俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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修学旅行編開始です。
とはいえ、今回も前章からの流れになってます。


修学旅行
第111話 負けたらギャグ要員


「んん……」

 

「目が覚めたか、スコール」

 

「オータム……?」

 

ぼんやりした視界を傾けると、そこには恋人で、今は敵の虜囚になっているはずのオータムの姿があった。

 

「どうして、オータムが……? 私、夢でも見てるのかしら……?」

 

「夢じゃねぇよ」

 

「なら、どうして……」

 

「お前は、IS学園の敷地内に倒れてたところを発見されて、ここに運ばれたんだよ」

 

「IS学園……」

 

見渡すと、私が寝ているベッド以外にも、病院の大部屋みたいにカーテンで仕切ることができるベッドが複数並んでいた。

 

「それにしても、お前が一体どうしてこんな……」

 

「そうだな、それは私も聞いておきたい」

 

「ちっ、来やがったか」

 

「織斑、千冬……」

 

舌打ちするオータムの視線の先には、初代ブリュンヒルデがドアの前で腕を組んで立っていた。入ってきた気配を感じさせないなんて、さすがね。

 

「それで、教えてもらおうか? 亡国機業の実働部隊『モノクローム・アバター』のリーダー格、スコール・ミューゼルが、どうして全損したISに乗って学園に流れ着いてきたかを」

 

「……いいわ。話しましょう」

 

「スコール!?」

 

「何を驚いているのよ。貴女が拘束されずにここにいるってことは、つまり()()()()()()なんでしょう?」

 

「それは、その……」

 

おそらくオータムは、自分の持っていた情報と引き換えに、身の保証を要求したんでしょう。そして私もベッドの上とはいえ囚われの身である以上、それを責める気はないわ。

 

「結論から言えば、亡国機業は壊滅したわ」

 

「はぁ!?」「そうか」

 

あら、オータムが驚くのは想定内だったけど、織斑千冬の反応が薄いのは予想外かも。

 

「オータムから、多少の内情は聞いている。女権団の残党が流れ着いてきたこと。そいつらに軒先を貸したら、そのまま母屋(幹部会)を乗っ取られたこともな」

 

「そうよ。そしてIS委員会の実働部隊から強襲を受けて、組織の重要拠点は軒並み壊滅。残党共が古巣に復帰したいがために、情報をリークしたせいでね」

 

「あいつらぁ……!」

 

オータム、貴女が怒っても仕方ないでしょう。というか、どうして上下ジャージ姿なのよ……?

 

「いや、それはだなぁ……」

 

「こいつはウチの学園でIS実習の担当補佐をしている」

 

「お、おい!」

 

「担当、補佐? 何貴女、捕まってたと思ったら、IS学園に就職してたの……?」

 

「してねぇよ! なんかこいつ(千冬)がIS委員会に引き渡そうとしねぇし、地下の牢屋暮らしも嫌がったら、なし崩し的に……」

 

「生徒達からは好評だぞ。一部からは『オータムお姉ちゃん』なんて呼ばれて――」

 

「やめろダラズがぁぁぁ!」

 

「……」

 

オータムと織斑千冬の漫才にしか見えないやり取りに、私は絶句した。一体、何がどうなってるのよ……。

 

「言い忘れてたが、お前が乗っていたIS『ゴールデン・ドーン』だったか? あれは没収した。まぁ、あの破損状況では何ができるわけでもないだろうがな」

 

「でしょうね」

 

私が逆の立場でもそうしている。

 

「それと悪いが、しばらくは左腕はその状態で生活してもらうぞ。ここには義体(サイボーク)の腕を治す設備もノウハウもないのでな」

 

「それも、仕方ないわね」

 

「スコール……」

 

「ほらオータム、なんて顔してるのよ」

 

動かない左腕――あのラファール部隊とやり合った時に千切れ飛んだところに、通常の義手を付けてくれたみたい――を見て悲しそうな顔をするオータムの頭を、正常に動く右手で撫ぜる。

 

「そして最後に……」

 

「私の処遇、かしら?」

 

「っ!?」

 

撫ぜていたオータムの頭がビクンッと跳ねる。さて、私が今話した情報の価値で、それだけの譲歩が引き出せるのやら……。

 

「心配するな。悪いようにはしない」

 

そう言うと、織斑千冬は私の肩をポンポンと叩いて

 

「負けたらギャグ要員の運命からは逃れられんぞ(暗黒笑顔)」

 

……私、選択を間違えたかも……

 

ーーーーーーーーー

 

「今日から4組の副担任として赴任された、スコール先生です」

 

「よ、よろしくね」

 

「……」

 

「……」

 

侵入者を織斑先生に引き渡した翌日、その侵入者が自クラスの副担任になってたの巻。当然俺と簪、二の句が継げず。

『このことは口外するなよ』と言われたのに、次の朝でこれである。どうなってんだIS学園、というか織斑千冬ぅ!

 

「久しぶりだな、スコール。オータムにはもう会ったのか?」

 

「ええ~……どうして貴女までここにいるのよ……」

 

「なになにマドっち、スコール先生と知り合いなの?」

 

「ああ、以前世話になったことがあってな」

 

「へぇ~」

 

「エ、エム「織斑マドカだ」そ、そう……マドカ、貴女がまさかここにいるなんて……」

 

「これでも私は『サイレント・ゼフィルス』のテストパイロットということになっているのでな!」

 

フンスッと腕を組む織斑に、スコールもたじたじだ。それよりも、秘密結社の実働部隊4人の内、二人が学生で残り二人も教師とか……。

 

「それじゃあSHRはこれで終了。1時限目はIS実習だから、みんな遅れずにアリーナ集合ね」

 

「「「「は~い」」」」

 

こうして、またしてもギャグ要員が増えたのであった。ケイシー先輩、こうなる前に足抜けしたのは正解でしたね……。

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

放課後、先日の通達通り打鉄弐式にGNドライブを外した。その代わり、GNコンデンサーに付け替えて、GNファングのエネルギー源を確保。稼働時間が極端に減ったが、こればかりは仕方ない。

 

「減ったって言っても、モンド・グロッソの試合時間中は使い続けられるだけの稼働時間だけどね~」

 

「むしろ、稼働時間が無限だったこれまでが異常過ぎ」

 

「無限じゃねぇぞ。高速機動にエネルギーを割き続ければ、さすがに使えなくなるし」

 

「それって、どれぐらい使い続けたら?」

 

「あ~……72時間?」

 

「3日間連続稼働可能とか、やっぱり普通じゃないよ……」

 

「そうだよね~……」

 

簪とのほほんの白い目が、すげぇ痛いんですが……。

 

「そういえば、そろそろ修学旅行の季節だよね~」

 

「ホント突然だな」

 

「そっか、もうそんな季節なんだね」

 

修学旅行なぁ……。大体京都がド定番で、次点に北海道とか沖縄とかか。大穴でハワイって可能性もあるが、IS学園には留学生が多いから日本国内の線が濃厚か。

 

「なんでも、先生達がどこにするか決めてる最中なんだって~」

 

「私、栃木とかいいな」

 

「なぜに栃木?」

 

「特撮の爆破シーンの聖地がある」

 

「お、おう……」

 

さすが簪、ブレねぇな。

 

「陸は、行ってみたいところとかある?」

 

「俺か? 機械屋としては、TOY〇TAの愛知とかY〇MAHAの静岡とか」

 

「さすが陸、ブレない」

 

「お前もな」

 

咄嗟に言い返していた。

 

「二人とも、相変わらずだな~」

 

そんな俺達を見て、のほほんが苦笑していた。解せぬ。

 

ーーーーーーーーー

 

――女性権利団体本部、代表執務室

 

女権団のトップ、山崎敏美は自身の執務室で荒れていた。

 

「どうして!? どうして千冬様が、あの下劣な雄猿の作った機体に負けるのよ!?」

 

せっかく息のかかったIS委員会の人間に、織斑千冬と更識簪のエキシビションマッチを行うよう指示したのに、結果はこれである。

当初の計画では、宮下が開発に関わった(ほぼ宮下が開発したのだが、彼女は断固として認めていない)打鉄弐式を織斑千冬が打倒することで、『やはりISは操縦者は元より、開発自体も男が関わるべきではない』という論調を作るはずだった。

それが終わってみれば、千冬のIS『桜花』自体、篠ノ之束が主導とはいえ、宮下の手も入ってしまったばかりか、その千冬が簪に競り負けるという結果となってしまった。

 

「あの、代表……」

 

「何よっ!?」

 

「せ、先日IS委員会が行った、亡国機業壊滅作戦なのですが……」

 

「それが何だって言うのよっ!?」

 

「こ、こちらをご覧ください……」

 

そう言って、控えていた女がビクビクしながらも、山崎の前にいくつかの紙を広げた。

 

「何よこれ」

 

「どうも亡国機業の連中も"2人目"に興味を持っていたようで……奴が作ったと宣っている『GNドライブ』の設計図です」

 

「何ですって!?」

 

部下の言葉に、山崎は怒りから驚きに表情を変えて、広げられた紙を凝視した。

 

「以前奴らは所属企業を探すために、GNドライブをIS関連企業に見せていました。結局所属企業は見つからなかったようですが、その時参加した技術者の一人が亡国機業の工作員だったようで……」

 

「それを元に、この設計図を起こしたのね。……これ、IS委員会には?」

 

「いえ、知られておりません。壊滅作戦に参加したIS部隊の中に、我々の同志がおりまして。これも彼女が秘密裏に持ち出したものです」

 

「そう! そうなの! あははははははっ! これはいいわ!」

 

先程のヒステリックはどこに行ったのか、山崎の高笑いが部屋中に響き渡る。

 

「この設計図を使って、私達が永久機関を作るのよ!」

 

「はっ」

 

部下が設計図を持って退出すると、上機嫌になった山崎は部屋の隅に置いてあるワインクーラーからボトルを取り出すとコルクを抜き、グラスに注いだ。

 

「そうよ! あんな下劣な雄猿に作れて、優等種たる私達が作れないわけないじゃない! むしろ、もっと素晴らしいものを作れるに決まってるわ!」

 

肥大化した自尊心から湧き出す根拠なき自信を、飲み込んだワインがさらに焚きつける。

 

そんな彼女は知らない。いや、女性権利団体の誰もが知らなかった。

 

――GNドライブにも弐式の武装同様、ただコピーすると(抵抗器の偽装を見破れないと)爆発するトラップが仕掛けられていることを……




スコール、教師になる。マスコット化したマドカとのやり取りも、短いながら予定しています。
というかちーちゃん、日々のストレスを解消するために、亡国機業をギャグ要員にしている節が……?

GNドライブ取り外し。GN粒子が必須な装備はGNファングぐらいなので、あんまり戦力減になってない……? ま、まぁ、これでまたちーちゃんには勝てなくなったってことで……。

女権団、また面倒なことを計画し出す。爆発オチなんてサイテー!(壮大なネタバレ)
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