第98話 わりと理由のある風評被害が簪を襲う!
織斑先生似の元・テロリストがクラスメイトになるというトンデモSHRだったが、事態はさらに斜め上の方向へ飛んで行った。
「それじゃあ織斑さん、貴女の席はあそこね」
「ああ、分か……ぴっ!?」
「「「「え?」」」」
クラス全体が唖然とした。さっきまで自信満々な顔をしていた織斑が、突然半泣きになってエドワース先生の後ろに隠れだした。はい?
「どうしたのかしらー?」
「あ、あいつ、なんでここに……!?」
先生の背中から、プルプルと腕を震わせながら指さした先には……
「……え? 私?」
簪がいた。
「更識さん、一体何したの……?」
「あの怯えよう、尋常じゃないわよ……」
「きっと、更識さんがこのクラスのボスだって、本能で悟ったのよ……」
「ああ……」
「私何もしてないよ!?」
クラスメイト達からの視線に、簪も涙目。いやまあ、学園祭の時然り、先日の件然り、簪にフルボッコされたみたいだからなぁ……。
「ほら、宮下君も納得してそうな顔してるし」
「陸ぅぅぅ!?」
「誰だよ俺の方にまで火の粉飛ばしてくんな!」
「困ったわねぇ、織斑さんの席、更識さんの隣なんだけど……」
「無理ぃぃぃぃ!!」
ギャン泣きの織斑、半泣き激怒の簪、ヒソヒソ話が止まらない女子生徒達。1年4組の1時限目開始5分前は、もはや収拾がつかなくなっていた。
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その後織斑を宥めすかし、なんとか授業が開始したのは、2時限目に入ってからだった。織斑の席? 断固拒否するもんだから、窓際最前列の奴と席替えになった。
さらに、カッコよく登場したはずの織斑は初っ端から醜態(本人談)を晒したせいで、
「マドっち~♪」
「き、貴様! 抱っこしようとするな! やめろ!」
「きゃ~! かわい~!」
「頬を引っ張るなぁ!」
完全にクラスのマスコットキャラと化していた。成りが小さいのも理由だろうな。
「祭壇持ってきてー! 神器の準備急いでー!」
「おい馬鹿やめろ! 一体何をする気だ!?」
おいおい、いくら織斑先生と顔似てるからって、マジでこいつを崇拝する気かよ!?
「あの、みんなそれぐらいで……」
「ぴぃぃ!(泣)」
あ、簪が止めようとしたら、織斑が教室から飛び出していった。
「ええ……」
「更識さん……」
そしてまた簪を見て、ヒソヒソ話を再開する。
「(PД`q)陸ぅ……!」
「ああ、はいはい」
泣きついてきた簪の頭をポンポンと撫ぜる。織斑の奴、完全に簪がトラウマになってやがるな。
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「ってことがあった。どうしてくれるんだ一夏」
「いや、俺に言われても……」
昼休みの食堂で一夏に苦情を入れたら、こんな不誠実な回答をしてきやがった。
「……っ」
「大丈夫だよ、僕たちがいるからね~」
「ほら、ミニトマト食うか?」
未だ簪の方を見て震えている織斑がデュノアにしがみつき、ボーデヴィッヒが昼飯を食べさせている光景。はっきりいってカオスだ。元は凶悪なテロリストだったはずなのに、どうしてこうなった。
「ものの見事に怯えてますわね……」
「これはひどい」
「アンタ、一体何したのよ……?」
「かんちゃ~ん……」
「本音までそんな目で見ないでぇ!」
とうとうのほほんにまで……簪、強く生きろ……!
「ところで、クロニクルはどうした?」
てっきり一夏達と一緒かと思ったんだが。
「ああ、クロエさんなら……」
そう言って、一夏が指さす方を見ると
「くーちゃ~ん♪」
「あ~癒し枠~!」
「あ、あの……」
……まるでSHRでの織斑のように、(おそらく1組の)女性生徒達に溺愛されていた。本人はめっちゃ困ってるが。
「というか、織斑はどうやってIS学園の生徒になった?」
クロニクルはともかく、こいつは亡国機業の一員だったろ。それがどういう流れで?
「それは……」
「それは私が説明してやる」
「千冬ね(バコンッ)お゛、お゛り゛む゛ら゛せ゛ん゛せ゛い゛……」
一夏、お前ってやつは本当に学習しねぇのな……。
「それでマドカについてだが……宮下」
指でちょいちょいと、近くに寄れと指示される。
「まず前提条件として、あいつが亡国機業に所属していたことを知っているのは、私と一夏、お前、そして更識姉妹だけだ。ケイシーは知ってるかもしれんがな」
「つまり、俺達が漏らさなければ問題ないと?」
「その上で、日英政府と取引した」
「日本は分かるとして、なぜにイギリス?」
「忘れたのか? あいつが乗っていたISのことを」
「ああ、そういう」
サイレント・ゼフィルス。あれは元々、イギリスから強奪された機体だったっけか。
「そこで英国政府に言ったのさ。『織斑マドカをサイレント・ゼフィルスのテストパイロットにしないか?』とな」
「テストパイロット……なるほど」
そこまで聞いて、やっと得心が行った。
英国からIS委員会に、サイレント・ゼフィルスが奪われたと報告はされていない。何故か? "織斑マドカというテストパイロットが試験運用していたから"、そういう筋書きにしたわけだ。
英国サイドからしたら、強奪された事実を消去しつつ、サイレント・ゼフィルス(の所有権)が戻ってくる。織斑サイドからしたら、日本政府に加えて、英国政府が身元を保証してくれるって寸法だ。
「それにあいつは、サイレント・ゼフィルスを使いこなしている。本人の申告通りなら、
「それ、オルコットには?」
「……教えていない」
気まずそうな顔をした先生が、目を背けた。
『またわたくしのお株が……ああああああああああああああああ』
――はっ! 目のハイライトが消えたオルコットが、等速直線運動で近づいてくる幻覚が見えたぞ……!
「と、とにかく、宮下が心配するようなことは無い」
「あいつを4組に入れたのは?」
「1組は先にクロニクルが入っていた。そこからさらに入れるとなると目立ちすぎる。だからと言って2組や3組に入れた場合、万一あいつが暴れた時に止めようがない」
「……うちのクラスならいいと?」
「更識妹が抑止力になるだろう」
「その結果があれなんですが?」
俺が指さした先には
「(ガクガクブルブル……!)」
デュノアの左腕にしがみついて離れない、クール&ビューティーとは対極に位置する4組のマスコットが……
「ああ、うん……すまん」
いや、俺に謝られても……
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「ところで一夏。お前、嫁連中には?」
「ああ、昨日話した」
「昨日って、あれからすぐ話したのかよ。度胸があるというか、なんというか……」
そんな目で見んな。みんなに隠し続けるよりはいいと思ったんだよ。
「それで、どうだったんだ?」
「なんというか……」
寮の部屋で俺は箒達に、自分の出自について洗いざらい話した。
「嫁よ、そんなことを気にしていたのか。私は気にせんぞ。かくいう私も同じようなものだからな」
それに対して、真っ先に声を上げたのはラウラだった。
「ラウラ、同じって……」
「私もな、作られた存在なのだ」
「「「「ええ!?」」」」
「ラウラ、お前も……?」
「ああ。ただ戦うためだけに作られた存在、試験体C-0037、それが私だ」
まさか、ラウラが俺と同じ、作られた存在だったなんて……。
それと同時に、自分をバケモノだと言った数時間前の俺を殴りたくなった。だってそれは、ラウラのこともバケモノだと言ってるようなものだから。
「だがな、私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。それ以外の何者でもない。……学年別トーナメントの後、教官からそう言われたのだがな」
「……」
千冬姉……。
「それで、お前達はどうする? 嫁のことを諦めるか?」
「冗談!」
鈴がバンッと机を叩く。
「デザインベビーが何よ!? 一夏は一夏でしょ! そんなの関係ないわよ!」
「そうだね。僕達が好きになった一夏には変わらないよ」
「そうですわ! わたくし達はその程度で掌を返すほど、軽い女ではありませんことよ!」
「みんな……」
陸は笑っていたけど、俺はみんなからバケモノだと思われると、みんなが離れて行ってしまうかもと、恐れていたんだと思う。
みんなが今まで通り、俺を見てくれると分かって……嬉しかった。
「まったく、男がそう簡単に泣くものではないぞ、一夏」
そう 責しながらも、箒が俺を、涙が止まらなくなった俺を、抱き締めてくれた……。
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「お帰りなさい。ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」
「……」
「……」
……なんだこれ?
昼に食堂で織斑劇場(一部感動もの)を見て、午後の授業も無難にこなし、放課後打鉄弐式にGNドライブを付け直して、寮の部屋に戻ったはずだ。なのにどうして、エプロン姿の刀奈がいる?
「……お姉ちゃん、説明」
「せっかく傷口が塞がって戻ってきたのに、陸君も簪ちゃんも構ってくれないんだもーん」
「だもーんって……」
そんな頬を膨らませても不法侵入はダメだろ。そういうのは束だけで十分だ。
「……お姉ちゃん、構ってほしいんだね?」
「あ、あの……簪ちゃん?」
「か、簪?」
ニッコリ笑ってるはずなんだが、何か怖いぞ?
「陸」
「お、おう」
「お姉ちゃんをベッドに」
「え~っと、もしかして……」
「うん」
マジか……いやでもなぁ……
「陸」
「アイマム!」
「えっ? り、陸君!?」
驚く刀奈をお姫様抱っこして、ベッドの上にポイチョした。こんな時の簪には、逆らわないのが吉だ。
「え、えっと……もしかして、
「お姉ちゃんも、キスの先に行こう」
「き、キスの先って……」
「陸に、抱いてもらお?」
「あ、あうううう……///」
簪のストレート剛速球に、刀奈は真っ赤になった顔を両手で覆い隠す。なんだろう、すごい罪悪感が……
「なぁ刀奈、本当に無理そうならちゃんと言えよ?」
俺らしくもないと思いながら、助け船を出したつもりだったが――
「陸君……」
「ん?」
「は、初めてだから……その……優しく、して……ね?」
前言撤回、俺の理性はあっさり飛んだ。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
翌朝、ベッドの上には俺と刀奈と簪の3人が、仲良く裸で動けなくなっていた。
刀奈を愛していたはずが、途中から簪も交ざりうんぬんかんぬん……
「陸君、優しくって言ったのに……でも、すごく幸せ……♡」
「私も一緒になんて、やっぱり陸は大型肉食獣♡」
「段々否定できなくなってきた……」
俺、二人のご両親に、五体投地レベルの土下座で謝罪しないとダメかも……。
マドカ、マスコットキャラ化。負けたらギャグ要員の運命からは逃れられないのです。そしてとばっちりで、簪がなぜか不憫枠に……。
盗られたISが戻ってきて、良い稼働データが取れるなら、英国も取引に応じるかなーという考えで、今回のテストパイロットという流れになりました。
一夏ハーレム解散せず。するわけが無いです。もし解散しようもんなら、駄女神の強制介入がががが。
たっちゃん、"少女"から"女"になる。(表現が下品)
しかしこうなってくると、彼女のアームロック枠が誰に移るのか。(そこ?)
というか、今作の簪がどこまで突き抜けていくのか、書いてる自分でも分からんくなってきました……。