イギリスで聖剣を折る簡単なお仕事。
デュノア社で新装備を受け取った俺達は、用意してもらったジェット機でイギリスへ。
「さむっ!」
そして空港を降りたらこれだよ……。
「一夏、さすがに天丼はどうかと思うぞ」
「まったくもう、一夏ってば」
フランスの時と同じように、デュノアが持っていた予備の帽子を一夏に被せる。思いっきり面倒見られてるじゃねぇか。
「一夏ぁ!……って、アンタなんでそんな薄着なのよ……?」
空港の外に出ると、先行していたドイツ組と合流。そしてさっそく一夏は凰に呆れられていた。
「一夏さん、さすがにイギリスは日本と違って、制服だけでは……」
「おりむーってば、うっかりさん~」
「うぅ……ドイツはあんまり寒くなかったのに……」
「そりゃお前、吹きっさらしの空港と違って、軍の基地は防衛用の施設が並んでるから、そこからの排熱で多少はマシなんだよ」
「そ、そうなのか……?」
「間違っていない。宮下はよく知ってたな」
「まぁ、色々あってな……」
ボーデヴィッヒに感心されちまった。
「お前達、揃ったな? これからあれに乗って、目的地まで移動する」
織斑先生が指さす先には、迎えの……ヘリ!?
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3機のヘリに分乗した俺達は、目的地らしい山岳部に向かっていた。
「それでは、本作戦を説明する」
織斑先生が無線機で全員に通達する。
「作戦名《
織斑、篠ノ之、ボーデヴィッヒ、宮下、更識妹の5人は重力カタパルトにて射出、衛星軌道上のエクスカリバー内部に突入し、エクシア・ブランケットを救出する。
デュノア、更識姉、布仏、ケイシー、サファイアの5人は成層圏で待機。エクスカリバーが射撃体勢に入ったら、グレネードランチャーでビーム攪乱弾を射出して拡散力場を作り出せ。
残りはオルコットの護衛をしてもらう」
「護衛?」
同じヘリに乗ってる面子も全員、首を傾げた。
「突入班のエクシア救出を確認、または救出失敗と判断された場合、オルコットはBT粒子加速器によって地上から超長距離狙撃を敢行、エクスカリバーを破壊する」
「そんな、エクシアさんごと撃つってのかよ!?」
「エクスカリバーの砲撃が再度行われれば、どれほどの被害になるか分からん。ビーム攪乱弾はテスト不足らしく、必ず効くという保証もない……やるしかないんだ」
「ご心配なく。わたくしも英国貴族として、代表候補生として、選択を間違えたりはいたしませんわ」
「セシリア……」
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山岳部に設置された重力カタパルト――三本の突起物、重力アンカーの中心に、俺達突入組はIS展開状態で待機する。
『発射まで、10、9、8……』
施設内部にいる山田先生が、カウントダウンを始める。
ビーム攪乱組は一足先に出撃して、成層圏で待機してる頃だろうか。
『7、6、5……』
うわっ、この一瞬くらりとする浮遊感が気持ちわりぃ。
『2、1……発射!』
そして重力アンカーから射出された俺達は、成層圏の辺りでISによる加速で重力圏を突破、宇宙空間に到達した。
「宇宙……IS本来いるべき場所、か」
「感慨深そうに呟くのはいいが、作戦行動中だぞ一夏」
「分かってるって。それで、これってどれぐらい役に立つんだ?」
そう言って、一夏はドイツから受領して持たされた物理シールドへの疑問を口にした。
「確か相手は、高出力ビームなんだよな? 正直防ぎ切れる気がしないんだけど……」
「安心しろ嫁。このシールドはISのエネルギー・シールドと接続することで、防御力を大幅に増やすことができる。少なくとも、一撃でアイスのように溶けるということはない」
「そうか……って、それって2撃目以降は保証しないって言ってないか?」
「……」
「め・を・そ・ら・す・な」
おいお前ら、漫才してる暇はねぇぞバカタレ。
「見えたぞ!」
篠ノ之の声で、和んでいた雰囲気は霧散した。そして篠ノ之が言ったように……
「……大きい」
簪の言葉が、すべてを語っていた。
刀身を地球に向ける一本の剣、そう例えようしかない姿をしていた。目測で、全長15mってところか。
「っ! みんな気を付けて!」
いち早く異変に気付いた簪が声を上げる。その瞬間、ブルー・ティアーズとは比較にならないビームがシールドを直撃した。
「ぐぉぉっ! た、確かに一撃じゃ溶かなかったが、衝撃が半端ねぇぞ!」
「分離しただと!?」
「何!?」
ボーデヴィッヒの声に顔を上げると、エクスカリバーから4つの刀身が射出され、それぞれが子機のようにこちらを狙ってビームを発射してきやがった!
「さすがイギリス! 衛星砲もビット化するかよ!」
「一夏! どうしてこの状況でそんな軽口が叩ける!?」
「軽口叩かねぇとやってらんねぇよ!」
一夏と篠ノ之が夫婦漫才してる間も、子機は断続的に攻撃を仕掛けてくる。撃たせまくってエネルギー切れは……期待できねぇな。
「このままでは埒が明かない。宮下! ここは私達に任せて、お前はエクスカリバー内部に侵入しろ!」
「確かにラウラの言う通り、このままこいつらの相手をしてる場合じゃないな。行け、陸!」
俺かよ!? いや確かに、エクシアを装置から引き剥がす要員だって言いはしたが……。
「陸!」
「宮下!」
「ああもう! 分かったよ! お前ら死ぬんじゃねぇぞ!」
簪達が子機を抑えている間に、俺はスラスターにエネルギーを全振りして、エクスカリバーに向かって吶喊した。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
事前に説明されていた物資搬入用の開口部から突入した俺は、10分ほど内部を飛び回り、中枢制御室に辿り着いた。
「こいつは……」
そして目の前には、コードが身体に巻き付き、制御室の中央に立つ円柱――おそらく動力炉――と一体化している女の子。こいつがエクシア・ブランケットか。
「さて困ったぞ。てっきり制御盤から解除コードを入力してとか思ってたんだが……。どう見てもこれ、拘束してるコードを吹き飛ばす感じだろ」
まさかこんな救出方法だったとは。これなら、一夏に突入役を譲ればよかった……。
なんて思っていたら
――ビュンッ
「うおっ!?」
まるで俺を排除するかのように、周囲のコードが襲い掛かってきた。
「なるほど、
まるで触手のようにウネウネと動き回るコードに嫌悪感を覚えながら、俺はシールドを拡張領域に入れ、代わりに長船を取り出して構える。
「機械相手なら手加減はいらねぇよなぁ! 蹴散らしてやんよ!」
その声に反応したのか、コードが全方位から俺を殺すために迫ってきた――
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陸がエクスカリバーに突入してから、20分が経っていた。
「ええい! 倒せど倒せどキリがない!」
篠ノ之さんが愚痴るのも分かる。このエクスカリバーの子機、破壊してもすぐ新しいのが親機から射出されるのだ。
「陸の奴、大丈夫だよな? プライベート・チャネルにも応答がねぇし……」
「おそらく、エクスカリバー内部は通信がシャットダウンされているのだろう」
ボーデヴィッヒさんの推測が正しいと思う。私もさっきから呼びかけてるけど応答が無いから。でも、
「陸なら大丈夫」
「根拠はあるのか?」
「必要ない。陸は死なない。これ絶対」
「お前なぁ……」
ボーデヴィッヒさんに呆れられた。解せぬ。
「お前達! いい加減に……?」
「子機の動きが……」
「止まった……?」
さっきまでオルコットさんのビットのように宇宙空間を飛び回っていた子機が、ピタリと動きを止めていた。
「これって……」
「陸が、やったのか?」
私達が親機の方に顔を向けると、
「あ゛~! もうあんなの相手したくねぇ!」
「「陸!」」「「宮下!」」
女の子をお姫様抱っこした陸が、こっちに近づいてきた。
向こうでも戦闘があったのか、装甲はだいぶボロボロ。
「陸、一体何があったんだ……?」
「防衛機構と戦ってたんだよ。しかも、無理にあの聖剣から
エクシアさんを篠ノ之さんに引き渡す間も、すごく腹立たしいって顔をしてる。
「自壊装置?」
「ああ。エクシア・ブランケットと融合してるISごと心臓を停止させるって言う、胸糞わりぃシステムがな」
「……ふざけてやがる」
敵に奪われる前に破壊する。完全にエクシアさんを部品としか見てないやり方に、織斑君の握り拳が震えていた。正直私も、聞いてて気分が悪かった。
「本部、こちらボーデヴィッヒ。救出成功、繰り返す、エクシア・ブランケットの救出に成功した」
そうこうしてる間に、ボーデヴィッヒさんが地上に連絡を入れていた。
『本部、織斑だ。よくやった、全員無事か?』
「死傷者はありません。全員無事です。セシリアの超長距離狙撃による、聖剣破壊を要請します」
『分かった。お前達はこのまま帰投しろ』
「了解」
通信が終わると、地上で高エネルギー反応を感知した。あれが作戦説明の時に出てきた、BT粒子加速器なのかな?
「よし、あれに巻き込まれたら馬鹿みたいだし、俺達もさっさと撤退――!」
言いかけて何かに気付いた陸が、すごい形相で聖剣の方を見た。私達もそっちを向くと
「馬鹿なっ! 子機だと!?」
「エクシア・ブランケットがいなくなったのに、なぜ!?」
一度は停止したはずの聖剣の子機が、私と篠ノ之さんに向かって
「かんざしぃぃぃぃぃ!!」
「ほうきぃぃぃぃっぃ!!」
走馬灯のように全てがスローモーションになる中、陸と織斑君が私と篠ノ之さんの前に立ちはだかって――
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BT粒子加速器であり、絶対対空砲『アフタヌーン・ブルー』。
巨大な望遠鏡のような装置の内部で、わたくしは照準を聖剣に合わせたまま、合図があるのを待っておりました。
「なかなか焦れますわね……」
思わず口にしてしまいましたが、誰かと通信しているわけではないですし、問題ありませんわよね?
『本部、こちらボーデヴィッヒ。救出成功、繰り返す、エクシア・ブランケットの救出に成功した』
「っ!」
ラウラさんからの通信!? 作戦が成功したんですのね!
『オルコット、超長距離狙撃用意!』
「了解!」
再度照準を確認。……いけますわ!
『てぇ!』
織斑先生の号令と同時にトリガーを引くと、加速器によって高エネルギーになった粒子がビーム砲となって、聖剣に
『え……』
その途中、オープン・チャネルから聞こえてきたのは、山田先生の呆けた声でした。
『山田先生?』
訝しんだ織斑先生の声も聞こえてきました。一体何が……
『びゃ、白式と打鉄・陰流、
その言葉を理解できたのは、聖剣を破壊して、しばらくしてからでした……。
薄着ネタ再び。よくよく考えたら、フランスで冬用コート買う暇ぐらいやれよと思いました。(なお、原作もそんな暇なかった模様)
オリ主と一夏、死す!? いや、死んでないから(即ネタバレ)