IS学園はその名の通り、ISの操縦や整備の技術を習得することに特化した学校だ。必然、普通の学校にはないカリキュラムや行事が大量にある。
だが逆に、普通の学校と同じようにある行事も存在する。その一つが、秋の運動会だ。
さて、なんで冒頭からそんな話をし出したかと言えば――
「それでは、出たい種目に手を挙げて下さい」
SHR、クラス代表の簪が教壇の前で仕切っていた。内容は、件の運動会の出場種目について。
黒板代わりの大型ディスプレイには、競技種目と出場人数が表示されている。メジャーなところでは100m走や借り物競争、パン食い競争などなど。全員参加の種目もある……騎馬戦はいいとして、軍事障害物競走って何だよ?
「マドっちは決めてる?」
「ふんっ、私からすれば、児戯にも等しいものばかりだな」
「それじゃあ織斑さんは、コスプレリレーで決定」
「なぁ!?」
デカいこと言った織斑の参加種目が、簪によって強制的に決められた。ってか、コスプレリレーって……
「ふざけるな! なんだその頭おかしい種目――」
「(^○^)やって?」
「(;Д;)……はい」
あ、撃沈した。というか簪、織斑に怖がられまくって、とうとう開き直りやがったな。
「俺はどうすっかなぁ……」
「陸は私と二人三脚で決まってる」
「あれぇぇ!?」
なんか俺も、強制的に決められてたっぽいんだが。
「それと陸、借り物競争もよろしく」
「あの、俺に選択権は?」
「二人三脚、頑張ろうね?(ニッコリ)」
「……おう」
もう何も言えねぇ……。
「それじゃあ私も、借り物競争出るー」
「私は100m走」
「城戸さん陸上部だから、400m走に出てほしい」
「う~ん、本当は私も100m走でお茶濁したかったんだけど、仕方ないな~」
俺と織斑を後目に、他の種目がどんどん埋まっていく。
みんな、簪が恐怖政治を敷き始めたことについては無視か?
そうこうしている内に、個人種目は全ての枠が埋まった。
「それじゃあ、当日は頑張ろう」
「「「「お~~!!」」」」
ちなみに、なぜみんなやる気なのか。それはこの運動会もキャノンボール・ファストと同じように、優勝クラスには賞品があるからだ。
「デザートフリーパス、前のキャノンボール・ファストでもらったのに、まだ欲しいのかよ」
「甘いわね宮下君。女の子にとって、スイーツはいくらあってもいいものなのよ」
「それにあの時は、マドっちがいなかったでしょ?」
どうやら単純に数が欲しいという以外に、織斑にもフリーパスを手に入れさせたいという優しさもあるらしい。
「そうなんだが……」
奴がそんな、デザート如きで本気になるかぁ?
「マドっち、ちょうど運動会が終わった翌日から、食堂でイチゴフェアが始まるんだよ」
「そうそう。はい、これチラシ」
「これは……いちご大福に、ショートケーキだと……!?」
すげぇ目ぇ見開いて、電流流れるエフェクトが。
「だから頑張ろうマドっち」
「(^q^)し、仕方ないなぁ。そこまで言うなら、私の力を見せてやろう」
涎を拭け、馬鹿野郎。本当にお前、元・秘密結社のエージェントかよ? 転校初日とのギャップが激しすぎるぞ。
ーーーーーーーーー
その日の夜、陸と部屋でのんびりしていると
――コンコン
「かんちゃ~ん」
「本音?」
ドアをノックする音と、本音の声が聞こえてきた。そしてドアを開けると――
「やぁやぁかんちゃん♪」
「……え~っと」
そこには、本音を小脇に抱えた篠ノ之博士が立っていた。
「束ものほほんも、一体何してんだ……?」
私の後ろから現れた陸も、この光景に呆れていた。
「二人とも、ちょ~っと付き合って?」
「「はい?」」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
なんだかよく分からないうちに、私達は夜の第1アリーナに連れてこられていた。そしてそこには、先客が。
「織斑先生?」
「お姉ちゃん?」
陸と私の声がハモる。
「ったく……束、今回だけだからな」
「ありがとちーちゃん! それでチェシャ猫ちゃん、準備お~け~?」
「(チェ、チェシャ猫?)準備出来てます」
「よ~し!」
なんか、3人の間で勝手に話が進んでるんだけど……
「いや、俺達にもちゃんと説明を……」
「きっかけは、りったんからもらったISデータだよ」
「ISデータって、ナインテール・セラフの?」
「うん♪」
「……陸ぅ?」
「俺は悪くねぇ! っていうか、すぐ俺のことを疑うのやめろ!」
うっ! 確かにそうかも……
「でも、大抵は陸君が爆弾の着火点よね」
「だな」
「……」
あ、お姉ちゃんと織斑先生の追撃でorzった。
「それで、本音のISがどうしたんですか?」
「もらったその日に目を通したんだけどさぁ……」
あ、まずい。篠ノ之博士の目から、ハイライトが消えそう。
「あんなの絶対おかしいよ!」
「どうして!? ISには射撃補正やらなんやら色々積まれてるのに、どうして停止物にすら弾が当たらないの!?」
「ええ~……」
どうやら、ナインテールの荷電粒子砲のことを言ってるっぽいけど……割とストレートに本音をディスってますよね?
「いや~照れますな~」
そんな中、ISを展開した本音が話の中に入ってくる……ってそこ照れるところじゃないから!
「そこで、だ。束が作った補正システムを入れて、布仏が標的に当てられるか試したいと言い出してな。学園側としても、データ採取にちょうどいいと許可した」
「はぁ、なるほど……」
陸といい本音といい、どうして私の周りには、大天災すら曇らせる強者ばかりなんだろう……。
「それで、そのシステムはもう?」
「もち! のんたんからOKもらって、インストール済みだよ♪」
「のんたん……」
本音のあだ名が増えていた。
「そろそろ始めましょうか」
そうお姉ちゃんが言うと、射撃場とかでよくある的が展開される。ここからの距離は、大体10mぐらい?
「それじゃのんたん、束さん謹製システム『お前はもう、死んでいる』を起動して」
「は~い」
物騒! 何そのシステム名!?
「おお~、照準が勝手に動く~」
本音が体を左右に動かす。けれど、6門の砲口は的の方を向き続けている。自動で標的をロックオンしてるんだ。これなら……
「さあのんたん! 発射だぁぁぁ!」
「りょうか~い! え~い!」
――ドゴォォォン!
発射された弾頭は、標的に向かって一直線に飛んでいき――
フォークボールのように曲がり、的の数cm手前の地面に突き刺さった。
「え?」「は?」「へ?」「んん!?」
私、織斑先生、お姉ちゃんの3人は絶句。陸は本音と的を交互に2度見。
「なんでぇぇぇぇぇ!?」
篠ノ之博士は頭を抱え、その場でブリッジをキメていた。
「ごめんなさ~い、外しちゃいました~」
そんな中、本音だけが照れたような顔をして頭を掻いていた。
その後、正気を取り戻した博士は
「つ、次こそは! 次こそはのんたんを百発百中にしてみせるんだからぁ! あ、それとりったん、太陽光発電モジュールについてちょっと質問投げといたから、あとで返事ちょうだい」
という、業務連絡っぽいのが混じった捨て台詞を残して、(突然上空から降ってきた)人参型のロケットに乗って帰って行った。
「束の力を以てしても、布仏の呪いは破れないのか……」
「織斑先生~、呪いってひどいです~」
「いいえ、もはや呪いの領域よこれは……」
本音が頬を膨らめせて抗議してるけど、正直私も呪いじゃないかと思った。普通、荷電粒子砲の弾頭ってあんな曲がり方しないから。
こうして『絶対的に当てられない本音 VS 絶対命中させる束システム』ほこたて対決は、本音に軍配が上がった。……そんな勝負じゃないんだけど。
簪、開き直る。もう完全に4組の女帝です。(前からそうだったけど)
【悲報】のほほんの射撃下手、大天災を以てしても解決せず。感想欄から構想得ました。どうもです。
マドカは生徒になったけど、オータムはどうなったかって? それは後々……