前回同様、私は【8枚の果たし状】を使用した。
『これからイベント【ホロ剣客十番勝負】が開始されます。
このイベントは1プレイヤー1度きりのイベントになりますが挑戦しますか?』
いつもの機械音声に迷わず私はYESボタン押す。
『挑戦者確認。
では、シアターミッション【ホロ剣客十番勝負】を開始します』
そして、私の周りの景色が一変する。
「ここは?」
風丸は辺りを見回した。
一番に目につくのは巨大な城。
(ホロライブ城でこざるか?
だとしたらここはホロライブ城に行くための橋?)
しかし、風丸はどこか細部が違う気がしていた。
ゾク
風丸は突然、口では言い様のない圧を感じる。
(城の方から?)
風丸がそちらを見ると、誰か風丸に向かって歩いてきている。
圧の正体は間違いなくその人だと風丸は感じた。
近づくにつれてそれがはっきりとしてきた。
そして、その相手を風丸が視認した時、圧が消えた。
「なんだぁ、風丸ちゃん」
そこにはピンクのドレス衣装の可愛らしい女性が立って、風丸を見ながら微笑んでいた。
「ル、ルーナ殿?」
そう、そこには第四世代組姫森ルーナが立っていた。
「そうだよ、お久しぶりなのら~」
と緩く穏やか言葉で挨拶してくるルーナ。
先ほどまで風丸が感じた圧は微塵も感じられない。
「ご、ご無沙汰してますでござる」
密かに警戒しながら風丸は答える。
(もう、このフィールドに入った瞬間からイベント中、油断は出来ない)
「そんなに力入れなくていいのに」
(う、ばれてる)
ルーナにそう言われて内心びっくりする風丸。
「ま、仕方ないか。
ここってそういう場所だもんね」
ルーナも辺りを見回しながら言う。
「ちなみにここはホロライブ城でござるか?」
風丸が気になっていた事を聞いてみる。
「ん?ここ?
違うよ。
ここはルーナの城」
「お菓子の国の?」
「ん~
そっちじゃない方。
ここは月にある城」
「な、月でこざるか!」
ルーナの言葉に驚く風丸。
確かにルーナは月に住んでいたとかいないとか噂が流れていた。
「ま、生まれる前の話だけど」
ルーナはそう言って笑う。
「さ、それはおいといて。
戦うんでしょ?」
ルーナはどこからともなく1本の剣を取り出し、地面に突き立て柄の上に両手を置く。
「あまり、こういうのは得意じゃないんだけど」
ルーナはそう言って笑っている。
確かにルーナは先頭きって戦うタイプではなく、誰かの為に戦う時が多い。
「すいません。
今回は私の為に戦ってもらうという事でお願いするでござる」
風丸はそう言って腰の刀に手を当てた。
そして「【古参の騎士】」
すぐにスキルを発動。
風丸の姿は青と白の侍装束に変わった。
「【円卓の騎士】の元になったプレイヤーが使えるスキルなのらね」
「いかにも」
ルーナの言葉に風丸が頷き答えた。
「なら、こちらもいくのらよ。
うなぁ~~~~~~~!」
ルーナの雄叫びに合わせてピンクと銀のオーラがルーナの足元から天に向かって立ち昇る。
そして、オーラが消えたその先に、ピンクのマントと白銀の鎧を身に付けたルーナが立っていた。
「姫士王…」
その姿を見て風丸が呟く。
今のルーナからは先程の圧をはっきりと感じる。
ザン
ルーナは地面から剣を抜き構えた。
(今まで以上に事に当たらねば、今回は初めての【変身】する世代、気を緩めば即やられる)
風丸は刀を持つ手に力を込めた。
『姫士王 姫森ルーナ
疾風の女侍 風丸
いざ尋常に勝負!』
野太い声の機械音声。
ジリジリと横に流れるように移動する風丸。
先制攻撃に出ようとも考えたが、ルーナがどういった戦いをするのか、風丸は知らない。
(前回の戦いでは後方支援に徹していたでござるからなぁ)
相手の出方を伺う風丸。
「こないのなら、こちらからいくのらよ」
ルーナはそう言うと剣を右手に持ち、左手を上に向けた。
「簡易大召喚 ルーナイト召集なのら!」
「!」
地面にピンクの魔方陣が2つ描かれ、そこからルーナの倍の背丈の屈強な騎士が現れた。
「これもルーナの力の一部なのら」
ルーナの前で盾と剣を構えるルーナイト。
(確かに。
ホロメンは皆、大召喚は使える)
風丸は「ふぅ」と息を吐いた後、ルーナイトとルーナを見る。
ルーナイトを倒さないとルーナへの攻撃は通らないのは目に見えて明らかだった。
(なら!)
風丸は【解放】を使い【溜め】ていたステータスを解放する。
プレイヤーでは出せないスピードで一瞬にして、向かって右側のルーナイトの懐に入った。
(とった!)
風丸は瞬時に刀を抜き、ルーナイトの首へと刀をはしらす。
しかし、【止まれ!】と鋭い声。
その声に風丸の動きが一瞬止まる。
ルーナイトはその一瞬の隙を見て、風丸との間合いをとった。
(な、なんだ?)
風丸もすぐにバックステップで距離を取る。
(どうして動きが?
先程の声ってルーナ殿?)
ルーナを見た風丸だが、ルーナはその場から一歩も動いておらず、剣を構えたまま。
「…」
風丸はなぜ動きが止まったのか分からず、距離を縮められない。
(救いは遠距離の攻撃を向こうが持ってない事でござるか)
するとルーナが剣を上段に構えた。
(違う!
持っている、ルーナ殿は最大級の遠隔攻撃を)
「エクススラッシュ!」
ルーナの剣に凄い光が集まり、それを一気に風丸へと放った。
「く!」
紙一重で避ける風丸。
「やるのらね」
ルーナイトの真ん中で笑うルーナ。
「さすがルーナ殿の最強技。
危なかったでござるよ」
その言葉通り、予想せず避けるのが少しでも遅ければあれで終わっていた。
「しかし、その技はルーナ殿の力を全て使って放つ技のはず。
それなのにまだ動けるとは?」
風丸は疑問を口に出す。
「それはこの石のお陰なのら」
ルーナは剣の鍔元にある石を見せる。
「もしかそれは」
「ホロライフルストーン」
(確かすごい記録媒体になる鉱石)
ルーナの言葉に風丸は噂を思い出した。
「これをルーナの剣に埋め込んだのがこの【ルナカリバー】なのらよ」
「ほぼ無制限にあの技を打てるというわけでござるな」
風丸の言葉にルーナはにこっと笑う。
(それに加えてルーナイト殿2人、それにあの動きを止められた力。
かなりヤバイ状況でござるな。
なら、手始めに)
風丸は天叢雲剣を鞘に納める。
「?」
ルーナが不思議そうに風丸を見るが、風丸は気にせずルーナ達と間合いを詰める。
今度は一気にではなく様子を見ながら。
(やはり、ルーナイト殿はルーナ殿を守るように動くでござるな。
ならば)
ルーナイトとの間合いの一歩前で風丸は止まり、すぐに勢いよく剣を抜いた。
抜いた刀から水が刃のようになって放たれる。
天叢雲剣専用の技『雨斬り』
ルーナイトはすぐに盾を構える。
(狼狽えずにすぐに反応。
相手はプレイヤーではない)
そう考え、風丸はその盾で死角になっている場所に回り込む。
もう一体のルーナイトはルーナの奥。
目の前にはルーナがいる。
「勝負!」
風丸は天叢雲剣を連続で振り『雨斬り』を無数に放とうとした。
しかし、【動くな!】
目の前のルーナが風丸にそう言った。
動きが止まる。
(な、に)
すぐにルーナイトが風丸とルーナの間に回り込む。
(これでは)
また背後に下がる風丸。
「しかし、これで動きを止めた正体が分かったでござるよ」
風丸はルーナを見ながら言った。
「ばれちゃったか。
そう、あれはルーナのスキルの1つ【絶対王政】
ルーナが言った事を強制的に相手に聞かせるスキルなのら」
「いや、それってチートすぎ」
風丸は思わずぼやく。
「ま、自分より強い相手には効かないし、風丸くらいの強さの相手なら聞かせられるのは一瞬だけだけどね」
(その一瞬が命取りでござるよ)
ルーナの言葉に風丸は心の中で思った。
(しかし、どうする。
動きを止められるなら隙のつきようがない)
「ふふん、降参?」
ルーナは笑顔で聞いてくる。
「まだでござるよ」
天叢雲剣を構えて風丸はルーナを見る。
(一か八かやるしかないでござるな
【剣術】を極めれば覚える技もある。
今回はそれに頼るでござる)
風丸は何かを試す為に、ルーナの正面に立つよう移動する。
ルーナイト達がルーナと風丸の線上を開けた。
(よし、狙いどおり)
ルーナが剣を振りかぶった姿が見える。
そして風丸の狙いどおりの技がルーナから放たれた。
「エクススラッシュ!」
凄まじい光が帯となり風丸を襲う。
「その攻撃を待っていたでござる。
剣術『纒受け』」
風丸は納刀したまま、柄先でエクススラッシュの光を突く。
そのまま、エクススラッシュの側面を回転しながら、ルーナの方に向かう。
『纒受け』は剣術を極めると覚える技の1つで、敵の攻撃を回転して避ける技。
敵の攻撃をまるでその身に纏うように避ける事からこの名がついたとされる。
そして、風丸が狙うはもう1つの技。
すごい勢いで回転しながらルーナに近づく風丸。
そして、風丸の狙う技の間合いにルーナが入った。
「『鬼刃旋風』!」
風丸は回転しながら刀を鞘から勢いよく抜いた。
凄まじい剣撃が刀からルーナに放たれた。
『鬼刃旋風』は自ら回転し、その回転する勢いを剣撃に変えて放つ技。
『纒受け』でエクススラッシュっという究極技を避ける事で最大回転した『鬼刃旋風』はもはやチート級のルーナにさえ届く。
だが、ルーナの前に1人の影が現れる。
盾を構えたルーナイトだ。
ルーナイトはルーナを後ろに押し、自らが盾となった。
風丸の『鬼刃旋風』はそのルーナイトを袈裟斬りにする。
「ルーナイト!」
ルーナの声に斬られたルーナイトはルーナに振り向いた後、光となって消えていった。
追撃を考えた風丸だが、もう1人のルーナイトが剣を構え、ルーナの前に立ちはだかる。
(さすがルーナイト殿。
その身を持ってルーナ殿を守っている)
「だが、こちらも負けられないでござるよ!」
風丸はルーナイトとの間合いを詰める。
風丸に剣を振り下ろすルーナイト。
紙一重で避ける風丸。
「【止まれ!】」
ルーナの声が聞こえた。
しかし、もう決着はついている。
ルーナの言葉の前に風丸はルーナイトの足元に蹴りを入れていた。
風丸の方に倒れこんだルーナイトの胸に、動きが一瞬止まった風丸の刀が突き刺さった。
予め動きを止められるのをよんで、止められても大丈夫な攻撃をしていた風丸。
もう1人のルーナイトも光となって消える。
体が動くようになった瞬間、風丸はルーナとの間合いをとった。
「まさか、ルーナの【絶対王政】を逆手に取るなんて」
「ルーナイト殿はルーナ殿の力を信じているでござるからな。
そのスキルを使えば、ルーナイト殿も気が抜けると思ったのでござるよ」
「王としては失格なのらね」
ルーナは片手でルナカリバーを、もう片方にルーナの剣を装備する。
「二刀流…」
「もう1本は予備の剣。
ルーナイトの仇は王としてとらせてもらうのら」
2本の剣を構えたルーナが、風丸へと間合いを詰めた。
「く」
2本の剣をまるで手足のように自在に振るいルーナは風丸を攻撃した。
風丸は防戦一方になり徐々に下がる。
(ルーナ殿自身もさすがホロメン。
強いでござる)
「だが、ここで負けるわけにはいかない【覚醒】」
風丸は自身のステータスを10倍にする。
今から10分間はホロメンすら凌駕できるステータス。
(なら、まだ抗える)
風丸は攻撃に転じた。
両者の攻撃は火花を散らし打ち合う。
そして、都合百合の打ち合いの後、風丸の刀はルーナの喉元に突きつけられた。
荒い息の両者。
「はぁ、負けたのら」
ルーナはその場に座り込み、そう言って微笑んだ。
「ただの打ち合いだけの勝負をすれば、スキルを温存していた私に勝機はあったでござる。
それに【絶対王政】も使わなかったでござるな」
「あのスキルの発動条件には、ルーナの側にルーナイトがいる事だから。
使いたくても使えなかったのら」
そう言ったルーナを見て風丸は微笑む。
(簡易大召喚を使えば小さなルーナイトを瞬時に召喚する事もできた。
それをしなかったのはやっぱり。
手心を加えてくれたのかな)
「そう言う事にしとくでござる」
風丸の言葉に2人は笑いあった。
『勝負あり!
勝者 疾風の女侍 風丸』
野太い声のアナウンスが流れ、風丸の手には【7枚の果たし状】が握られていた。
『アイテム【7枚の果たし状】をゲットしました』
お待たせしました、皆さんお待ちかね?【ホロ剣客十番勝負】の情報です。
3人目の剣客は、ホロライブのお姫様、姫森ルーナちゃんです。
彼女も前回のメルちゃん同様あまり表立って戦わないホロメンさんです。
しかし、誰かの為に戦う時はその秘めたる力を十分に発揮されます。
今回もあまり乗り気ではなかったですが、風丸さんの願いに応じて戦った感じのようでした。
お話を聞いた風丸さんからは、「やはり最後は手心を加えてくれた気がする」と聞いております。
これを読んでいるあなたが戦う時はどうか分かりませんが、手心を加えてくれても強敵には間違いないので、気合いと根性で頑張ってみてはいかがでしょうか?
それではまた、新たな情報が入りましたら更新します。