裏世界で突発で発生する【◯◯◯の大襲来】(裏世界のエリアによって名称変化)に参加する。
「はぁはぁはぁ」
俺は【樹海】の木の影に隠れて荒く息をする。
(しかし、なんて数だよ)
チラリと木の影から奥を見ると、ものすごい数のモンスターが何かを探すように辺りを見回していた。
耳をすませばあちらこちらから銃声と断末魔が聞こえる。
(こんな事なら参加しなけりゃよかったか?
もう少しで【樹海】の奥に行けそうだったんだけどな)
俺はそう考えながら、事のなり行きを思い出した。
発端は1通の運営通知だった。
『ただいまより、突発イベント【魔獣の大襲来】が発生します。
参加されない方は直ちに【樹海】より離脱してください。
繰り返します…』
その時の俺は【樹海】に入り2ヶ月なんとかレベルやアイテムを集めて、【樹海】の奥を目指していたり
奥にある激レアアイテムをゲットする為だ。
そして、俺はその奥にもう少しで届きそうだった。
なので、俺は【樹海】からの離脱を選ばなかった。
そのまま、何事もなかったので、その突発イベントは俺には関係ないなと感じていた。
そんな時だ。
近くでプレイヤーの悲鳴が聞こえたのは。
奥に向かっている他のプレイヤーがいるのは知っていた。
ただ、先につけたものしかアイテムがもらえないというものではない為、妨害はほとんどなく逆に強力しながら進む事もあった。
なので、プレイヤーの悲鳴が聞こえた時、俺は助けに行こうとその悲鳴がした方に向かった。
しかし、俺はそのプレイヤーを助けにいけなかった。
なぜかって?
それはそのプレイヤーはもうそこにはいなかったからだ。
代わりにいたのは数匹のゴブリンキング。
普通、ゴブリンキングなんて群れで現れるモンスターじゃない。
星持ちでなくても十分強いそんなモンスターがなんで複数でここに現れてる。
俺は不振に思いながらも、その場所から離れた。
だが、やっぱりその不振で普段の動きができなかったんだろう、俺は足元の小枝を踏んで音を出してしまい、そのゴブリンキング達に追われることになったんだ。
そして、現在にいたる。
ゴブリンキングの数は最初に見た時よりも明らかに増えている。
それもなぜがゴブリンキングばかり。
俺は運営からの通知をもう一度確認して状況を把握した。
【魔獣の大襲来】とは、突発的に裏世界で行われる討伐クエストで、なんでもある1種類のモンスターがゲーム時間1日ずっと沸き続けるらしい。
それもご丁寧に1番奥の地点からだ。
(ほんと嫌がらせか?)
と思ってしまう。
裏世界は高レベル帯のプレイヤー向けエリアの為、歯応えが必要という変な理由でこのイベントを行っているらしい(攻略サイトで確認した)
(くそう、最初いた地点よりかなり戻された)
奥から沸いてくる為、奥に行けば行く程、ゴブリンキングの数が多い。
手持ちの武器や弾薬では、あの数を相手にするには心細いし、他のプレイヤーと合流しようとも考えたが、探せばすぐにゴブリンキングに見つかる。
(どうしたものか)
今は【樹海】で手に入れた【隠蔽】のスキルで動かなければ、近くにきてじっと見られないかぎり見つからない。
(このまま嵐を去るのを待つか?
いや、このままここにいればいつかは見つかるか。
数が増えれば、この近くにくる確率も増える。
どうしたら)
「へぇ、珍しいね。
まだ残ってるプレイヤーがいたんだ」
「え?」
いきなり喋りかけられて俺は間抜けな声で顔を上げた。
そこにはニヤリと笑う1人の獣人がいた。
「ぼたんちゃん?」
「やぁ、確かきみは◯◯◯だよね?」
ぼたんちゃんは、さっと横に移動し隠れながら俺の名前を呼んだ。
「あ、はい、そうですけど、なんで俺の名前を」
「ん?
何回かイベントで一緒にならなかった?」
(確かに、ぼたんちゃんは俺の最推しだから知ってるイベントはクリアしているけど)
「覚えててくれてるんすね」
「ん?」
俺のボソッと言った言葉にぼたんちゃんは優しい笑顔で微笑んでくれた。
「それでどうするか決めてんの?」
ぼたんちゃんは木の影からゴブリンキング達を見る。
「いえ、正直いうと八方塞がりです。
奥に来るのに武器や弾薬はだいぶ使ってますし、ゴブリンキングがあの数だと、武器の威力も心もとない」
俺は自分の現状をぼたんちゃんに素直に伝えた。
「なるほど、武器はそのマシンガン?」
俺は他にロケットランチャー、ナイフ、スナイパーライフルを見せる。
もちろん弾薬もだ。
「確かにその装備だと不安だね」
ぼたんちゃんはふぅと息をゆっくりとはいた。
「仕方ないか、こうやって私に会えた訳だし、◯◯◯は運がよかったって事だよな」
ぼたんちゃんは何か自分に言い聞かせるように呟いた後、胸元からあるものを取り出し、俺に渡してきた。
俺はそれを受け取り確認する。
バッチ?
「確か◯◯◯って外ではかなりの装備揃えてたよね?」
「あ、はい。
【近未来都市】を拠点にしてますので」
「それじゃ、そのバッチ使いなよ」
「え?」
俺はバッチを調べる。
【解放バッチ】
『【樹海】専用イベントアイテム。
【樹海】で1日自分の制限を解除できる』
「これって?」
「そう、使えば【樹海】に入る前の状態に戻る」
「まじですか!」
(これなら、いけるかもしれない。
しかし…)
「デメリットありますか?」
俺はぼたんちゃんに聞いた。
その言葉にぼたんちゃんはにやりと笑う。
「そうそう、こんな時こそ冷静にだね」
(よかったぁ、すぐ使わなくて)
「デメリットは討伐目標が設定される事。
もちろんデメリットだから、討伐できなかったらペナルティがある。
この場合、全てがリセットされて入り口に戻る」
(ほとんど【樹海】でやられた時と同じか)
「どうする?」
ぼたんちゃんがじっと俺を見る。
「もう1つ聞いてもいいですか?」
「ん?何?」
「これってぼたんちゃんと会ったのってイベントなんですよね?」
「まぁね。
突発イベント中のイベントってとこかな?」
「じゃ、ぼたんちゃんと共に戦えますか?」
俺の言葉にぼたんちゃんの目が少し大きく広がる。
「それは私を戦力として考えるって事かな?」
ぼたんちゃんの言葉に俺は首を横に振る。
「いえ、ただ純粋にぼたんちゃんと共闘したくて。
なので、足手まといと思ったら捨ててもらって構わないですよ」
俺のその言葉にぼたんちゃんは口を押さえながら笑った。
「え?
なんかおかしな事いいました?」
「いや、別に。
いいよ、共闘。
楽しそうだね。
なんなら、競争しようか。
そのバッチを使った後、目標討伐が告知される。
その目標までどちらが先に到達できるか」
ぼたんちゃんの言葉に俺もにやりと笑う。
ホロメンでも上位の戦闘力を保持すると噂されるぼたんちゃんと競えるなんて滅多にない。
「望むところです」
「いい返事」
ぼたんちゃんは武器を構える。
俺はバッチを起動した。
『全封印を解除する代わりに目標討伐が告知されます。
目標討伐に達しなかった場合、ペナルティが与えられますがよろしいですか?』
俺はもちろんYESを押す。
『では、全封印を解除します』
俺の姿は【樹海】に入る前に戻る。
ステータスでスキルや技を確認。
(よし、元に戻ってる)
そして、目の前に現れる目標討伐数。
「はは。まじかぁ」
「ま、まだ半日以上あるからね」
俺とぼたんちゃんはその討伐数を見て笑う。
討伐数10000体。
「それじゃ、行きますか◯◯◯」
「もちろん、腕がなりますよ」
俺は自分の装備の中で最高の銃を装備した。
「じゃ、競争始めようか!」
ぼたんちゃんの合図で俺達の討伐戦が開始された。
イベント中(実際の討伐戦は自分の力量となりますので頑張ってください)
とん
俺の背中に何かが当たる。
「やるね」
「ぼたんちゃんこそさすがです」
あれから半日。
辺りはすっかり暗くなっている。
討伐目標までもう少し。
しかし、この背中に当たる暖かさがなんとも心地いい。
「そろそろいいかい?」
「え?
あ、すいません」
ぼたんちゃんが待っていてくれたのに気付き慌てて謝る。
「ん?
別にいいよ。
誰かに背中を任せるのも案外いいものかもね」
「え?」
「さ、後少しがんばりなよ」
そう言って振り向いた俺に少し照れた笑顔を向けてぼたんちゃんは戦場へと走っていく。
俺も負けてられない。
武器の弾薬を補充して俺もゴブリンキングの群れへと飛び込んでいった。
大変お待たせしました。
今回はあるイベントの条件にも入っているぼたんちゃんのイベントです。
このイベントはどの裏世界でも条件が合えば始まります。
ただ、どの裏世界でイベントを起こすかで、内容が少し変わってくるらしいので、その点は実際にイベントで体験してみてください。
ちなみにイベント名になっている預ける背中ですが、ぼたんちゃんと共闘する事で背中を預ける相手になれるという意味でつけられているそうです。
なお、今回このイベントを教えてくれた方がこの後どうなったかは、本人は教えてくれませんでした。
ぼたんちゃんに勝ったのか負けたのかは、ご想像にお任せするという事で。
では、また新たな情報が入りましたら更新します。
お楽しみに