休日出勤の日というのは少し憂鬱な気持ちになる。仕方ないと言えば仕方のないことだと分かってはいるが。仕事が無かったとしても賭け事、主に競馬をするだけだ。
だが今日の休日出勤に関してはいつものように仕事が山住でという感じはなくて、ある人と会うために出勤をする。今のオレの仕事は『統括マネージャー』。その仕事の一環。そこれまで言うとどういう人と会うかは想像が出来る人は出来るだろう。
そして出勤して約束通りの会議室に向かうと…そこには約束相手が来ていた。
「早いな。まだ約束の時間よりも30分も早い」
約束の相手は博衣さん。ホロライブ6期生。オレとの接点なんか皆無に近い。
「す、すいません!ただ遅れるともう口をきいてくれなくなると聞いたので…早く来ておこうと思って」
「…それ誰から聞いたんだ?」
「え、ぺこら先輩です」
あの人はオレを嫌われるように仕向けたいのか…。正直、兎田さんともそんなに接点がない。まだデビューが早い人たちとは少し接点が合ったりするけど。だから兎田さんがどういう意図でそんなことを言ったのはまるで分からないな。
「それは嘘だ」
「え、そうなんですか!??」
「ああ、別に口を利かなくなるなんて事もない。そんな鬼のような人間に見えているのか…」
外見の影響でそんな噂が流れるようになるとはな。よくそんな中でも博衣さんは相談に来てくれたものだ。そんな噂を聞いたらあんまり関わりたくないと思うだろうに。どうせこれ以外にも色んな噂が流れているんだろうな。
「い、いえ、そんなことは!!」
そんな必死に否定されると本気でそう思っていたんだと感じてしまう。まあ、初対面な訳だし、オレに怯えないなんてことは無理な話だろう。
「まあまあ、そんな話をするために集まった訳じゃないですし。それにしても博衣さんがオレに相談というのは何?」
少し前に博衣さんから相談したいことがあるというメッセージを貰って、今日をセッティングした。本当はさすがに休日出勤はしたくなかったから他の日にしたい気持ちがあった。でも、どうしても今日じゃないと博衣さんの予定的に時間を取れなかった。
「…あの…ちょっと……怒らないで聞いてくれますか?」
「怒る……?相談に怒るなんてことはしない。だから話してくれ」
「……は、はなしてみたかったんです」
「…………」
「さすがに怒っていますか?本当にごめんなさい」
「別に謝らないでくれ。なんで博衣さんはオレと話したいと思ったんですか?」
「……一度お見掛けした時に…直感で話したい!と思っちゃったんです。迷惑かと思ったのですがその気持ちを抑えられなくて」
こんな人が初めてで正直…唖然としてしまっている。『話したい』と思えるような言動をした訳でもないし、どちらかと言ったら怯えられるようなことしかしていない気がする。言葉も強い時だってあるだろうし、顔も怖いし。逆にこんな人間は初めてでどんな風に接すればいいのか分からない。
「…博衣さんは少しおかしいのか?」
「え、なんでですか!!」
「オレと話してみたいなんて普通なら絶対に至らない思考だ。それも何度か話したことがあるのなら百歩譲って分からなくもないが博衣さんとオレは初対面だ」
風真さんも最初は怯えている感じもあった。まあ、でもその後は怯えることなく話してくれたが。あれも最初は挨拶をするために止む無く挨拶に来た感じだろう。博衣さんのように『話してみたかった』と言って近づいて来るような奴はいない。
「そうですか?でも、こよは直観で感じたので…」
「まあ、それで何を話したいんだ?」
世の中は広い。そんな風な直観を持ってオレに対しても話したいという思うような奴が居たとしてもおかしくはないのかもしれない。
「あの…社員さんって好きな食べ物って何ですか?」
「なんだ…そのありきたりのような質問は」
「す、すいません」
「別にいいが…好きな食べ物か。オレは甘党だからな。スイーツとかなら何でも好きだな」
こんなオレの個人情報に何の価値もないのに聞いてどうするのだと思ってしまう。
「そうなんですか!わかりました!!」
「何が分かったんだ?」
「次に好きな色は何色ですか?」
「い、いろか……青色か。昔から青色が好きだったな」
博衣さんは絶えまなく質問をその後も繰り返してくるのであった。オレの教えられる範囲の個人上は全て出し切った気がする。こんな情報を何で知りたがるのかについても質問したかったが博衣さんが息を吸う暇もないほどに何度も質問をするものだから、こっちから聞くタイミングを逃した。