アーリィを織斑先生に押し付けた夜、簪と部屋でマッタリしていると
――コンコン
「どちらさん?」
「私よ」
「お姉ちゃん?」
ドアを開けた先に、寝間着姿の刀奈が立っていた。露出は少ないが、あまり外を出歩くような姿じゃない。
「ちょっと入っていいかしら?」
「まぁ、いいけど」
「やた♪」
おいコラ、入っていいとは言ったが、ベッドにダイブしていいとは言ってないぞ。
「お姉ちゃん、まさかここに泊まるために来た……?」
「せいか~い!」
「おい」
「というのはついでで、本当の用事は別にあるのよ」
「ついでに泊まる気なんだ……」
刀奈よ、妹に呆れられてるぞ。
「で? 何の用だ?」
「んもぅ、せっかちねぇ」
「明日、デートしましょ?」
「……突然だな」
「お姉ちゃんらしくない……」
「らしくないってなによぉ!?」
「ヘタレてない」
「簪ちゃん!?」
ああ、簪は刀奈のこと、そう思ってたんだな。当然俺もだが。
「そ、それで陸君、OK?」
「いやまぁ、明日は日曜だし、簪のニチアサに付き合った後は特に用事もないが」
「じ~……」
簪、そんなジト目で見んな。
「簪ちゃんも一緒にデートする?」
「行く!」
「すごい食いつき!?」
提案した刀奈の方が驚くぐらい、簪が前のめりに食いついてきた。
「それじゃあ、集合は……」
「ニチアサは7時半から9時まで」
「なら、10時半にレゾナンス前の広場に集合ね」
「いいんだが……まぁいいか」
『同じ部屋から出発するのに、わざわざ待ち合わせをする必要はあるのだろうか? 』とは口には出さない。簪と付き合ってから、俺、学んだ。
「んふふ~♪ 明日が楽しみだわ~」
「それは分かったから、大の字になって寝るな。俺と簪が寝れねぇだろ」
「この拠点は私が占拠した~!」
「まったく、お姉ちゃん……」
ホント、まったくだ。テンション上がってガキっぽい言動しやがって。
「こうなったら、陸」
「ん?」
簪が耳打ちしてくる。……なるほど、それでいくか。
「二人とも?」
「えいっ!」
「うりゃ!」
「え、ええ!?」
大の字に寝転がる刀奈に、簪と左右から腕ごと抱き着く。さらに足を絡ませて固定、完全に抱き枕扱いだ。
「退かないから仕方ない。刀奈にはこのまま、俺と簪の抱き枕になってもらおう」
「うん。お姉ちゃんもいつも抱き着いてばっかりだから、たまには陸に抱き着かれてみるといい」
「しょ、しょしょしょしょんなっ! 二人とも落ち着いて! ね!?」
まさか俺達がこんなことをしてくるとは思ってなかったんだろう。顔を真っ赤にした刀奈が抵抗してくるが、そこは簪と協力してガッチリホールド。
「それじゃ、今日はもう寝るかー」
「そうだねー」
「二人とも!?」
慌てる刀奈を放って、簪が部屋の灯りを消す。
「ひぃぃぃん! 二人の温もりが~~!」
「おい、意外と余裕あるじゃねぇか」
「ないわよぉぉ! 恥ずかしさと幸せで頭がどうにかなっちゃいそう!」
まるで妄想を振り払うかのように頭を振る刀奈。
「「可愛い」」
「にゅあぁぁぁぁぁ!///」
その夜、刀奈は加虐心をそそられた俺と簪によって弄り倒されたのだった。
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翌日、ニチアサ決めてから集合場所の広場で待っていると、つい1時間前まで一緒に仮〇ラ〇ダーを見ていた二人が現れた。
「お待たせ~」
「待った?」
手を振りながらやってきた二人に、俺も手を振り返す。
刀奈は薄い青のニットセーターに黒のフレアスカート、簪は白のプリーツシャツに青い肩ひもスカートという出で立ちだ。
「どうかしら?」
「おう、似合ってるぞ」
「うふふ、ありがとう」
「陸も、いいセンス」
「そうか? 雑誌に載ってた服装まんまで、面白味はまったくないが」
下がダークグリーンのパンツに、上が白のロングTシャツと紺のニットアウターっていう、典型的な服装だ。
「それじゃあ陸君、エスコートよろしくね♪」
そう言って、刀奈は俺の右腕に腕を絡めてきた。
「私も」
簪も左腕を絡めてきて……
「陸君?」
「どうしたの?」
「これ、絶対歩きづらいし悪目立ちするだろ」
両手に花ってレベルじゃねぇ。好奇や嫉妬の視線に刺されまくること間違いなしだろこれ。
「それは仕方ないわね、私や簪ちゃんって美少女と一緒なんだから」
「うん、仕方ない」
「自分で美少女言うたよ……否定しねぇけど」
「そ、そう……///」
「お姉ちゃん、そこで恥ずかしがるなら言わなきゃいいのに……」
俺の反撃にタジタジになる刀奈に呆れる簪。そんな二人を伴って、レゾナンスの中を巡り始めた。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
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その後、少し早めの冬物を買ったり、最近来るようになったらしいキッチンカーでフライドポテトを食べたりしながら、レゾナンスの中を見て回った。
ここに来るのも3回目ぐらいだが、まだ見てないエリアもあるんだよな。なんつー広さだ。
「~♪」
そんな中、刀奈はさっきから自分の右手を眺めながらニコニコしていた。
「お姉ちゃん、嬉しそうだね」
「それはそうよ! やっと私も陸君から
その右手薬指には、さっき買ったばかりのリングがはまっていた。
……簪が付けてて、刀奈には無いっていうのは、なぁ?
「今だから言っちゃうけど、ホントは簪ちゃんの右手を見るたびに羨ましかったのよ」
「そうだったんだ」
「それは悪かったな」
「いいのよ。ちゃ~んと私ももらえたわけだし!」
そういう刀奈の指のリングには、簪のものより透明度の高い緑色の石がはまっていた。
「ねぇ陸、お姉ちゃんのリングの石にも、何か宝石言葉があるの?」
「あるぞ」
簪の指輪を選んでた時、もし店にラピスラズリが無ければ、この石を買ってたと思う。
「え、宝石言葉って?」
「私の指輪に付いてるのはラピスラズリ。『永遠の誓い』って意味がある」
「おお~! なんかかっこいいわね! それじゃあ私のにも?」
「お姉ちゃんの石は……ペリドット?」
「いいや、刀奈のはスフェーンって石だ」
「聞いたことないわね。それで、この石の意味は?」
「それはだな……『永久不変』だ」
「永久、不変……」
簪の『永遠の誓い』に近い宝石言葉だな。だからこそ候補に挙がってたわけだが。
「そっか……でもね」
――チュッ
「なっ」
「お、お姉ちゃん!?」
「この指輪をもらわなくたって、陸君への想いは永久不変よ。もちろん、簪ちゃんへの想いは言うまでもなくね」
不意打ちで、刀奈にキスされた。お前、こんな人通りのあるところで……!
「大丈夫よ、周りからは見えない角度を狙ってやったから♪」
「お前なぁ……」
「お姉ちゃん……私もお店の前でハグしたから分かるけど」
「したのね……」
あったな、
「なんかテンション上がってきたわ! さぁ二人とも、もっと楽しみましょ!」
「おいおい」
「お、お姉ちゃん、引っ張らないで……!」
本人の申告通り、変な方向にテンションの上がった刀奈に俺と簪は腕を引かれ、まだ回ってないエリアに足を向けたのだった。
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「は~、今日はたくさん歩いたわね~」
「うん、結構疲れた……」
「それでもこれは買うのな」
全エリアの3割ほどを巡った辺りで外が暗くなったため、今日の買い物「デートだってば!」は終了した。
だが、そのままモノレールには乗らず、俺達は少し寄り道をしていた。
「一度食べてみたかったのよ、ミックスベリー味」
「お姉ちゃん、ミックスベリーの話知ってたんだ」
「ええ、でも一緒に食べてくれる相手がねぇ……あむっ」
刀奈のリクエストで、あのクレープ屋がある公園まで足を伸ばしたのだ。
ちなみに俺がブルーベリー、簪と刀奈がストロベリーを食べている。
「りーくくん」
「はいよ」
持っていたブルーベリーのクレープを刀奈の方に向けると、顔だけを乗り出してパクついてきた。
「ん~! 美味しい!」
「陸、私も」
「はいはい」
手に持ったブルーベリーをメトロノームのように左右に向ける簡単な作業。報酬は時々食べられる簪達の持つストロベリークレープ。
「はい陸君、あ~(pipipi!)もう誰よ、こんな時に」
俺にクレープを食べさせようとした刀奈だったが、鳴り出した電子音を聞くとそのクレープを俺に持たせて、懐から小型端末を取り出した。……ニットセーターからどう出した?
「え~っと……げっ!!」
「お、お姉ちゃん? すごい声が出たけど……」
ああ、年頃の女が出すのは憚られる声だったな。
「ま、まずいわ……」
端末から顔を上げた刀奈の顔は、眉がへの字になって口元が引き攣っていた。
「それで、何がまずいんだ?」
「奴が……」
「「奴?」」
「ログナー・カリーニチェが……」
「ログナー……それって、前ロシア代表だよね?」
「ってことは、刀奈の前任者か」
そいつがどうしたんだ? と思ってたら、刀奈は端末が落ちるのも構わず頭を抱えだした。
「あの"狐目年増"が、IS学園に来るのよぉぉぉぉぉ!!」
たっちゃん抱き枕。学園祭の時も簪を抱き枕にしてたし、これで姉妹コンプだね♪
たっちゃん、念願の指輪GET! 石は作中のスフェーン(永久不変)とタンザナイト(気高き者)とで迷いましたが、簪のラピスラズリ(永遠の誓い)に近い方を選びました。
前ロシア代表襲来決定。原作でも11巻でほんのちょっとしか出てないから、うまく書けるか今から不安……。(ならどうして登場させた)