単独で【樹海】に進入する時に稀に声をかけられる。
俺は今、自分のスキルアップとレアアイテムを求めてこの【樹海】の入り口に来ている。
現在カンストを4回終え、すべて基本ステータスアップに振り基本的には他のプレイヤーより一歩先にいっている自覚はあるが、自分自身の動きや状況判断がまだまだである事は自覚できている。
なので、この【樹海】でそれを鍛練しようと来ているのだ。
(それに俺はまだまだあの人の期待に答えられない)
俺はぎゅっと拳を握る。
最近は高レベルのプレイヤーも増えてきて、【樹海】への入り口も順番待ちが出来る時もある。
(さぁ、次は俺の番だ)
「あれ?◯◯◯じゃない?」
俺が門に入ろうとした時、突然声をかけられた。
「え?」
見るとそこには、はあちゃま?
「おい、入らないのか?」
順番待ちをしているプレイヤーに言われる。
「あ、すまん、ちょっと用事ができて先に行ってくれ」
俺は列を抜けてはあちゃまのところに行った。
「な、なんでこんなところにいるんすか?」
「え?
新たな食材を求めて【樹海】に入ろうと思って」
はあちゃまがにこっと笑って答える。
「新たな食材?」
「そう、◯◯◯は今から【樹海】に入るのよ?」
「はい、ちょっと修行に」
「ふぅ~ん」
はあちゃまが俺の顔を見て何かを考えているみたいだ。
「じゃ、一緒に行こうよ」
「はい?」
「ん?
この前も付き合ってもらったし、今回も付き合ってよ」
「え、えっと…」
(この前って言うと素材調達編の事かな?)
「で、どうなの?」
ぐいっと顔を近づけてくるはあちゃま。
「あ、わ、分かりました」
「やったぁ~
じゃ、行こう」
ちょうど順番待ちがなくなった【樹海】への門に俺ははあちゃまに手を引かれて突入するのであった。
「で、どうするんですか?」
【樹海】に入ったので、レベルは1、持ち物やスキルも初期状態だ。
「え?
もちろん、素材集めするわよ?」
「ちなみに今回は何を?」
恐々聞いてみる。
「えっとねぇ」
はあちゃまは胸元から紙を取り出す。
(そんなところから)
思わずガン見してしまった。
はあちゃまはそんなことは気にしないように紙を見ている。
「まずは採取できる物からね。
虹色キノコ。
傘振る菌糸。
ドロドロキーコ。
星振りパセリ。
かな。
次にモンスター
オニオンキリング。
ペッパーカウ。
レッドワイカン。
岩石ゴーレム。
オリーブー
そして、キルティラノかな」
「え!キルティラノですか!」
「え、うん」
驚いた俺の声に少し驚いてはあちゃまが答える。
キルティラノと言えば【樹海】でも奥の方にいる凶悪な恐竜型モンスターだ。
姿はティラノサウルスに似ていて、すごい速さで動く。
気を抜けば一瞬で補食されてしまう。
「えっと、きちんとレベル上げてから行くんですよね?」
恐る恐る聞く俺に。
「え?
そんなに時間かけないよ。
どんどん行くわよ!」
と笑顔で答えるはあちゃま。
で、もう早速森に入っていくはあちゃま。
「ちょ、ちょっと」
俺はそんなはあちゃまを追って森に入った。
イベント中(採取できる物を探して森をさ迷いながら4種類のアイテムをゲット)
「じゃ、次はモンスター行こっか」
(まだレベル5ぐらいなんですけど?)
まずはオニオンキリングか。
玉ねぎ型のモンスターで手に包丁を持って襲ってくる。
ま、初期装備で銃をもらってるから遠距離攻撃すれば行けるはず。
「あ、いたぁ!」
はあちゃまがオニオンキリングを見つける。
(3匹、なんとかいけるか?)
俺は銃を構える。
「はあとちゃん、下がって銃で仕留めますって、はあちゃま?」
俺が銃を構えた時にはもうはあちゃまは、モンスターに向かって突撃していた。
「ああ、もう」
俺は急いで銃を撃つ。
はあちゃまに気づいて襲おうとしたオニオンキリングの注意が一瞬で俺に向いた。
その瞬間、はあちゃまの包丁がオニオンキリングを切り裂いた。
俺も負けずに撃ち続けた。
「はぁ、なんとかなりました」
倒したオニオンキリングが戦利品を落とす。
「おっしおっし」
にこにこ顔で戦利品を袋に積めるはあちゃま。
「おっし次行くよ~」
「は、はい」
俺ははあちゃまに連れられて次のモンスターへと向かった。
ペッパーカウ。
これは比較的倒しやすいモンスターだ。
またも突撃するはあちゃまを援護するように銃を撃つ。
レッドワイカン。
【樹海】にある酒の山と呼ばれる場所にいるペリカンのような鳥。
倒すと赤ワインをドロップするモンスター
さすがに飛んでいる為、はあちゃまは攻撃できないと思い銃を構えたが、持ってる包丁を投げてあっさりと倒してしまった。
(えっと、同じようにホロメンもレベルリセットされるんだよなぁ?)
そんな疑問が不意に浮かぶ。
次は岩石ゴーレム。
これは両肩を破壊するだけでいいとの事なので、俺が銃を撃って破壊した。
後はオリーブー
緑色の長丸の豚。
はあちゃまは見つけた瞬間、オリーブーの頭を叩いて鼻から出た透明で少し緑かかった液体を瓶に採取していた。
(鼻水?)
そして、とうとうキルティラノ。
(まだ、レベル10なんだけど)
しかし、はあちゃまについていくといつの間にやら【樹海】の奥まで来ていた。
ここまで敵に出会ってないのが不思議だ。
「いたよ」
背の高い草に隠れていた俺達は目標のモンスターを見つけた。
「うわ、凶悪そうな顔してやがる」
大きい口からはよだれが垂れ落ち、ナイフのような牙が並んでいる。
「はあとちゃん、どうします?」
俺達はたぶんレベル10。
目標の相手は討伐レベル80推奨。
何か作戦でもない限り倒せない。
「ん?
いるのはしっぽだけだから」
そう言って飛び出すはあちゃま。
「ええ!」
はあちゃまは一瞬でキルティラノのしっぽの近くに移動すると、持ってる包丁を振り下ろした。
ギャォォ~
叫ぶキルティラノ。
はあちゃまは切ったしっぽを袋に入れるとダッシュで戻ってくる。
そして「逃げろ~」と叫びながら走った。
「えええ!」
俺はそう叫びながらはあちゃまの後を追う。
その後ろにはキルティラノが…
俺はもう無我夢中で走りました。
「はぁはぁ」
「なんとかなった」
入り口付近まで全力疾走して息の荒い俺の横でけろっとしているはあちゃま。
「レベル同じですよね?」
俺は疑問に思っていた事を、水を飲みながら聞いた。
「もちろん、レベル10」
「なんで、あんな動きが」
「ん~
体の動かし方かな」
「動かし方?」
「そうだよ、今ある力をどうやって使うか。
それを考えて動けばどうにかなるものよ」
はあちゃまは袋からフライパンを取り出し、即席で作った竈に置く。
「さて、お待ちかね。
はあちゃまクッキングの時間だよ」
そして、俺はなぜか即席で作られた机についていた。
「まずは、キノコ類を適当な大きさに切ります」
宙に投げられた3種のキノコははあちゃまの包丁により適当に切り刻まれた。
「次にオニオンキリングから取れた玉ねぎとニンニクを刻みます」
オニオンキリングは見た目玉ねぎだがどうしてかニンニクもドロップする。
「フライパンにペッパーカウのから取れたバターとオリーブーから取れたオリーブオイルを入れます」
(あ、あれってオリーブオイルだったのか)
「バターが溶けたらキノコを炒め、ある程度焦げ目が付いたら、玉ねぎとニンニク、あと少量バターを入れて炒めます」
(お、なんか手際良い)
「これで付け合わせの完成。
次は肉ね。
キルティラノのしっぽを輪切りにして」
袋から出したしっぽをテンポ良く切るはあちゃま。
「岩石ゴーレムから取れた岩塩を両面にまぶします。
新しいフライパンにバターを入れて溶かします」
さっきより大きなフライパンが袋から取り出されて竈に置かれる。
溶けてきたバター
「バターが溶けたら肉を投入。
初めは短く。
徐々に両面を交互に一定の時間で焼きます」
ジュージューと美味しそうな音がする。
「ん、このくらいかな」
はあちゃまは隣に置いてある網の上に肉を乗せる。
肉を休ませているそうだ。
「その間にソースを作ります。
フライパンにレッドワイカンから取れた赤ワインを入れ軽く煮立たせアルコールを飛ばし、ここで登場はあちゃま印の焼き肉ソースとペッパーカウの胡椒を入れます」
(うわぁ、かつてないほどのいい匂い)
「さて、付け合わせのキノコをお皿に載せて、その上に切った肉、上から特製ソースと星振りパセリの刻んだのをかけたら完成!」
ドンと机に置かれた極上ステーキ。
「キルティラノのしっぽステーキ。
どうぞ召し上がれ」
そして、はあちゃまはにこっと笑った。
俺は用意されたナイフとフォークを持つ。
見た目は完璧だ。
上手そうにしか見えない。
しかし、あのはあちゃまが作った物だぞ…
俺がこの【樹海】で修行するもう一つの目的は、最推しであるはあちゃまの料理を平気で食べれる胃袋を作る為。
ここで様々な物を食べて鍛えようとしていたのに。
まさか、こんなに早く食べる時がくるとは。
俺はフォークを肉にさす。
すっと抵抗なく突き刺せる。
そして、ゆっくりと口に運んだ。
「ん!」
口の中に広がるバターと少しピリッとくる胡椒。
しかし、それよりもこの肉の旨味が口の中全体に広がる。
そして、その2つの味を邪魔せず、補助するようなこのソース。
これはまさに「至福の時!」
俺は気づいたらそう叫んでいた。
「美味しい?」
「上手い、上手いっす」
はあちゃまにそう答えながらステーキをばくばく食べる。
(いや、本当に上手い)
「それは良かった」
「まさかはあちゃまの料理が普通に食べられるなんて」
一気になくなるステーキ。
かなりの大きさだけどまだ食べたい。
「おかわり欲しそうだね」
「は、はい」
「でも、残念。
もう材料なくて」
「ええ!
そんな」
はあちゃまの言葉に落胆する俺。
「それにしてもなんで、こんなに欲しくなるんだ。
かなり食べたはずだけど」
俺は空になった皿を見ながら呟く。
「それははあちゃまの特製ソースに入れてる隠し味かな」
はあちゃまはそう言って笑った。
【ホロライブワールド】のどこかに【はまりダケ】と呼ばれる食材があります。
少量食べるには特に影響はありませんが、大量に摂取するのはお止めください。
大量に摂取した場合、中毒性がございますので…
次にご紹介するのは、前回のはあちゃまクッキングの続きになるイベントです。
はあちゃまと一緒に食材探しからの手料理を食べられる素敵なイベントとなっております。
食べたら病み付きになって、また食べたくなるそんな一品。
皆様もどうかイベントに参加して味わってみてください。
あ、1つだけ注意点が。
受ける前に必ず解毒薬をご持参ください。
そうしないと抜けれなくなるそうなので…