――運動会翌日、学生寮内の食堂
「それでは、4組の優勝を祝して、かんぱーいっ!!」
「「「「かんぱーいっ!」」」」
4組の面々がデザートを手に、ジュースの入ったコップを掲げていた。
「さっそく優勝賞品を使うことになるとは……」
「出場種目を決めてる時から、こうなるとは思ってたけど」
なんでも、1組もクラス代表が一夏に決まった時に、就任パーティーを開いていたとか。お祭り好きだねぇ。
「どうマドっち?」
「うむっ、うまい!」
「シュークリームを頬張るマドっち、可愛い~!」
「誰かカメラカメラ~!」
……そして4組のマスコットは、フリーパスを大いに活用していた。あいつが座るテーブルの上にはシュークリーム(イチゴ入り)以外にも、ショートケーキ、いちご大福、例の揚げパンetc...全部食う気か?
「陸はそれだけ?」
「いや、普通はこんなもんだからな?」
特に甘党でもない俺からしたら、ショートケーキ1ピースで十分だ。簪が持ってる皿の上のケーキ3ピースとか食ったら、間違いなく胸やけ起こすだろうな……。
ちなみにこのイベント、別に食堂を貸し切ったりはしていない。なので当然
「(*꒪ᗩ꒪)じ~……」
「ほ、本音……」
のほほんを筆頭に、他クラスからの視線も飛んでくる。
「じ~……」
「な、なんだお前は!?」
「じ~……」
「いや、そんな恨みがましい目で見るな……」
こらこらのほほん、うまそうに食ってたからって、織斑に絡むな。
――パコンッ
「あいたっ」
「何やってんのよ、みっともない」
凰に叩かれた頭を押さえるのほほん。まるで親子みたいな会話だな。
「アンタ達も、あんまり見せびらかさない方がいいわよ」
「そうだろうな」
「だね」
凰の忠告に俺と簪も同意したからか、4組の面々が若干トーンダウンした。そしてなぜか、1組の連中が気まずそうな顔をしている。ああ、
「凰さんも、イチゴフェアに?」
「まぁね。こういうイベントごとは好きな方だし」
中華でイチゴって想像つかなかったが……なるほど、杏仁豆腐の上にイチゴか。
「それじゃ、あたしも席に戻るから」
そう言って凰が歩く先には、一夏達が大量のスイーツ皿と一緒に座っていた。
「みんな、こんなに食えるのか……?」
「女子にとって『甘いものは別腹』だ」
「そ、そうか……」
「ふむ、セシリアはベルリーナー・プファンクーヘンを頼んだのか」
「わたくし、ドイツのお菓子でこれが一番好きですの」
「セシリア、それが好きなの? 結構カロリー高いはずだけど……」
「き、きちんとカロリー計算をしてから食べているので大丈夫ですわ!」
デュノアが指摘して、オルコットが半泣きで反論するぐらいカロリー高いのか。それの他にも食ってる織斑は……(目を逸らす)
「ところで宮下君、今日も織斑先生に呼び出されてたけど、今度は何したの?」
「今日"も"ってなんだ」
「陸、いつも呼び出されてる」
クラスメイトに反論したら、簪に背後から刺されたでゴザル。つらたん……。
「まあ、何があったって言われれば……」
(回想開始)
毎度おなじみ生徒指導室に呼び出されたわけだが、おそらく今回初めて、この部屋の『正しい使い方』をするんじゃなかろうか。
「で? 『サイクロプス・ボム』だったか? どうしてあんな危険物を作った?」
腕を組んでこちらを睨みつけてくる織斑先生。対して目を逸らす俺。
「いや~……女性権利団体でしたっけ? あの連中に絡まれた時にイラッとしてつい……」
「つい、で大量殺人兵器を作るな馬鹿者ぉ!」
――バコォォォンッ!
「ごぶぁ!」
「い、言い訳させてもらいたいんですが、あれにもメメントモリ同様、リミッターはついてます。だからISの試合で使う分には問題ないです。生身の人間に使わなければ」
「そうではなく、そもそも作るなと言っている……」
言い訳した直後に、クソデカため息をつかれた。解せぬ。
「そして更識妹。そんな危ない爆弾を、どうして騎馬戦で使おうとした?」
「えっと……他のみんなも武器を隠し持ってたので……勢いで?」
「勢いで対IS用兵器を使おうとするな馬鹿者ぉ!」
――バコォォォンッ!
「ぎゃっ!」
さすがに顔面は可哀想だと思ったのか、握り拳が簪の脳天に振り下ろされた。それでもあれは痛い。(確信)
「まったく……宮下」
「はい」
「お前、新しく何かを作る際には更識妹のチェックが入ってたな?」
「ええ、事前に何を作るか連絡してます」
劣化版ISコアの一件で、そんなルールが出来てしまっていた。……たま~に守れてない時もあったが。
「そのチェック、これからは更識姉にしろ」
「楯無さんに、ですか?」
「そうだ。妹では大して抑えにならないどころか、むしろお前より暴走しかねないことが今回の件で判明したからな」
「そんなぁ……」
がっくり項垂れる簪。あのサイクロプス・ボムについては、俺も焦ったからな。ある意味残当。
(回想終わり)
「ということがあった」
「あ、あはは~……」
そりゃ、コメントしづらいだろうな。まさしく、笑うしかない。
「更識さん、真面目な子だと思ってたんだけど……」
「そんな目で見ないで!?」
確かに俺と出会った頃は、こんなんじゃなかったんだが……え? もしかして俺が原因だったりする?
ーーーーーーーーーーーーー
特にパーティを開いたわけでもないから、全員がスイーツを食べ切った時点で自然解散となった。
「そういえば、篠ノ之博士はどうするんだろうね?」
気分転換にと、部屋に戻らず外を散歩をしている途中、簪が口にした疑問。
みんなには話さなかったが、さっきの回想には続きがある。
「ところで織斑先生。アンサラーの件、あれってどうなったんです?」
今回の運動会で使用する電力を全て、アンサラーが発電・送電したもので賄うという束の計画。そしてそれが上手くいった暁には、IS学園で使用する全電力をアンサラーで受け持つという話だ。
「あれか……結論から言えば『成立』した」
「つまり……」
「ああ。今後IS学園で使用する電力は、全て束持ちとなった」
「それを、日本政府が了承したんですか?」
確か、IS学園の管理自体は日本政府がやってるんだよな。普通に考えたら、電力って重要なインフラを個人に任せるって正気の沙汰じゃないだろう。だが、
「大喜びでな。なにせ学園の運営費は基本、日本持ちだからな」
「あっ、アラスカ条約」
簪が思い出したように声を上げた。
「そうだ。そして日本国民の全部が、それに納得しているわけではない」
だろうな。特に他国からの留学生も多いIS学園に対して『どうして他所の、しかも自分達と同じ先進国の連中にISを教える費用を、日本が待たなきゃいけないんだ!』って思ってる奴はごまんといるだろうよ。
「だからこそ、電力という必要経費が減るとなれば、反対する者などいないだろうさ。おまけに、この件を通して束との繋がりを得ようと考えている節もあるな」
「ああ、納得」
自分達より遥かに進んだ技術を持っている束との繋がりを、各国は欲しがってるんだったな。そのために、一夏に対して一夫多妻を認めたぐらいには。……俺? 何のことかな?(すっとぼけ)
「それに併せて、束は会社を建てるつもりらしい」
「会社を?」
「ああ。マイクロウェーブの受信アンテナの設営・管理を行うため、と本人は言っていたな」
「そしてアンサラー本体は、引き続き自分が管理する、と」
「そうだろう。あいつが最重要部分を他人に任せるとは思えん。むしろ任されると困る。米中露がハッスルしかねん」
アンサラーにちょっかいかけたくて仕方ない連中っすね。確かに連中なら裏で管理会社を襲撃して、アンサラーや太陽光発電システムの情報を奪うとかやりかねない。特に米は前科があるし。
「会社を建てても、束が社長室の椅子に座ってる姿が想像できねぇ」
「うん。適当な傀儡を置いて、自分は開発部とかにしれっと在籍してそう」
「あり得るな」
そんな話をしていると、
――ガサッ
風も吹いていないのに、目の前の茂みが揺れた、ような……。
「な、何だろう……?」
簪もおっかなびっくりした様子で、俺の腕にしがみ付く。
「野良猫かなんかじゃねぇか?」
「し、侵入者とか」
「そんなわけ……あり得るのがなぁ」
先日も、アメ公の団体さんが不法侵入してきたばっかだからな。
「確かめるか」
「うん……」
念のため、拡張領域から三池典田を取り出す。頼むから危ないもんは出て来ないでくれよぉ。
そう願いながら、抜身の刀で茂みをかき分けると――
「え……?」
「侵入者、でいいのかこれ……」
そこには、ほぼ全損したISに乗って、欠けた左腕の先から紫電を飛び散らす、金髪の女が倒れていた。
マドかわいい。もう、あの頃には戻れない……。
オリ主、簪共々ちーちゃんに怒られる。でも、どこかでサイクロプス・ボム、投げさせたい。
束、会社建てるってよ。ちーちゃんの桜花はもとより、これで簪の宙に浮いた所属も……?
スコール、太平洋横断・チキチキISレースでドボンしたの巻。オータムがああなったんだし、分かってるよね?(暗黒微笑)