少し短いですが、前後編に分けました。
IS学園にはアクの強いやつが、毎年必ず入ってくる。特に今年は、弟である一夏が入学したものだから、各国も情報収集のつもりなのか、代表候補生を次々に送り込んでくる始末だ。
……と思っていた時期が、私にもあった。
「宮下、詳しく説明しろ」
目の前には1年4組の生徒。私は1組の担任だが、学年主任も兼任しているから無関係とは言い難い。いや、むしろ夏前のクラス代表戦からこっち、ずっと面倒事に巻き込まれている気がする。
「先ほど言った通り、アーリィと勝負してやってください」
ああ、確かにさっき言ってたことと、同じことを言ってるな!
すっと、視線を宮下から隣に向ける。
「チフユ、久しぶりなのサ」
「ああ。だがお前、その右目と右腕は……」
私がこのイタリア国家代表と戦う
「ああ、あの大会の後、『テンペスタⅡ』の起動実験に失敗してネ、ご覧の有様サ。とはいえ、チフユとの勝負にはさほどの影響もないネ」
「いやお前、まだ勝負するなんて……」
「織斑先生」
「なんだ、更識姉」
「この勝負、引き受けてください」
「はぁ?」
どうして真剣な顔をしてそんなことを言い出す?
「実は……」
更識姉はアーリィにと出会ってからの経緯を話し始めて……そして早速頭が痛い。
「私と勝負したいがために亡国機業に入ろうとしてたぁ!?」
「ま、国を捨てる決心をした時には、先方が潰れてたらしいんだがネ」
「そういう問題じゃない!」
どうして私と戦うために、テロリストになるんだ! 理解不能!
「なので、未来のテロリスト予備軍を更生させるために、勝負を受けてください」
「……」
納得は出来んが、理解は出来た。つまり、第2の亡国機業を生まないために、こいつの要求を受けろと。
「しかしなぁ……突然勝負しろと言われても、ここはIS学園ではないんだぞ? ISを展開・模擬戦が出来る場所など……」
「そんなことがあろうかとぉ!!」
「束……」
そうだった。こんなトラブルに、奴が絡んで来ないはずがない。
「りったん、ちょ~っと手伝ってくれる?」
「またかぁ? まぁ乗り掛かった舟だし、仕方ねぇか」
「あっ、かんちゃんとチェシャ猫ちゃんも手伝ってもらうよ」
「「え?」」「何?」
宮下だけでなく、更識姉妹も?
「束、一体何をする気だ……?」
聞きたくないが、聞かねばならんだろう……。
「ふっふ~♪ 簡単な話だよちーちゃん」
「戦える会場が無いなら、作っちゃえばいいのさ♪」
ーーーーーーーーー
突然だが、京都府には海がある。
北の丹後地方が日本海に面していて、海水浴場も複数存在している。
そんな丹後地方のある京丹後市の沖、10kmのところに
突如ISアリーナが現れたんだから、住民は驚くしかないだろう。
「……どうしてこうなった」
ケイシー先輩が呟いたその一言が、IS学園全校生徒の気持ちを代弁していた。
「はぁ……まさか更識家の力を、こんなことに使う日が来るなんて……」
アリーナのピットで、刀奈が疲れた顔をしながら『想定外』の扇子で扇いでいた。
今刀奈が言った通り、更識家の力を使って京都府のお偉いさんに『沖合の使用許可』を
俺も簪も頑張った。マジ頑張った。日が暮れる前に完成させた自分達を褒めてやりたい。
「篠ノ之博士は分かっていましたが、やはり宮下さんも頭おかしいですわ……」
「まぁ、りったんだからね~」
おいオルコットとのほほん、どういう意味だ。
「さぁちーちゃん、これで心置きなく戦えるね?」
「いや、お前ら……」
まさかの力技に、織斑先生も困惑で顔が歪んでいた。
「ちなみに
「ぬあぁぁぁぁぁ!」
「ち、千冬姉! 落ち着いて!」
完全に退路が塞がれて、織斑先生ご乱心。一夏の声も聞こえやしない。
「ほら先生、観客も待ってますから、早く準備してください」
「陸、お前鬼だな……」
そんなこと言っても一夏、本当に観客席は満員御礼なんだって。なにせ京都府に許可をもらった時のあちらの条件が
『府民が優先的に観戦できること』
だったからな。キャノンボール・ファストでは遠くて見に行けない府民に見せたいんだと。おかげでさっきも言った通り、1万人収容できる観客席はIS学園の全校生徒を含め、満員御礼だ。
「くっ……! 分かった、腹を括ろう」
そう言って織斑先生は、待機状態にしていた桜花を展開すると、アーリィも自分のISを展開して、カタパルトに乗ってアリーナに向けて出撃していった。
あのIS、アーリィの欠けた腕を展開した装甲で義手みたいにしてたな。なるほど、ああいう使い方もあるのか……。
ーーーーーーーーー
カタパルトから射出されてアリーナ中央の空中に留まると、チフユも私と向かい合うように空中に留まったネ。あれが話に聞いていた、チフユの新しいIS……。
「すまんが、ブランクが長いものでな。束が作った最新鋭とはいえ、お前を満足させられるかどうかは分からん」
「そんなの気にしないサ。手を抜きさえしなければ、私としては満足だヨ」
そう、私が望むのは、手加減なしの真剣勝負。ただそれだけサね。
「むしろ私のIS『テンペスタ』は第2世代機、ちょうどいいハンデサ」
「そうか……いいだろう。あの日、一夏を助けるために試合を棄権したことに対して後悔は無い。だが、あの時やり残しがあるなら、今ここで片付けるとしよう」
「そうこなくっちゃネ!」
チフユが機体左側にマウントされているブレードを構えるのに合わせ、私も右腕の義手から風の槍を生成して構える。
そして、試合開始のブザーが鳴った――
「征くぞ!」
「応なのサ!」
チフユが突っ込んでくる軌道に対して、手に持った風の槍を投擲する。その槍をチフユは少しブレードを傾けただけで、明後日の方向に弾く。やるネ!
「まだまだ征くヨ!」
間髪入れず、風の槍を次々に生成しては投げる。チフユの武装は接近特化。まずは近づけないことが肝要サ。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
右腕の義手、機械の力で人間の限界を超えて投げられる槍を、チフユは余さず弾いていく。
「チフユ、本当に人間なのサ?」
「馬鹿が。どう見ても人間だろう」
いやぁ……生身の人間が、あの数の風の槍をブレード一本で弾き切るとか、普通あり得ないんだがネぇ……。
――ワァァァァァァッ!
観客席の方も、私の心のように盛り上がってるようだネ。
「これじゃあ埒が明かないネ。ここは私が先に、切り札を切るのサ!」
「っ!」
私の両脇に風が集まり、やがて
「懐かしいな。貴様の
「そうネ! これが私の切り札『
超高速回転の風で作った実体のある分身、躱しきれるかナ?
「さて、これで三対一だが、許してほしいネ♪」
「御託はいい、掛かって来い」
「もちろんサぁ!」
分身2体と合わせて、3方向から同時攻撃を仕掛ける! さぁ、どうするネ!?
「ふんっ!」
「なっ……!?」
超高速回転の風は、装甲はおろかブレードすら削り取る代物。それをチフユは……
分身を、エネルギー刃で縦一文字に切り裂いた。
「それは……」
「お前に敬意を表して、私も切り札を切らせてもらおう」
「零落、白夜……」
チフユ・オリムラを最強の座に押し上げた、単一仕様能力。自身のSEを消費することで、あらゆるエネルギーを無効化する諸刃の剣。
「さぁ、勝負はまだ決まってないぞ!」
「……あはははははっ!」
自然に笑いが込み上げてきた。そうサ……これを……これを待っていたのサッ!!
「もちろん、まだまだ続けるヨ!」
「そうか、なら来い」
「応!」
斬られた分身を再生させると、私はチフユに――あの日から、望み続けた対戦相手に――向かって吶喊していった。
束、オリ主と更識姉妹を巻き込んでジェバンニになる。さすがは原作のジョーカー、使い勝手が良すぎて、乱用しないか自分でも心配。
ちーちゃんとアーリィの試合開始。正直、第2世代のテンペスタと第4世代の桜花じゃ差があり過ぎると思いますが、そこはそこ、アーリィには頑張ってもろて。