スコールが4組の副担任になって、早くも数日が経った。オータムのこともあったから、まさかとは思っていたが……
「スコール先生、この条文についてなんですが……」
「ああこれね。これはアラスカ条約第3項のここの部分が……」
教え方が上手いからと、今やエドワース先生が座学をほぼ丸投げしていた。さらに
「IS学園の食堂って、学食とは思えないレパートリーね」
「だな。昔の軍隊生活とは大違いだ」
「もぐもぐ……(エクレアを頬張る)」
「ほらマドカ、クリーム付いてるわよ」
「むぐぅ……(大人しく口を拭かれる)」
嘘みたいだろ、あの三人(スコール、オータム、織斑)、元テロリストなんだぜ……?
「ダリル、あの三人って……」
「見るなフォルテ」
ケイシー先輩が、サファイア先輩の目を手で遮る。親が子供に『見ちゃいけません!』してるのを想像したのは俺だけか?
「完全に馴染んでやがるな……」
「お姉ちゃん、説明プリーズ」
「むしろ私が知りたいわよ……」
「あはは~……」
別のテーブル席で、いつ面+刀奈の4人で昼飯を食おうとしたらこの場面に出くわしたわけだ。
ちなみにのほほんは、スコールの素性を今さっき刀奈から聞いたばかりだ。俺と簪の場合、見つけた時に乗っていたISが学園祭に現れた機体と同じだったから、何となく見当はついていた。
「織斑先生も何を考えてるんだろう。いくら前回移送中に襲撃されたからって、IS委員会に引き渡さずにそのままなんて」
「そうねぇ……」
「……楯無さん、何か知ってるでしょ」
「ええ? な、何が?」
「お姉ちゃん、動揺し過ぎ……」
「それで、何を知ってるんです?」
「いやぁ、それは言えないわねぇ……」
"知らない"、ではなく"言えない"。つまりそういうことか。
「簪、のほほん。今日の放課後は久々に、生徒会室で虚先輩の紅茶を飲みにいかねぇか?」
「ほえ?」
「いきなり何を……ああ、なるほど。確かに飲みたいかも」
のほほんは分かってないみたいだが、簪は気付いたのか、少し笑った顔で刀奈の方を見た。
「二人とも……いいわよ、虚には私から言っておくわ」
仕方ないなぁ、という顔をして、刀奈はカップに残っていた紅茶を飲み干した。
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時間は流れ放課後。刀奈と約束していた時間に、俺と簪は生徒会室を訪れていた。
「いらっしゃい、虚の紅茶も準備出来てるわよ」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
勧められたソファーに座ると、虚先輩が目の前のティーカップに紅茶を注いでくれた。
「それで、さっそくなんですが……」
「分かってるわ……」
「虚と五反田君の、恋の進捗についてね?」
「お嬢様ぁぁぁ!?」
「ええ、そうです」
「宮下君!?」
「私も是非聞きたい」
「簪様までぇぇ!?」
「というジャブは置いといて」
「ですね」
「うぅ……みんなして……」
「お姉ちゃん、大丈夫~?」
あ、虚先輩がorzった。そしてのほほんが慰めるというカオス。っとと、話を進めんとな。
「それで、どうして
「これは先日、織斑先生から聞いた話なのだけど……」
そこから刀奈は、織斑先生から聞いた内容――俺達がスコールを引き渡してから、副担任になるまでの出来事――を話し始めた。
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「なるほど……亡国機業は壊滅したんですか」
「なんか話だけ聞くと、あっけない」
「私も簪ちゃんと同感よ。数十年も続いた秘密結社が、こんなあっけなく消え去るなんてね」
「恐ろしきは無能な指導者層、ということですか」
「そんなだから、女権団にも切り捨てられちゃんだよ~」
皆一様に言いたいことを言ってるが、一番ひでぇ言い方なのが布仏姉妹という。
「だけど、亡国機業が滅びたのと、スコールさん達を委員会に渡さないのは無関係なんじゃ……?」
「そうでもないわ」
「え?」
「だって簪ちゃん、考えてもみて? いくら女権団からIS委員会に情報がリークされてたからと言って、あまりにも動き出すのが早すぎるのよ」
「それって……」
「楯無さんは、女権団とIS委員会がグルだと?」
「そこまでは言ってないわ。ただ、委員会に女権団の息がかかった人間がいてもおかしくない、とは思ってるわ」
「つまりこのまま彼女達を移送しても、文字通り闇に葬られる可能性が……」
「ええ。少なくとも、私と織斑先生はそう考えているわ」
「面倒だな……」
政府といいIS委員会といい、どこにでも居やがるな女権団。おまけに
「む~……難しい話を聞いてると、眠くなるんだよ~……」
はい、俺達がシリアス展開してるのに、さっそくのほほんが居眠りを始めました。ちなみに俺を含め、誰も起こそうとはしない。そのまま寝とけ。
「とりあえず、スコール達を学園に留めている理由は分かりました。でも、なんでわざわざ教師に?」
「それはね――」
「この束さんが説明しよう!!」
――バッ! ギュッ!
「あだだだだだだだ!」
開いていた窓から突然飛び込んできた紫兎を、空中でキャッチ&アームロック。あぁ、久々のアームロックだ。最近刀奈に仕掛けてなかったからなぁ。
「ちょっと陸君、変なこと考えてないわよね……?」
刀奈がめっちゃ身震いしながら聞いてきた。いかんいかん、顔に出てたか?
「それで? どうしてここで束が出てくるんだ?」
「そ、それを説明するから、離してほしいんだけど……」
「いいだろう。さすがに傷物にしたら、一夏に申し訳が無いからな」
「ちょちょちょちょっ!? そこでいっくんは関係ないよねぇ!?」
おーおー、顔真っ赤にしてからに。そして簪、その白い目で見るのはやめてくれ、それは俺に効く。
「まったく……あ、運動会抜け出していっくんの友達とキスしてたバンダナ眼鏡ちゃん」
「篠ノ之博士ぇぇぇ!?」
「う、虚? 貴女そんなことしてたの……?」
「マジか」
「大胆……」
「お姉ちゃん頑張れ~……(寝言)」
「もうやだぁぁぁぁぁ!!
虚先輩の叫び声で、収拾がつかなくなってきた。
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「うぅ……みんなに知られたぁ……弾くぅん……」
収拾がついた時には、虚先輩は部屋の隅で三角座りをして、床にのの字を書き始めていた。
「そんじゃ、束の話を聞こうか」
「り、陸君……」
「お姉ちゃん、仕方ないの。これはコラテラルダメージだから」
「簪ちゃんまで……」
「なんかチェシャ猫ちゃんが形容し難い顔になってるけど、説明始めるよ。りったんは束さんが会社を作るって話は聞いてる?」
「ああ、織斑先生から聞いた。太陽光発電関連の仕事を振るためだっけか?」
「その認識でいいよ。で、当たり前だけど束さん、社長なんてやる気は無い!」
「だろうな」
簪とも話してたが、こいつがケツで社長室の椅子を温めてる光景が想像できない。
「それで傀儡としてちょうどいい人材を探してたんだけど、なかなか難航してねぇ。能力が高くて、既存の権力とも結びついてないアウトローな人材が」
「おいおい、まさか」
「そう! あのスコールとかいう奴を、社長室の椅子に縛り付けちゃおうってね!」
「「ぶふっ!」」
衝撃の事実に、刀奈と簪が仲良く紅茶を吹いた。吹いた紅茶が誰にも掛からなかったのが、不幸中の幸いか。
「でもでも、さすがに身元不明の元テロリストだと、社長に据えるのが大変だな~って。そしたらちーちゃんが『任せろ』って」
「それってまさか……」
「そういうこと、だよね……?」
つまり、そういうことだろう……
「IS学園の教師から会社社長とか、無くは無い話だもんね~♪」
あのブリュンヒルデ、何堂々と戸籍ロンダリングみたいな真似してんだよ!?
「いや~、最近のちーちゃんはいい感じに頭のねじが外れかけてて、束さん嬉しいよぉ♪」
「それ本人に言ったら、怒涛のごとく怒るぞ」
「あはは~♪」
「あははじゃないが。未来の義姉だぞ?」
「あ、はい……」
ウィークポイントだったのか、神妙な顔になって頷いた。
「と、とにかく、あいつは短期の教師役だってことだけ覚えておいてね」
「なんか、オータムの奴も一緒にくっ付いていきそうだな」
「それならそれでいいよ。適当に秘書官にでもなれば」
オータムの視線(スコール宛て)に百合っぽさが感じられるらしい。ソースはデュノア。どうしてそんなものを感じられたかは……深追いはしないでおこう、俺にだって情けってものはある。
「さて、説明も済んだし、ちょっとちーちゃんに顔見せたら帰るよ」
「そうか……ところで束」
「ん?」
生徒会室のドアを開けようとした束が、こちらを振り返る。ホントは聞かない方がいいと分かってはいるが、それでも聞いてしまうのが俺なんだろう。
「一夏とは、どこまでいったんだ?」
「~~~っ!!///」
――バコォォンッ!
顔を真っ赤に沸騰させた束に顔面グーパンをもらい、その勢いでソファーから転げ落ちた。
「りったんのばーか!」
そう言い捨てると、束は超高速で生徒会室から出ていった。
「陸……」「陸君……」
「分かってる……でも、二人だって知りたかったろ?」
「うっ」「~♪(下手な口笛)」
簪、目を逸らすな。そして刀奈、全然吹けてねぇぞ。
「まあいい、このあとは……」
「このあとは?」
「この惨状をどうするかだ」
「「あ」」
依然三角座りの虚先輩、ガチ寝に入ったのほほん、二人が吹きだした紅茶でビチョビチョになった応接テーブル。さあ、どっから片付けたもんか……
虚さん、多方面から弄られる。通常パートで出番が少ない分、こういうところできっちり出番を増やしましょうね~(ゲス顔)
スコール、新会社の社長に内々定。実際原作でも、名士っぽい感じで一夏にタキシードを買ってあげたりしてましたし、素養はあるでしょう。完全に紐付きの会社ですが。ちなみに現時点で、スコールは内々定のことを知りません。知った時にどんな顔をするか、楽しみですね~(ドくず顔)
一夏と束のデート回とか、どこかでやりたいな~と思う今日この頃。