「そろそろ現れるかもしれないでござるな」
私は【3枚の果たし状】をアイテムボックスから取り出して言った。
まつり殿が言ったオリジナル世代組。
後、3人の中に必ず1人いる。
そら殿やすいせい殿ではないと言っていたが、残りの3人も他のホロメンとは違う強さを持っている。
私は意を決してアイテムを使用する。
『これからイベント【ホロ剣客十番勝負】が開始されます。
このイベントは1プレイヤー1度きりのイベントになりますが挑戦しますか?』
「もちろんでござる」
いつもの言葉に私はいつもの返事をする。
そして、景色は変わり始めた。
そこは並木道だった。
両脇にはどこまでも桜が続く。
風に流され桜の花びらが舞うように降ってくる。
「オリジナル世代組はあなたでござるか」
風丸の前に桜を見上げる1人の巫女服の女性。
「久しぶりだにぇ、風丸」
そう言ってさくらみこは最大級の笑顔を風丸に向けた。
さくらみこ
桜大神社にいる数十人いる巫女達を束ねる巫女長であり、この【ホロライブワールド】を大桜にて調律を行う世界の要でもある人物。
みこが定期的な調律を行わなかった場合、この【ホロライブワールド】の均衡は徐々に崩れバグが大量に発生してしまい。
最後には世界が崩壊してしまう。
それほど、重要な役割を持った人物だった。
「世界の要であるみこ殿がこんなところにいても大丈夫でござるか?」
風丸は天叢雲剣の柄に手を当てる。
「ま、調律は1日2回だし、桜大神社の事は巫女達に任せてるにぇ。
それに、ここにそんな長く縛られているつもりもないにぇ」
みこは意地悪な笑顔を浮かべ、鉾鈴を手に持った。
(余裕って事ですかね)
風丸もみこ見て微笑む。
風丸にとってみこの戦闘力は未知数だった。
(前回の戦いも共に戦ってはいないでござるからな)
世界の要と呼ばれ、ホロメンの中でも最強クラスのオリジナル世代。
(どこまで私の剣が通じるか)
シャン、シャン
静かにしかし、確実に聞こえる鈴の音。
はっとする風丸。
目の前のみこが鉾鈴を鳴らしている。
(しまった!)
そう風丸が思った時には遅かった。
「アナウンスが流れてから始まりではないにぇ。
【桃幻鏡】さぁ、本物どぉ~れだ」
『世界の要 さくらみこ
疾風の女侍 風丸
いざ尋常に勝負!』
みことアナウンスの声が重なる。
風丸は一瞬にしてみことの間合いを詰める。
そして、一閃。
だか、そこにはもうみこはいない。
「だってぼくは星だから~」
背後で歌が聞こえる。
(まずい、オリジナル世代は)
振り向くとそこにみこの姿が。
すぐに風丸は動く。
「【古参の騎士】」
姿が青と白の侍装束に変わる。
そして、そのまま間合いを詰めて一閃。
今度は確実にみこを捕らえ吹き飛ばす。
だが。
「く、あれはみこ殿じゃない。
でぶち殿」
吹き飛んだみこ?がゆっくりと起き上がる。
確かにいつもよりとてもふくよかだ。
【桃幻鏡】はみこの使う専用技の1つ。
様々なみこを分身体として具現化する。
でぶちもその1人だ。
(歌が止まない)
「Stellar Stellar~」
そして、空から星が降ってきた。
「な、これはすいせい殿の」
星と言う程大きくはなく、拳大の岩が降ってきているが当たればもちろん致命傷だ。
「く」
風丸は落ちてくる岩を時には避け、時には切り払っていく。
もちろんそのままの刀身ではなく水を纏わしていた。
「やるにぇ~」
その声を同時に近くの桜の木の影からみこがぴょこっと顔を出す。
しかし、すぐにまた隠れてしまった。
「すいちゃんの魔法を退けるとはすごいにぇ」
はっと風丸は後ろを振り返る。
そこにはまた木の影から顔を出すみこ。
「こっち」
また、違う桜の木?
「違うよ、こっち」「いやいや、こっち」「こっちにぇ」
両脇の桜の木の影から次々と顔を出し、そして隠れるみこ。
(全てがみこ殿ではないと思うでござるが。
このまま、いろんな場所から攻撃されたら危ないでござるな。
では)
風丸は天叢雲剣を鞘に戻す。
そして、居合の構えをとった。
『何するの~?』
いたるところから聞こえるみこの声が響く。
「【円卓の騎士 ver.侍 絶技 円陣】」
キン!と高い音共に風丸は剣を抜き一閃。
そのまま横に回るように1回転した後、剣を鞘に納めた。
鍔鳴りがする。
そのとたん、斬られた事を認識するかのように風丸が一閃した全てのものが斬られ光に還った。
どこまでも続く桜並木も全て斬られ、もちろんその後ろに隠れていたみこ達も皆驚いたような顔をして光になった。
バシュっと音が鳴って、風丸の青と白の侍装束が消え、元の姿に戻る。
「やるにぇ」
「やはり、本体のみこ殿は斬られてはいなかったでござるか」
風丸は少し上を見る。
そこには舞い散る桜の1枚の花びらに器用に立つみこがいた。
「よっと」
飛び降り地面に立つみこ。
「まさか【桃幻鏡】のみこ達が全てやられるとは思わなかったにぇ」
そう言ってみこがパンと手を叩く。
すると斬られて消えた桜並木が一瞬で元に戻った。
(な!元に戻った?)
風丸は内心驚きながらもそれを表情に出さずにみこを見る。
「私としてはあれで終わらせたかったでござる」
ふぅと息を吐く風丸。
手はまだ天叢雲剣の柄を握っている。
「確かにみこも地面にいたらさすがにやられてたかもね。
まさか、そらちゃんの【円卓の騎士】の力を使うなんて」
「あの技は【古参の騎士】の力を全て使い放つ技。
あれを使うとしばらく【古参の騎士】は使えないでござるからなぁ」
「そんな状態でみこに勝てるの?」
鉾鈴を風丸に向けみこが言った。
「さて、どうでござろう?」
風丸はアイテムボックスから白狐の宝刀を取り出した。
「フブちゃんの力?」
宝刀を見てみこは面白そうに言った。
「そうでござる」
「なるほどぉ、その宝刀の力を使うんだ」
「この宝刀の力を知っているのでござるか?」
「もちろん、みこぐらいになれば見るだけで分かっちゃうにぇ」
「そうでござるか。
しかし、この力は今は使う気はないでござるよ」
天叢雲剣を抜き、二刀流で構える風丸。
「へぇ、余裕あるんだ」
ニヤリと笑うみこ。
風丸はみこと対峙してずっと違和感に思っていた事があった。
「では、まいる!」
ダンと地面を蹴り、間合いを詰める風丸。
そして、打ち込む。
みこはそれを鉾鈴で意とも容易く受け止めた。
すかさず2撃目。
ガ!
2撃目はみこに当たることなく桜の花びらのような形の浮遊する半透明の盾に阻まれる。
「く!」
その後も、風丸は連続でみこに攻撃するものの全て鉾鈴と花びらの盾に防がれている。
(やはり、受けるのみ)
風丸はニコニコしながら防御に徹するみこを見て思った。
風丸は攻撃を止めて大きく飛び退き間合いをとる。
「なぜ、本気を出さないでござるか?」
そして、みこに聞いた。
「別に手加減している訳じゃないんだけどね。
本気を出してもいないけど。
ただ、今はこれが精一杯かな」
みこは困ったように答えた。
(本気を出していないのだから、まだ力は出せる。
そのはずなのになぜ精一杯?
まるで私に合わせているような…
合わせている?)
風丸は周囲の桜を見る。
(おかしい。
そうか、違和感はそういう事でござるか)
風丸は何かを感じとり、白狐の宝刀をアイテムボックスに入れる。
みこはじっと何かを待つように風丸を見ていた。
「天叢雲剣よ、その力を解放せよ」
風丸の言葉に天叢雲剣全体が水で覆われた。
そして、現れたのは両手で持つ程に大きくなった天叢雲剣。
風丸はその剣を両手で持ち、腰を落として構える。
「【解放】【覚醒】」
風丸はスキルを発動する。
全てのステータスが上限を突破する。
風丸はそのままみこへ突進。
全ての力を剣に込め、風丸は天叢雲剣をみこの胸に突き出す。
そして、世界は砕け散った。
砕け散る世界の破片のその先にあるのは、まさしく桜大神社の大桜。
風丸が立っているのは、その大桜の前の広場だった。
風丸は元の大きさに戻った天叢雲剣を鞘に戻す。
目の前の大桜の前に、微笑みを浮かべて腕組みをして立つみこがいた。
「まさか破ってくるとは、さすが風丸」
「初めから私は捕らえられていたのでござるな」
風丸の言葉にみこは微笑んだままだった。
【桃幻鏡】
みこの別の姿を実体化させる技であり、もう1つの効果は相手を桃幻鏡に捕らえる事。
みこは風丸がアイテムを使いこの場所に来る前から【桃幻鏡】を使い、風丸が入ったと同時に捕らえたのだった。
「どうして分かったにぇ?」
「初めから違和感があったでござるよ。
ただ、それが何かが掴めなかった。
しかし、自分と同じ強さのみこ殿。
そしてみこ殿の言葉の後に無限に続く桜並木を見て気付けたでござる」
そう、風丸が見た桜は左右は違う形の桜だったが、その奥の桜は形が全く一緒だった。
無限に続く桜並木。
それはまさしく合せ鏡に映る無限回廊のようだった。
風丸が先に放った【円陣】がなぜあの世界を砕けなかったのか、それは風丸が世界が偽りだと認識できていなかったからだ。
偽りだと認識できればある程度の大きな力をぶつければ砕ける事ができる。
風丸はそうしてあの鏡の世界から脱出した。
「なるほどにぇ」
「どうするでござる?
ここからが本番でござるか?」
柄に手を当て戦闘態勢に入る風丸。
しかし、みこは首を横に振った。
「みこが見たかったものはもう見れたにぇ。
その天叢雲剣を風丸に預けて良かった。
きちんと使いこなしてくれてるみたいで嬉しい」
そう言ってみこは嬉しそうに笑った。
「この剣には本当に世話になってるでござる」
風丸も天叢雲剣を優しい瞳で見つめた。
「みこの試練はこれで終わりにぇ」
『勝負あり!
勝者 疾風の女侍 風丸』
みこの言葉の後に流れる機械音声。
風丸はゆっくりとみこに頭を下げた。
「でも、気を付けるといいよ。
この後に待っている相手はみこのように甘くない。
本当に死ぬ気でかかった方がいいにぇ」
そう最後にはみこは真剣な顔で風丸に伝える。
「分かったでござる。
忠告確かに受けとりました」
ゆっくりと目の前に降りてくる【2つの果たし状】
風丸はそれを手に取り、次の戦いへと気持ちを新たにした。
おまたせしました。
風丸が挑戦中の【ホロ剣客十番勝負】の最新情報です。
今回の相手はオリジナル世代組のさくらみこちゃん。
今回は結局その力を全て見せずに戦いは終わってしまいました。
ただ、終始風丸との力の差を見せたまま終わる形となり、最強であるオリジナル世代の力は示したと思います。
次回の相手はその最強のみこちゃんが、危険と注意する最恐の相手。
はてさてどなたが現れるのか?
次回また情報が入りましたら更新します。