俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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とうとうサブタイも100話突破です。


第100話 シリアスボッシュート

普通、運動会にリハーサルというものはない。少なくとも俺は覚えがない。しかしIS学園の運動会ではISに乗って行う競技もあるため、それを実習に取り入れているらしい。

玉打ち落とし、射出機によって上空に打ち上げられた大量の玉を、ISで撃ち落とす競技だとか。マジかよ。

 

そんな競技があるのも驚きだが、俺がさらに驚いたのは、実習でアリーナにやってきた時に――

 

「……意外と似合ってるのな」

 

「うるせぇ!」

 

そこにはエドワース先生の他に、上下ジャージ姿のオータムの姿があった。

 

「(で? なんでお前がここにいんだよ?)」

 

「(あのブリュンヒルデの指示だとよ。私をIS委員会に引き渡す気が無いらしい。かといってまた地下行きも拒否ったんだが、気付いたらこんなことに……)」

 

事情を知らないクラスメイト達に聞こえないように小声で聞いたら、まさかの回答が返ってきた。

IS委員会に引き渡さないって、前回のように護送中に襲撃されることを懸念してるんだろうか。

 

「とにかく、今の私は実習時の補佐役だ」

 

「補佐ねぇ……」

 

そうは言っても、名目だけだろう。こいつが真面目に教師役をやるとは思えないし。

 

「ところでよぉ……」

 

なんだ? 指なんかさして……

 

 

「マドっち~、今度のイチゴフェア、狙い目は何かな~?」

 

「まずいちご大福だな。それと変わり種では、ベルリーナー・プファンクーヘンもおススメだな」

 

「ベルリーナー……なんて?」

 

「ベルリーナー・プファンクーヘンだ。要はジャム入りの揚げパンだ」

 

「へぇ、美味しそう!」

 

「でも、絶対カロリー高いよね……」

 

「高いな。だが! それを気にしていてはスイーツなど食べれん!」

 

「マドっち悟ってる~」

 

 

そこには、運動会後に開催されるらしいイチゴフェアの話で花を咲かせているクラスメイト達……の輪に中心に、織斑がいた。

 

「あれ、本当に"エム"なのか……?」

 

信じられないという顔をするオータム。そりゃそうだろうよ。あの嫌味なほどクール系だったのが、いつの間にか甘味大好き女子校生にジョブチェンジしてんだから。

 

「私も、いつかあんな風になっちまうのか……?」

 

「いや、お前もすでにギャグ要員だからな?」

 

「嘘だぁぁぁぁぁ!!」

 

頭を抱えてイヤイヤと左右に振っても、運命からは逃れられんぞ。

 

「オータム先生~、そろそろ授業を始めるので、準備してくださ~い」

 

「あ、はい!」

 

エドワース先生に呼ばれて、オータムはすぐに走って行った。すでに後輩教師が板に付いちまってんだろ。もう手遅れだって。

 

 

 

実習だが、つつがなく終了した。そして恐ろしいことだが……オータムの人気が結構高かった。

なんやかんやで面倒見が良かったようで、ISを動かす際のコツなどもわりと丁寧に教えてくれて、教師というよりは姐さん系先輩な感じなんだとか。聞いた話では『1組の実習を偶々見る機会があったんだけど、それよりオータム先生の方がいいわ』とのこと。……1組の実習担当って、確か織斑先生だったはずじゃ? 元・テロリストより教えるのが下手な教員って……。

 

ーーーーーーーーー

 

時間は飛んで放課後。いつもの第4アリーナで、一夏達と模擬戦をするんだが。今回から参加者が増えていた。

 

「サイレント・ゼフィルス、ブルー・ティアーズの後継機ですわね」

 

「そうだ。色々あって、私がテストパイロットをすることになった」

 

そう、織斑も模擬戦に参加することになった。表向きテストパイロットの肩書を背負ってるから、ある程度はやってますアピールが必要なんだとか。実際に稼働データも送るんだろうし。

そんな織斑はすでにサイレント・ゼフィルスを展開済み。あとは誰と戦うかだが……。

 

「それで、誰がマドカの相手をするんだ?」

 

「ふふんっ、誰が相手であろうと、私は負けん」

 

「それなら、更識さ――」

 

「嫌だぁぁぁ!」

 

「え、えぇ?」

 

一夏が簪を指名しようとしたら、ISを解除してデュノアの背中に隠れてしまった。なんぞこれ。

 

「なんだ、教官の遠縁が聞いて呆れるな」

 

そんな織斑を鼻で笑うボーデヴィッヒだが

 

「お前に、あの"メメントモリ"だかに、ISの装甲ごと頭を吹き飛ばされそうになる恐怖が分かるか!?」

 

「……すまん」

 

織斑の主張を聞いて、素直に謝った。

 

「私、やっぱりそういう認識なの……?」

 

そのやり取りを見て、簪が悄気(しょげ)た。

 

「そ、それじゃあ、セシリアはどうだ?」

 

「わたくしですの?」

 

「ああ、同じイギリス製の機体同士で戦うのはどうかなって」

 

「面白い。私はそれでいいぞ」

 

「わたくしもそれで。一夏さんに、華麗な勝利をお見せしますわ!」

 

双方ISを展開して、アリーナの中央に移動する。さて、オルコットには悪いが、織斑の力を見るために頑張ってくれ。

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

偏光制御射撃(フレキシブル)……わたくしですら成功したことがない技術を、あんな簡単に……あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

「せ、セシリア!?」

 

「ああもう! しっかりしなさい!」

 

魂抜けかけのオルコットにデュノアがビビり、凰が肩を掴んでガックンガックン揺らす。やっぱこうなったか。

 

「さて、次は」

 

「ちょっと! セシリアをこのままにする気!?」

 

「そうは言っても、これ以上オルコットに対してできることは無いだろ」

 

「それはそうなんだけど……」

 

俺とそんなやり取りをしつつ、オルコットの口から抜け出しそうな白い靄()を、凰が掴んで口の中へ押し戻す。

 

「ところで、私も知らない機体があるんだが?」

 

「ん?」

 

織斑が指さす先には、のほほんが乗ったナインテール・セラフが。

 

「あれか。あれはナインテール・セラフって言って、最近組まれた機体だ」

 

「そうか……だが、あの機体」

 

――ドゴォォン!

 

「う~、やっぱり当たんない~」

 

「荷電粒子砲に、偏光制御射撃(フレキシブル)なんて必要なのか……?」

 

「いや、あれは仕様じゃねぇ。呪いだ」

 

お前やオルコットのレーザーならともかく、砲弾があんな曲がり方するのが仕様であってたまるか。

 

「そうか……そうだな……」

 

そう納得したはずなんだろうが、

 

――ドゴォォォン! ドゴォォォン!

 

まるでフォークやスライダーかと言わんばかりに的の手前で曲がっていく砲撃に、織斑は完全に宇宙猫になっていた。

 

 

 

今日の模擬戦、俺の戦績は1勝2敗で終わった。

一夏から獲った1勝も、いつまで続くか分からない。あいつ、どんどんフェイントが上手くなってやがるんだよなぁ。2敗した相手? 相変わらず凰とデュノアだよチクショウメェ!

 

そして簪なんだが……誰も相手してくれなかった。

 

「更識さんの相手はちょっと……」

 

「なんと言うべきか……」

 

「最近、特に勝てる気がしなくなったっていうか……」

 

「だから、ね……」

 

「お前が怖くて戦いたくない」

 

「「「ラウラぁ!?」」」

 

他の連中がオブラートに包もうと必死だったのに、ボーデヴィッヒの火の玉ストレートが簪に直撃。

 

「……」

 

「みんな~、調子はどう……って、簪ちゃん? どうしたの?」

 

そんな中、グッド(バッド?)タイミングで様子を見に来た刀奈。

 

「お姉ちゃん! 模擬戦の相手して!」

 

「は、はい!?」

 

という流れになり、

 

「簪ちゃん!? さっきから攻撃に怨念っぽいのが籠ってて、お姉ちゃん怖いのだけど!?」

 

「ボーデヴィッヒさんの馬鹿ぁぁぁぁぁぁ!! 私怖くないからぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ラウラちゃんへの恨みで私に八つ当たりしないで!?」

 

そんな仲のいい姉妹の語らいは、アリーナの貸し出し時間が過ぎるまで続いた。

 

ーーーーーーーーー

 

そして語らいが終わった夜、1032号室。

 

「うぅ~、簪ちゃんも酷いわよ~……」

 

「ごめんなさい……」

 

「まったくぅ……陸君、もっと撫でて~」

 

「はいはい……」

 

グロッキーになった刀奈を、なぜか俺が膝枕して頭を撫ぜていた。

 

「普通逆じゃね? 野郎の膝枕とか固くて需要ねぇだろ」

 

「え~? 私は気に入ったけどなぁ」

 

「お姉ちゃん、羨ましい……」

 

こら刀奈、頭を太ももに擦り付けてくんな。そして簪、羨ましそうな顔すんな。なんなんだこの姉妹は!

 

「ところで運動会って、2,3学年も参加するんだよな?」

 

「もちろんよ。あ、学年ごとに優勝クラスを決めるから、景品の心配はしなくていいわよ」

 

「良かった。他の学年も含めてだったら、競争率高過ぎ」

 

「確かにな」

 

1年だけ4クラス中の1番と、2,3年も含めた12クラス中の1番じゃ、難易度が違い過ぎる。

 

「……りーくくん♪」

 

「ちょっま!」

 

「お姉ちゃん!?」

 

膝枕していたはずの刀奈が、気付けば俺をベッドに押し倒していた。いやだから、普通逆だろって。

 

「ほら簪ちゃんも」

 

「え、えっと……えいっ」

 

さらに簪もエントリーして、仰向けの俺の上に、二人が乗っかる形に。

 

「あ~、簪ちゃんって、いつもこんな感じだったのね」

 

「うん。こうしてると、すごく幸せ」

 

「分かるわ。陸君の温もりとか、すっごく安心する」

 

そう言いながら、二人とも俺にしがみ付いてくる。

 

「このまま寝ちゃいましょうか」

 

「おいおい、刀奈はダメだろ。部屋に戻らなくて――」

 

「実はね、最初からここに泊まる気だったの。同室の子には、織斑先生を誤魔化すようにお願いしてあるわ♪」

 

いやそんな、ウインクされても……。

 

「それじゃあ、明かり落とす」

 

簪がそう言ったそばから、部屋の照明が落ちる。マジでこのまま寝るつもりかよ……。

 

「陸君……」

 

「あ?」

 

「も、もし"シ"たくなったら……遠慮なく言ってね?」

 

「そんな顔真っ赤にしてまで言うなバカタレ」

 

そんなに俺を盛りの付いた猿扱いしたいか。

 

「仕方ない、お姉ちゃんは誘い系ヘタレだから」

 

「簪ちゃん!?」

 

俺の胸の上で揉め始めた姉妹。そんな状況で幸せを感じている俺は、色々手遅れなのかもしれない。




オータム、臨時教師になる。意外とこういうキャラの方が、面倒見が良かったり。というか、ちーちゃんが丁寧に指導している姿が想像できない。めっちゃスパルタだよきっと。(偏見と事実半々)

簪、とうとう模擬戦を拒否られるの巻。これからは、たっちゃんに専用サンドバッグになってもらうしかないですね。(ゲス顔)
そして刀奈はヘタレ。(最重要)

次回、運動会を開催予定です。
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