久し振りの休日。最近は休日出勤とかもあって休みと呼べるような休みはなかった。だからこういう休みは有難いが…趣味と呼べるようなものもない。まあ、結果的に家で適当に過ごしている感じになるのが目に見えている。それでも体が癒せるのであれば別に問題ないと個人的には思っている。
「それにしてもやることがない」
オレは寝転がりながらそんな独り言を呟いた。天井のシミを数えながらやはり…仕事のことを考えていた。
そしてあっという間に時間は過ぎて日が沈んだ。
パソコンをいじっていると誰かから通話をしてもいいか?という連絡が来ていた。『別にいいぞ』と連絡だけした。今なら時間も早いし、通話をしたとしてもそこまで長引かないだろう。
『掛けてもいいですか?』と連絡が来たので肯定的な返事をするとすぐに通話が掛かってきた。
「……み、みなとあくあ…参上!!」
「…う、ん?どうしたんですか?」
急にそんな登場挨拶のようなものをされてもこちらが困惑をしてしまう。
「す、すいません……」
「あ、はい」
「…き、きょうがなんの日か…わかりま、すか?」
「今日ですか?…何かの日だったか」
オレは長考したが全く思い当たるようなこともなければ…何の日なのかすらも分からない。
「すまんが全く分からない」
「……そ、そうですかぁ…そうですよねぇ……知っているわけないですよね…」
なんかマズイことを言った気がするのは気のせいかな。それにしても湊さんは一体どういうつもりなのだろうか。電話を掛けて来るものだから相談系なのかと思っていたが違うのか。
「それにしてもオレに掛けてくるなんてどんな用?」
「…え、ええと………」
なんかちょっと違和感に気付いて…オレは配信中のメンバーを調べた。するとそこに『湊あくあ』という名前が記されていた。嫌な予感はしていた。さっきから話していると明らかに今日という日について拘っていてまるで掛けてきたことに関することを何も言わなかった。相談なら最初に雑談を挟んだとしてもそろそろ本題に入っていていい時間だ。
「湊さん」
「な、なに?」
「配信をしているなら先に言ってくれ」
「え、し、しらなかったの!」
「知らない。湊さんから急に連絡が来たので何かの相談かと思ったんだ」
「ご、ごめんなさい…」
「いや、もうそれはいいや。ここでそんなことを言っても野暮ですし」
配信が行われているということは視聴者がいるということ。今までの会話を全て聞かれているということ…こは即ちコメント欄は酷いことになっていそうだな。
そしてサムネに『誕生日記念配信』と銘打たれていた。ここでオレがいうべき言葉は決まっている。
「お誕生日おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます…」
「いつも湊さんは本当に努力家だ。そしてその努力が報われて多くのファンを笑顔にさせるところを見てきた。これからも湊さんらしく頑張って。これからも多くの人を笑顔にするために」
あんまり長々と話してもダメだし、これが配信なら猶更。正直、怖いとかではないがコメントを見るのは止めておくべきだな。
「…………」
「湊さん?」
「あ、はい…な、なんでしょうか!??」
「今度からこういうことをするなら事前に教えてくれ。さすがにアポなしで来られるとこちらも準備が出来ていないので」
それにまず…こういうのにスタッフであるオレが出ること事態がおかしい気がする。えーちゃんや新人の春先さんなら別に構わないが、オレは視聴者に認知されるようなスタッフではない。そんなスタッフに逆凸で掛けるなんて……視聴者も反応に困るだろう。
「…あ、はい…で、でも…祝ってくれてありがとうございます」
「まあ、一年に一回の祝い事だし」
それからオレは通話を切ったが、湊さんの配信を最後まで見た。オレ以外の逆凸は全員がタレント。なんでスタッフのオレを呼んだのかの真意は分からない。後でそのことについて聞いてみるか。