シシカバブは有言実行の人間なのです。(今まで付いた嘘から目を逸らしながら)
修学旅行2日目。今日はクラスごとの行動になるらしい。
「織斑、お前は例によって撮影班だ」
どうしようか考える前に、千冬姉から宣告されてしまった。いやまぁ、いいけどさ……。
「うぐぐ……今日こそは私と一緒にと思っていたのに……」
「箒さんも、大概諦めが悪いですわね」
「そういうセシリアはいいよねー。昨日はほぼ一日中一夏と一緒だったんだし―」
「ホントよねー。昨日の夜はほとんど何も出来なかったし」
「不覚だ。まさかマッサージの気持ちよさに眠ってしまうとは」
「「「「……///」」」」
「ん? どうしたんだ?」
昨日のことを思い出したのか、ラウラ以外の4人が顔を真っ赤にして俯いちまった。正直、俺も思い出したら……。
「いっくん、ゲットだぜ~!」
「のわぁぁぁ!!」
突然腕を引っ張られたと思ったら、俺の足が地面から浮いていた。なんだぁ!?
「束ぇ! お前一体織斑をどうする気だ!」
「ちょ~っといっくんを借りてくよ~♪」
え、束さん? そう思って見上げたら、視線の先にエプロンスカートの中が……って馬鹿野郎!
「や~ん、いっくんのエッチ~♪」
「不可抗力ですっ!!」
努めて視線を逸らすと……
「束さん、俺の目がおかしくなってないのであれば、ISなしで飛んでません?」
「そんなわけないじゃ~ん。ちょっと光学迷彩を起動してるから、目に映らないだけだよ」
「はぁ」
なんだろう、もはや光学迷彩ぐらいじゃ驚かなくなってる自分がいる。
「それじゃみんな、バッハハ~イ♪」
「おいコラ束ぇぇ!」
怒号を上げる千冬姉や、唖然とするみんなを置き去りにして、俺は束さんに空の上へ拉致られるのだった。
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京都上空に連れ去られること10分ほど、降りた先は昨日セシリアと巡ったルートから少し外れた空き地だった。
「とうちゃ~く!」
「ええっと……束さん、どうして俺を拉致ったんです?」
「ぶ~! 拉致じゃないよ~!」
「拉致じゃないって……」
何の説明もなく人を連れ出すのが拉致ではないと?
「それじゃあどういう理由で?」
「それはねぇ……」
「束さん、いっくんとデートがしたいのだ!」
「……パードゥン?」
「だ~か~ら~! いっくんとデート!」
「デート? つまり束さんは、俺と町巡りがしたいと?」
「いえ~す! 昨日はくーちゃんと一緒に楽しんだけど、やっぱりいっくんとの思い出も欲しいんだよ♪……ダメ?」
「お、おおう……」
そ、そんな最後に上目遣いで聞かれたら、断れないじゃないですか……! くそっ、これが(一目)惚れた弱みってやつか!
「もぅ、分かりましたよ。デートしましょう」
「やった~!」
嬉しいのは分かったんで、そんなピョンピョン跳ねないで。だから頭のうさ耳と相まって『紫兎』なんてあだ名で呼ばれるんですよ。
「よーし! それじゃあさっそく行こう行こう!」
「はいはい……あ、束さん」
「な~に?」
ぐいぐい先に行こうとする束さんを呼び止めると、俺は束さんの手を握った。
陸や更識さんの惚気に耐えながらも見て覚えて、箒達で実践した『女性のエスコート法』。今こそここで活かすべきだ。
「それじゃあ、行きましょう」
「う、うん……」
さっきの勢いはどこに行ったのか、束さんは顔を赤くして少し俯いてしまった。けれど手を繋いだ方の肩をピッタリこちらに付けてくる。やばい、俺もドキドキしてきたぞこれ。
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束さんとのデートが始まった。俺も束さんも言葉を発することなく、ただただお互いの手と腕を密着させながら歩いている状況。うん、マジどうしよう。
「あっ」
ふと周りを見回すと、昨日鈴達と食べたジェラート屋が目に入った。よしっ、一旦ここでクールタイムだ!
「束さん、ジェラート食べません?」
「ジェラート? いいよ、食べよう」
束さんからもOKが出たから、さっそく2つ買って、片方を束さんに渡す。
「あま~い! こういうお店で食べるのって、ホント久々ぶりだよ」
「昨日クロエさんと一緒だった時もですか?」
「も~いっくん。いくらくーちゃんだからって、デート中に他の女の子の話題を出すのはタブーだぞ~」
「あっ、すみません」
鼻をチョンと押されて注意されてしまった。確かに箒にもよく注意されてたな。反省。
「それで、くーちゃんと一緒だった時だっけ? くーちゃんの場合、こういったお店より、お寺とか工芸品みたいなものに興味があるみたいだったよ」
「工芸品、ですか?」
「うん。昨日も京つげぐしって櫛をお揃いで買ったんだよね~♪」
「櫛ですか。確かに束さんもクロエさんも、髪長いですからね」
クロエさんの髪を、束さんが梳く姿を幻視した。もしかしたら近い将来、本当にあり得る光景なのかもしれない。
「ふふっ、それなら束さんの髪を、いっくんに梳いてもらおうかな~?」
「いいですよ」
「ぴゅっ?」
まさか俺が二つ返事するとは思わなかったのか、束さんが固まった。
「そ、それじゃあ、今度やってもらおうかな……」
横髪を弄りながら、ちらちらこちらを見る束さん。こんなに可愛い姿を見るの、今回が初めてだ。
そうしている内に溶け始めたジェラートを、俺達は慌てて食べるのだった。
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クールタイムどころかお互いドキドキが止まらなくなった状態で、次に俺達が立ち寄ったのが清水寺……だったのだが。
「人っ子一人いないね~?」
「そうですね」
束さんと二人、不思議に思いながらも敷地に入ろうとしたら、一人の女性が慌てた様子でやってきた。
「ちょっとちょっと! 今映画の撮影中だから立ち入りきん……って、織斑一夏!?」
あの、注意するか驚くか、どちらかにしてもらえないですか?
「立ち入り禁止なんですね、お邪魔しまし……」
「ちょっと待ったぁぁぁ!」
「「は?」」
回れ右して帰ろうとしたら、腕を掴まれていた。
「君にスペシャルゲスト役で出てもらえば、前評判で話題沸騰間違いなしよ!」
「いや、ちょっと……」
なんかよく分からないことを言われながら、俺はズルズルと敷地内に連れ込まれていった。束さん、付いてくるんじゃなくて助けてくださいよ!
「スペシャルゲストをお連れしました~!」
張り詰めた空気の撮影現場だったが、俺達の姿を見た途端、女性陣・男性陣ともに『おおっ!』と声が上がった。ええ……?
「本物の織斑一夏君だ!」
「おお、我らが男達の希望、織斑一夏!」
「監督! 俺主役から降りるんで、彼に主役を! それと織斑君、あとでサインもらえないかな? いとこが君のファンでね」
な、なんか役者の人達が言い出したんだけど!? ダメだろそれは!
「う~む……」
そんな中、監督と呼ばれていた無精ひげの男の人だけが、首を捻っていた。さすがに役者を急遽追加とか無理ですよね?
「やっぱりダメですよね? それじゃあ俺達はこれで……」
「ヒロイン、君にきーめた!」
ずびしっ! と監督が指さしたのは……束さんだった。
「へ?」
突然のことに、束さんもぽかーん。
「脚本を30分で書き直す! スタイリスト準備! あとは撮影しながら各自対応できるように待機!」
あれよあれよという間に、俺達の意思を完全に無視して話は進んでいった。
「さぁ、追い詰めたぞ!」
清水の舞台を背に、ドレス姿の束が黒服サングラスの男達に囲まれていた。
「諦めて私と結婚するんだなっ! がっはっは!」
いかにも悪の親玉と言わんばかりの男が高笑いすると、
「あの人は風。留まることを知らない人。ならば私も風となりましょう」
束は毅然とした表情でそう告げて、清水の舞台から飛び降りた。
「何っ!?」
慌てた親玉が走り寄り下を覗き込む。
――ブォ!
「なぁぁ!?」
突然下から吹き上げた風に驚いた親玉が次に目にしたのは、束をお姫様抱っこして飛翔する、白式に乗ったタキシード姿の一夏だった。
「ああ、私の愛しき人……風になって迎えに来てくれた……」
「私は風。君が呼ぶならどこへでも駆けつけよう」
そして二人は京都の空へ飛び立っていった。
「カァァァット!」
監督の大声が響く。そして監督が頭の上で丸を作ると、
「「「「お疲れさまでしたぁ!」」」」
全員大拍手で撮影が終わった。
「いやぁ! 急な配役、よくやってくれたよ!」
「ホントですよ……」
タキシードから急いで学園の制服に着替えた俺に、監督が肩を叩きながら声をかけてくれたけど、マジで勘弁してくれよ。
しかも撮影でIS使うとかどうなんだよ。しかもわざわざIS学園に確認取ったらOK出たとか、ホントかよ……?
「いっくん、カッコ良かったよぉ♪」
「うぐっ、ありがとうございます……」
いつものエプロンドレスに着替え終わった束さんが、俺の正面からハグしてきて、む、胸が……。
「ははっ、君も年頃の男の子なんだね。その人、もしかして彼女かい?」
「違いまーす」
「おや、違うのかい?」
「束さんは、いっくんのお嫁さんでーす!!」
「束さん!?」
そんなここで宣言しなくていいですから! しかも顔真っ赤にしてまで言う!?
しかも周りの人達が『ヒューヒュー!』とか囃しててくるし!
「そ、それじゃあ皆さん、俺達はこれで~~~!!」
これ以上騒ぎが大きくなる前に、俺は束さんを抱えて清水寺から脱兎のごとく逃げ出した。
「ねぇ監督。さっき織斑一夏君が呼んでた『束さん』って……」
「いやいや、まさか……」
「私、従妹がIS学園に通ってるんですけど、そこで聞いた特徴と一致してるんですよねぇ……」
「……」
「「「「まさか、篠ノ之束博士!?」」」」
……気付かれる前に逃げ出せてよかった……。
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這う這うの体で逃げ出した俺達が辿り着いたのは、京都市内の河原だった。
「まったく……どうしてあんなこと言ったんですか」
「だって……」
問い詰めてみたら、束さんが拗ねたような顔をしてきた。
「だって、不安だったんだもん」
「不安?」
「束さん、ちゃんといっくんに愛されてるか不安だったんだもん。いっくんのお嫁さんになったのだって、箒ちゃん達よりも日が浅いし……」
「束さん……」
箒達も含め、みんな平等にしていたつもりだったんだけどな。いや、
「すみません、束さんの不安に気付けなくて……」
「謝らないでよ。今のは束さんの我が侭なんだから。でもそうだね、もし束さんの我が侭を許してくれるなら」
そこまで言うと、束さんは自分の口元を指さして
「いっくんから、欲しいな。そして束さんの不安、取っ払って欲しいな」
少し潤んだ目の束さんの腰に腕を回して引き寄せると、束さんの唇に自分の唇を重ねることで返答した。
「いっくん、愛してる」
ここが鴨川の河原……通称カップル河原だと知ったのは、束さんと一緒に千冬姉からお説教を受けた後だった。
うわ~……自分で書いといてうわ~……何がとは言いませんがうわ~……