いつものニチアサを決めて、遅めの朝飯を食ってる時だった。
「クリスマスの前祝しましょう!」
「……」
無言で刀奈の額に手を当てる。うん、熱は無いな。
「陸君!?///」
「簪、病院の予約はしなくてよさそうだ」
「うん、分かった」
「ちょっとぉ!?」
スマホで近所の内科を調べてもらってたんだが、必要なかったか。
「で? いつからクリスマスに前祝が必要になったんですかねぇ?」
「お姉ちゃん、クリスマス・イヴって知ってる?」
「もう12月になったんだから、前祝ぐらいやってもいいじゃない!」
いや、そんな『どうだっ!』みたいに言われても……。
「何を馬鹿なこと言ってるんですかお嬢様」
「あら虚。本音もおはよう」
「おはようございます~」
布仏姉妹が、トーストの乗ったトレーを持って現れた。二人がこんな時間に食堂にいるなんて珍しいな。
「クリスマスも近いから、寮の飾り付けの準備があるのよ。それで学園側とのやり取りしてたら、ね」
「いちお、生徒会のお仕事だから~」
「へぇ」
あれか。玄関前にクリスマスツリーとか飾ったりすんのか?
「本当なら、生徒会長がやるべきなんだけど……」
「~♪(吹けてない口笛)」
「ダメな姉ですみません……」
「(゚ロ゚;)私ダメじゃないもんっ!」
いや、ダメダメだろう。
「なので、お嬢様は飾り付けの買い出しに行ってきてください」
「え~」
「なんでそんな嫌そうなんですか、まったく……」
「仕方ないな~、私が行くよ~」
刀奈が拒否ったから、とうとうのほほんが仕事し始めたぞ。どうすんだよこれ。
「かんちゃ~ん、一緒に買い出し行ってくれる~?」
「いいよ」
「え、簪ちゃんも行くの?」
「陸」
「はいはい、荷物持ちな」
「お~、ツーカーってやつだね~」
「ええっ、陸君まで行くの!?」
「お嬢様は行きたくなさそうでしたから、どうぞ寮でゴロゴロしててください」
「い~や~! 私も買い物行く~!」
((((なんだこの駄々っ子は……!?))))
椅子に座って手足をバタバタさせる2年生児。シュール過ぎるぞ……。
ーーーーーーーーーーーーー
結局買い物には刀奈も付いてくることになり、一応生徒会の仕事ということで制服のまま、俺達4人は毎度おなじみのレゾナンスにやって来た。
「ところで、飾り付けの買い出しって何を買うんだ?」
「ツリーは買わないよね?」
「おいおい簪、いくらなんでもツリーを買うとか……ないよな?」
一応のほほんに確認を取る。さすがにツリー持って帰るのは辛すぎる。
「えっとね~、各部屋のドアに飾るリースとか、窓に貼る
「クリスマスツリーは業者に頼んであって、来週あたりに届く手筈になってるわ」
虚先輩に持たされたであろうメモを見るのほほんに、刀奈が補足を入れる。そうだよな、さすがにツリーは頼んであるよな。
「それじゃあ、レッツ買い物~」
「ちょっと、本音!」
「ひ、引っ張らないでぇ!」
のほほんが二人の腕を取って、ずんずん先に進んでいく。……あのダボ袖で、よく腕掴めるな。
「って、あいつら俺を置いてくつもりか?」
さすがに開幕ぼっちは勘弁願いたい。俺は気持ち速足で、のほほん達3人を追いかけた。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
幸いいくつも店をハシゴすることなく、メモに書かれてたものを買うことができた。できたんだが……
「……これは必要か?」
嵩張るものは全部拡張領域に投げ込んで、今持っているのはそれ以外のもの……クラッカーとか、菓子類とか。
「あら、必要よ。帰ったらクリスマスの前祝するんだから」
「そう言ってたよね~」
「え、本当にする気だったの?」
「マジでする気だったのかよ……」
「トーゼン! そうじゃなくて何が生徒会よ!」
「そ~だそ~だ~」
「二人とも……」
頭を抱えそうになる簪。これたぶん、虚先輩ガチギレ案件になりかねんぞ。
「それじゃあ次の買い物に行く前に、軽く腹ごしらえと行きましょうか」
「さんせ~」
「あっ、もうそんな時間なんだ」
言われて俺もスマホの時刻を見ると、12時を少し過ぎたところ。朝飯が遅かったから、すぐに昼が来た感じだ。
「ん~、それじゃああのお店にしよ~」
そう言ってのほほんが選んだのは、某ハンバーガーショップだった。
さすがに休日だからか、店内はそこそこ混んでいた。とはいえ、4,5分ほどでテーブル席が空いて、そこにトレーを持って滑り込んだ。
「そういえばかんちゃん、ピクルス食べられるようになった~?」
「ほ、本音!?」
突然の爆撃に、今まさにハンバーガー頬張ろうとした簪が動揺する。へぇ、簪ピクルス食えねぇのか。
「くくくっ……」
「お姉ちゃんまで!」
「まだまだ、大人の女性にはなれそうにないわね?」
刀奈のいじわるスイッチが入ったのか、簪にウインクして追撃。それに対して簪は頬を膨らませて
「む~!……そういうお姉ちゃんも、自分で注文できるようになったんだね?」
「ん? どういうこ「簪ちゃん!?」」
おっと、簪が反撃に出たか。 刀奈が遮ろうとするってことは、結構恥ずかしい話なのか?
「お姉ちゃんは昔ファーストフード店に入った時、オーダー取りに来ると思って、ずっと座って待ってたことがある」
「Oh……マジか」
「あと、ハンバーガーをフォークとナイフで食べようとしたこともある」
どこのお嬢様だよ……更識家のお嬢様か。
「そんな幼稚舎時代の話はやめてよぉ! 陸君には知られたくなかったのにぃ!」
「いたたたっ」
本気ではないんだろうが、恥ずかしさで俺をポカポカ叩く刀奈。簪には無理なのは分かってるが、どうして俺を叩く?
「いや~、二人の恥ずかしい話で御飯が美味しい~」
「のほほん、いい趣味してんなお前……」
最初に簪に着火して、あとは高みの見物決め込みやがってからに……。
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「色々買ったわね~」
「お姉ちゃん、先週も買い物したばかりなのに……」
「そんなに服買って、どこに仕舞うんです?」
「色々場所があるのよ、色々ね」
「たっちゃん、生徒会室のロッカー占有してるもんね~」
「あ、あら~、バレてたの?」
のほほんの指摘に、刀奈の目が泳ぐ。完全な職権乱用です、本当にありがとうございました。って今更か。
「あれ? 陸か?」
聞き覚えのある声に、俺達はその方向に振り返った。
「ん? なんだ一夏じゃねぇか」
そこにいたのは、一夏とオルコットだった。オルコットは一夏の腕にべったりで、目がハートマークになる直前だ。
『かぁ~! セシリアも卑しか女ばい!』
……デュノアの声が聞こえたようだが、気のせいだ気のせい……。
「のほほんさんも一緒なんて珍しいな」
「今日は生徒会の仕事の手伝いだからな」
「手伝い?」
「そうなんだよ~。クリスマスが近いから、寮の飾り付けをするんだよ~」
「へぇ、そうなのか」
「なるほど、つまりその飾りを買いに来たということですのね?」
「そうだよ~。あとはクリスマスの前祝~」
「おいコラのほほん、それは言わなくていい」
「「はい?」」
ほら見ろ、二人とも『何言ってんだ』って顔になっちまったじゃねぇか。
「それで、そっちも買い物?」
「ええ。と言っても用事は済んだので、これから帰るところですわ」
「そうなんだ。……オルコットさん」
「はい?」
キョトンとするオルコットに、簪が口元を指さすジェスチャーを……ああ、なるほど。
「なんですの?」
オルコットはそれでも気付かず……おっ、一夏は気付いたか。あれは言うかどうか迷ってるな?
「セシリア、口元にクリームがついてる」
「っ!?」
一夏に指摘されて、ババッと手鏡を取り出したオルコット。そして急いでハンカチで口元を拭ったが後の祭り。
「わ、わたくし、あの状態で歩いてましたの……!? 最悪ですわ……」
まぁ恥ずかしいわな。お貴族様ともなれば尚のこと。
「二人とも、もしかして城址公園のクレープ屋さんに寄ってたの?」
「ええ、そうです」
「ああ、それでクリームが」
「それ以上言わないでくださいまし!」
簪の追撃がオルコットを襲う! いや、別に狙ってやったんじゃないとは思うが。
「でも残念だったよな、セシリア」
「そうですわね」
「何かあったの~?」
「ミックスベリーが売り切れでしたの」
「「「え?」」」
オルコットのセリフに俺、簪、刀奈の3人が固まる。もしかして、ご存じない……?
「それでお前ら、結局どうしたんだ?」
「ブルーベリーとストロベリーをそれぞれ頼んで、二人で分け合って食べたよ。結構美味かったのが不幸中の幸いだったな」
「いやお前、あれってブルーベリーとストロベリーを食べさせ合ってミックスベリーになるんだからな」
「マジで!?」「へ?」
どうやら本当に知らなかったらしい。ミックスベリーの秘密を教えたら、一夏は驚き、オルコットは鳩が豆鉄砲を食った顔になった。
「まったく、プレゼントの件といいクレープの件といい、お前は情報収集不足なんだよ」
「プレゼント?」
「なんのこと~?」
「な、何でもないって!」
首を傾げる簪とのほほんに対して誤魔化そうとする一夏。ちなみに刀奈は何となく察したのか、ニヤニヤしてる。
「それがよぉ、一夏の奴――」
さらに追撃してやろうとした、その時だった。
突然の閃光が、周囲の景色を焼き払ったのは。
「「「「きゃああああ!」」」」
「ぐぅっ!」
「ぐあっ!」
閃光から遅れてやってきた衝撃と熱風に、俺達は押し倒された。そして顔を上げた時、目に入ってきたのは、
高熱で溶けた床のタイル材。衝撃で砕け散ったガラス片。熱風で発火した建材。崩れ落ちる瓦礫。逃げ惑う客や店員。そして
駄々っ子のたっちゃん。出掛けたくないけど一人で留守番も嫌がる子供、いますよね。
人の黒歴史で飯が美味い!(by本音)
一夏と遭遇。前話と重なる部分です。
エクス、カリバー! 原作では死人描写はありませんでしたが、んな訳無いデショ!