原作では50m走ですが、本作では100m走になっております。ご承知くださいませ。
自分が学生の頃は100mと400mだけで、50mなんて無かったんだよなぁ。
オータムが臨時教師になってたり、織斑が完全にゆるキャラ化したり色々あったが、IS学園は秋の運動会当日を迎えていた。
「それでは、これよりIS学園・秋の大運動会を開催します!」
ずらっと並んだ全校生徒の前で、壇上の生徒会長の刀奈が開催を宣言する。
というか、運動会を第2アリーナでするのはいいとしよう。なぜに、各国の政府関係者が観客席にいるんだよ? ただの運動会だろ?
「それでは選手宣誓の前に、外部協力者を紹介しまーす」
「外部、協力者?」
刀奈の発言に、全校生徒がざわざわし始める。そして、刀奈が横によけると、壇上に上がってきたのは
「やっほい皆の衆、大天才の束さんだよ~♪」
「「「「ファッ!?」」」」
まさかの登場人物に、全校生徒絶句。俺が思わず教員側の方を見ると、織斑先生が顔を背け、それ以外は苦笑いを返してきた。観客席に各国政府関係者がいるのは、そういうことかよ!
「今回この運動会に協力したのは、くーちゃんの勇姿をその目に見るたゲフンゲフン! 束さんが今行ってる事業の発表にちょうど良かったからだよ!」
ダウトォォ! あいつ、絶対クロニクルの観戦が主目的だろ!
周りの連中も分かっちゃいるが、かと言って指摘も出来ず、ただただ教師陣と同じように苦笑いをするしかない。
「というわけで、こちらを御覧じろぉぉぉ!」
束が指さした先に、投影ディスプレイが現れる。そこに映っていたのは
「IS……?」
「なんか、すごいゴテゴテしてるわね」
「しかもあのIS、周り真っ暗だけど」
「もしかして、宇宙?」
CDのような円形の銀板を大量にくっつけた、全身装甲のISだった。それを見たみんながあれこれ言い始める。
「紹介しよう! 束さんが作った、太陽光発電自律制御型無人機『アンサラー』を!」
「無人、機……?」
誰かが呟いた声を、そこにいた皆が聞いた気がした。それぐらい、束の発言にアリーナは静まり返っていた。
そんなことお構いなしとばかりに、束の説明は続く。
「この子は北極上の高軌道領域で、常に静止状態にあるんだ。今もね。そこからあの円形の太陽光パネルで発電して、マイクロウェーブ送電で地上に電力を供給できる」
「もしかして、臨海学校で見たのって……」
「おっ、覚えてるのもいるみたいだね。結構結構。前回は小型の人工衛星を打ち上げたけど、今回は無人のISで行っているんだよ。ISのPICを使わなきゃ、常に高軌道領域の定点にいられないからね。あれ? 反応薄いなぁ」
束はそういうが、そりゃみんな反応できんわ。政府のお偉いさん、鳩が豆鉄砲を食ったどころか、豆の詰めた機関銃でハチの巣にされたような顔しているぞ。
「まぁそんなわけで、今回の運動会で使用する電力は、ぜ~んぶアンサラーが発電・送電したもので賄う予定だよ♪ そして予定通り発電・送電がうまくいったら、今後のIS学園の電力は全部アンサラーで受け持つって、ちーちゃんと約束してるんだよねぇ」
あ、会場の全員がギュルンッと織斑先生がいる方を向いた。だが、すでに織斑先生はそこにはいなかった。ブリュンヒルデ、まさかの敵前逃亡である。
「ちなみに観客席、アンサラーが欲しいからってちょっかいかけたら、あれに搭載されてるレーザー兵器群で撃墜するからね。エネルギーは太陽光から無限に得られるわけだし、持久戦も物量戦も無駄だよ。というか、いい加減『ISは最強の兵器』って考え捨てたらどうなのさ? だから柔軟な発想ってやつが出来ないんだよバーカ!」
どうもやる気だったのか、米中露の席に座ってる連中の顔色が、束の忠告でみるみる青くなっていく。
「まぁ君達が? かんちゃんの打鉄弐式と同程度のISを、1個小隊ぐらい用意出来たら話は別だけどね?」
「いや、それ無理筋でしょ……」
クラスの誰かが呟いた一言に、周りの全員が頷いた。専用機4機とやり合える無人機とかアリかよ?
「それじゃ、束さんの話はここまで! いっくん、選手宣誓よろしく~! それとくーちゃん、100m走頑張ってね~!」
「お、おれぇ!?」
突然の指名に慌てる一夏を後目に、束はクロニクルがいるであろう1組の方に手をブンブン振ると、マイペースに壇上から降りて行った。
ーーーーーーーーー
一夏の選手宣誓後、最初の競技である1年の100m走が始まった。それはいいんだが……
「なぁ陸、俺、すごい目のやり場に困ってる……」
「そうか。俺は少しだが慣れてきた」
「マジか、すげぇな……」
日差し除けのテントの下で、一夏は視線を上に向けて固定していた。
なにせ短パンな俺達2人を除いて、皆一様にブルマ姿なのだから。ISスーツとは別の意味でドキドキするという、一夏の悩みも分からなくはない。
「けどな一夏、篠ノ之達の…ゴニョゴニョ…を見たお前が、今更だと思うんだが?」
「ぶはっ! な、なんてこと言うんだよ!?」
「いや、実際そうだろ」
かくいう俺も、簪と刀奈の…ゴニョゴニョ…を見たという事実をもってして、平静を保ってるわけだし。
「やめよう。今はみんなの応援に意識を向けて誤魔化す」
「最初からそうすれば良かったろうに」
俺のツッコミを意図的に無視して、一夏が『頑張れー!』と応援を始める。まぁ、それでエロい煩悩が紛れるならいいんじゃね?
ふと視線を競技トラックに向けると、クロニクルと簪がスタートラインに立っていた。
ーーーーーーーーー
100m走の列に並んでからしばらくして、私の走る番が回ってきた。
左を向くと、他のクラスの子達が。3組は知らない子、2組は確か、凰さんと同室の子だったはず。そして1組は……クロニクルさん? 目を閉じたままで、走れるのかな……?
『On your mark』
指示に従って、スタートラインの手前でクラウチングスタートの体勢を取る。
『Set……Go!』
ピストルの音が響き、私を含めた4人全員が飛び出す。
「嘘っ! 4組の子、あんなに足早いの!?」
「眼鏡キャラは運動神経がないっていうのがセオリーなのに!」
そんなセオリー、勘弁してほしい。これでも更識家の人間として、それなりには鍛えてきたんだから。
そう思ってるうちに、私はゴールテープを切った。17.1秒、そこそこかな?
少しして、2組と3組の子もゴールする。
「はぁ……はぁ……!」
大分遅れて、息も絶え絶えのクロニクルさんが
――ドシャァ
「ク、クロニクルさん!?」
ゴールテープ手前で倒れ込んだ。慌てて駆け寄ると、ものすごい汗と浅い呼吸……もしかして、熱中症?
「誰か、保健の先生を!」
周りを見渡すと、みんな驚くだけで動けないでいる。もう、緊急事態なのに……!
「簪!」
「クロエさんは!?」
思わず心の中で悪態をつきそうになっていたら、陸と織斑君が担架を持って走ってきた。良かった、二人はちゃんと動いてくれてたんだ。
「たぶん、熱中症だと思う」
「そうか……一夏、やっぱり担架で運ぶぞ」
「え? 俺か陸が担いだ方が早いんじゃ?」
そんなやり取りをしながらも、陸と織斑君がクロニクルさんを担架に乗せる。
「一夏、こいつをクロニクルの脇に挟め」
陸が拡張領域から、凍らせたスポーツドリンクを2本、織斑君に投げて渡す。
「脇に?」
「脇の下に太い血管があるから、そこを冷やすんだ」
「なるほど、確かにそれなら担架の方がいいな」
納得した織斑君が、担架の上で仰向けになっているクロニクルさんの脇にスポーツドリンクのボトルを挟む。その間に、陸も首筋をボトルで冷やし始めると、浅かったクロニクルさんの呼吸が、普通に戻った気がした。
「よし、一夏。いちにのさんで持ち上げるぞ」
「ああ、こっちはいつでもいいぞ」
「いっちにっのさん!」
掛け声とともに担架を持ちあげた二人は、そのまま保健の先生がいるテントまで走って行った。
「やっぱり織斑君と宮下君、かっこ良かったわねぇ!」
「だよねぇ!」
「私も織斑君達に救護されてみた~い!」
二人がいなくなった途端、周りからそんな声が聞こえてきた。……この人達、クロニクルさんが苦しんでた時は右往左往するだけだったのに……
「貴女達」
「「「え?」」」
「ちょっと、OHANASHIしましょう?」
自分で思っていたより、私は怒っていたらしい。気付けば、彼女達をアリーナのピットまで連行した上で、
「お前達か、くーちゃんを見殺しにしようとしたのは……」
「「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」」」
篠ノ之博士を呼んで、20分ほどOHANASHIしていた。
束、とうとう太陽光発電計画を世界にバラす。無人IS『アンサラー』は、『ISは兵器である』という世界の認識に対して、『ISの真髄は兵器利用だけに非ず』という、今の束なりの『回答』という意味合いで付けました。
クロエ、熱中症に罹る。誰だよ、くーちゃんにこんな競技やらせたの(束談)