1話 出会い
何故だろう、家の扉の前に全身布で身を隠してる子供が蹲るまっている。無視できない状況だし俺は声を掛ける。
「おい、起きろ。一旦中に入れるからこっちに来い。店の邪魔だ」
肩を揺さぶり子供を起こすと不安で一杯な目で俺を見てくる。中に入れてお茶を出して事情を聞くと親はおらず自分の名前すら無いと言ってきた。行く所も無いので俺の店の前で座っていたらしい。
「お前、…1人か?」
「うん」
「俺の知り合いに孤児院があるが入るように手配しておいてやる。最低限の服は持っているか?」
「私その孤児院から抜け出したの」
「あ?どう言う事だ?」
「貴方には言えない。まだ自分の命惜しいでしょ?私はそろそろ行かないと連れて行かれる。またね」
そいつは何の事情も明かさずに店を出た後それきりだった。
「おい、まだ話は終わって………行っちまいやがった」
にしても命が惜しいとか連れてかれるとか何なんだアイツ。俺のそんな疑問は知らず知らずのうちにこのインフォースだけではない真っ暗な陰謀が渦巻いている事を意味しているとは全く思ってもいなかった。
数日が経ちとあるニュースがギルドの掲示板に貼られていた。
なんだこれ?魔導王国からの使者である悪魔がこの街付近で隠れているって書かれてる。似顔絵は幼い顔に頭に左右小さいツノが生えているとの事だった。
(これってこの前俺の店で丸くなっていやがったガキじゃねえか。こんな所まで話題が出るとはな、ちょっと情報を探っておくか。)
近所に営む果物屋や屋台では盗みを働いているらしく街の店の連中もギルドに突き出そうと躍起になっている様子だった。このままだと本当にただじゃ済まなくなるぞ、大丈夫かアイツ。
それから数日が経ちついに捕縛成功とのニュースが出された。なんでもギルドでクエストを発動させてあのガキを捕まえるように教会が指示したらしい。にしても教会がギルドに指示なんて珍しい。
確かに魔導王国からの使者と聞いたら聖職者達は毛嫌いしそうだし硬く軟禁されてそうに思えるがまだあの幼い姿からは見れない悲しげな目で俺を気遣うアイツには少し違和感を覚えた。
まるで助けを求めているのに助けて欲しく無いように、矛盾している事は分かっているがアイツも事情があるのだろう。
少し危ないがあんな子供が追われる理由はただ事じゃ無い。
きっと何か理由があるんだろうが今の俺には何も出来ないのも確かだ。
ここはアイツ等の力を借りるか……
俺はギルドから出て裏道にあるマンホールへと続くルートへ降りていく。この街には表では頼めない仕事を受理して金を稼ぐ闇ギルドや闇商人達がうやうやいる。
まあ、俺はどっちでも無いんだが実は秘密裏に国から任務でこの場所を待ち合わせに受けた事があってこの場所を知る事があった。
そこで俺は馴染みの情報屋へ足を運んだ。
「よう、ラース。久しぶりだな。元気してたか?」
「おいおい、トゥルー。こんな真っ昼間からこんな薄暗い所にいて大丈夫なのかよ。またどっかのお偉いさんから仕事を請け負ったのか?」
俺が訪れたのは昔馴染みでよく話していたラースだ。ラースは普段ギルドメンバーの1人でソロ活動と一緒に図書館で働いているが偶にこうやって裏の仕事も受けている情報屋でもある。
「違えよ。最近よく上がっている悪魔の使者ってニュース無かったか?妙に顔が幼くて頭にツノが生えていた似顔絵の奴なんだが」
「ちょっ!?コンコンコン、コンコンコンコン」
(その話はここではあんまり声を出して言わない方が良い)
ラースは驚いた表情を見せて机に指で鳴らして秘密裏に情報を伝える時の方法で俺にそう訴えてきた。
「コンコンコン、コンコン、コンコンコン」
(おい、一体どうしたんだ。なんか訳ありか?)
「コンコンコンコンコンコンコン、コンコン」
(馬鹿野郎、教会が前から騒ぎ立ててる重要案件だよ。何もないならトゥルー、この件には関わるな)
「コンコンコンコン、コンコンコンコンコンコン」
(心配してくれるのは有難いが今回ちょっと気になった事があってな。師匠の事に何か繋がるかもしれないんだ。知ってる事があったら教えてくれ)
「コンコンコンコン、コンコンコンコンコンコン、コンコン」
(分かったよ。だが今回は特別に手に入れた情報だ。表立って出せる内容では無い。ちょっとこっちに来い)
ラースから裏の地下街から出て俺の店に移動した。
俺は店の鍵を閉めて椅子に座り再びラースに問いかける。
「例の件の事だが、率直に聞くが誰が裏で糸を引いている。ただ教会が毛嫌いしてる割にはギルドも動かすなんてただ事じゃ無いだろ」
「ここだけの話だが例のガキは存在自体が秘匿情報の塊のようなもんだ。まずギルドの掲示板に貼ってある情報は全部嘘だと思っておけ。何故だか知らないがそこまで教会は今回の事を前から準備に入れていたらしくて突然失踪したって事だったから焦っているらしい。なんでも何かの実験隊とか聞いたがトゥルー、お前には心当たりはあるか?」
「実験体?なあ、普通悪魔って俺達のような言葉は知らないよな?」
「普通の下級悪魔はそうだな。だが高級悪魔は別種だ。ただ暴れているだけじゃなくアイツ等は俺達と同じ考える頭を持って動いている。もし今回の秘匿情報の塊であるこのガキがその高級悪魔だとしたら筋は通るしギルドにも通達が入る程だとは理解できるが」
「問題はどうやってこの国にそのガキが入ってきたかが問題だよな?なあ、ラース。まだ隠してる事あるだろ?確か教会側は前から準備していたって言っていたな。突然脱走したって事は元々こっちに連れてくる予定だったって事か?」
「一気に質問をしてくんじゃねえよ。まあ、お前の予想通り今回捕まえたその悪魔はわざわざ遠路遥々船に乗って来たらしいぜ。聞いた限り七不思議と言われる何処にあるか誰も見た事がない教会本部からこっちに連れてこられたとか。おい、まさかお前そいつを教会から脱獄させようと思っているならやめとけよ。姿を見られただけでもお尋ね者として賞金がかかるしもし隠れたとしてもお前にこの悪魔に肩入れする理由はねえだろうが」
「嗚呼、言いたい事は分かってる。俺もわざわざ自分の命を粗末に使わねえよ。ただ気になるんだ、あのガキの秘密には師匠が関わっているんじゃねえかって、そう思うと居ても立っても居られない居られねえじゃねえか!それに、元々俺は教会の事をそこまで信仰してねえし前から胡散臭いとは思ってたんだ。今回多少無理してでもこのガキは連れて行く必要があると俺は思っている」
俺にはやっぱり師匠があの時処刑された理由が"あんな事"がきっかけで動いたなんて思えねえ。今回の事で何かしら教会の隠したがっている情報があのガキに眠っている事は確定だろう。
「後は俺だけで動くから問題ねえよ。ラースこそ地下街にそろそろ戻った方が良いんじゃねえか?お前も暇じゃねえだろ?」
「くれぐれも油断するなよ。相手はあのハイド教会だ。この街にも神官クラスの司祭であるラファが関わっているはずだ。検討を祈る、それじゃな」
ラースは店を後にして俺は黒いマントとローブを身に纏いかつて師匠が被っていたボロボロの魔法使いの帽子を被り夜の教会へ足を運ぶ。
「今宵、貴様等ハイド教会インフォース支部から例のツノ付き悪魔を貰い受ける」