【激・安眠枕】を所持。
イベント『眠れる羊は夢を見る?』のクリア報酬
【絶対眠れる?葉茶麻】を所持。
博衣こよりのクエストを15個以上クリアしている。
「こんにちは」
カランカラン
入り口の鈴が鳴り、僕は一件の道具屋に入った。
「はい、いらっしゃい」
カウンターから少しだるそうな声が聞こえて、カウンターからはピンクのケモミミがピョコピョコ動いているのが見えた。
「はい、どちら様?」
その後すぐに道具屋の主がぴょこっと顔を出す。
「僕です」
「ああ、◯◯◯くんいらっしゃい」
僕の顔を見て道具屋の主、博衣こよりちゃんはにこっと笑ってくれた。
「それより本日も来たんだぁ」
こよりちゃんは、カウンターに頬杖を付きながら僕を笑顔で見る。
「本日もって」
僕は少し落ち込んだ声で返答する。
せっかくここまでこよりちゃんに会いに来たのに…
「別にまた来たのかこいつとかいう意味じゃないですよ。
ただ、ここって【魔王城】の中だから」
こよりちゃんは少し困った顔でいう。
そう、この道具屋は何を隠そう【ホロライブワールド】の高難易度エリアの【魔界】にあり、そして、その最奥にある【魔王城】の中にある。
普通のプレイヤーが気軽にこれる場所ではなかった。
「いや、ここって掘り出し物が多くありますし」
(それに僕の最推しのこよりちゃんに会えるし)
僕は不思議そうにこちらを見るこよりちゃんを見る。
(やっぱり近くで見るとより可愛い)
「確かに掘り出し物はありますけどね」
ふぅと肩で息をはいたこよりちゃんはカウンターにもたれ掛かる。
「どうかしたんですか?」
普段より何かこよりちゃんから疲れたような感じがしたので聞いてみる。
「え?」
こよりちゃんは上半身を起こして僕を見た。
「あ、ごめんね、変なところ見せちゃって」
そう言って苦笑いをするこよりちゃん。
「も、もしよかったら、僕に話してください。
ち、力になれるかもしれないです!」
僕は勇気を出して言った。
少しびっくりした顔のこよりちゃん。
そして「あはははは」とこよりちゃんが笑う。
「えっと…」
僕はどうして言いか分からずおろおろしていると「ごめん、ごめんね、まさかそんな優しい言葉かけてくれるとは思わなくて」とこよりちゃんは嬉しそうに笑っていた。
「寝不足ですか?」
「そうなんです」
こよりちゃんはお茶を淹れてカウンターに置いてくれた。
「ありがとうございます」
淹れてもらったお茶を飲む。
(推しのお茶旨い)
「それで、どうして寝不足なんです?
いつでも寝れそうな感じですけど」
僕はお店を見回す。
お客は僕だけ。
ま、いくら掘り出し物があるといってもさすがに【魔王城】の中にあるお店だからなぁ。
「う~ん。
寝たくても寝れないって言うのが正解かな」
こよりちゃんもお茶を飲みながら呟く。
「寝れない?」
「うん。
◯◯◯くんはリアルのこよを知ってます?」
「そりゃ、もちろんです。
僕の最推しですから!」
「あははは、ありがとう」
カウンターに乗り出しぎみに言ってしまい、少しこよりちゃんが引いてる。
(好きな事になると歯止めが効かなくなりそうなの治さないと…)
「だったら、こよが長時間配信や連続行動が平気なの知ってますよね?」
「は、はい」
(冗談で、こよりちゃんは複数人いるとか言われてるくらいだし)
「実はその特性?もこよに反映されてるんですよね。
【無限行動】っていう特殊なスキルをこよ持っているんです」
「【無限行動】?」
「はい、そのスキルを所持しているとその名の通り、休まず永遠に行動し続ける事ができます」
「す、すごい」
「でも、これにはマイナス面もあって、永遠に動けるんですけど、疲労が溜まったり不眠になってしまうんです」
「それは辛いかも」
(こよりちゃんが疲れたような感じがしたのは、そのせいか)
「なので最近寝不足でだるいわけですね」
そう言って机につっぷするこよりちゃん。
(どうにかしてあげたいけど…
睡眠か…)
僕はアイテムボックスの中を見た。
(何か良いものないかな?)
アイテムボックスの中一覧をスクロールしていると、ふとあるアイテムに目が止まる。
(これって確か…)
僕はその目にとまったアイテムを取り出した。
「それはなんですか?」
こよりちゃんは僕の手に持つアイテムを見る。
「これはあるイベントで手に入れたアイテムなんですよ」
僕はそう言ってアイテムボックスから急須セットを取り出す。
僕が手にしているのは【絶対眠れる?葉茶麻】と呼ばれる茶葉。
とある場所で眠いピエロさんを助けた時に、手に入れ使った物だ。
僕はその茶葉を使ってお茶を入れることにした。
「お湯をもらっていいですか?」
「いいですよ。
取ってきますね」
そう言ってこよりちゃんはカウンターの奥へ入っていった。
(これってホロメンにも効くのかなぁ?)
僕は少し疑問に思いながらもこよりちゃんを待った。
「お待たせしました」
こよりちゃんが、ヤカンを持って戻ってきた。
僕はヤカンをもらい急須にお湯を入れる。
しばらく待って、コップにお茶を入れた。
色は抹茶。
匂いも抹茶。
(取る時もやたらに抹茶の匂いしてたもんなぁ)
「どうぞ」
僕はお茶をこよりちゃんに差し出す。
「ありがとうございます」
こよりちゃんはお茶を飲む。
「あ、少し甘いんですね。
それに何か体がぽかぽかしますよ」
リラックスした表情でこよりちゃんは微笑む。
「眠れそうですか?」
「ん~
どうだろう…
あ!」
僕の問いに曖昧に返事をしていたこよりちゃんが、何かに気付き小さく声をあげる。
「どうしたんですか?」
「え?
あ、ステータスのスキルが変化したんです」
「スキルが?」
ちなみにホロメンの人達もステータス画面はあるらしく、もちろん他人には見せない。
そのスキル欄のスキルが変化したみたいだ。
「どう変化したんですか?」
「【無限行動】のスキルが【無限行動・条件付き】に変わりました」
「条件付き?」
「はい、【無限行動】が発動するのに条件が付いた事で、疲労軽減の効果が付与されてますね」
「そんな効果があるんですか?
このお茶」
僕は驚いて急須を見る。
「たぶん、ある一部のスキルに対してこういう効果があるのかもしれませんね」
興味津々にお茶を見るこよりちゃん。
博士魂に火が付いたのかもしれない。
「それで、寝るのはどうですか?」
僕の質問にこよりちゃんはゆっくりと首を左右に振った。
「ダメですね。
まだスキルに不眠付与が付いてるので、難しいです」
(くそう、ダメか。
他にはないのか?)
僕はまたアイテムボックスの中を見た。
ここに来るのにいろんなアイテムを持ってきたから、探すのも一苦労だけど、推しが困っているんだ、どうにかしてあげたい。
すると、最後の方にあるアイテムを見つけた。
「これは!」
「次は何が見つかったんですか?」
お茶を横に避けてこよりちゃんが、身を乗り出して聞いてくる。
「あ、これなんですけど…」
僕はアイテムボックスから1つの枕を出して、カウンターに置いた。
「枕…ですか?」
こよりちゃんはそう呟き枕を見ている。
その眼差しが何かトロンとした瞳になっているように僕には見えた。
「ええ、あるイベントで手に入れたものなんですが、そのイベントが隣近所がお互いに夜うるさくて眠れず、あわやお隣さん戦争になりかけているのをどうにかするっていうイベントでした」
「何か睡眠関係のイベント多いですね。
何か◯◯◯くんもあるんですか?」
「いえ、たまたまですよ」
こよりちゃんに聞かれて、僕は半笑いで答える。
(本当に狙って受けてる訳じゃないのに、何故かこういうイベントにあたるんだよなぁ)
「それで、いろいろあって枕職人の人を探して作ってもらったのがこの【激・安眠枕】というわけです」
「効果はなんですか?」
「これを使って寝ると、周りの自分が不快な音と感じる音がまったく聞こえなくなります」
「それはすごいですね」
「はい、ですのでそのお隣さん戦争は無事に回避されて、報酬として余っていたこの枕をもらいました」
「なるほど、でも、そんなにいい枕ならお高いんでしょ?」
「え?」
こよりちゃんのにこにこしたフリに、僕はニヤリと笑ってしまった。
「いえいえ、そこは報酬品。
日頃の感謝を込めてお安くなっております」
「まさか、おいくらですか?」
「今ならなんとこの【絶対眠れる?葉茶麻】を付けて」
「付けて?」
「プレゼントします」
「え?」
僕の言葉に驚くこよりちゃん。
「プレゼントですか?」
「はい、僕の最推しのこよりちゃんが困っているんです。
力になってあげたいから」
「◯◯◯くん…」
「さっそく寝てみてください」
僕は枕をこよりちゃんの方に渡す。
「あ、ありがとうございます」
こよりちゃんはじっとその枕を見つめ、そして、頭をそっと乗せた。
「すーすーすー」
(すごい、すぐに寝た)
その効果に驚きながら僕はこよりちゃんの寝顔を見た。
(本当に幸せそうに寝てる…)
スクショを撮りたい気持ちを抑えながら、僕はこよりちゃんの寝顔に手を合わせる。
(この幸せそうな寝顔が僕の報酬です)
僕はそう思いゆっくりと道具屋から出た。
入り口に準備中の立て札を付けて、ふぅと息を吐く。
(さ、また今度来てみよう。
その時はスッキリとした顔が見れたらいいな)
僕はそう考えながら武器を取り出す。
そして、モンスターがひしめく【魔王城】の中を出入り口に向かって走り出した。
お待たせしました。
今回は第六世代組の博衣こよりちゃんのイベントになっております。
【無限行動】持ちのチートキャラの秘められた悩みが題材となっております。
ちなみにこのスキルは他のホロメンの方も所持しているとかいないとか。
詳細は闇の中です。
では、また新たな情報が入り次第、更新しますのでお待ちください。
ありがとうございました。