俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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運動会のエキシビションマッチに続き、ちーちゃん試合回です。
少し短いですが、前後編に分けました。


第116話 やり残し 前編

IS学園にはアクの強いやつが、毎年必ず入ってくる。特に今年は、弟である一夏が入学したものだから、各国も情報収集のつもりなのか、代表候補生を次々に送り込んでくる始末だ。

……と思っていた時期が、私にもあった。

 

「宮下、詳しく説明しろ」

 

目の前には1年4組の生徒。私は1組の担任だが、学年主任も兼任しているから無関係とは言い難い。いや、むしろ夏前のクラス代表戦からこっち、ずっと面倒事に巻き込まれている気がする。

 

「先ほど言った通り、アーリィと勝負してやってください」

 

ああ、確かにさっき言ってたことと、同じことを言ってるな!

すっと、視線を宮下から隣に向ける。

 

「チフユ、久しぶりなのサ」

 

「ああ。だがお前、その右目と右腕は……」

 

私がこのイタリア国家代表と戦う()()()()()時は、隻眼隻腕ではなかったはずだが……。

 

「ああ、あの大会の後、『テンペスタⅡ』の起動実験に失敗してネ、ご覧の有様サ。とはいえ、チフユとの勝負にはさほどの影響もないネ」

 

「いやお前、まだ勝負するなんて……」

 

「織斑先生」

 

「なんだ、更識姉」

 

「この勝負、引き受けてください」

 

「はぁ?」

 

どうして真剣な顔をしてそんなことを言い出す?

 

「実は……」

 

更識姉はアーリィにと出会ってからの経緯を話し始めて……そして早速頭が痛い。

 

「私と勝負したいがために亡国機業に入ろうとしてたぁ!?」

 

「ま、国を捨てる決心をした時には、先方が潰れてたらしいんだがネ」

 

「そういう問題じゃない!」

 

どうして私と戦うために、テロリストになるんだ! 理解不能!

 

「なので、未来のテロリスト予備軍を更生させるために、勝負を受けてください」

 

「……」

 

納得は出来んが、理解は出来た。つまり、第2の亡国機業を生まないために、こいつの要求を受けろと。

 

「しかしなぁ……突然勝負しろと言われても、ここはIS学園ではないんだぞ? ISを展開・模擬戦が出来る場所など……」

 

 

「そんなことがあろうかとぉ!!」

 

 

「束……」

 

そうだった。こんなトラブルに、奴が絡んで来ないはずがない。

 

「りったん、ちょ~っと手伝ってくれる?」

 

「またかぁ? まぁ乗り掛かった舟だし、仕方ねぇか」

 

「あっ、かんちゃんとチェシャ猫ちゃんも手伝ってもらうよ」

 

「「え?」」「何?」

 

宮下だけでなく、更識姉妹も?

 

「束、一体何をする気だ……?」

 

聞きたくないが、聞かねばならんだろう……。

 

「ふっふ~♪ 簡単な話だよちーちゃん」

 

 

「戦える会場が無いなら、作っちゃえばいいのさ♪」

 

 

ーーーーーーーーー

 

突然だが、京都府には海がある。

北の丹後地方が日本海に面していて、海水浴場も複数存在している。

そんな丹後地方のある京丹後市の沖、10kmのところに

 

 

突如ISアリーナが現れたんだから、住民は驚くしかないだろう。

 

 

「……どうしてこうなった」

 

ケイシー先輩が呟いたその一言が、IS学園全校生徒の気持ちを代弁していた。

 

「はぁ……まさか更識家の力を、こんなことに使う日が来るなんて……」

 

アリーナのピットで、刀奈が疲れた顔をしながら『想定外』の扇子で扇いでいた。

 

今刀奈が言った通り、更識家の力を使って京都府のお偉いさんに『沖合の使用許可』をもらい(脅し)、束が拡張領域から資材を大量放出。そしてそれを、俺と簪が全力で組み立てた結果がこれである。

俺も簪も頑張った。マジ頑張った。日が暮れる前に完成させた自分達を褒めてやりたい。

 

「篠ノ之博士は分かっていましたが、やはり宮下さんも頭おかしいですわ……」

 

「まぁ、りったんだからね~」

 

おいオルコットとのほほん、どういう意味だ。

 

「さぁちーちゃん、これで心置きなく戦えるね?」

 

「いや、お前ら……」

 

まさかの力技に、織斑先生も困惑で顔が歪んでいた。

 

「ちなみに本国(イタリア)に連絡したら、『初代ブリュンヒルデとの戦闘データが取れるならやってよし』って許可もらえたヨ」

 

「ぬあぁぁぁぁぁ!」

 

「ち、千冬姉! 落ち着いて!」

 

完全に退路が塞がれて、織斑先生ご乱心。一夏の声も聞こえやしない。

 

「ほら先生、観客も待ってますから、早く準備してください」

 

「陸、お前鬼だな……」

 

そんなこと言っても一夏、本当に観客席は満員御礼なんだって。なにせ京都府に許可をもらった時のあちらの条件が

 

『府民が優先的に観戦できること』

 

だったからな。キャノンボール・ファストでは遠くて見に行けない府民に見せたいんだと。おかげでさっきも言った通り、1万人収容できる観客席はIS学園の全校生徒を含め、満員御礼だ。

 

「くっ……! 分かった、腹を括ろう」

 

そう言って織斑先生は、待機状態にしていた桜花を展開すると、アーリィも自分のISを展開して、カタパルトに乗ってアリーナに向けて出撃していった。

 

あのIS、アーリィの欠けた腕を展開した装甲で義手みたいにしてたな。なるほど、ああいう使い方もあるのか……。

 

ーーーーーーーーー

 

カタパルトから射出されてアリーナ中央の空中に留まると、チフユも私と向かい合うように空中に留まったネ。あれが話に聞いていた、チフユの新しいIS……。

 

「すまんが、ブランクが長いものでな。束が作った最新鋭とはいえ、お前を満足させられるかどうかは分からん」

 

「そんなの気にしないサ。手を抜きさえしなければ、私としては満足だヨ」

 

そう、私が望むのは、手加減なしの真剣勝負。ただそれだけサね。

 

「むしろ私のIS『テンペスタ』は第2世代機、ちょうどいいハンデサ」

 

「そうか……いいだろう。あの日、一夏を助けるために試合を棄権したことに対して後悔は無い。だが、あの時やり残しがあるなら、今ここで片付けるとしよう」

 

「そうこなくっちゃネ!」

 

チフユが機体左側にマウントされているブレードを構えるのに合わせ、私も右腕の義手から風の槍を生成して構える。

 

 

そして、試合開始のブザーが鳴った――

 

 

「征くぞ!」

 

「応なのサ!」

 

チフユが突っ込んでくる軌道に対して、手に持った風の槍を投擲する。その槍をチフユは少しブレードを傾けただけで、明後日の方向に弾く。やるネ!

 

「まだまだ征くヨ!」

 

間髪入れず、風の槍を次々に生成しては投げる。チフユの武装は接近特化。まずは近づけないことが肝要サ。

 

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

右腕の義手、機械の力で人間の限界を超えて投げられる槍を、チフユは余さず弾いていく。

 

「チフユ、本当に人間なのサ?」

 

「馬鹿が。どう見ても人間だろう」

 

いやぁ……生身の人間が、あの数の風の槍をブレード一本で弾き切るとか、普通あり得ないんだがネぇ……。

 

――ワァァァァァァッ!

 

観客席の方も、私の心のように盛り上がってるようだネ。

 

「これじゃあ埒が明かないネ。ここは私が先に、切り札を切るのサ!」

 

「っ!」

 

私の両脇に風が集まり、やがて()()()()()を作り上げていく。

 

「懐かしいな。貴様の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)……」

 

「そうネ! これが私の切り札『疾駆する嵐(アーリィ・テンペスト)』サ!」

 

超高速回転の風で作った実体のある分身、躱しきれるかナ?

 

「さて、これで三対一だが、許してほしいネ♪」

 

「御託はいい、掛かって来い」

 

「もちろんサぁ!」

 

分身2体と合わせて、3方向から同時攻撃を仕掛ける! さぁ、どうするネ!?

 

 

「ふんっ!」

 

 

「なっ……!?」

 

超高速回転の風は、装甲はおろかブレードすら削り取る代物。それをチフユは……

 

 

分身を、エネルギー刃で縦一文字に切り裂いた。

 

 

「それは……」

 

「お前に敬意を表して、私も切り札を切らせてもらおう」

 

「零落、白夜……」

 

チフユ・オリムラを最強の座に押し上げた、単一仕様能力。自身のSEを消費することで、あらゆるエネルギーを無効化する諸刃の剣。

 

「さぁ、勝負はまだ決まってないぞ!」

 

「……あはははははっ!」

 

自然に笑いが込み上げてきた。そうサ……これを……これを待っていたのサッ!!

 

「もちろん、まだまだ続けるヨ!」

 

「そうか、なら来い」

 

「応!」

 

斬られた分身を再生させると、私はチフユに――あの日から、望み続けた対戦相手に――向かって吶喊していった。




束、オリ主と更識姉妹を巻き込んでジェバンニになる。さすがは原作のジョーカー、使い勝手が良すぎて、乱用しないか自分でも心配。

ちーちゃんとアーリィの試合開始。正直、第2世代のテンペスタと第4世代の桜花じゃ差があり過ぎると思いますが、そこはそこ、アーリィには頑張ってもろて。
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