気付けばいっくんを小脇に抱えて、学園の校門近くまで走ってきちゃったよ……。そ、それもこれも、いっくんがいけないんだよ! あ、あんなこと言うんだから……!
小脇に抱えていたいっくんを降ろすと、私はガシッといっくんの肩を掴んだ。
「い、いっくん!」
「は、はい!?」
「もう一度聞くよ? 束さんが『初恋の相手』ってホント!?」
「……はい」
「おおぅ……」
オーバースペック束さんも、ちょっとドキドキしてるよ。
「ち、ちなみにいつから……?」
「えっと……箒と剣道を習い始めて……初めて束さんが、道場に来た時です……」
そんなこともあったかも~? 束さん、あんまり道場には近寄らなかったから。
「つまり……一目惚れです」
「マジかぁ……」
一目惚れかぁ……嬉しいけど、箒ちゃんに恨まれちゃいそう。
「でも、あくまで初恋ですよ」
「へ? じゃあ今は束さんのこと、好きじゃないの?」
「そんなことは無いです」
「ん~? じゃあなんで?」
「
「っ!?」
「やっぱり、束さんも知ってたんですね?」
「……うん」
うわぁ、まさかいっくんにカマかけられるとは思わなかったよ。
「そっか、いっくんも知っちゃったんだね。ちーちゃんにソックリなのを見かけたから、もしかしてと思ってたけど」
「マドカのことですか。千冬姉のクローンだって」
「そうだね。正確にはいっくん達とは別に、ちーちゃんの遺伝子をさらに強化する計画で失敗作として生まれた子だよ」
「失敗……」
「うん。だから計画が凍結された時、あの子だけが廃棄されることになったって書いてあったよ。すっごい厳重に隠してあった報告書にね」
まさか今のご時世に、紙媒体でしか記録を残してないとは思っても見なかったよ。束さんですら、別件で偶々知ったぐらいだからね。そしてそれこそ、ちーちゃんに興味を持ったきっかけだったんだよね。
「とにかく、俺は作られた存在です。だから……」
「なら、箒ちゃん達は良いって言うの?」
「箒達は、俺がツクリモノだと知っても構わないと言ってくれました。けど、束さんは……」
……うん、すごいイラッと来た。
「そりゃっ!」
――ミシミシッ
掴んでいたいっくんの肩に、思いっきり力を入れる。
「いだだだだっ! 束さん痛い痛い痛いっ!!」
「いっくん、束さんのこと舐めすぎ」
とりあえずイラッとした分は発散したから、痛みから解放してあげる。
「いたたたた……ど、どういうこと――」
「確かに織斑姉弟は作られた存在、それは事実だよ。だから?」
「だから、って……」
「束さんにとってはいっくんはいっくんだし、ちーちゃんはちーちゃんだ。その辺の凡愚共と同じ考えだと思われるのは心外だよ」
少なくとも人間の凡愚共よりは、人外のいっくんの方が好ましい。天才は人間かどうかなんて、そんな矮小なことに囚われないのだよ。
「本気、ですか?」
「もちのろん! 本気も本気だよ」
「……なら、俺の本心を言わせてください」
――ガシッ
「およ?」
さっきとは逆に、束さんがいっくんに肩を掴まれちゃったよ。
「束さん、好きですっ!!」
「おおぅ!?」
あ、ヤバい。いっくんの真っ直ぐな眼差しと今のセリフで、束さんキュンキュン来ちゃったよ! あれ? 顔も赤くなってる? 細胞レベルでオーバースペックな束さんが?
「束さん……!」
「い、いっくん!?」
嘘っ! いっくんから抱擁!?
「束さん……」
「いっくん……」
なんか、気持ちがふわふわするぅ……。ちーちゃんと色々楽しくやってた時でも、こんなに幸せな感じは無かったのにぃ……。
それから少しして、いっくんが体を離した。あぅ、まだ余韻が……。
「ごめんなさい、でも、俺嬉しくて……」
「もう……束さんの返事も聞かずに、悪い子だなぁ」
ま、そうは言っても、答えは決まってるんだけどね。
「箒ちゃん共々、末永くよろしくね、旦那様♪」
でもまさか、いっくん相手に言うことになるとは思わなかったよ。
ーーーーーーーーーーーーー
俺ってやつはぁぁぁ! いくら束さんが俺の出自を受け入れてくれたからって、告白して返事も聞かずに突然抱き締めるとかダメだろう! いつから俺は、そんなチャラ男になったんだよぉ!
「いっく~ん? 大丈夫?」
「だ、大丈夫です……」
束さんに心配されてしまった。突然頭抱えてのけ反ったら、心配もされるよな……。
「確かいっくんって、重婚を許可されてるんだよね?」
「ええ、いつの間にかそうなってました……」
当時はトンデモナイ話だと思ったけど、今となっては箒達と一緒にいるための最適解だと思えるようになっていた。……俺も色々常識から外れてきてるな。
「そうなると束さんも、一夏ハーレムだっけ? の一員になるわけだね」
「もうその呼び名、定着してるのか……」
多分だけど、最初に言い出したのは陸だろう。許さんぞ陸ぅ!
「もちろん、束さんも箒ちゃん達と同じように、平等に愛してくれるんだよね?」
「当たり前ですよ」
そこで偏りが出来た日には、俺が誰かから背中を刺されかねないし、何より俺が自分を許せない。
「ならよし! でもそっか~」
「?」
「束さんも一夏ハーレムに入ったら、箒ちゃんと一緒に姉妹丼か~」
「ぶふっ!」
なんてこと言うんだよこの人はぁ!
「あははは~! いっくん赤くなってる~」
「束さん!」
だぁもう! この人は~!
「さて、いっくんの熱い想いも受け取ったし、そろそろ戻ろうか」
「そうですね……ん?」
「どしたの?」
「なんか、向こうから話し声が……」
ちょうど校門の方から、聞き覚えのある声が……ってぇ!?
「ごめんさない、急に呼び出しておいて」
「いいですって。俺も虚さんに会いたいと思ってたんで」
思わず近くのベンチに隠れちゃったけど……弾の奴、何でここに? そしてもう一人は、のほほんさんのお姉さんで生徒会役員の……確か虚先輩だったっけ? いやいや! それより二人が抱き合ってるんだが!?
「虚さん……」
「弾君……」
おいおいおいおい……! これが逢引ってやつなのか!?
「ほう、これはなかなか」
「束さん……」
ベンチに隠れてた俺の頭の上に、束さんの頭がドッキング。そして背中に、柔らかいものが二つ……。
――ピピピピッ
っ!……ビックリした。どうやら虚先輩がセットしていたタイマーが鳴ったらしい。
「時間切れね……」
「確か今、運動会なんでしたっけ?」
「ええ、次の競技の準備があるから、もう戻らないと……」
そういう虚先輩だけど、未練いっぱいって顔だな。
「それじゃあ、今度はクリスマスかしらね」
「ええ。クリスマスまで、俺も首を長くして待ってますから」
そう言うと、二人は別れ際にキスをして――ってキスぅ!?
「弾の奴、虚先輩とそこまで進んでたのかよ……」
「いっくんも人のこと言えないと思うよ」
「はい……」
そうですね。今しがた束さんに告白した俺が言える立場じゃないですね。
「はぁ、次はクリスマスかぁ……長いなぁ……え?」
「「あ」」
やっべ。あまりの出来事に隠れるの忘れて、虚先輩と目が合っちまった。
「お、織斑君!? それに篠ノ之博士も! ……もしかして、見たんですか?」
「え~っと……その……はい」
「~~っ!///」
――ビュオォォォォォォッ!
速っ! 顔真っ赤にした虚先輩が、すげぇ速さで走り去っていったぞ!?
「ダメだよいっくん、そういう時は『何がですか?』って言っておかないと」
「あっ……」
そうだよな、何馬鹿正直に答えてんだ俺は。
「でも面白かったからヨシ!」
「ヨシじゃないです!」
なんですか、その指さし確認してるようなポーズは! というか、そのうさ耳貫通してる作業用ヘルメットはどこから出てきたんです!?
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そうしてアリーナに戻ってきたわけだが……
「なるほどなるほど~、参考になるよ。いっくん」
「はい、なんですんんっ!?」
「「「「「あ~~~~っ!!」」」」」
束さんにキスされたり、それを見た箒達が絶叫したり。
「ね~ね~おりむ~、お姉ちゃん見なかった~?」
「えぇ? み、見てないなぁ……」
「ほんと~?」
「お、おう」
虚先輩のことを聞かれて、しどろもどろになったり。
「なぁ一夏。お前と束がくっ付くってことは、束は織斑先生の義妹になるってことだよな」
「あ」
「ちーちゃんが義姉……」
「……荒れるな、織斑先生が」
「言わないでくれよ……」
この件を千冬姉にどう言おうか悩んだりしていた。……束さんに告ったことは後悔してないけど。
展開が飛んでる上に、束がかなり原作から離れていってますが、二次創作だからヨシ!
虚先輩、原作10巻の時点で弾の彼女になってますから、この(9巻)時点でこうなっててもおかしくないですよね? 優等生が学校行事を抜け出して逢引、なんか良くないです?(ナニガ