ホロライブと言えば…『アイドル』というイメージを持っている人が多い。普段はともかくとしてもライブではアイドル、そのもの。
ライブ前の控室は緊張感が漂いすぎて無言の時もあれば、緊張を緩和させようとタレントさん同士で話していたりする。
オレもライブ会場にはいるものの控室とかにいかない。まあ、行く必要性もないし、行ったとしても緊張を倍増させるだけだろう。只でさえ、ライブ前で緊張しているのにこれ以上緊張させる必要はない。
すると急に…オレの隣に腰を下ろした人物がいた。隣に視線を向けるとそこにはえーちゃんがいた。
「マネさん」
「…あなたですか…」
「こんなところで何をしているんですか?」
「いや、リハーサルも終わっているし、本番までの時間潰しだ」
「皆のところに行ってあげればいいじゃないですか?」
「…いや、行く必要はない。集中もしているだろうし、緊張もしているだろうからな。ここでオレが行って何をしてやることも出来ない。後は本人たちに託すしかない」
「…そうですかね。確かにマネさんのことを怖がっている人もいますが、前よりはマネさんのことを理解してくえる人も増えたんじゃないですか」
「ああ、増えたな。だが、その話と今は全然違う」
理解してくれるというか…接してくれるようなタレントが増えたのは事実だ。だけど、だからと言ってこういう時は話し掛けないことの方がいい。
「でも、マネさんが背中を押してあげることで勇気を出せるかもしれないですよ」
「それはないだろ。オレよりも他の奴に押された方がいいと思うが」
「まぁまぁ、行ってみるだけ行ってみてくださいよ」
そして彼女に押される形でオレは行かなければならなくなった。
もう開演の時刻が差し迫っているためにタレントは舞台袖にいる。そこにオレが姿を現すと…ときのさんを始め五人全員が驚いた表情を浮かべていた。
「え、マネさん」
今日のライブを行うのは…一般的に言うと『0期生』と呼ばれる人たち。オレとの関わりも他の人たちと比べれば長い方の人たち。
「ああ」
普段、ライブの時でも声を掛けたりはしない。そのことをこの五人はよくわかっているだろう。オレとの付き合いもそれなりに長い方に分類される方だから。
「ど、どうしたんですか?」
「一応…伝えておこうと思ってな」
「伝える?」
オレは深呼吸をしてから覚悟を決めて話し始める。
「頑張ってこい…そして楽しんで来い」
普段、こんなことを言ったことがないからな…。オレらしくない。それに何よりもオレが話してから…無言なのだ。
その無言を破ったのは……数秒した後だった。
「うん!!頑張るよ」
「折角、ダンスレッスンも頑張ったんだしね!」
「それにしてもマネさんがそんなことを言うなんてね…」
「それ、みこもおもった!!」
「やっぱりマネージャーさんがそんな風に言ってくれると力が湧きますね」
反応を見る限りは…緊張を倍増させたようなことはないようで安心した。
「じゃあ、マネさんも見てくれているし、ファンの皆も私たちが『アイドル』として輝いているところを見に来てくれている!今まで色々と頑張ってきたこと、全てを出し切ろう!!」
「「「「うん!!!」」」」
「じゃあ、いくよ~~」
そして五人のアイドルは…ステージへとかけていった。その後ろ姿を見ながら…少し昔のことを思い出していた。ときのさんが活動を始めた当初はこんな風にライブが出来るなんて夢のまた夢のお話だった。それが今では手の届くようなところにある…。本当に…ここまで頑張った甲斐があったな。