星街すいせいが行った【大召喚】に参加しなかった場合に稀に発生する。
星街すいせいより連絡がくる
「あぁ~行きたかったぁ」
俺はすいちゃんからの【大召喚】の召集告知を見てため息をついた。
召集告知は2日前の昼過ぎ。
俺はその頃、リアル学校で試験を受る前だった。
「ああ、なんでこのタイミングで~」と試験前に1人心の中で叫んだよ。
【大召喚】
メインホロメンAIだけが使える特殊技。
自分を推してくれているプレイヤーを召喚して共に戦う事のできる技だ。
【大召喚】が行われると推しに召集告知が来て、参加するを選択すると、どこにいても一瞬で推しの近くに召喚される。
その際、その推しの専用装備が着れるのでそれだけでも嬉しい。
【大召喚】中はもし倒されてもペナルティは発生しないし、経験値も分配。
特別なポイントも貰えていいことづくしだ。
(それにあのすいちゃんの【大召喚】だからなぁ)
ホロメンによって【大召喚】を使う頻度は違う。
イベント的な意味あいで定期的に【大召喚】してくれるホロメンもいれば、すいちゃんのようにごく稀に【大召喚】を使うホロメンもいる。
(すいちゃん基本的に強いから【大召喚】なんて殆ど使わないもんなぁ)
どんな事でも殆ど1人で解決してしまうすいちゃんは本当に【大召喚】を使わない。
(ああ、惜しいことしたぁ~
でも、試験をすっぽかす事できねぇし)
試験も終わって【ホロライブワールド】にインした俺はかれこれ3時間ほど、この事で悔やんでいた。
そんな時、1通のメールがメールボックスに届く。
「なんだ?」
(ギルドからの召集か?
確か近々、【ふぉーす】の高レベルダンジョンに行くって言ってたもんな)
俺はメールボックスを開く。
「へ?」
思わず大声で間抜けな声を出してしまった。
慌てて辺りを見るが誰もいない。
(良かったぁ、町の中じゃなくて)
ほっと胸を撫で下ろした後、俺はもう一度メールを確認する。
差出人はなんと星街すいせいちゃんだった。
俺は今、【バーチャル】の始まりの町に来ていた。
この町に合った普段着を着て、俺は目的の場所に急ぐ。
あのすいちゃんからのメールにはこう書かれていた。
『◯◯◯へ
緊急の用件があるので【バーチャル】の始まりの町にある◯◯◯という喫茶店に今から来てほしい』
(な、なんだ?
オリジナル世代組から呼び出しなんて前代未聞じゃないか?)
俺は高鳴る鼓動を抑えながら急ぐ。
メールを確認した後、すぐにイタズラメールじゃないかと思った。
普通何もしてないのにいきなりオリジナル世代組から呼び出しなんてあるはずもない。
しかし、いろいろと試した結果、そのメールは本物である事が分かった。
何より差出人の後ろに【ホロライブワールド】公式マークがついていた。
(これ付けれるのホロメンだけだし。
しかし、本当になんだ?
俺なんかすいちゃんに悪い事したっけ?)
そんな不吉な事を考えていると、約束の喫茶店に着いた。
(あ、いた)
テラス席に座り、ぼんやりと外を見ているすいちゃん。
(なんか、絵になるなぁ)
しばらく俺もすいちゃんを見ていると、向こうがこちらに気づいたのか俺の方を見て軽く手を振ってくれた。
(え?
俺?俺だよな?)
俺は辺りを見回すが、他にすいちゃんに気づいているプレイヤーはいない。
(やっぱ俺かぁ)
俺はすいちゃんの方を見て恐る恐る手を振った。
(かなりぎこちない)
それを見てくすくす笑うすいちゃん。
めちゃくちゃ可愛いけど、めちゃくちゃ恥ずかしい。
俺は急いですいちゃんの待つテーブルへ向かった。
「お、おまたせしました」
緊張で声が裏返ってる。
「来てくれてありがとう。
ま、座って」
笑顔のすいちゃんにすすられて席につく。
「いらっしゃいませ」
すぐにウェイトレスが来る。
「ご注文は何にしましょう?」
「すいちゃんはレモンソーダで◯◯◯は?」
「え、俺も同じもので」
「かしこまりました」
ウェイトレスさんがカウンターに戻っていく。
「今日は来てくれてありがとうね」
「い、いえ」
「早速だけど、一応確認だけ。
君は◯◯◯で間違いないよね?」
すいちゃんが真剣な顔で聞いてきた。
「はい、間違いないです」と俺も真剣な顔で答える。
「良かった。
外見はいろいろと変えられるから。
疑ったみたいでごめん」
「いえ、大事な話なら確認するのは当たり前です」
(たぶん俺が返事した事で、すいちゃんに俺の情報がいったのだろう。
俺ときちんと確認しないといけないなんて、かなり重要な案件か?)
「おまたせしましたぁ」
ウェイトレスさんがレモンソーダを2つテーブルに置くと、また違う場所に注文を取りに行っている。
(ちなみに今他の人から俺を見ると1人でテーブルに座ってレモンソーダ2つ頼んで独り言を呟く怪しい人に見えてるんだろうなぁ)
基本的にホロメンはイベントキャラ扱いなので他の人には見えない。
だから、こういう変な場面ができる。
(ま、他の人もそれは分かってるからあえてほっておいてくれるところもあるな)
「それじゃ、今回呼び出した理由について、説明していいかな?」
「はい、お願いします」
(お叱りではありませんように)
そして、すいちゃんはゆっくりと話し始めた。
「この前、すいちゃんが【大召喚】したのは知ってる?」
(あ、知ってる)
「は、はい」
「◯◯◯は参加してないよね?」
「は、はい」
(やば、あの召喚は参加しないといけなかったのか?
で、でも、リアルで用事が。
しかし、推しを一番に考えたら参加するべきだったのか?)
「す、すいません!」
俺は勢いよく頭を下げた。
そして、机に額をぶつける。
「い、いたぁ!」
「な、何やってるの?
大丈夫?」
慌てた顔のすいちゃんが心配そうに聞いてくれた。
「だ、大丈夫です」
額をさすりながら恥ずかしさでいっぱいの俺。
「いや、別に召喚に応じなかったのを責めてないのよ。
用事があればそれを優先してほしい。
ただね、今回その応じなかった時に代わりに現れる星詠みNPCに問題が起きちゃってね」
ふぅとため息をつくすいちゃん。
「星詠みNPCがですか?」
星詠みNPCとは、【大召喚】に参加できないプレイヤーの代わりにそのプレイヤーの現時点のレベルやスキルを参考にして生まれる、いわばプレイヤーの影のようなものだ。
もちろん、スキルや攻撃はするし連携だってする万能NPC。
しかし、感情や喋ったりはしない。
「そう、【大召喚】が終わってみんなが元の場所に戻る時に◯◯◯の影の星詠みNPCだけが消えなかったの」
「へ?」
また、間抜けな声を。
「そんな事あるんですか?」
「すいちゃんも初めての事で、訳が分からなくてミオちゃんに相談したんだけど」
ごくり。
「なんか、影の元になっているプレイヤーが影響しているって占いにはでたらしい」
「俺?」
すいちゃんの言葉に驚く俺。
なんで、俺が影に影響を?
ま、確かに俺の影ではあるかもだけど。
「そう、なので今回、◯◯◯を呼んだんだ」
(俺が原因ってなんなんだ?)
俺は訳が分からずレモンソーダを飲む。
「そ、それでそのNPCの居場所は分かってるんですか?」
「うん、少し前にフブちゃんから連絡があってね。
星詠みNPCは【学園】にいるみたい」
それから俺とすいちゃんは【学園】に向かった。
校門ですいちゃんが何やら黒服の警備員に話をすると、無条件で中に入れてくれた。
「それでどこにいるんですか?
星詠みNPCは」
「なんかさっき警備員に話を聞くと校庭が騒がしいって言ってた」
「校庭?」
俺達は校庭に急いぐ。
確かに校庭には何人かのプレイヤーやNPCが集まっていた。
「何かあったんですか?」
俺はすいちゃんの代わりに集まっている人に声をかける。
「いや、あれを見てくれよ」
指差した先を見ると、屋上に誰かいる。
(あれって)
「星詠みNPC」
すいちゃんが言った。
(確かに【大召喚】された時に装備する鎧装束を着ている)
「あ、何か言うみたいだ」
集まっているだれかがそう言った。
「みんなぁ~
聞いてくれぇ~」
突然大声で叫び始める星詠みNPC。
(まじで喋れてるって言うか、声が俺そっくりじゃんか)
「俺はぁ~
すいちゃんの~
【大召喚】に参加したかったぁ~」
(あ、あの時の気持ち)
「お前、その格好、【大召喚】に参加してたんじゃないのかぁ~」
集まった人からヤジ?がとぶ。
(確かになぁ。
あの装備は参加してないとつけれないし)
「だけど、リアルに用事があって参加できなかったぁ~
悔しい~」
「そうだったんだ」
「え、あ、はい、そうです」
(おい~
止めてくれ~
隣にすいちゃんいますからぁ~)
「俺は最推しのすいちゃんのイベントは全部やりたいし、参加したい~」
(そうですけどぉ~)
「ふぅ~ん」
(止めてぇ~
今まさに横で聞いてるからぁ~)
そして、大きく息を吸う星詠みNPC。
(なんか嫌な予感)
「星街すいせい。
大好きだぁ~~~~!!!!」
『おおおお~!』
沸き上がる校庭。
ばっと俺は隣のすいちゃんを見る。
「ま、ガチ恋は禁止だけど…
ありがとう」
そこにはちょっと照れた顔のすいちゃんが目を合わせないようにしながらボソッと呟くように言った。
「う、わぁ~」
俺は大声をあげながら走る。
目的の場所はもちろん。
「ちょ、ちょっと~」
すいちゃんも後を追ってくる。
(可愛い、可愛すぎるぞ、すいちゃん。
でも、そのセリフはおまえ(影)がいう事じゃないぃ!)
俺はひたすらに走った。
「ふぅ」
汗を拭うように額をふく真似をする星詠みNPC。
「ふぅじゃねぇ!!」
俺の言葉にビクッとする星詠みNPC。
「はぁはぁはぁ」
下から上まで全速力で走ったからしんどい。
「お、おまえは俺の元?」
「元とか言うな!」
俺は普段着を解除して武器防具を装備する。
ちなみにこの【学園】では武器防具の着用はできないが、なぜか今回はできた。
たぶん、すいちゃんがいろいろと根回しをしてくれたのかな。
「【大召喚】は終わったんだ。
さっさと元に帰れ」
「嫌だね、俺はなぜか知らんが自我を得た。
これは神がすいちゃんの側で永遠に守れという天啓だ。
だから、俺は元には帰らない」
「い、いや、守るって正直、すいちゃんの足手まといになるだけだろ」
「それでも、俺はすいちゃんの側にいる!」
「羨ましいけど、ダメだ戻れ」
「嫌だ!」
「あはは…」
俺達のやり取りを屋上入り口で見守るすいちゃんが、何とも言えない笑いをする。
「だぁ、もう、実力行使だ!」
俺は武器を構える。
「お前が俺をやれると思っているのか!」
相手も武器を構える。
(確かに向こうは【大召喚】時の専用装備。
今の武器ではたぶん傷1つ与えられない)
「だけどなぁ!
避けられない戦いってのが、生きてたらあるんだよ!!」
俺を自分に気合いを入れる。
気合いでどうにかなるか分からないけど。
すいちゃんの前で無様な姿は見せられない。
「ふぅ、かっこいいセリフだけど、足震えてるよ」
トンと肩を叩かれる。
「す、すいちゃん?」
いつの間にか側に立つすいちゃん。
「手は貸さない。
かっこいいセリフ言ったし。
だから、少し力は貸してあげる。
今回の件はすいちゃんにも原因はあるから」
そう言って微笑むすいちゃん。
そして、沸き上がる強大な力。
『一時的にスキルと魔法が解放されました。
【星魔法】使用可能
【破壊神】使用可能
【斬星剣】使用可能
【∞の力】使用可能』
機械音声の後、いくつかのスキルと魔法が使えるようになる。
「思い切りやっていいよ。
このエリアははあとちゃんに結界張ってもらってるから」
そうすいちゃんは言って屋上の入り口近くに戻った。
「こ、これがすいちゃんの…力の一部」
たぶんこれでもすいちゃんの力の一部だろう。
プレイヤーが持つには大きすぎる力だけど、すいちゃんには普通にプレイヤーに貸し出してもいい力。
(はは、さすが俺の最推し)
俺はもう一度、自分の分身とも言える星詠みNPCを見た。
「く、すいちゃんの手を借りて」
(なんか悔しそうな声だな。
ま、分からんでもないけど)
「じゃ、いくぞ!」
「こい!」
そして、俺と影の戦いが始まった。
イベント中(影との戦い。強すぎる力に振り回される可能性あり。気をつけて魔法、スキルをお使いください)
「はぁはぁはぁ」
俺の目の前で仰向けに倒れる影。
俺の体から力が抜けていった。
「お疲れ」
すいちゃんが近くに来て労いの声をかけてくれた。
「い、いえ」
(しかし、借りた力殆ど上手く扱えなかった。
特殊で強すぎる。
ま、上手く使えなくても威力はすさまじいけど)
「さ、帰ってこようか」
すいちゃんが俺の影に手を当てる。
すると星詠みNPCの姿が光に包まれた。
そして、光が収まるとそこに星の頭をした小人がいた。
小人はすいちゃんの手をトコトコ上がって行き、肩にちょこんと座る。
(確か【簡易大召喚】の時の姿)
すいちゃんは小人を優しく撫でながらこちらを見る。
「ありがとう、助かったよ」
「いえ、こちらこそ、俺の影がご迷惑かけまして」
お互い微笑む。
「ガチ恋は禁止だけど、あの言葉は大切に受け止めるよ」
「え?」
そう言ってすいちゃんは人差し指を自分の口に持っていく。
「それじゃ、またどこかで」
すいちゃんは少し照れた表情をしながら姿を消した。
(はぁ、良かったぁ~)
今回たくさんのすいちゃんの表情が見れた。
最高だった。
ピコン
誰かからのメール?
俺はメールを確認する。
そこには俺の最推しからのメッセージが。
『本当に助かりました。
ありがとう。
お礼がまだだったね。
これ受け取ってください。
それでは、おつまち!』
アイテム【星詠みのブローチ】を手に入れた。
おまたせしました。
こちらリクエストにあった星街すいせいさんのイベントになります。
ご依頼のイベントとはクエスト名が違うので、もしかしたら違うイベントかもしれませんが、今回探した中で、自我を得た星詠みを調べたところ、これが該当しました。
なので、お話を聞いて更新させていただきます。
さて、星詠みがどうして自我を得たのか?
それは詳しくは分かりませんが、たぶん影の元のプレイヤーさんの参加できなかった強い悔しい気持ちが影に影響したのではないかと思われます。
お礼の【星詠みのブローチ】ですが、効果は不明だそうですが、持っていると何か良い事があると説明文には書かれていたそうです。
それでは、また新しい情報が入りましたら更新します。
お楽しみに