俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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シリアスなバトル回を書こうとすると、いつもより時間がかかる病気。
あれ? 評価バーが緑? えっと……高評価ありがとうございます。


第10話 けじめ

決闘当日。指定された第3アリーナに入ると、お姉ちゃんが待っていた。

 

「お姉ちゃん……」

 

「簪ちゃん……」

 

私の打鉄弐式と、お姉ちゃんのミステリアス・レイディ。2機のISが向かい合う。

 

「言いたいことはいっぱいある、はず……けど、うまく言葉に出来ないから、戦って、全てをぶつけたい」

 

「そう……分かったわ。かかってきなさい」

 

私が夢現を展開すると、お姉ちゃんも水を纏った槍――確か、蒼流旋だっけ――を展開した。そして

 

 

――試合開始のブザーが鳴った。

 

 

――ドォン!

 

――ドドドドッ!

 

私は試合開始と同時に、春雷を撃ち込んだ。それとほぼ同時に、お姉ちゃんも蒼流旋についた4門のガトリングガンで撃ってきた。

お互い、射撃を繰り返しながらも距離を詰めていく。そして、ミステリアス・レイディの周りの水が蒼流旋に集まり出したところで――

 

「そこぉ!」

 

「っ!」

 

防御用の水を攻撃用に転換する際のわずかな間。私が放った夢現の一撃は、お姉ちゃんの腕部装甲を少し掠るだけに留まった。だけど高速振動の一撃は、装甲に確かな傷跡を付けていた。

 

「高速振動の接近武器、だったわね?」

 

「知ってたんだ……」

 

「ええ、対戦相手の情報収集は戦いの基本だからね」

 

事前に情報が知られていた。悔しいと思う反面、嬉しいとも思う。それはお姉ちゃんが『勝つために情報を集める必要がある相手』だと認識したということだから。

 

「それじゃあ、今度はこっちから行くわよ」

 

「っ!」

 

周囲の水を纏った蒼流旋――表面を超振動させて貫通力の増した刺突――が、私に襲い掛かった。

 

ーーーーーーーーー

 

「あわわわ~……!」

 

「さすが学園最強、やっぱ強いな」

 

「はい。あれでも一国の国家代表ですから」

 

ピットで簪を見送った後、俺とのほほんは観客席に移動し、そこで虚先輩と合流していた。

 

「お嬢様曰く、『フルスペックの山嵐以外脅威ではない』と」

 

「ちっ、やっぱり情報収集してたんですか」

 

「ええ。本音が整備科に来た時から、ね」

 

つまり、あの(第5話)時点で、打鉄弐式が完成したことだけじゃなく、山嵐が未完成だってこともバレてたわけか。

 

「お姉ちゃんずる~い!」

 

「いやのほほん、俺だってミステリアス・レイディの情報を集めて簪に話したんだ。条件はイーブンってことになる」

 

「あ、そうか~……」

 

のほほんは納得したものの、しょんぼりした。

 

「ほら、簪が戦ってんだ。しょんぼりしてないで応援してやれ」

 

「そ、そうだね~!」

 

そう言って視線をアリーナに戻したのと同時だった。

 

 

――ドゴォォォォォンッ!!

 

 

耳をつんざく爆音と閃光。それが収まった時、そこには、所々装甲に傷をつけながらも余力のあるパイセンと、息も絶え絶えな簪がいた。

 

ーーーーーーーーー

 

(やっぱり……強い……!)

 

私の攻撃をお姉ちゃんが躱し、お姉ちゃんが攻撃すれば私が躱す。そうやって何度も夢現と蒼流旋が交差し、その度に装甲に細かな傷が増えていく。

お互い振動系の武装、装甲で防ぐという手段が使えないから、相手の攻撃を当たらないよう警戒し合う戦いになる。

 

そして何度目かも分からない、蒼流旋の刺突。私はそれを回避しようと半身をずらし

 

 

――そこに、刺突はやってこなかった。

 

 

(しまった――!)

 

嵌められた。そう気付いた時には、蒼流旋からガトリングガンの掃射をもらい、SEが削られた後だった。しかも今ので、お姉ちゃんとの距離が開いてしまった。

 

(まずい……! 今ここで距離を開けられたら……!)

 

急いでまた距離を詰めようとした瞬間、目の前の空間が爆ぜた。

 

(清き激情(クリア・パッション)! 水蒸気爆発を起こす技……!)

 

陸はリアクティブアーマーって言ったけど、別に自身の周辺じゃなくても発動する。むしろ、お姉ちゃんはこうやって"地雷"として使うのを得意としているのかも。

何とか耐えきったけど、私のSEは2割を切っていた。

 

「まだ……! 山嵐!」

 

ミサイルポッドから射出された24基のマイクロミサイルがお姉ちゃんに襲い掛かる。そして、爆炎が包み込む。

 

「これなら……」

 

そう思った時だった、爆炎が一瞬で消し飛び、そこに現れたのは――

 

「強くなったわね、簪ちゃん」

 

装甲は傷だらけで、それでもお姉ちゃんは、そこにいた。

 

「だから―――私も全力で行かせてもらう!」

 

ナノマシンで制御された水が蒼流旋へ集中する。さっきまでとは違う、全ての防御を攻撃に転換した姿へ。

 

「ミストルテインの槍!」

 

お姉ちゃんが放った一撃が、スローモーションのように私に近づいてくる。

 

(ああ……やっぱり、私じゃ勝てないんだ―――)

 

 

 

 

 

『また、逃げるのか?』

 

「え……!?」

 

聞こえた幻聴……じゃない、この声、私知ってる……!

 

「ランディ、さん?」

 

『そうやってまた逃げるのか、嬢ちゃん』

 

「でも……仕方ない……」

 

『仕方ない? まだやられたわけでもなければ、手足だって動くんだろ? なら、最後まで足掻いて見せろよ」

 

「そんな事言っても……」

 

『嬢ちゃん……お前さん、()()()()にもそんな事を言うつもりか?』

 

「……っ!」

 

あの二人。そう言われて、私は言葉を継ぐことが出来なかった。

 

『リクとホンネだったか? いいダチ持ったじゃねぇの。……そいつらに、お前の勝利を信じてるやつらに、今と同じ事を吐けるってのか?』

 

「……い……」

 

 

「そんなわけない! お姉ちゃんに勝ちたい! 勝ちたいよ!」

 

 

『そうだ。分かってんじゃねぇか』

 

詰るような口調から一転、ランディさんの声が飄々としたものに、そして真剣なものに変わった。

 

『弱かった過去の自分から逃げるな。自分を心の弱さを免罪符にして逃げるな。――自分の中の姉ちゃんから、逃げるな』

 

「私の中の、お姉ちゃん……」

 

そう呟いた時、私の目には、あの時のお姉ちゃんが映っていた。

 

 

――あなたは何もしなくてもいいの。

 

 

まだ、()()()お姉ちゃんに追いつこうとしていた頃。

 

 

――私が全部してあげるから。

 

 

いつからだろう。私が、お姉ちゃんと本気でぶつかることを諦めたのは。

 

 

――だから、あなたは……

 

 

――感謝の言葉は、パイセンに勝ってから受け取るからな

 

――大丈夫、かんちゃんなら勝てるよ~。だって、かんちゃんが頑張ってたの、私知ってるもん~。だから、ね?

 

それでも……そんな私を、信じてくれる人がいるんだ。だから、私は……

 

 

――無能なままで、いなさいな。

 

 

「私は! お姉ちゃんに勝つんだ!!」

 

 

あらん限りの声で叫んだ。すると()()()お姉ちゃんは消えて、ミストルテインの槍を放とうとする()()()お姉ちゃんが見えた。

 

『嬢ちゃん、やれるな?』

 

「うん……!」

 

『腹は決まったようだな。なら、俺も少しだけ手を貸してやるか』

 

「手を、貸す?」

 

『おう。だから気合入れろよ』

 

「(コクリ)」

 

どう手を貸してくれるのか分からないけど、信じてみようと思う。

槍が届くまであとわずかという中、私は大きく息を吸った。そして

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

先ほどと同じぐらい、あらん限りの声で叫ぶとともに、私の体は打鉄弐式ごと光の珠に包まれた。

 

ーーーーーーーーー

 

「ミストルテインの槍!」

 

全ての防御用ナノマシンを攻撃用に転換する、一撃必殺の大技。それを、簪ちゃんに突き立てた。いや、突き立てようとした。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「きゃあっ!」

 

けれど、槍が届く直前。私は簪ちゃんから放たれた光によって吹き飛ばされた。

 

「い、いったい何が……」

 

体勢を立て直した私の目の前には

 

 

さっきまでと違う、真紅の装甲を纏った簪ちゃんがいた。

 

 

「まさか……『第二形態移行(セカンド・シフト)』……!?」

 

そんなっ! だって簪ちゃんの打鉄弐式が完成したのはつい最近で、実戦データの蓄積だって……!

 

「私は、ずっと逃げていた」

 

「簪ちゃん?」

 

「お姉ちゃんと比較され続けて、否定され続けて。ずっと劣等感に苛まれてた」

 

「……」

 

これは間違いなく、簪ちゃんの本心、なんだろう。

ずっと心の底で溜まり続けていた、そして私が向き合うことを恐れて避け続けて来た、簪ちゃんの本心。

 

「だけど陸や本音が……こんな私を信じてくれる人がいる。もう、『更識楯無の妹』じゃない。『更識簪』として、自分の足で立てる。そんな"足場"を、私は見つけた。この"足場"で、私は自分の"業"に抗う。弱かった過去の自分……心の弱さを免罪符にしていた自分と、完全に決別する」

 

「簪、ちゃん……」

 

「これが――私のけじめ」

 

そう言いながら、簪ちゃんは限界が近い夢現を手放し、新たな武装を展開した。

 

「もう、"勝ちたい"なんて言わない。私はお姉ちゃんに……"勝つ"!」

 

簪ちゃんが展開したのは……簪ちゃんに似つかわしくない、大型のライフルだった。

 

ーーーーーーーーー

 

「行くよ、お姉ちゃん!」

 

ガガガガッ!

 

引き金を引くと、打鉄の焔備(アサルトライフル)とは比較にならない、ものすごい勢いで弾丸が発射された。

だけど、お姉ちゃんも回避と装甲を駆使して致命傷を避けている。

私は射撃を続けながら、お姉ちゃんと距離を()()()

 

「その武装で距離を詰めるのは悪手よ!」

 

お姉ちゃんが再度槍を構える。確かに、こんな大型のライフルでクロスレンジ(近接距離)は自殺行為だろう。けど、これでいい。この武装は、これでいいんだ。

 

「はぁぁぁ!」

 

お姉ちゃんの槍が届くほどの距離で、私はライフルを

 

 

振り上げた。

 

 

「え……?」

 

私のあまりの行動に、お姉ちゃんの手が、一瞬止まった。

そして私が振り上げ切ったところで、銃身下部のパーツがはじけ飛ぶ。中から出てきたのは――

 

「ブレード……!?」

 

呆気に取られていたお姉ちゃんの顔が、驚愕に変わる。

 

「行って――」

 

『いけ! 嬢ちゃん!』

 

 

 

「ベルゼルガァァァァァァァァ!!」

 

 

 

ライフルの重量とISの力で振り下ろされた大型ブレードは蒼流旋を破壊し、

 

「が……っ!」

 

お姉ちゃんの装甲外を直撃して、壁際まで吹き飛ばした。そして、

 

『ミステリアス・レイディ、SEエンプティ。勝者、更識簪』

 

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