『白式と打鉄・陰流の反応消失』
その報を聞いた時、全員がセシリアと同じように、すぐにその言葉を理解出来なかった。
「誤報か何かっスよねぇ……?」
成層圏で待機していた阻止班に、地上にいた警護班。皆が皆、真耶の誤報だろうと、笑い飛ばしてやろうと思っていた。
だが、それ以降の報告は来なかった。そこでようやく、それが事実であると理解した。
「一夏が……」
「りったん……」
「そん、な……」
そうして失ったものを理解した時、誰もが涙を流さずにはいられなかった。
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――イギリス北部、オルコット家邸宅
しかしその中で、休むことを許されない者もいた……。
「それで? どうしてこうなったのでしょう?」
もはや城と言っても過言ではないオルコット家の邸宅。その玄関ホールで、家主であるセシリア・オルコットは腕を組んで怒り心頭だった。
その後ろに立つ他の専用機持ち達も、程度はどうあれ怒りの表情だ。
「お答えいただけますね……
一夏さん! 宮下さん!」
そしてオルコットの目の前には、床に敷かれた絨毯の上で正座している俺と一夏がいた。
「反応が消失したと聞いて、わたくし達がどれだけ悲しんだことか……! 分かっておりますの!?」
「それは……ごめん。陸に脅されて無事を伝えらえなかったんだ……」
「おぃぃ?」
一夏さんや、裏切るにしても早すぎやしませんか? あれか、オルコットの涙に負けたか。
「それで、箒さん達もですの?」
ギロリッとオルコットの視線が、篠ノ之達他の突入組の方を向く。
「(コクコクッ)」
「ああ。必要なことだから、撤収するまでは黙っていてくれと頼まれた」
「Me too」
篠ノ之、ボーデヴィッヒ、果ては簪も見事に俺を切り捨てた。わーい。
「そもそも、どうして二人のISの反応が消えたんだ?」
怒り心頭な面々の中で、比較的冷静だったケイシー先輩が疑問を口にした。
「それは……」
(回想開始)
「かんざしぃぃぃぃぃ!!」
「ほうきぃぃぃぃっぃ!!」
簪と篠ノ之の前に立ちはだかった俺と一夏に、生き残っていたエクスカリバー子機のビーム砲が直撃し……
防ぎ切った。
(回想終了)
「「「「「「c⌒っ゚Д゚)っ ズコー!」」」」」」
あの時のことを話したら、全員がズッコケた。おいおい、山田先生どころか織斑先生もかよ。
「ふ、防いだだと!? 一体どんな手を使ったんだ!」
「これですよ」
いち早く起き上がった織斑先生に問い詰められながら、俺は陰流を展開すると、
「な、なんだ、これは……!」
陰流の前面に、六角形を組み合わせたようなエネルギーシールドを展開した。
「これが手品の種『絶対守護領域』です。理論上は、ミストルテインの槍10発分の威力でも突破は出来ません」
「ミストルテインの槍って、会長の必殺技よね……」
「あれ10発分防ぐって……」
「僕の『花びらの装い』なんか目じゃないんだけど……」
唖然とした顔の織斑先生の後ろで、みんながヒソヒソ話を始めやがった。
「もしかして、学園を出発する前にインストールしてたのって……」
「おう。備えあればってやつだな」
「陸君、まさかこれ、打鉄弐式に積む気じゃないわよね……?」
「いやぁ、この絶対守護領域って、展開範囲計算にISコアの演算処理能力を丸々持ってかれるんですよ」
「つまり?」
「これ起動してる間、他はなーんにも出来ません」
ISコアの演算能力を防御に全振りするとか、勝負捨ててるようなもんだ。
「それは確かに……」
「実戦どころか、模擬戦でも使えんな」
うっ! 篠ノ之が痛いところを……。
実はデュアルコアの打鉄弐式なら、ぎりぎり搭載可能だったりするんだが、ここでは黙っておこう。
「で、俺も今回初めて使って知ったんだが、絶対守護領域を使ってる間、陰流を含めた周囲のコア・ネットワークが遮断されるみたいなんだよなぁ」
「それで、りったんの近くにいたおりむーの白式も、反応が消えちゃったんだ~?」
「そういうことだな」
これについては、学園に戻ったら調べて……別にいいか。
「反応が消えた理由については分かった。だが、まだそれを隠していた理由は聞いていないぞ」
「それについては……楯無さん、どうでした?」
「更識姉?」
みんなの視線の先が、俺から刀奈に変わる。
「……二人の反応が消えた後、カタパルトの発射施設内で作戦に参加していた観測員の一人が、行方不明だそうです」
「何?」
「そして……」
「その観測員のコンソールから、エクスカリバーに対して何かの信号を送っていた痕跡が見つかりました」
「何だと!?」
なーるほど、やっぱ予想通りだったわけか。
「つまりそれって、今回の事件を起こした犯人が内部にいたってことですか!?」
「そういうことよ。まさか欧州統合軍内にいたとはね……一応追手を出してはいますが、土地勘は向こうの方があるでしょうから、捕まえられるかは五分五分ですね」
「なんてことだ……」
織斑先生を始め、何人かが手で目を覆う。それ以外も表情が暗くなる。
「俺と一夏が死んだことにしておけば、おそらく敵さんも尻尾を出すと思ったんで、篠ノ之達にも口裏合わせをお願いしたわけです」
「私や山田先生にまで黙っていたのは気に食わんが……我々が同じ施設内にいた以上、仕方ないか」
「これが、今までダンマリ決め込んでた理由です。……それでなんですが」
「なんだ?」
「そろそろ正座止めていいっスか?」
めっちゃ睨まれた。そうですかダメですか。
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あの後、色々あり過ぎて疲れ切ったみなさんの案内を使用人に任せ、わたくしは自室に戻りました。
それにしても……いくら裏切り者が内部にいたからって、一夏さんが死んだなんて嘘をつかれたのは面白くありませんわ!
――コンコンッ
「お嬢様、私です」
「んんっ! お入りなさい」
「失礼します」
苛立っていた表情を隠して入室を許可すると、ティーポットとカップの載った盆を持ったチェルシーが入ってきました。
「皆さまのお部屋への案内、完了いたしました」
「承知しましたわ。ご苦労様」
「恐縮です」
報告をしながらも、ティーポットからカップに紅茶を注ぐ手は止まりません。さすが我がオルコット家のメイド長です。
「本日はダージリンの
「ありがとう。……オータムナルにしては、渋みが少ないですわね」
一口含むと、オータムナル特有の味わいではなく、どちらかといえば
「今年はインドの雨季が2か月ほど後ろ倒しになりまして、その影響でクオリティシーズンもズレ込んだようです」
「なるほど……それで、エクシアの容態はどうですの?」
急な話題の切り替えですが、チェルシーはふと優しい顔になると
「はい。埋め込まれたISを含め、特に異常はないとのことです」
「そうですの……」
宮下さんのお話では、色々なトラップが仕掛けられていたそうですが、大事ないようで何よりですわ。
「それでは、私はこれで……」
「お待ちなさい」
一礼して下がろうとするチェルシーを止めます。
「チェルシー。貴女にはまだ、聞かなければならないことが2つほどありますわ」
「……何なりと」
「まず一つ目に、"どうして貴女は、機密情報であるエクスカリバーのことを知っていた"んですの?」
オルコット家の当主たるわたくしですら知らなかった、いえ、知らされていなかったものを、どうして一介のメイドが知っていたのか。例え、エクシアのことがあったとしても。
「そして2つ目。"どうして貴女は、エクシア救出の嘆願と共に、わたくしに本国へ戻るように言った"んですの?」
結果的に本国へ戻ることになりましたが、わたくしに助けを求めるだけであれば、その必要はなかったはずです。
「……少し長いお話になりますが、よろしいでしょうか?」
「いいですわ。貴女もそこに座りなさい」
「承知しました。それでは失礼いたします」
わたくしと向い合せになるよう椅子に座ったチェルシーの口から出た話、それは
「これからお話しすることは、セシリア様のご両親……先代の旦那様と奥様の死の真相にも関わってまいります」
わたくしを、ひどく動揺させるものでした……。
お説教タイム。そしてオリ主、一夏に売られる。裏切り者(女権団)を炙り出すために、偶然起こったコア・ネットワークの遮断を利用したという設定です。
セシリア、チェルシーを問い詰める。原作では2ページほどしかない内容ですが、うまく(妄想を)広げたりして1話分にしたいなーと思ってます。