俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

131 / 182
今回で幕間は終了になります。


第127話 帰国

ログナー・カリーニチェ(更識姉にまとわりつく虫)を宮下が分からせてから数日、狐目女は今日、祖国ロシアへ帰ることになる。

 

『次こそは、次こそはお姉さまをお救いいたしマス!!』

 

なんて寝言を捨て台詞として吐いて。

そうして泣きべそかきながら送迎の車に乗って去って行ったログナーを、私とアリーシャで見送った。

 

「チフユのことだから、あれも私のように学園教師として利用しようとすると思ってたヨ」

 

「馬鹿言うな。あれはお前以上に使い物にならん。却って私の頭痛の種が増えるだけだ」

 

「それ、ちゃっかり私のこともディスってないカ?」

 

お前だって似たようなものだろう。赴任初日のことを忘れたとは言わさんぞ。

 

「まぁいいサ。いつか必ず再戦させるから、覚悟しておくといいヨ」

 

「ほう? 最近更識妹と模擬戦をするようになったと聞いたが、打開策でも見つかったのか?」

 

「うぐっ!」

 

それだけの見栄を張ったのに、どうしてそこで言葉に詰まる……。

 

「こ、この前はいい勝負だったヨ?……武装を薙刀(夢現)オンリーにしてもらってだけド」

 

「おまっ、手加減してもらってそれか」

 

「だってカンザシの操縦技術もそうだが、あのISおかしすぎるヨ! チフユだって第4世代機なんて用意してもらったのに競り負けたんだろう!?」

 

「うっ!」

 

そ、それに関しては言い返せない……。確かに第4世代機である桜花が、第3世代機の打鉄弐式に負けたのは事実だ。

 

「あ~あ、私のテンペスタも、リクにチューンしてもらえたらナ~」

 

お前のところ(イタリア)でも、宮下に強化させる案は飲ませられそうにないか」

 

キャノンボール・ファストの頃(第72話)からあった、宮下に対する妨害工作。今まで接点のなかったイタリアならどうかと思ったんだが。

 

「国の上層部は及び腰だヨ。噂じゃ女性権利団体の息がかかった連中が、強固に反対してるって話サ。『よその国の人間に、専用機という自国の最先端技術を見せるわけにはいかない』って、それっぽい理由をつけてはいるがネ」

 

「素直に言えばいいだろうに。『男である宮下を頼ったら、『ISを動かせるのは女だけ』という自分達女権団の存在意義が消えてしまう』とな」

 

「チフユ。私だからいいが、他の頭が固い連中の前で言ったら面倒事になるヨ」

 

「安心しろ。毒を吐く相手ぐらいは選んでいる」

 

これまでのやり取りから、アリーシャが女権団と縁のない人間だという確証を得ている。それで何かあれば……私に人を見る目が無かったというだけだ。

 

「おっと、ちょっとした世話話だったはずが、少し話し込んでしまったようだ」

 

すでにログナーの乗った車は全く見えなくなっている。

 

「それじゃ、そろそろ戻ろうカ。今は1時限目の最中だろうが、次の授業はIS実習だからネ」

 

そう言って踵を返すアリーシャの後を追うように、私も校舎に向かって歩き出した。

 

「ふっ、お前も教師が板についたようで何よりだ」

 

「幸い今の1年は、やる気のある生徒が多いからネ。おまけに私の姿を見てるからか、実習中はおふざけもなく真剣にやってくれるヨ」

 

「そうか……」

 

アリーシャの右目と右腕。ISの起動実験の失敗で失われたもの。その実物を見せられて、生徒達も危機感みたいなものを覚えたのだろう。

ISだって機械である以上、乗用車と同じように事故だって起こり得る。それを意識させるのが、なかなか難しいのだ。

 

「ISの絶対防御だって、それこそ『絶対』じゃない。それを理解できて、初めて一人前サ」

 

「ああ。そういう意味では、お前を引っ張ってきた甲斐があったとも言えるな」

 

「おおっ、珍しくチフユに褒められたヨ」

 

「言ってろ」

 

さて、1組の2時限目の授業はIS理論か……。

 

ーーーーーーーーー

 

放課後の第3アリーナ。いつ面での模擬戦に、最近は別要素が加わるようになった。

 

「それじゃカンザシ、今日も頼むヨ」

 

「分かりました」

 

簪の模擬戦相手に、アーリィが加わったのだ。

GNドライブをコンデンサーに換装しても『それでも打鉄弐式とは戦いたくない!』と言われ、なかなか対戦相手を用意できなかったのだ。なのでアーリィの参加は渡りに船だった。最初は不服そうだった簪も、対戦相手がいないなら仕方ないと妥協した。

 

「カ、カンザシ! 早いっテ!」

 

「手加減し過ぎたら、模擬戦にならないじゃないですか」

 

「瞬殺されても模擬戦にならないヨ!」

 

……ただし、簪が全力で戦えないのが残念ではあるが。

そしてアリーナの別領域では

 

「いくよでゅっちー!」

 

――ドドドドドッ!

 

「さ、散弾は『花びらの装い』で逸らせるけど、その後の爆風までは無理だよぉ!」

 

「さあでゅっちー、『雷光』が弾切れになるのが先か、『花びらの装い』のエネルギーが切れるのが先か、勝負だよ~!」

 

「そんな勝負いやだぁぁぁぁ!」

 

今までいいカモだったのほほんが、榴散弾をばら撒く雷光を装備した途端、自分を狩る側に変わったのだから、デュノアにとっては不幸以外の何物でもないだろう。

ただこれだけ強化しても、簪やアーリィ、織斑先生レベルになると

 

『スピードを上げて、背後から殴ればいい』

 

が成り立ってあっさり墜とされるという。理不尽極まりない。……簪については俺にも一因はあるが。

さて、他の連中はと言えば

 

「うおりゃぁぁぁぁ!」

 

「甘いぞ嫁よ!」

 

「や、やべぇ!」

 

一夏とボーデヴィッヒの戦いは、一夏がレーゲンのAICに捕まって投了になりそうだ。

 

「終わりだ!」

 

「……なんてな」

 

「何っ!?」

 

――ブォォォンッ

 

「そ、その爪は……しまった!」

 

ボーデヴィッヒが驚くのも無理はない。AICによって固定したはずの白式。その左手からエネルギークローが発生して、結界を貫いたのだから。

 

「雪片だと振らないとダメだが、こいつ(エネルギークロー)なら体が動かなくても零落白夜を出せるんだよ!」

 

「くっ!」

 

白式から距離を取ろうとしたレーゲンだか、もう遅いだろう。それより先に、エネルギークローがそのままボーデヴィッヒの腹部に突き刺さる。

 

「それまで! 一夏さんの勝利ですわ!」

 

審判役をしていたオルコットの宣言で、両者ともISを待機状態にする。

 

「今回は私の完敗だな、見事だ」

 

「ありがとう、ラウラ。だけど、次に同じ手は通じないだろうから、また作戦を考えないとな」

 

「当たり前だ。今回は勝ちを譲るが、次も譲ってやるつもりはないぞ、ルーキー」

 

「了解しました少佐殿。精進するとしますよ」

 

「ふっ、そうしろ」

 

苦笑しながら敬礼する一夏に付き合う形で、ボーデヴィッヒもニヤッと笑いながら敬礼を返す。

 

「や~ら~れ~た~」

 

「こ、怖かったぁぁ……!」

 

のほほんとデュノアの勝負は、のほほんの弾切れが先だったようだ。どうせ間髪入れずに撃ちまくったのが敗因だろう。相手のエネルギー切れを狙うなら、砲撃の密度も考えないといけないからな。その辺が、のほほんの次の課題だな。

 

「うぅぅ、今日も負けたヨ……」

 

「アーリィさん、もっと粘ってもらわないと、私の訓練にならないです」

 

「もうやめて! 私のライフはもうゼロヨ!」

 

「簪の言うことも尤もなんだよなぁ。いくらテンペスタが第2世代とはいえ、簪も夢現オンリーってハンデでやってる以上、もうちょっと頑張ってほしいというか」

 

「無茶言うもんじゃないヨ!?」

 

「泣くぞ すぐ泣くぞ 絶対泣くぞ ほら泣くぞ」

 

「うわぁぁぁぁぁん!!」

 

あ、やべ。揶揄ったらマジで泣きやがった。

 

「宮下……」

 

「どうすんのよ、これ……」

 

模擬戦に参加していなかった篠ノ之と凰から、ジト目で睨まれた。あ~、視線冷てぇ……。

 

「みんな~、調子はど――陸君、一体何したのよ?」

 

アリーナに入ってきた刀奈に現場を見られて第一声がこれ。え、冤罪……とは言えねぇ……。

 

「まったく……アーリィさんは豆腐メンタルなんだから、丁寧に扱ってあげないとダメよ?」

 

「(°д°lll)タテナシも容赦ナカッタ!?」

 

泣いてたアーリィがガーンッて顔で固まる。

 

「それで、楯無さんがここに来たってことは、あの狐目は?」

 

「ええ。今さっき、彼女が乗った機がロシア領空に入ったって連絡が来たわ」

 

これで安眠できるわ、と心底安堵した顔でため息をついた。

 

「せっかくアリーナに来たんだし、陸君、私の模擬戦相手をよろしくね♪」

 

「え?」

 

いや俺、今日は模擬戦に加わる予定じゃ……

 

「あの狐目年増がいなくなったから、久々に体を動かしたいの! ほらほら、時間は有限よ!」

 

「ちょっ、まっ」

 

まだ俺承諾してねぇから! だから俺の背中を押したって――

 

「それじゃあ、始めるわよー!」

 

「あんぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

命の危険を感じて陰流を緊急展開した瞬間、俺は清き激情(クリア・パッション)の爆風でもみくちゃにされた。

て、手加減プリーズ……。

 

ーーーーーーーーー

 

――女性権利団体本部、代表執務室

 

「消さなきゃ……宮下陸と織斑一夏を消さなきゃ……」

 

先日から狂気に憑りつかれた山崎は、男性操縦者の二人を抹殺する方法を探し続けていた。

 

「暗殺……アメリカの連中も失敗したから無理。爆殺……IS学園に爆弾を持ち込むのは現実的じゃない。どうすれば……!」

 

女権団のデータベースを漁り、様々な作戦をシミュレートしてみるが、尽く成功率は0%。その結果が、さらに山崎を焦らせる。

 

「このままじゃ、私の身の安全が……! ん? これは……」

 

恐怖と狂気に染まった目に、あるデータが映る。それは以前壊滅した秘密結社、亡国機業から秘密裏に回収したデータ群だった。

 

(委員会に潰される程度の連中だったけど、もしかしたらがあるかも……)

 

山崎にとって、壊滅した組織と見下していた連中が得たデータ。だが、散々な結果ばかりを引いていた今、藁にも縋る思いでデータ群を流し読みしていく。

 

そして、引き当てた。

 

「はは……あははははははっ! これよ! これを使えば、あの汚れた雄猿共を消し去り、私の繁栄を守れるっ!」

 

血走った目でディスプレイを凝視する山崎。そのディスプレイに映っているドキュメントの先頭には、こう書かれていた。

 

 

『高度エネルギー収束砲 エクスカリバー』




ログナー、祖国へ帰る。もう出番はないと思います。情報少なすぎて書きづらいねん。(オイ

アーリィ、簪と模擬戦を始める。感想欄でもあったように、ちーちゃんを除いたらアーリィぐらいしか対戦(できる)相手がいないという……。

一夏、ボーデヴィッヒからついに勝ち星を取る。ただしほぼ奇襲に近い策だったので、次回以降は使えない手だと思います。そこまでラウラも馬鹿じゃない。

女権団、ついに禁じ手を使おうとする。原作では束が仕掛けた(ような描写がある)形ですが、本作では亡国機業から色々奪った女権団がやらかします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。