親子そろって狂人判定   作:九頭竜 胆平

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土曜日は復讐代行、やってます。

狂気に魅入られた者たちはいつもこの(サーバー)を素通りする。先ほどここを通った女性(の姿をしたアバター)はおそらくゴリラの巣(φサーバー)に行くのだろう。道行く人々を観察しながらアイテムを作っていた僕の隠れ家(木に穴を掘って作った)にノック音が響き渡った。

 

「いらっしゃい。標的は?」

 

今日も復讐と殺戮を求めて依頼人が暖簾(草を集めたもの)をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うちに来る以来と言えば大体スタンピードを踏んだ奴を殺してほしいとか、εの民を殺してほしいとか、υの民を殺してほしいとか、だれだれの肉が欲しいとか、まあいろいろだ。最後のやつは自国の豚でも食ってろよとは思うが、仕事を選り好みなどすれば殺し屋の名が廃る。と言っても僕だって断る依頼は当然ある。各島のトッププレイヤーとかやってられるかってんだ。このゲームの命がいくら軽かろうと実力差があれば殺すのにはそれ相応のコストと時間がかかる。そういう僕が受け付けない依頼は大体お父さんに流れるようになっている。しかし今日のはそのどれでもなかったようだ。

 

「どうも~『バナナウーマン』さん。『それはおやつですか?』さんからの依頼できました。それでは殺しますね。」

 

背後から貴重な食糧であるバナナを食べている女性アバターに声をかける。

このゲームで相手を殺してほしいというのは命を奪ってほしいということではない。その相手の持っているアイテムやその相手の死体が欲しいということだ。そして仕事がなくならないように必ず依頼者の名前は言うこと。復讐が復讐を呼びそして私が儲かる。素晴らしいシステムだ。

 

「あはは~みのがしてくれまシニャアアアアアアス!!!

 

最近は戦闘狂猫ちゃんが大量発生しているが逃げられるより百倍良い。ほら足元に気をつけな。

ワイヤー(ツタ)トラップに引っ掛かり体勢を崩したと同時に頭に向かって矢が飛んでいくが彼女はそれを腕で受け止め殴りかかってきた。今朝見たときから思っていたがやはり彼女はゴリラなのだ。そんな野生動物に僕が素手で勝てるはずもなく、だから僕はナイフを振るう。手首半ばまでぱっくりと切り傷が入った腕は握りこぶしが甘くなり僕に当たった時の威力を半減する。肺から空気が押し出される感触を堪能しながら彼女の腕を掴みこちらに引き寄せるようにしながらヤクザキックを見舞う。男だろうと女だろうと正中線が通っている股間を蹴られれば痛いものは痛い。そして僕たちがどれだけ変態だろうと痛みに怯まない奴なんてそれこそごく一部の強者しかいないのだから当然彼女の動きは鈍り

 

ゴキッ、

 

片腕で回した首から何かが砕けるような音が出て、それっきり彼女は動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指定の時間になり隠れ家にそれはおやつですか?さんが来た。依頼料としての弾丸は前払いで払ってもらってるのであとは報酬を渡すだけだ。

 

「これがバナナウーマンさんの持っていた持ち物です。」

 

依頼者にバナナウーマンの持っていた火薬やモンスターのドロップを除いたすべてを渡す。

 

「あのーつかぬことをお伺いしますがほかのアイテムも渡していただけないでしょうか。」

 

そういって彼は懐からナイフを取り出した。ウチを初めて利用した客にはよくある話だ。言葉を失った人は獣と変わらないということを教えてやらねばあるめえ。

 

「お断りします。」

 

武器を持っていないかをしっかり確認した彼は僕めがけて突っ込んでくる。それを見た僕が乱暴に机を叩くと縄が切れる音とともに何本もの先が尖った丸太が彼の背中を貫くように落ちて彼は絶命した。こんな責められたら終わりみたいな場所で何のトラップも仕掛けないはずもなく。

 

「南無阿弥陀仏。」

 

彼は僕がまずくいただきました。




雑食の肉は不味い。肉食の肉は臭い。

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