束の建てる会社について話を聞いた翌日、全校集会が開かれた。
「それでは、これより修学旅行について説明するわね!」
壇上の刀奈の宣言に、おおーっ! と声が上がる。各国から集められたエリートとはいえ、そこは学生なんだなぁと思う。
「先日職員会議が開かれて、修学旅行先をどこにするか話し合われた結果、京都、大阪、北海道の3つに絞られました」
「京都いいよね! 名所がいっぱいなんでしょ!?」「食い倒れの街、大阪もアリよね!」「食べ物なら北海道もいいじゃない!」
やっぱ定番の3つになったか。って、まだ行く場所決まってねぇのか?
「そして……虚、持ってきて」
刀奈が虚先輩に声をかけると、先輩はガラガラと何かを押して……って、おい待て。
「今ここで! どこに行くかを決めようと思いまーす!」
一夏の所属する部活を決めるのに使ったルーレットが、再び姿を現しやがった!
しかも薄っすらと、部活名の跡が見えるんだが!? 完全に使い回しかよ!
「それじゃあ今回は……2組の凰ちゃんにお願いしようかしら!」
「あ、あたしぃ!?」
クラスメイトに背中を押されて壇上に立たされた凰に、刀奈からダーツが渡される。
「さぁ凰ちゃん、どこに行きたい!?」
「え、ええ? とりあえず京都はもういいわ! 小中で2回も行ったから、いい加減飽きたのよ!」
「それじゃあ頑張ってね♪ 虚、回してー!」
刀奈の合図とともに、ルーレットが回転を始める。
「「「京都! 京都!」」」
「だから京都はもういいって言ってるでしょ! アンタ達話聞いてた!?」
周りからの京都コールにキレる凰。みんな煽るの上手いな。
「ええい!」
そして投げられたダーツはルーレットに刺さり……
『京都』
「ウゾダドンドコドーン!」
崩れ落ちる凰。元々京都に行きたがってた生徒からは大喝采。
ちなみに一夏は
「また京都か……」
微妙な顔をしていた。そっか、お前も凰と同じ学校だったから、京都3回目か。ご愁傷様。
ーーーーーーーーー
ということがあったのが数日前。そして今、IS学園の生徒を乗せた新幹線(人数や警備上の観点から、貸し切り状態)は一路、京都を目指していた。
各クラスが1両に乗る形で、生徒達は好きな座席に座っているわけなんだが……
「どうしてこうなった」
「これのどこに」
「問題が?」
車両の一番前の席、足を伸ばすスペースがあるからと、俺はここに座った。すると簪がノータイムで俺の膝の上に座り、どこからか現れた刀奈が、知らぬ間に隣の席に座っていた。
「あの、会長?」
「何かしら?」
「会長って2年生だから、別の車両……」
「あら、貴女は私と陸君の仲を裂こうっていうのね……?」
「え、ええ!?」
おい馬鹿いきなり何を言い出すんだ。
「(宮下君って、更識さんと恋仲じゃなかったの?)」
「(でもでも、宮下君も織斑君と同じで重婚が許可されてるんだよね?)」
「(それで会長さんも……って姉妹で!?)」
「(捗る、ウ・ス異本が捗るぅぅぅぅ!)」
聞こえてるぞお前達。そして最後の奴待てや。
「宮下君……」
「……なんだ?」
「「「Good Luck!!」」」
お前ら何サムズアップして去ってくんだよ!? どういう意味だよ!?
「それじゃあ、みんなも理解してくれたところで」
「りーく君♪」
「はぁ……分かった分かった。俺も男だ、たまにはお前達の希望を叶えてやるよ」
そう言って俺は、左腕で簪を抱きかかえ、右腕を刀奈の腰に回して引き寄せた。
「陸、大胆……」
「陸君……///」
1.5人分のスペースに3人が座る密着具合。二人が身をよじる度に、簪からは柑橘系、刀奈からはフローラル系の香りが……やべ、これ俺の理性が保つのか?
「ぐおぉぉぉぉぉぉ!」
「甘い……コーヒー飲んでるはずなのに……」
「ま、まだお昼食べてないのに胸やけが……」
「もぐもぐ……(ひよこ饅頭美味し)」
俺達の熱に当てられて、さっきまで煽っていたクラスメイト達は次々にダウンしていった。(黙々と菓子を食ってる織斑を除く)
「あらあら、お熱いわねぇ。ねぇ、オータム?」
「よくもまぁ、恥ずかしげもなく……ってスコール! どこに手をっ! あっダメ、周りに人が……!///」
引率として付いてくることになったスコールとオータムの二人が、なんか車内で押っ始めそうになってるんだが……あ、一部生徒が鼻血出してぶっ倒れた。純情過ぎじゃねぇかねぇ?
――一方その頃、1年1組の車両
「「「「あーいこーで、しょ!」」」」
「なぁ、順番でいいだろ? だから早く座ろうぜ……」
車両の真ん中あたりの窓側席に座った俺は、未だにじゃんけんを続ける箒達をげんなりした顔で見ていた。
俺の隣に誰が座るかで、箒達4人がじゃんけんを始めてから大分経つが、一向に決まらないらしい。そろそろ座らないと、千冬姉の鉄拳制裁が来そうで怖いんだが……。
「「「「あーいこーで」」」」「しょ!」
あ、4人パーの中に一人だけチョキ……ってあれ?
「いっくんの隣ゲットだぜ~!」
「「「篠ノ之博士!?」」」「姉さん!?」「束さん!?」
なんで? なんで束さんがここに? って俺の隣に座ってるし! しかも腕! 腕絡めてきてるし!
「ね、姉さん! 一体何をしているんだ!」
「何って、未来の旦那様とイチャイチャしてるんだけど?」
コテッと首を傾げる束さん。可愛い……じゃなくて!
「もしかして束さん、京都まで付いてくるつもりですか?」
「もちのろん! あ、ちーちゃんには先に伝えてあるよ」
「ええ~……」
千冬姉、許したのかよ。一体どんなやり取りがあったのか……あ、知ったらダメな気がする。主に精神的な意味で。
「さて、イチカニウムの補給も完了したし」
「今なんて?」
なんか、謎の物質名が出てきた気がするんだが。
「くーちゃ~ん! 束さんとトランプしよーぜい!」
「た、束さま?」
「私もまぜて~」
「おっ、のんたんも一緒だね? お~け~お~け~!」
スクッと立ち上がった束さんはクロエさんのところに突撃すると、のほほんさん(途中で巻き込まれた相川さん)も交えて4人で大富豪をやり始めた。相変わらず行動が突飛だなぁ。
「それで、結局一夏の隣には誰が座るんだ?」
「「「あ」」」
ラウラの発言に正気を取り戻した時には、出発の車内チャイムが鳴っていた。
「さっさと席に座れ馬鹿共がっ!」
――ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ! ゴンッ!
「「「「ひぎぃ!」」」」
案の定、箒達4人は千冬姉の鉄拳制裁を受け、俺の隣には
「け、怪我の功名だ……」
箒が座ることになった。最初からこうしておけば良かったのに……。
「んふふ~一夏~♪」
千冬姉の制裁の痛みが引いた途端、めちゃくちゃ箒が甘えだした。束さんへの対抗心からか、腕にしがみ付いてきて……む、胸が当たって……
「かぁ~! 見んねーセシリア! 卑しか女ばい!」
「シャ、シャルロットさん?」
「突然どうしたんだ? いつもの口調と全然違うんだが……」
そんな俺達を、シャルがジト目で見てきて辛い……それどこの方言だよ?
――2年の車両
「ダリル~」
「ん?」
「3年の車両にいなくていいんスか?」
フォルテの隣には、3年生のダリルが堂々と座っていた。周りも相手が上級生だからか、声を掛けづらそうにしている。
「いいんだよ。それとも、オレと一緒は嫌か?」
「そ、その聞き方はずるいっスよぉ……」
そう言いながら、フォルテはダリルの腕を取ると、抱きかかえるようにその腕にしがみ付く。
「(と、尊い……)」
「(サファイアさんとケイシー先輩の噂は聞いてたけど……)」
「(これほどのポテンシャルを秘めていたとは……!)」
結局学年に関係なく、年頃の女子はこういった『てぇてぇ』に弱いのだった。
「ところで、新しく学園に入ってきたスコール先生って……」
「ああ……オレの叔母だ」
「つまり……」
「そういうことだ」
周りの耳があるからか、ダリルはフォルテの『あの人も亡国機業の?』という問いに対して、遠回しに肯定した。
「やっぱりそうっスか……」
「やっぱりって、なんだよ?」
「ダリルのバイセクシャルは、血なんスね」
「おい馬鹿やめろ」
かなり力の入ったアイアンクローが、フォルテの顔面を捉えていた。そしてその顔面は、京都に着くまで解放されることは無かった。
そうだ、京都に行こう。本州(特に関東)の学校だと、大抵修学旅行先は京都になる気が。原作でも鈴は小5から中2まで日本にいたので、一夏と一緒に3連続京都の可能性もあったはず。
新幹線の車内で糖分補給。なお、本来の
てぇてぇに見せかけたアイアンクロー。原作でも千冬が束に仕掛けた、由緒ある技ですしおすし。
今更ですけど、亡国機業崩壊してる状態で修学旅行編って、ただの旅話にしかならないのでは……?