天気が濃霧の時に【廃墟】に行くと稀に出現する【壊れたビル】に入る。
それは不思議な世界だった。
いつも行く【廃墟】とは別の場所だと、鈍感な俺でも気付いた。
霧でよく確認出来ないが、まっすぐな道路の両端に壊れたビルが立ち並ぶ。
普段ならそんな壊れた高いビルはないし、両端に立ち並ぶような【廃墟】はない。
そして、その道路の先にひときわ大きいビルがある。
まるで天を貫くように立つビル。
そのビルへの道を作るように不自然にそこだけ霧が晴れていた。
「行くしかないか」
後ろを見ても濃い霧があって帰りの道も分からない。
なら、先に行くしかない。
俺はその巨大なビルに向かうことにした。
(中に入れそうだな)
入り口の自動ドアのガラスは粉々に割れており、簡単に中に入れそうだった。
ガチャガチャ
散乱するガラスを踏みながら俺はビルに入る。
外から見た通り、中もいたるところ崩れたり壊れたりしている。
アイテムボックスからピストルを取り出した。
最近、クジで当てた武器だ。
(何が出るか分からないからな)
障害物の多い【廃墟】では、武器を振り回すよりこっちの方が役に立つ。
俺は警戒しながら奥へと進んだ。
ポン
不意に機械音が鳴る。
「!!」
驚いたが声は出さなかった。
(なんだ?
何かあるのか?)
音の鳴った方に向かう。
(この廊下の先?)
俺は壁の影から音が鳴った方の様子を伺った。
(エレベーターか)
入り口が岩で塞がれているが、扉が見える。
その上に数字が並んでいるからエレベーターで間違いないだろう。
(しかし、50階もあるのかよ)
エレベーターの最後の数字は50。
(このビルはかなり高いいんだな。
ま、せっかくだしエレベーターが使えそうなところまで行って一気に上がってみるか)
俺はそう考えて探索を開始した。
その時、俺は気付いていなかった。
エレベーターの音がなぜ鳴ったのか?
誰もいないはずの壊れたビルのエレベーターが勝手に動いて降りてくるはずがない。
そう、あのエレベーターには何かが乗っていたのだ。
2階に来た。
上がり階段はすぐに見つかった。
2階は少し大きめの部屋で区切られていた。
(オフィススペースなのかな?)
中を確認すると机や椅子が散乱している。
しかし、誰もいない。
ポン
また、あの音だ。
(エレベーターか)
俺は一応確認しに行く。
乗れるなら乗った方が早い。
しかし、またエレベーターの前には大きな岩が塞いでいる。
「ここもかよ」
俺はエレベーターを諦めて次の階層へと向かう。
しかし、また、俺は見落としていた。
エレベーターの前にあった岩の事だ。
暗くてよく見えてないのもあった。
しかし、その岩は周りの建物と明らかに色が違う。
まるで何者かが意図的にエレベーターの前に置いたような。
そう、何かがエレベーターから降りられないようにするように。
次の階、その次の階へと進んでいく。
3階から6階までは2階と同じような作りだった。
何かレアアイテムがあるかと探したが特に見つからず、エレベーターも同じように岩が邪魔で乗れなかった。
そして、7階。
そこから、階層の雰囲気が変わる。
ビジネスホテルのように小さな部屋がたくさん並んでいた。
ところどころドアが壊れていて中を覗けたが、中はいたるところ壊れていたが、ベッドがあったりしたので、ホテルエリアなのは間違いないだろう。
この階のエレベーターも調べてみる。
やはり前には岩が置いてあるが、何か上の方が崩れてそこに破片が落ちていた。
しかし、エレベーターにはまだ乗れない。
(次行くか)
俺はエレベーターに背を向けて次の階への階段を探す。
ガリ…
気持ちを切り替えていた為、俺はその小さな音に気づかなかった。
何かがエレベーターの方からその岩を引っ掻いていたのを。
8階、9階、10階とホテルエリアが続く。
エレベーターもまだ使えない。
気のせいかエレベーターの前の岩が少しずつ小さくなっているようた。
だが、また中には入れない。
次の階への階段を探す。
エレベーターの岩の影からゆっくりと長い爪が見えたが、あの時の俺はそんな事知るよしもなかった。
11階。
(ここもホテルエリアか)
一応、散策をしてみる。
するとこのビルに入って初めてアイテムがあった。
(誰かのバックか?)
それは1つのリュックサック。
中身を確認するとライフルと弾薬が入っていた。
「おお、当たりじゃないか」
俺は早速アイテムを回収する。
そして、部屋を出ようとした時に、机の上に紙が置いてあるのに気づいた。
俺はその紙を手に取る。
(何か書いてある)
真っ赤なところどころ黒く変色している字を読む。
『エレベーターには近づくな』
「エレベーターに近づくな?」
(どういう事だ?
近づくなって言ったって岩が前を塞いでいるが?)
俺は訳が分からなかったが、近づくなと書かれているのでエレベーターには近づかないようにした。
それから、俺はゆっくりとではあるが、最上階を目指して上へ上へと上がっていった。
ポン
ポン
ポン
ポン
ポン
ポン
ポン
ポン
ポン
上がる度に聞こえるエレベーターの音。
まるで俺を追ってきてるような感じがする。
気味が悪い。
ポン
しかし、俺はエレベーターには近づかなかった。
ポン
あの紙にそう書かれていた。
ポン
そう、あの紙は見間違いじゃない。
ポン
あれは血で書かれていた。
ポン
そして、俺は何故かエレベーターの前に立っていた。
ゆっくりと下から上がってくるエレベーター
もう入り口に岩はない。
どうして、俺はここに立っているんだ?
どうして、近づかないようにしていたのに。
ポン
そして、エレベーターが着く。
ゆっくりと目の前でエレベーターの扉が開いていく。
そして、俺の目の前で…
「何してるの!やられるよ」
「え?」
俺は誰かに後ろから引っ張られて、壁の影へと引っ張られていた。
「アキちゃん?」
「アローナ」
アキちゃんは微笑む。
「それより、何?
自殺志願者?」
「へ?」
少し怒ったような顔のアキちゃんに俺は呆けた顔をしている。
「い、いや、自殺なんて」
「じゃ、何で【誘う者】の前に行ってるのよ」
「【誘う者】?」
「ん?
知らない?」
「は、はい」
「そっか、なら、ここには迷いこんだ感じなんだ」
アキちゃんは仕方ないなぁという顔をしている。
「立てる?」
「あ、はい」
俺はその場に立つ。
「それじゃ、これから屋上に行くんだけど、ついてこれる?」
「も、もちろんです」
こうして、俺はホロメンとの突然の出会いをして、アキ・ローゼンタールちゃんと屋上に向かう事になった。
道中、アキちゃんがこのエリアについて話をしてくれた。
ここは隠しエリアの1つ。
【廃墟の摩天楼】
普通は【廃墟】のある場所に条件付きで開く門を使ってくるらしい。
そして、この【廃墟の摩天楼】にはエリアボス【誘う者】と呼ばれるエネミーがおり、それを倒せばかなりの報酬が手に入る。
ただ、1人で倒すのは無謀であり大人数でも場所の関係上難しいので、なかなか攻略はされていないと言うことだった。
「それで、アキちゃんはどうしてここに?」
俺はそんな危険な場所にアキちゃんがどうしているのか気になり聞いてみた。
「今、旅している最中でね。
ここの近くに来たからついでに屋上に行こうと思って」
「屋上に何かあるんですか?」
「それは行ってからのお楽しみ」
それから、俺達はエレベーターには近づかず、屋上に来た。
「す、すげぇ~!」
俺は屋上からの景色を見る。
眼下は廃墟が並んでいた。
崩れた建物に植物が巻き付いている。
まるで森の中にビルが立っているみたいだ。
「すごい景色でしょ」
「はい」
アキちゃんの言葉に俺は素直に答えた。
「さてと」
アキちゃんが荷物を下ろす。
「何を?」
「ここでダンスするのが好きなんだ。
せっかく出会ったし見ていって」
微笑むアキちゃんに俺は頷き、屋上の端にあった瓦礫に座る。
アキちゃんがゆっくりとお辞儀をした。
そして、どこからか音楽が聞こえてきた。
アキちゃんはその音楽に合わせて踊り出す。
そこは廃墟の屋上。
ただ、今は1人のダンサーの最高のステージとなっていた。
お待たせしました。
アキちゃんのイベントとなります。
前回と同様、正規ルート以外で隠しエリアに行くと起こるイベントのようです。
この他にもアキちゃんのイベントは隠しエリアで起きる事が多いようなので、探してみてくたさい。
あと、告知として運営より大型アップデートの情報が入ってきております。
詳細は活動報告の方で近々させていただきますのでお楽しみに。
それでは、また新しい情報が入りましたら更新します。