「後4人でござるな」
目標が近付いてきたからか、自然と手に力が入る。
運営が冗談半分で作った激ムズイベントを何とかここまでやりとげている。
ここまでこれたのも【古参の騎士】や【覚醒】などのスキルのお陰と言ってもいいくらい、スキルに頼っているけど、あの娘が目標にできる相手になるにはこれが一番の方法だと私は思っている。
「さて、次は誰でござるかな?」
私はいつも通り、【4枚の果たし状】を使用した。
『これからイベント【ホロ剣客十番勝負】が開始されます。
このイベントは1プレイヤー1度きりのイベントになりますが挑戦しますか?』
「YESでござる!」
そして、景色が一変する。
風丸は荒れ地の真ん中に立っていた。
周囲を見渡すが何もない。
草や木、山さえもない広大な荒れ地。
「殺風景でござるな」
風丸は少し不安になり思った事を口に出す。
「ま、これが一番いいのよ。
今から戦うと、どうせ荒れ地になるから」
「!」
いきなり背後から声をかけられ、慌てて後ろを振り返る風丸。
「まさか、あなたが」
予想できなかった相手に風丸が驚く。
「どうも~」
「シオン殿」
風丸に呼ばれてシオンは笑顔で手を振っていた。
「どうしてシオン殿が?」
「ええ?
何かおかしい?
シオンだって戦えるんだけど」
「いや、シオン殿の戦闘能力が高いのは百も承知でごさるが」
「ああぁ、剣客だから?」
「はいでござる」
風丸は頷く。
「そっかぁ、確かにシオンは格闘系だからなぁ」
(いや、魔法系なのでは?)
と思ったが風丸は口にしなかった。
「でもね。
こういう事もできるんだなぁ」
シオンのその言葉と同時にシオンの隣に紫の雷が落ちる。
そして、その雷を掴んだ!?
雷はそのまま消えずにシオンの手の中で残り続ける。
「魔法を掴んだ?」
「そういう事。
魔法剣ってとこかな」
シオンはぶんぶん雷の剣を振る。
「ね?
これで剣客」
「で、ござるかなぁ?」
曖昧な返事をする風丸を見て笑うシオン。
「さて、シオンの武器も見せたし。
そろそろやる?」
シオンの言葉に風丸は頷き柄に手を当て戦闘態勢を取る。
「じゃ、ハンデをあげるよ」
シオンは地面に自分を中心にして雷の剣で円を書いた。
「ここからシオンが出たらシオンの負け。
ここからシオンが出ずにそちらを倒したらシオンの勝ちね」
「え?
それはこちらがかなり有利では?」
シオンの提案に驚く風丸。
「いい、いい。
大丈夫。
これくらいしないと勝負にならないから」
シオンの言葉に少しむっとする風丸。
「なら、それで。
負けた時に言い訳はしないようにお願いするでござる」
「はは、それしないしない」
シオンは笑いながら手の平を振る。
「だってシオン最強だから」
シオンは真顔でそう言った。
『魔道の超越者 紫咲シオン
疾風の女侍 風丸
いざ尋常に勝負!』
合図と共にシオンは持っていた雷の剣を風丸に投げた。
「!!」
間一髪、避ける風丸。
よく避けられたと風丸は思う。
あの投げられた雷の剣は手を離れた瞬間、雷に変わっていた。
「すごいね、雷避けれるなんて」
シオンはニコニコ笑っている。
「当てる気で投げてなかったでござろう?」
風丸は構えたまま言う。
「ま、いきなり終わったらしらけるじゃん」
ドォン、ドォンとまたシオンの左右に雷が落ちる。
シオンはその雷を掴んだ。
(今度は2本)
見た目は二刀流のシオンだが、あれは剣でもあり弾丸でもある。
本当にシオンはあの円の中から勝つつもりなのだろう。
「もちろん、雷だけが攻撃じゃないよ?」
タンと足で地面を蹴る。
「な!」
風丸の立っていた地面がいきなり隆起する。
空へと持ち上げられる風丸。
「【古参の騎士】」
スキルを発動して風丸は隆起する地面を下る。
その風丸に向かってシオンは手にある雷を投げた。
今度は狙って投げられている。
しかし、【古参の騎士】を使っている風丸はそれを避ける力はある。
2本の雷は隆起する地面をえぐり取る。
ダン!
風丸は地面を蹴り、一気にシオンとの間合いを詰めた。
「はぁ!」
天叢雲剣を抜き風丸はシオンに斬りかかった。
ガン!
しかし、風丸の攻撃は何かに阻まれてシオンに届かなかった。
風丸はそのまま後ろへと跳ぶ。
「何でござるか今のは」
剣を構えたまま風丸はシオンに聞いた。
「風の盾。
言ったじゃん。
今のシオンは最強だって。
その程度の攻撃じゃ、傷1つ付けるのも無理だよ」
「でござるな。
なら【解放】」
風丸は次のスキルを発動する。
(【溜め】は十分にしてるでござる)
そして、風丸はシオンに向かって剣撃を放つ。
「へぇ、魔法使わないのにそんな事できるんだ」
シオンは何もない筈の場所を掴む。
そして、何も掴んでない手を風丸の方へと振る。
ズバ!
風丸が放った剣撃が何かに当たり弾けとぶ。
「風の盾を投げた?」
「よく分かったね」
風丸の言葉にシオンは嬉しそうに答えた。
「まるで武器庫の中にいるようでござるな」
風丸は未だ円の中で仁王立ちするシオンに言った。
風丸の言う通り、シオンはその円の中でも周りの環境から魔法で武器を作り出し、攻撃してくる。
「今のシオンはほぼ全ての魔法が使えるから。
だから言ったじゃん。
ハンデをあげるって」
確かにシオンの言う通り、あの状態で自由に動かれればもっと厳しい戦いになっている。
風丸は天叢雲剣をギュッと握った。
「そろそろ様子見は終わり、本気でいくよ」
ダン!とまた地面を蹴るシオン。
シオンの両側から地面が盛り上がり壁ができる。
それが風丸の方へと伸びてくる。
風丸は動かずシオンを見る。
(これは本命ではない)
風丸はそう感じたのだ。
土壁は風丸の両側を通りすぎる。
シオンと風丸の間に1本の道ができた。
「逃げなかったのは間違いかも」
シオンはそう言って両手を上げた。
「千迅雷雨」
シオンが両手を振り下ろすと、頭上から雷の刃が雨のように次々と地面を焦がし抉っていった。
しかし、風丸はその雨のように振ってくる雷を全て避けながら、シオンに向かっていく。
「!!」
シオンは驚きながらも顔は笑っていた。
避けきれないそうシオンは思っていた。
しかし、目の前の挑戦者はそれを覆してこちらに向かってくる。
そして、ガ!っと風丸の攻撃をシオンは土から作り出した剣で受け止めていた。
「やるじゃん」
「これくらいできないとシオン殿を倒せないでござるよ」
「言ったなぁ」
風丸とシオンはお互いに笑う。
風丸が背後に跳び間合いを取る。
シオンは持っていた土の剣を横に振った。
風丸はしゃがむ。
決して届かぬ距離だとしても、その定義はシオンに通じない。
バカァンっと2人の両脇の土壁が斬られ爆砕した。
風丸の感の良さにシオンは嬉しくなった。
(本当に全力出せるんだ)
風丸と戦ったホロメンから、その話は聞いていた。しかし、シオンは半信半疑だった。
自分の全力は他のホロメンとは少し違う。
【魔道の超越者】
他にも魔法を使うホロメンは何人もいる。
しかし、シオンはその中でも別格の位置にいた。
全ての魔法が使える。
そういう立ち位置になっていたのだ。
普段イベントでは、魔法の練習をしないといけないくらいの見習い魔法使いなのだが、制限を全て取り払うとそれはもう魔法というジャンルなら全てを自由に扱える。
魔力量もほぼ無制限。
尽きることない魔力で相手を圧倒できる。
しかし、目の前の相手はまだ全てを使ってはいないが、それでも自分の攻撃を避け、その上で攻撃もしてくる。
「楽しい」
シオンは心の底からそう思えていた。
「まだまだいくよ~」
シオンは横に手を振った。
シオンの周りに現れる光の玉。
「いっけぇ~!」
シオンの号令で光の玉は次々に風丸に向かって放たれた。
「多すぎる」
風丸はそう言いながらもシオンを中心に全速力で走り始めた。
光の玉は風丸の後に着弾し爆発する。
「やるやるぅ」
シオンは笑う。
楽しくてしかない、そんな笑顔だ。
ドォン
今日1番の雷がシオンに落ちる。
それを掴むシオン。
風丸はその雷を見てぞっとした。
雷はまだ空から地面に続く長い状態だ。
(まさか!)
風丸の予感は的中した。
シオンはその巨大な雷の剣を風丸に向かって振るったのだ。
もし、実際の剣だったら重たくて振れないだろう。
それこそ、【金剛眼】を使ったノエルじゃないと振るえないくらいだ。
それをシオンはまるで重さを感じさせないスピードで攻撃してくる。
(魔法だから、重さの概念がないでござるか?)
光の玉を避けながら、雷の剣を何とか避ける風丸。
しかし、避けた後からすぐにその雷は投げられ、爆音と共に風丸が居た場所を抉る。
(無茶苦茶でござるよ)
その場から一瞬で離れた風丸はシオンを見る。
「すごい、さっきのは絶対当たってたと思った」
「いろは殿の真似をしてみたでござるよ」
いろはが戦いの時に使っていた技【裏・縮地】を風丸は習得していた。
対象から一瞬にして間合いを取る技。
雷の剣を投げられた時に、体をシオンの方に向ける事でシオンの攻撃を避けたのだ。
シオンからの攻撃が止む。
風丸とシオンはにらみあったまま、動かなかった。
(勝負をつける)
(勝負をつけるでござる)
お互い、次の攻防でけりをつけるつもりだ。
「勝負!」
風丸はシオンに向かって走る。
【縮地】を使えば一瞬で間合いを詰めれるが、終った後の硬直時間を狙われたら終わりだ。
シオンは風丸に手を向ける。
手のひらから巨大な火球が現れて風丸に向かって放たれた。
1つ、いや、2つ3つ。
巨大な火球が風丸を襲う。
「水を纏え、天叢雲剣!」
風丸の言葉に天叢雲剣の刀身が水を纏う。
そして、風丸は迫りくる火球を切り裂いた。
「へぇ。
なら、これならどうだ!」
シオンの手から紫の雷が放たれた。
それを風丸は天叢雲剣で弾く。
「!」
驚くシオン。
「電気をほとんど通さない水もあるでござるよ」
そして、風丸はシオンとの間合いを詰めた。
風丸の天叢雲剣がシオンに振り下ろされる。
ガキン!
だが、風の盾に阻まれてシオンには届かない。
風丸はそのままアイテムボックスから白狐の宝刀を取り出し攻撃する。
しかし、宝刀の一撃はまたもシオンの風の盾に防がれた。
「だから無駄だって…」
ガキン!
シオンの言葉が終らぬ間に風丸はもう一撃入れる。
「だから」
ガキン、ガキン
「ちょ、ちょっと?」
ガキン、ガキン、ガキン、ガキン!
風丸の手数がどんどん早くなっていく。
「ね"え"え"え"え"え"」
「【オーバーブースト】」
風丸はスキルを使う。
ガガガガガガガガガガ!
シオンは自分の風の盾に自信があった。
絶対に破られない。
そう思っている。
そう、今まさにこの時も。
しかし、目の前で無数に打ち込まれる刃に、シオンは恐怖した。
「む、むだだって」
シオンの言葉で止まらない刃。
「う」
「やぁ!」
ガキン!
「ひぃ」
最後の一撃が終わり、風丸は肩で荒い息をする。
「これで私の勝ちでござるね?」
風丸に言われてシオンは、はっと自分の足元を見た。
シオンの片方の足は円を踏んでいた。
「はぁ~
負け、シオンの負け。
迫力に負けたわ」
シオンはそう風丸に言った。
「ありがとうございましたでござる」
シオンは一切汗をかいておらず、風丸は片膝を地面に付けて汗だくだった。
第三者から見ればシオンの圧勝にも見えるだろう。
しかし、風丸は勝った。
目の前に現れた【3枚の果たし状】を手に風丸は微笑んだ。
お待たせしました
風丸のホロ剣客シリーズの最新情報となります。
今回は魔道の超越者シオンちゃん。
多数の制限を解除された最強状態のシオンちゃんでした。
最後まで風の盾を破壊する事ができなかった風丸でしたが、その勢いでシオンちゃんを破る事が出来たみたいです。
ちなみにこの情報ですが、なぜシオンちゃんの考えた事が分かるのか?という疑問について
実は全ての事にログというものが存在します。
そのログを運営さんの協力で見せていただいております。
もちろん、風丸やシオンさんからの了承を得て行っております。
毎回、無理なお願いを聞いていただき【ホロライブワールド】運営さんには頭が上がりません。
ありがとうございます。
では、また新しい情報が入りましたら更新します。
お楽しみに。