オレがこの会社に属するようになってそれなりの時が流れたのだろう。自分は自分の出来ることをやっていただけ。そしてそんなことをしている間にホロライブは大きくなっていった。スタッフの数も最初の頃に比べれば尋常じゃないほどに増えた。
これからもどんどん増えていくのだろうな。
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今日もいつものように…出社して仕事に勤しんでいる。黙々と仕事をこなしていき、資料を作り終えてオレはあるところに届けるために席を立った。
資料を片手に歩いていると後ろから何かに勢いよく押された。だがその力が弱いこともあって倒れることはなかった。
「あ、すいません!!」
後ろを振り返るとそこには……金髪っぽい髪色の少女が頭を下げていた。この人は確か…新しく入ったメンバーの中に入っていた気がする。スタッフもタレントも多くなりすぎて顔と名前が一致しないことが増えてきた。前までであればさすがに覚えられていたんだが。
「別に大丈夫。キミの方は大丈夫?」
「…はい。大丈夫でござる」
ごさる…?…やはり侍か何かなのか。恰好もそんな感じだし。
「それならオレは行かせてもらう」
オレが歩みを進めようとしたが…一向に歩みが進まない。振り返るとそこにはオレのシャツの袖を金髪の少女が掴んでいた。オレもそれなりに力が強い方なんだが…金髪の少女はまるで必死に引っ張るわけでもなかった。それなのに全然前に進めなかった。
「あ、あの…」
「なんだ?」
少し威圧をしすぎたのか…金髪の少女が怖がっている。
「ひぃ…」
急いでいる訳ではないがここで時間を潰す気はない。何か用があるのなら早く言ってもらうのが手っ取り早い。
「別に怒っている訳ではない。オレに何か用があるのなら言ってくれ」
「…え、…マネさんという方を探しているのでござるが知っているでござるか?」
「マネさんという呼ばれ方で呼ばれている男なら知っている」
「ほ、ほんとでござるか!??」
「ああ、オレだからな」
「え……ほ、ほんとうでござるか?」
「ああ、それでオレに何かしらの用か?」
「え~ちゃんさんが時間があったら挨拶してみて…と言われたので」
そういえばそんなことを言っていたな。別にそんな事をさせなくてもいいと思ったんだが。でも、「早い内に会っとい方が色々と便利ですし、タレントのことを知る機会にもなりますし…何よりもマネさんは紹介しておかないと新人の人と会う機会ないですし」。オレに会わせても怯えるだけだし、オレは表に出るような人間でもない。関わる機会というのは極めて少ないのに挨拶なんかしなくても…。
「そういうことか。いいよ、別に挨拶はと言いたいところだけど、折角来てもらったんだから挨拶はしておくか。オレを呼ぶときは…何でもいい。適当に呼んでくれれば」
「風真いろはでござる。ホロライブ秘密結社holoXで用心棒でござる。よろしくお願いするでござる」
「ああ、よろしく頼む…。それでオレはそろそろ行かせてもらう。また何かがで関わることが合ったらよろしく頼む」
「はいでござる」
そう話す、風真さんは笑顔を浮かべていた。風真さんはオレに対する恐怖を最初は浮かべていたものの話していく内にそれが薄まっていったように見えた。やはり人と話すことで恐怖を和らげることが出来るのだろうか。
そしてそれから仕事を行っていき、時間はあっという間に過ぎた。今日も何事もなく仕事が終えられたことに安堵して帰路に付く準備を整えることにした。すると…いつものようにえーちゃんが近づいてきた。
「風真さんが挨拶に来た」
「どうでしたか?」
「優しそうな人間だったよ。別に挨拶に来させる必要はないんだがな」
「…そうですか。でも良かったじゃないですか?最近のマネさんはタレントと関わることが少ないですから。でもこれからの事を考えると関わることが多くなりますよ。その前に顔合わせのようなものをしておいた方がいいじゃないですか」
「…確かにな」
「皆、良い子たちなので…マネさんも気に入ると思いますよ」
「…そうか……」
そんな話をしてオレは彼女と別れて一抹の不安を覚えながらも…オレは帰路に付いた。