仏頂面の社員   作:主義

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休憩室の会話

 

ホロライブ事務所の中には『休憩室』というものがある。そこにはスタッフやタレントがもちろん好きに出入りできる。

 

 

 

オレも短い休みや昼食の時間はこの休憩室にいることが多い。休憩室はそれなりに広いこともあって二十人ぐらいが休憩できるぐらいのスペースがある。

 

普段だったらのんびりできるところに…三人のタレントが陣取っていた。

 

 

「博衣さんに沙花叉さん、兎田さんですか…」

 

 

「なんですか!そのため息は!!」

 

 

「いや別にため息なんて吐いていない」

 

 

「いやいや…絶対に吐いてましたって!!」

 

 

「沙花叉のどこが不満なの!!」

 

 

「……………」

 

不満というか…うるさそうな人たちがいると思っただけ。それ以上でもそれ以下でもない。特に博衣さんに関しては少し前に会った時も一時間以上も捕まる事になった。

 

 

どうにか話を終わりにしようとしても話は切り上げさせてくれないのが博衣さんなのだ。

 

 

 

そして沙花叉さんは最近になって関わることになった。その要因として『パチンコ』の影響が大きい。オレもここ最近、先輩に連れて行ってもらってからパチンコにお熱だ。週に一度は必ずパチンコ屋に行くようになったぐらいだし。ということで沙花叉さんともパチンコのお話で盛り上がって話すようになったのだ。

 

兎田さんは本当に接点がない。お互いに話そうともしないし、これが偶然だが兎田さんと会う機会が今までほとんどなかった。それに兎田さんも自分のように仏頂面な人間と会うとかなり緊張してしまうだろうしな。

 

 

「オレは別にキミたちを邪魔しようとしたわけじゃない。だからそんなに突っかかってこないでくれ」

 

オレもこの休憩室に来たのは休むための理由で誰かと話すわけではない。だから博衣さんたちとは変に干渉せずにしたい。

 

 

「それって沙花叉たちと話したくないってこと!?」

 

 

「別にそういうわけではないが、キミたちもここに休みに来たんですよね」

 

 

「ううん。ただ暇だから来た」

 

 

「そうなんですか」

 

まあ、こういうところにタレントが来るのは珍しい。ここはスタッフとかが休む時に来る場所だし。

 

 

「マネさんはなんで来たの?」

 

 

「俺はただ休憩のため。ここだと誰にも話し掛けられずに済むので」

 

デスクで休んでいると絶え間なく、誰かに話し掛けられて休める感じがしない。たぶん後輩の子たちも気を遣って食事の誘いとかをしてくれているんだと思うけど、オレとしては休みたい。

 

 

「それって遠回しに沙花叉たちに話し掛けてこないでって言ってますか?」

 

 

「そうは言ってません。オレはただ休みたいとだけ言っただけですから」

 

正直、直接的に『話し掛けないで欲しい』と伝えたとしても兎田さんと博衣さんはいいとして、沙花叉さんがそれを許してくれるとは思えない。

 

 

「そういう風に言われるとどうしても休ませたくなくなるね」

 

これだと休むのは無理か。でも、ここで食い下がる訳にはいかない。ここが最後の砦と言ってもいいんだ。ここを諦めるわけにはいかない。

 

 

あんまりこの手は使いたくはないが、ここは褒めるか。

 

 

「博衣さんって黙っているととても可愛い人ですね」

 

 

「こよ、可愛いですか?」

 

 

「はい。可愛いと思います」

 

オレが博衣さんのことを褒めたことに対して沙花叉さんは不満だったようでジト目でこっちを見て来る。

 

 

「え~そんなことを統括マネージャーさんが言ってもいいんですか~」

 

 

「オレも人間だからな。人間として『可愛い』という気持ちをタレントに対して抱くことはあるんだ」

 

 

「へぇ~沙花叉のことは?」

 

 

「沙花叉さんのことも可愛いとは思いますよ。少し残念なところもありますが…」

 

 

「残念なところなんて沙花叉にはない」

 

 

「いや、ある。お風呂に入らなかったり、スロカスだったりと残念な部分は全然ある」

 

 

「それを言ったらマネさんもスロカスでしょ」

 

 

「オレはアイドルとかやってないからいいんだ。オレがパチンコとかをやっていても別に誰も不思議がらないだろ」

 

オレの人相的にタバコやお酒、パチンコなどをやっていても何も不思議はない。それに大学生の頃に友達から「お前はどこかで一人ぐらい殺しそうな顔」だという太鼓判も貰っているぐらいだ。

 

 

「それは確かにそうかも。沙花叉もマネさんがパチンコをやっているって聞いても不思議じゃなかったし。逆に行っていない方がちょっと驚いたかも」

 

そこまでオレの人相は悪いのか。

 

 

 

ってこのままだと休憩時間が終わってしまう。沙花叉をどうにか黙らせなくては。

 

 

「沙花叉、黙ってくれたら何か買ってやるから黙っていてくれ」

 

 

「え、何でも買ってくれるの?」

 

 

「常識的な範囲のことであればな」

 

 

「やったぁ~」

 

沙花叉は拳を高々と突き上げて喜びを表現している。こっちとしてはこれで大人しくなってくれるならいい。

 

 

 

 

そして最後は兎田さんだけど…何も言わなくても静かだし。

 

「と、とうかつさん…」

 

 

「オレのことか?」

 

すると兎田さんは首を縦に振った。オレも色々な呼び方をされてきたが、統括さんと呼ばれたのは初めての経験だ。

 

 

「はい…ち、ちょっといいですか?」

 

 

「ああ」

 

正直、跳ね返したい気持ちもあるが、兎田さんの顔を見る限りここは聞いてあげた方がよさそうな気がする。一応、これでも統括マネージャーという役職に就いている以上はタレントからの相談がある場合は蔑ろにできない。

 

 

「あ、あの統括さんって…なんでもしてくれるぺこですか?」

 

 

「なんでも…ではない。たが、兎田さんの悩み次第では解決できるかもしれない。かなりプライベートな内容だとしたら今日の夕方ごろからでも構わない」

 

ここには今、オレと博衣さん、沙花叉さん、兎田さんしかいないと言っても兎田さんの顔を見る限りはかなり深刻な内容だと予想できる。それなら二人きりの方が兎田さんも話しやすいかもしれないし。

 

 

「…い、いや…ここで大丈夫です」

 

 

「そうか。それならゆっくり話してくれ」

 

もう休めないことは覚悟して、ここれは兎田さんに向き合う方がいいだろう。

 

 

 

「じ、じゃあ……統括さんにお願いしたいことがあるぺこ」

 

 

兎田さんは真剣な眼差しでオレのことを見て来る。久し振りに真面目な話を聞くことになりそうなので少し襟を正すことにした。正直、オレにまで相談しに来るような奴はそこまでいない。オレの事が怖いのか、悩むほどのことがないのか、どちらなのかは分からないけどな。

 

 

「ぺこーらの家に来て欲しいぺこ!」

 

 

「は?」

 

 

オレは意味が分からなかった。

 

 

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