俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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エキシビションマッチ後半戦です。勝負の行方や如何に――


第109話 エキシビションマッチ後編~TRANS-AM(トランザム)

束が作った(宮下も巻き込まれたらしい)IS『桜花』。その全力を持って、更識妹を一刀のもとに落とした……はずだった。

私の斬撃が更識妹の非装甲箇所を切り裂く、まさにその瞬間

 

TRANS-AM(トランザム)!」

 

「何っ!?」

 

打鉄弐式が、視界から消えた。

 

――ガキィィンッ!

 

「なぁ!?」

 

「止められた!?」

 

いつの間に後ろを!? だが……!

 

『か、簪ちゃんの動きもあれだけど、織斑先生の背後に現れたのって……!』

 

『あれこそ梅花と対になる装備『アイギスの盾』。ちーちゃんの危機察知能力、要は『嫌な予感』に反応して展開装甲が全自動で防御を行う、シールドビットさ♪ というか、かんちゃん一瞬消えなかった……? 束さんでも捕捉出来なかったんだけど……』

 

束の言う通り、私ですら奴が消えたと感じた。動きを追い切れなかったのだ。

 

――ガキィィンッ! ガキィィンッ!

 

「ぐぅぅ!」

 

「はぁぁぁぁ!」

 

なん、だ、この動きは……っ!? 正面からの攻撃を防いだと思った瞬間、気付けば左後方から攻撃がやってきて、それを防げば次は右前方からと、まるで瞬間移動しながら攻撃しているようだ!

 

『ちーちゃんが防戦一方になるとか、かんちゃん本当に人間!?』

 

『簪ちゃんをバケモノ呼ばわりするとか、篠ノ之博士と言えど……』

 

『そういうのはいいから! もしかんちゃんが普通だとしたら、あの機体が異常過ぎるんだよ! てか、あの弐式から大量に放出されてる光は何!? 誰かりったんを解説席に連れてきてー!』

 

私も聞きたいところだが、今は目の前に集中しなければ……! 今度はこっちがジリジリとSEを削られている……!

 

――ガキィィンッ! ガキィィンッ! ガキィィンッ!

 

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 

「はぁ、どうした、息が、はぁ、上がっているぞ」

 

「それは、はぁ、先生も、はぁ、ですよ……!」

 

「どうやらお互い、次で決めねば保たなそうだな」

 

「そう、ですね」

 

更識妹は当然として、私もそろそろ限界だ。SE残量はまだこちらが上だが、私の体力が先に底をつきそうだ。

 

「事ここに至っては、私も切り札を出すしかあるまい」

 

「切り札?」

 

「そうだ。これだけは使うまいと思っていたが……」

 

今まで右手で持っていた梅花を両手で保持し、中断の構えで静止する。

 

「これで、終いにするぞ」

 

「……分かりました」

 

更識妹の方も、薙刀を再度構え直す。

そして、お互い睨み合っていたのが数秒だったか、はたまたほんの一瞬だったか。

 

「っ!」

 

弐式が薙刀を振り上げようと動いた瞬間、私も、いや、()()先に動いていた。

 

『あれは――!』

 

束は気付いたようだな。もしかしたら、箒や一夏も気付いたかもしれん。

 

零拍子。相手が一拍子目で動くより前に仕掛ける、篠ノ之流古武術裏奥義。そして――

 

『れ、零落白夜!?』

 

梅花から延びるレーザー刃。他の拡張領域を全て潰してでも使えるように要求した、私のかつての単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)だ。

今の打鉄弐式のSE残量であれば、どのような形でも当たれば終わる。

 

「これで、終わりだぁ!」

 

中段構えからの、予備動作が少ない突き。先ほどの唐竹割りより、さらに回避不能な攻撃が打鉄弐式の胴体部、非装甲箇所に当たり

 

 

打鉄弐式が光に包まれ、弾けて消えた

 

 

「……は?」

 

そんな、自分でも間抜けだと思う声が出たと思った瞬間

 

 

首筋に、薙刀の刃が叩きこまれた。

 

「がぁぁっ!」

 

なんとか地表ギリギリで体勢を立て直したが、SEが切れたのか具現維持限界(リミット・ダウン)が起こり、桜花は白式に形状の似た腕輪(待機状態)に変化した。

 

「参ったな……いくらブランクがあるとはいえ、束に最新式を作らせておいてこのザマとは。なぁ、更識妹」

 

「はぁ……はぁ……」

 

同じように地表に降りてきた更識妹に話を振ってみたが、やはり奴も限界ギリギリだったようだな。ISを待機状態にして、自力で立っているのもやっとと見える。

さて、あとは宮下にあのISのことを聞くだけか。

 

『え、エキシビションマッチ、勝者は――!』

 

更識姉の宣言が成される――

 

 

「かはっ」

 

 

前に、更識妹が口から鮮血を飛び散らせ、そのまま地面に崩れ落ちた。

 

「え?」

 

この光景に、私はすぐに動くことが出来なかった。

 

『え……?』

 

『か、かんちゃん!?』

 

「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

観客席のあちこちから悲鳴が上がる。

 

――ブォゥッ!

 

その時、ISが1機、ピットから飛び込んできた。

 

「打鉄? いや、その形状は……宮下?」

 

打鉄弐式からミサイルポッドを取り除いたかのような外観。間違いなく、宮下の打鉄・陰流だった。

陰流は私の声には全く反応せず、倒れた更識妹を抱きかかえると、オープン・チャネルで

 

『束、医療用ナノマシンの手持ちはあるか?』

 

『え? う、うん。多少なら……』

 

『それ持って、校舎内の医療室に来てくれ』

 

『わ、分かった……』

 

『楯無さんも、いいですね?』

 

『分かったわ! それで、簪ちゃんは……』

 

『死なせませんよ……死なせるかってんだ……!』

 

そして束や更識姉との通信が終わると、私の方をちらっと見た。『アンタは何をすればいいか分かってるよな?』という、声無き言葉が聞こえてきた気がした。

 

「……分かっている。私はここで事態の収拾にあたる。だから……すまない、更識妹は頼んだ」

 

私が医療室に付いていっても、出来ることは何も無い。そしてこの混乱した状況、生徒達を鎮めるのが私の、教師としての仕事だ。

私の回答に、宮下は頷くと全速力で、それでいて抱えている更識妹に負担を掛けないように飛び去った。

 

……ここからは、私の仕事だな。

桜花から、アリーナの放送機器にチャネルを合わせた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

目が覚めた時、私はベッドの上でお姉ちゃんに抱き締められていた。

 

「簪ちゃん! 良かった、良かったぁぁぁぁ!」

 

「お、お姉ちゃん、ぐるじい……」

 

「あっ! ご、ごめんね!」

 

突然のハグから解放されて辺りを見渡すと、見覚えがあった。

 

「ここ、学園の医療室?」

 

「そうよ。簪ちゃん、エキシビションマッチの後倒れて、あれからもう夜よ」

 

「そういえば……」

 

確かに記憶がある。最後の賭けで織斑先生に一撃を入れた後、地上に降りて、それから……

 

「いや~、まさか喀血するなんて思わなかったよ~」

 

そう言って部屋に入ってきたのは、篠ノ之博士と……

 

「陸?」

 

「簪……」

 

博士の後ろから出てきた陸が、ゆっくり近づいてきた――私を抱き締めた。

 

「ごめん、簪……ごめん……」

 

「り、く?」

 

なんで、陸が謝るの? しかも陸、泣いてる……?

 

「まさかあんな風になるなんて思ってなかった、なんて言い訳にもならねぇ。きちんとロックをかけておくべきだったんだ。それを俺は……!」

 

「陸……」

 

ああ、そうか。どこかで既視感があると思ったら……

 

「今度は私が、陸を泣かせちゃったね……」

 

臨海学校の時、私は傷つく陸を見て泣いていた。陸は悪くない。自分が出来ることをしただけって分かっていても。

だから――

 

「ごめんね、陸。心配させるマネしちゃって……」

 

陸が謝る必要はないんだよ。そう伝えたくて、私は陸の頭を撫ぜるように抱き締め返した。

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

「さて、これからのことについて話しましょうか」

 

お姉ちゃんの方に、私達3人の視線が向く。

 

「その前に。陸君、いいかしら?」

 

「……ええ、手早くお願いします」

 

「?」

 

何が? 私がそう言う前に

 

――バキィッ!

 

「つぅ!」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

お姉ちゃんに殴られた陸が、転倒しそうになるのを耐えた。ど、どうして……!?

 

「はぁ……ごめんなさい」

 

「分かってます。理性では納得しても、感情は別ですから。ただ、ビンタでなくグーパンが来たのは想定外でしたがね。いってぇ……」

 

「かんちゃんに解説すると、『陸君に悪気が無いのは分かってる。けど簪ちゃんが怪我する要因を作ったのは事実だから一発殴らせなさい!』ってことらしいよ」

 

「お姉ちゃん……」

 

私が許してる(そもそも責める気が無い)のに、どうしてそうなるのか……。

 

「と、とにかく、改めて今後のことについて話すわよ!」

 

「差し当たっては、打鉄弐式についてですか」

 

「ええ。元々モンド・グロッソのレギュレーションの関係でもあったけど、学園内の模擬戦であっても、GNドライブ使用禁止」

 

「まぁ、そうなるよなぁ……」

 

「ISの絶対防御を抜いて、操縦者の肺胞をズタズタにする高機動とか、欠陥もいいところだよね~。逆にそれだけのことをしたから、ちーちゃんに勝ったわけだけど」

 

陸が仕方なさそうな顔をして、篠ノ之博士が呆れた顔で笑う。う~ん、ルールがそう変わる以上、トランザムだけ禁止じゃダメみたい。

 

「ちなみに、『あんな汚れた雄猿には分不相応だ。そのGNドライブとやらを寄こせ!』なんて抜かしてきた馬鹿もいたよね?」

 

「女権団ですね。ホント、ぶっ●してやろうかと思いましたよ……!」

 

「お姉ちゃん、私がいない間に抜け駆けは無し……」

 

「あの~、二人とも?」

 

なんか陸が止めたそうだけど、もし女権団が陸に危害を加えたら、私とお姉ちゃん、女権団の本部を消すよ?

 

「まぁそれは、ちーちゃんと日本の政府連中が阻止したけど」

 

あ、そうだ。私が倒れた後は……

 

「大丈夫よ。織斑先生が上手く事態を収拾したから。だから簪ちゃんも、明日から普通に授業に出られるわ」

 

「そ、そうなの?」

 

さっき、肺胞ズタズタッて……

 

「ふっふ~♪ 束さん謹製の医療用ナノマシンを注射したからね~。学園のものより治りの早さは段違いだよ♪」

 

「そうなんですか……ありがとうございます」

 

「お礼はいいよ。ぶっちゃけりったんに脅されて出しただけだから……」

 

「お、脅された?」

 

陸の方を向くと、陸は心外だという顔で

 

「誰も脅してねぇだろ。『桜花の手伝い分、これで請求してもいいよな?』って言っただけで」

 

「いやいや~、喀血したかんちゃん抱えた状態で通信が来た時、あまりの声の冷たさに、束さん正直ブルっちまったぜい……」

 

「あれは怖かったわ……」

 

「うぉぉぉい……」

 

あ、お姉ちゃんに殴られても耐えた陸がorzった。

陸には悪いけど、それも陸が私のことを心配してくれたからって思うと、すごく嬉しい気分になっていた。




簪、ちーちゃんに勝つもぶっ倒れる。トランザム時にデッカイGがかかり、簪が喀血しました。(某上級大尉のように)
耐G性能をISのPICに頼り過ぎた結果、としておいてください。

GNドライブ、正式に禁止される。そりゃそうだ。
一応、模擬戦含めた試合で使えないだけなので、開発等の話では登場すると思います。
やったね簪、またみんなが模擬戦受けてくれるよ! でも、あれ? 今までGNコンデンサー装備でも、簪が負けた記憶が……。

次回辺りで話を締めて、運動会編を終わらせる予定。
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