仏頂面の社員   作:主義

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案件の一場面

企業案件とはその企業の商品などをタレントが動画が生放送などで紹介をして、企業は広告宣伝費を支払うという形で成り立っている。そういう場合は打ち合わせの場などが設けられることがほとんど。そしてタレントに関しては企業さんの方からのリクエストを答える形。

 

 

 

今回の企業さんから指名されたのは湊あくあさんだった。そして今日は企業さんとの打ち合わせを行う。ある程度のすり合わせなどは行われているが、やはり面と向かってが一番大切だ。

 

 

 

 

打ち合わせを行うところに行くともう湊さんは到着していた。だが、緊張しているのが同じ場に居るだけでも伝わって来る。

 

「湊さん…」

 

 

「な、なに…?」

 

 

「そんなに緊張する必要はないと思うが。湊さんだって数えきれないぐらいに案件はやってきたはずだ」

 

 

「…だ、だけど…やっぱり緊張する…」

 

まあ、それに関しては仕方のない事。案件は失敗が出来ない。普段の配信であれば寝坊をしたり、ミスをしたとしても笑って済むケースがあるかもしれないが、案件に関してはそれはない。企業さんとしては自社の商品のアピールをしっかりとしてもらわないと困るわけだし。だから、タレントさんにもかなり負担がかかっていたりする。

 

 

 

「いつもの調子とはいかないかもしれないが、なるべくいつもの『湊あくあ』を心掛けてみてくれ。オレがこの案件先の担当者であればいつもの『湊あくあ』に依頼したいと思うだろうしな」

 

 

「…い、いつもの…」

 

しっかりと誰がこの案件に会うかは擦り合わせた。その結論として湊さんを選ぶことになった訳だし、いつもの湊さんに宣伝されてこそ購買促進が図れるのだから。

 

 

「ああ、緊張するなという方が無理だろうが、なるべく自然体を心掛けてくれ。打ち合わせに関してはオレもそれなりに上手くやるから緊張はしなくてもいい」

 

オレが手伝えるのはあくまで…下準備だけで配信をするのは湊さん。あとは湊さんが上手く案件配信を成功させられるか。

 

 

「それにオレは『湊あくあ』というタレントのことを信用しているからな。何だかんだ言って色々と乗り越えてきた人だしな」

 

オレと湊さんの付き合いもそれなりに長い方だ。ある程度、湊さんを理解できている方だと思っている。そしてこういう時の湊さんは緊張を口にはするが本番になれば完璧に成し遂げられる。

 

 

「し、しんようですか?」

 

 

「ああ、色々と一緒にやってこともあったからな。『湊あくあ』ならどうにか出来ると思っているんだ。『湊あくあ』は自分が想っているよりもすごい奴だよ」

 

少しでもタレントの不安を取り除くのも仕事の一つだ。言葉は形には残らないが、人の心に響く時は一生残っていたりするんだ。オレは言葉の力はすごいと思っているんだ。言葉には人を傷付けることもできるが、人を勇気付けることもできるのだ。

 

 

「…わ、わかった!がんばる!」

 

まじで自分が同じ立ち立場ならとっくに事務所を辞めていると思う。だが、湊あくあはそれを乗り越えてここに立っているんだから大丈夫だ。今までこれより辛い事なんてたくさんあっただろうしな。

 

 

「その意気だ。さっきも言ったが、オレもなるべくサポートするから」

 

どうやら少しは助けになれたようで良かった。

 

 

結果として案件は大成功に終わったのだった。




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