俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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前回の宣言通り、一夏と束のデート回です。
シシカバブは有言実行の人間なのです。(今まで付いた嘘から目を逸らしながら)


第120話 束さんデート

修学旅行2日目。今日はクラスごとの行動になるらしい。

 

「織斑、お前は例によって撮影班だ」

 

どうしようか考える前に、千冬姉から宣告されてしまった。いやまぁ、いいけどさ……。

 

「うぐぐ……今日こそは私と一緒にと思っていたのに……」

 

「箒さんも、大概諦めが悪いですわね」

 

「そういうセシリアはいいよねー。昨日はほぼ一日中一夏と一緒だったんだし―」

 

「ホントよねー。昨日の夜はほとんど何も出来なかったし」

 

「不覚だ。まさかマッサージの気持ちよさに眠ってしまうとは」

 

「「「「……///」」」」

 

「ん? どうしたんだ?」

 

昨日のことを思い出したのか、ラウラ以外の4人が顔を真っ赤にして俯いちまった。正直、俺も思い出したら……。

 

 

「いっくん、ゲットだぜ~!」

 

 

「のわぁぁぁ!!」

 

突然腕を引っ張られたと思ったら、俺の足が地面から浮いていた。なんだぁ!?

 

「束ぇ! お前一体織斑をどうする気だ!」

 

「ちょ~っといっくんを借りてくよ~♪」

 

え、束さん? そう思って見上げたら、視線の先にエプロンスカートの中が……って馬鹿野郎!

 

「や~ん、いっくんのエッチ~♪」

 

「不可抗力ですっ!!」

 

努めて視線を逸らすと……

 

「束さん、俺の目がおかしくなってないのであれば、ISなしで飛んでません?」

 

「そんなわけないじゃ~ん。ちょっと光学迷彩を起動してるから、目に映らないだけだよ」

 

「はぁ」

 

なんだろう、もはや光学迷彩ぐらいじゃ驚かなくなってる自分がいる。

 

「それじゃみんな、バッハハ~イ♪」

 

「おいコラ束ぇぇ!」

 

怒号を上げる千冬姉や、唖然とするみんなを置き去りにして、俺は束さんに空の上へ拉致られるのだった。

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

京都上空に連れ去られること10分ほど、降りた先は昨日セシリアと巡ったルートから少し外れた空き地だった。

 

「とうちゃ~く!」

 

「ええっと……束さん、どうして俺を拉致ったんです?」

 

「ぶ~! 拉致じゃないよ~!」

 

「拉致じゃないって……」

 

何の説明もなく人を連れ出すのが拉致ではないと?

 

「それじゃあどういう理由で?」

 

「それはねぇ……」

 

 

「束さん、いっくんとデートがしたいのだ!」

 

 

「……パードゥン?」

 

「だ~か~ら~! いっくんとデート!」

 

「デート? つまり束さんは、俺と町巡りがしたいと?」

 

「いえ~す! 昨日はくーちゃんと一緒に楽しんだけど、やっぱりいっくんとの思い出も欲しいんだよ♪……ダメ?」

 

「お、おおう……」

 

そ、そんな最後に上目遣いで聞かれたら、断れないじゃないですか……! くそっ、これが(一目)惚れた弱みってやつか!

 

「もぅ、分かりましたよ。デートしましょう」

 

「やった~!」

 

嬉しいのは分かったんで、そんなピョンピョン跳ねないで。だから頭のうさ耳と相まって『紫兎』なんてあだ名で呼ばれるんですよ。

 

「よーし! それじゃあさっそく行こう行こう!」

 

「はいはい……あ、束さん」

 

「な~に?」

 

ぐいぐい先に行こうとする束さんを呼び止めると、俺は束さんの手を握った。

陸や更識さんの惚気に耐えながらも見て覚えて、箒達で実践した『女性のエスコート法』。今こそここで活かすべきだ。

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

「う、うん……」

 

さっきの勢いはどこに行ったのか、束さんは顔を赤くして少し俯いてしまった。けれど手を繋いだ方の肩をピッタリこちらに付けてくる。やばい、俺もドキドキしてきたぞこれ。

 

ーーーーーーーーー

 

束さんとのデートが始まった。俺も束さんも言葉を発することなく、ただただお互いの手と腕を密着させながら歩いている状況。うん、マジどうしよう。

 

「あっ」

 

ふと周りを見回すと、昨日鈴達と食べたジェラート屋が目に入った。よしっ、一旦ここでクールタイムだ!

 

「束さん、ジェラート食べません?」

 

「ジェラート? いいよ、食べよう」

 

束さんからもOKが出たから、さっそく2つ買って、片方を束さんに渡す。

 

「あま~い! こういうお店で食べるのって、ホント久々ぶりだよ」

 

「昨日クロエさんと一緒だった時もですか?」

 

「も~いっくん。いくらくーちゃんだからって、デート中に他の女の子の話題を出すのはタブーだぞ~」

 

「あっ、すみません」

 

鼻をチョンと押されて注意されてしまった。確かに箒にもよく注意されてたな。反省。

 

「それで、くーちゃんと一緒だった時だっけ? くーちゃんの場合、こういったお店より、お寺とか工芸品みたいなものに興味があるみたいだったよ」

 

「工芸品、ですか?」

 

「うん。昨日も京つげぐしって櫛をお揃いで買ったんだよね~♪」

 

「櫛ですか。確かに束さんもクロエさんも、髪長いですからね」

 

クロエさんの髪を、束さんが梳く姿を幻視した。もしかしたら近い将来、本当にあり得る光景なのかもしれない。

 

「ふふっ、それなら束さんの髪を、いっくんに梳いてもらおうかな~?」

 

「いいですよ」

 

「ぴゅっ?」

 

まさか俺が二つ返事するとは思わなかったのか、束さんが固まった。

 

「そ、それじゃあ、今度やってもらおうかな……」

 

横髪を弄りながら、ちらちらこちらを見る束さん。こんなに可愛い姿を見るの、今回が初めてだ。

そうしている内に溶け始めたジェラートを、俺達は慌てて食べるのだった。

 

ーーーーーーーーー

 

クールタイムどころかお互いドキドキが止まらなくなった状態で、次に俺達が立ち寄ったのが清水寺……だったのだが。

 

「人っ子一人いないね~?」

 

「そうですね」

 

束さんと二人、不思議に思いながらも敷地に入ろうとしたら、一人の女性が慌てた様子でやってきた。

 

「ちょっとちょっと! 今映画の撮影中だから立ち入りきん……って、織斑一夏!?」

 

あの、注意するか驚くか、どちらかにしてもらえないですか?

 

「立ち入り禁止なんですね、お邪魔しまし……」

 

「ちょっと待ったぁぁぁ!」

 

「「は?」」

 

回れ右して帰ろうとしたら、腕を掴まれていた。

 

「君にスペシャルゲスト役で出てもらえば、前評判で話題沸騰間違いなしよ!」

 

「いや、ちょっと……」

 

なんかよく分からないことを言われながら、俺はズルズルと敷地内に連れ込まれていった。束さん、付いてくるんじゃなくて助けてくださいよ!

 

 

「スペシャルゲストをお連れしました~!」

 

張り詰めた空気の撮影現場だったが、俺達の姿を見た途端、女性陣・男性陣ともに『おおっ!』と声が上がった。ええ……?

 

「本物の織斑一夏君だ!」

 

「おお、我らが男達の希望、織斑一夏!」

 

「監督! 俺主役から降りるんで、彼に主役を! それと織斑君、あとでサインもらえないかな? いとこが君のファンでね」

 

な、なんか役者の人達が言い出したんだけど!? ダメだろそれは!

 

「う~む……」

 

そんな中、監督と呼ばれていた無精ひげの男の人だけが、首を捻っていた。さすがに役者を急遽追加とか無理ですよね?

 

「やっぱりダメですよね? それじゃあ俺達はこれで……」

 

「ヒロイン、君にきーめた!」

 

ずびしっ! と監督が指さしたのは……束さんだった。

 

「へ?」

 

突然のことに、束さんもぽかーん。

 

「脚本を30分で書き直す! スタイリスト準備! あとは撮影しながら各自対応できるように待機!」

 

あれよあれよという間に、俺達の意思を完全に無視して話は進んでいった。

 

 

 

 

「さぁ、追い詰めたぞ!」

 

清水の舞台を背に、ドレス姿の束が黒服サングラスの男達に囲まれていた。

 

「諦めて私と結婚するんだなっ! がっはっは!」

 

いかにも悪の親玉と言わんばかりの男が高笑いすると、

 

「あの人は風。留まることを知らない人。ならば私も風となりましょう」

 

束は毅然とした表情でそう告げて、清水の舞台から飛び降りた。

 

「何っ!?」

 

慌てた親玉が走り寄り下を覗き込む。

 

――ブォ!

 

「なぁぁ!?」

 

突然下から吹き上げた風に驚いた親玉が次に目にしたのは、束をお姫様抱っこして飛翔する、白式に乗ったタキシード姿の一夏だった。

 

「ああ、私の愛しき人……風になって迎えに来てくれた……」

 

「私は風。君が呼ぶならどこへでも駆けつけよう」

 

そして二人は京都の空へ飛び立っていった。

 

 

 

 

「カァァァット!」

 

監督の大声が響く。そして監督が頭の上で丸を作ると、

 

「「「「お疲れさまでしたぁ!」」」」

 

全員大拍手で撮影が終わった。

 

「いやぁ! 急な配役、よくやってくれたよ!」

 

「ホントですよ……」

 

タキシードから急いで学園の制服に着替えた俺に、監督が肩を叩きながら声をかけてくれたけど、マジで勘弁してくれよ。

しかも撮影でIS使うとかどうなんだよ。しかもわざわざIS学園に確認取ったらOK出たとか、ホントかよ……?

 

「いっくん、カッコ良かったよぉ♪」

 

「うぐっ、ありがとうございます……」

 

いつものエプロンドレスに着替え終わった束さんが、俺の正面からハグしてきて、む、胸が……。

 

「ははっ、君も年頃の男の子なんだね。その人、もしかして彼女かい?」

 

「違いまーす」

 

「おや、違うのかい?」

 

「束さんは、いっくんのお嫁さんでーす!!」

 

「束さん!?」

 

そんなここで宣言しなくていいですから! しかも顔真っ赤にしてまで言う!?

しかも周りの人達が『ヒューヒュー!』とか囃しててくるし!

 

「そ、それじゃあ皆さん、俺達はこれで~~~!!」

 

これ以上騒ぎが大きくなる前に、俺は束さんを抱えて清水寺から脱兎のごとく逃げ出した。

 

 

 

「ねぇ監督。さっき織斑一夏君が呼んでた『束さん』って……」

 

「いやいや、まさか……」

 

「私、従妹がIS学園に通ってるんですけど、そこで聞いた特徴と一致してるんですよねぇ……」

 

「……」

 

 

「「「「まさか、篠ノ之束博士!?」」」」

 

 

 

……気付かれる前に逃げ出せてよかった……。

 

ーーーーーーーーー

 

這う這うの体で逃げ出した俺達が辿り着いたのは、京都市内の河原だった。

 

「まったく……どうしてあんなこと言ったんですか」

 

「だって……」

 

問い詰めてみたら、束さんが拗ねたような顔をしてきた。

 

「だって、不安だったんだもん」

 

「不安?」

 

「束さん、ちゃんといっくんに愛されてるか不安だったんだもん。いっくんのお嫁さんになったのだって、箒ちゃん達よりも日が浅いし……」

 

「束さん……」

 

箒達も含め、みんな平等にしていたつもりだったんだけどな。いや、()()だからこそ、束さんは『みんなと差が埋まらない』と思ってしまったのか。これは俺の失態だ。

 

「すみません、束さんの不安に気付けなくて……」

 

「謝らないでよ。今のは束さんの我が侭なんだから。でもそうだね、もし束さんの我が侭を許してくれるなら」

 

そこまで言うと、束さんは自分の口元を指さして

 

 

「いっくんから、欲しいな。そして束さんの不安、取っ払って欲しいな」

 

 

少し潤んだ目の束さんの腰に腕を回して引き寄せると、束さんの唇に自分の唇を重ねることで返答した。

 

「いっくん、愛してる」

 

 

 

ここが鴨川の河原……通称カップル河原だと知ったのは、束さんと一緒に千冬姉からお説教を受けた後だった。




うわ~……自分で書いといてうわ~……何がとは言いませんがうわ~……
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