに続きオルバは歩みを進める。

 

 報告書によればここ数ヶ月、クレア・カゲノーの周辺に置ける諜報員が次々と姿を消していた。それに伴い、彼女に何かが関係していると踏み、適合候補者でもあるクレアの誘拐・確保を企てた。

 

 しかし、当の本人が誘拐後、交渉を歩み寄るとは不可解にも程があった。

 

 何か不気味な……最悪な()()()訪れようとしているのではとオルバは錯覚してしまう。

 

「こちらです、オルバ様」

 

「問題は特にありません。至って交渉の姿勢を見せております」

 

「そうか……」

 

 門番をしていた部下の証言を耳に、オルバは牢の扉を潜り抜ける。

 

「あら、オルバ子爵だったの。ようやく来てくれたのね」

 

 するとそこには石造りの牢屋に魔封の鎖で繋がれた美しい黒髪の少女──クレア・カゲノーが待っていたとばかりに不敵に微笑んでいた。

 

 服は着ているのか寝巻きではなく、訓練着のようなものを着飾っている。

 

「クレア・カゲノー。貴様、一体何を企てている?」

 

「あら、それはこっちのセリフよ。あなたこそ、こんな辛気臭い地下室に私を連れ出して、一体どんな蛮行をするつもりなのかしら?」

 

 暗澹な空間に可視化されない火花が散る。

 

 オルバとクレア。

 

 互いに会話の主導権を握ろうと視線で睨み合う。

 

 そのまま数秒間が経過して……

 

 先に折れたのはオルバの方だった。

 

「時間が惜しいっ……要件だけを言え、クレア・カゲノー」

 

「あら、助かるわ。私の要件は一つよ──私があなたの質問に答える度に、私の質問にもあなたに解答して貰う。どう? 至ってシンプルなお願いでしょ?」

 

「……良いだろう。但し、答えられないのは回答なしとさせて貰うぞ」

 

「別に構わないわ。それだけでも私には大きな情報になるから」

 

「チッ……」

 

 食えない女だと思いながらオルバは話を切り出す。

 

 まだ齢15にしてこの落ち着きようには驚駭に値した。

 

 しかし、それと同じ程にクレアが適合者への可能性が高いと確信に近付いていく。

 

「クレア・カゲノー。最近身体の不調はないか? 魔力が扱い辛い、制御が不安定、魔力を扱うと痛みが走る、身体が黒ずみ腐りはじめる、そういった症状は?」

 

「……上手く纏めたつもりなんでしょうけど、私は一つしか答えられないわよ?」

 

「往生際が悪いぞ貴様ッ……お前に残された道はないのだクレア・カゲノー。なるべく手荒なマネはしたく無かったが──」

 

 オルバは懐にある剣の柄に触れた。

 

「あーはいはい、答えれば良いんでしょ? そうね、確か一年前かしら? あったと思うわ。でも弟に『すとれっち』の練習をさせろって頼まれて、それが済んだらとても良くなったわ」

 

「なるほど、つまり症状自体は出ていたのか……。やはり、適合者で間違いないようだ」

 

「……適合者? 何なのよそれ? 私からの質問にするわ」

 

「ほざけ、貴様に始めから主導権など存在していない。自分自身で言っていただろう? 答えがなくとも情報にはなると」

 

「……ハっ。やっぱり、そういう連中なのに変わりは無いのね」

 

 獰猛な獣のようにクレアはオルバを睨む。

 

 鎖から解放されれば、今すぐにでも噛み殺そうとするだろう。

 

 それにオルバは顧みず部下に指示を下した。

 

「クレア・カゲノーの血を採取しろ。引き続いて()()()()()諜報員たちを向けさせろ。何か情報を知っているかも知れん。研究の終息は近いぞ」

 

「「はっ!」」

 

 オルバの指示を受け、部下の2人が行動に移そうと廊下を駆けようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近付くな────

 

 

 突如、地下室に寒慄な声が響き渡った。

 

 その声にオルバ含め全員が足を静止する。

 

 声の出処は──牢の中からだった。

 

「一体……なんなんだ……?」

 

 総毛立つ謎の恐怖に、オルバは掠れた声を漏らす。

 

 その声に反応するように、牢の中にいる化け物(クレア)が繋がれた鎖を鳴らしながら、赤い瞳を細めて更に凝縮する。

 

 

弟に手を出すな────

 

 

「……ッく!!?」

 

 蛇に睨まれた蛙のようにオルバ達は萎縮した。

 

 その瞳に映し出された厳かな感情に呑まれて、

 

 

 ──焦燥。

 

 ──苦痛。

 

 ──慟哭。

 

 ──怨嗟。

 

 ──憎悪。

 

 ──絶望。

 

 

 ──死。

 

 

 たかが15歳の少女が映し出せることの出来ない、世界の終わりでも目にしたかのような、圧倒的な負の瞳。

 

 悍ましい……いや、視線を合わせるのすら躊躇してしまう。

 

「貴様っ……本当に、クレア・カゲノーなのか?」

 

 オルバは問う。

 

 目の前にいる謎の化け物に対して。

 

 そして、本能で理解した。

 

 この少女の怒りに触れれば死の果まで追いかけられると。

 

 でも、もう既に遅かったことも───

 

 

 

───殺してやる。お前ら全員、一人残らずッ

 

 

 その瞬間、圧倒的な膂力を持って魔封の鎖が剥がれ落とされた。

 

 

 




今更アンケート直すの無理なので訂正を。
傲慢⇒強欲。

お姉ちゃんの学園編どうするかご意見を〜(参考程度)

  • 1.シド入学までかっ飛ばしスタート
  • 2.一年約6話区切りスタート
  • 3.シャドウガーデン加入&入学1ルート
  • 4..シャドウガーデン加入&入学2ルート
  • 5.お姉ちゃん可愛い栄養分寄越せ(傲慢)
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