俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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第13話 弐式完成、簪の勇気ひとかけら

織斑先生に絞られた翌日、俺達3人は第4アリーナに集まっていた。

なにせ、今回は俺、頑張ったからな~……。

 

「よ~し、今日は山嵐の試し撃ちするぞ~」

 

「お~」

 

「ほ、本当に完成させたんだ……」

 

まあ1回目の夜なべでコツは掴んでたからな。昨夜から貫徹すればよゆーよゆー……眠ぃ……。

 

「それじゃあ簪、標的それぞれに1発ずつ当ててくれ」

 

「分かった」

 

俺は簪からの応答を聞くと、端末を操作した。すると、標的用ドローンが現れ、簪の前方を無秩序に飛び回り始めた。

 

「ターゲットロック……15……23……36……41……48! 山嵐、全弾発射!」

 

簪の掛け声とともに、ミサイルポッドからマイクロミサイルが次々に射出されていく。そして

 

 

――ドドドドドドドォォンッ!

 

 

爆音が響き、着弾地点周辺が爆炎に包まれる。そしてそれが徐々に晴れて行き……そこにはドローンの残骸だけが残っていた。

 

「や、やった……!」

 

「お~! 成功だ~!」

 

「よーしよし。これで名実ともに、打鉄弐式の完成だ!」

 

「やったね~! ハイターッチ!」

 

「おうよ」

 

「た、ターッチ」

 

のほほんが両手を伸ばして要求してきたから、俺と簪でそれぞれの手にタッチしてやった。

 

「山嵐も完成して、これで万全の状態で簪をクラス対抗戦に送り出せるな」

 

「ちなみにかんちゃん、自信のほどは~?」

 

「勝つよ。ここまでお膳立てされたんだから、優勝する」

 

のほほんに対して、簪は即答した。あの決闘から、自分に自信が持てるようになったようだな。これからが楽しみだし、俺も協力し甲斐があるってもんだ。

 

「簪、もし武装を追加するとしたら、どんなのがいいと思う?」

 

「追加武装?」

 

「ああ。例えばパイセンとの決闘の時に山嵐が完成してたらと仮定して、『こんな武装があったら良かったなぁ』とか」

 

「……」

 

俺の問いに、簪はしばらく考え込んでいたが、

 

「近距離武装が、もっと欲しいかも」

 

「夢現じゃ力不足かな~?」

 

「そうじゃない。でも、夢現の間合いの、さらに内側に入られたら……」

 

「あ~なるほど、インファイトに持ち込まれたら抵抗できないってことか」

 

「(コクリ)」

 

「でも、そんな武装のISって見たことないよ~」

 

「そうかもしれない。けど、それなら逆に、そこが私の有利な距離になる」

 

「あ~そっか~」

 

確かに簪の言う事は一理ある。至近距離で戦う術があるなら、相手によって対抗手段になったり、簪の独擅場にもなり得る。しかし至近距離かぁ……

 

「難しそう?」

 

「いや、案があるにはあるんだが……」

 

「あるんだ~?」

 

あるにはある。だがあれは……

 

「悪い、積めるかどうか検討から入らんとダメそうだから、今はあまり期待しないでくれ」

 

「ううん、大丈夫。今のままでも打鉄弐式は強いから」

 

「そだよ~、これでかんちゃんの優勝は間違いなしだね~!」

 

「うん。でも本音いいの? 私が優勝したら、賞品の……」

 

「あぁ!?」

 

その瞬間、のほほんが頭を抱えて膝から崩れ落ちた。え、どういうこと?

 

「クラス対抗戦の優勝クラスには、学食デザートの半年フリーパスがもらえる」

 

「はぁ……つまり簪が優勝すると、のほほんはそのフリーパスが手に入らないと」

 

「そういうこと」

 

「ひどいよ~! 神様はいじわるだよ~!」

 

のほほんよ、そんなアリーナの地面を叩くほどのもんなのか、フリーパス。

 

「分かった分かった。もし簪が優勝したら、俺のフリーパスをやるから」

 

「かんちゃんのために、一生懸命頑張りま~す!」

 

「「変わり身早っ!!」」

 

というか言ってから気付いたが、フリーパスで自分のクラスを売りやがったぞこいつ!?

 

ーーーーーーーーー

 

「う~む……」

 

廊下を歩きながら、俺は困っていた。

端的に言うと、帰された。簪とのほほんに。

 

『陸、今日は寮に戻って休むこと』

 

『そうだね~、山嵐を完成させるのに徹夜したんだし、休まないとダメだよ~』

 

そう言って、二人にアリーナから追い出しを食らってしまったのだ。解せぬ。

 

「だーれだ?」

 

「おやぁ? なんかちょうどいいところにへし折り甲斐のある腕が……」

 

「堪忍してつかぁさい!」

 

なぜか方言とともに、視界を塞いでいた手がどけられた。

振り向くと案の定、俺から少し距離を置いたパイセンがいた。

 

「まったく……学習能力が無いんですか」

 

「ひどーい! ちょっと構ってほしかっただけなのにぃ! 簪ちゃんみたいに! 簪ちゃんみたいに!」

 

「なんで2度言ったんすか」

 

俺が呆れてると、パイセンはコロッと表情を変えて近寄ってきた。まるでチェシャ猫だな。

 

「それで? 一人だけって珍しいわね」

 

「簪とのほほんに追い出されたんですよ……」

 

「あら、何したのよ?」

 

「別に、山嵐のシステム作るのに徹夜しただけです」

 

「貴方ねぇ……」

 

パイセンはどこからか扇子を出すと、それを広げつつ(なぜか『論外』と書かれている)ため息をついた。

 

「簪ちゃんのために頑張ってくれるのは姉としても嬉しいけど、それで無理したらダメでしょうに」

 

「いやぁ、興が乗ると止め時が……」

 

誰だってあるよな? 寝る前にちょっとゲームやり始めて、気付いたら日の出を拝んでた的な。

 

「確かに眠気はあるっちゃあるんですけど、今寮に戻って寝ると、夜また眠れなくなりそうなんすよねぇ」

 

「ああ……それは私も経験があるわ」

 

「だから、構ってあげるんで場所変えましょう」

 

「あらいいの? それじゃあお言葉に甘えてー」

 

 

 

そんなやり取りをしつつ、俺とパイセンは食堂に来ると、それぞれ飲み物を買って席に座った。ちなみに俺はコーヒー、パイセンは紅茶だ。

 

「ところで、山嵐のシステム作りで徹夜したって言ってたけど、完成したの?」

 

「……隠す必要もないんで言っちゃいますけど、完成しましたよ。それでさっきアリーナで試し撃ちしてたんで」

 

「ああ、なるほど」

 

納得した顔をして、パイセンはティーカップから紅茶を飲んだ。くそぅ、なんか様になってんな。

 

「貴方には感謝してるの。簪ちゃんを手伝ってくれたことや、私達姉妹が和解するきっかけを作ってくれたこととか」

 

「別に礼なんかいらないですよ。俺は自分のやりたいように動いただけですから」

 

簪を手伝ったのは俺にもメリットがあったし、二人が和解できたのは簪が覚悟を決めたからだ。俺がどうこうしたからじゃない。

 

「むしろ礼なら、のほほんに言ってやってください」

 

「もちろんよ。本音もそうだし、虚にも色々心配かけちゃったからねぇ」

 

「きっちり労ってください」

 

「ええ。ホント、勿体ないぐらい良い従者、幼なじみを持ったわ」

 

苦笑気味な顔をしつつ、パイセンはカップの中をじっと覗き込みながら呟いた。

 

「っと、そろそろ食堂もディナータイムになりそうよ」

 

「ん、もうそんなに時間経ったのか」

 

パイセンに言われて腕時計を見ると、確かに夕食時になっていた。どうりで受取口の奥から仕込みっぽい音が聞こえてくるわけだ。

 

「さて、簪ちゃん達に見つかる前に退散するわね」

 

「どういうことですか?」

 

「貴方、寮の部屋で休んでる設定でしょ? そこで私と話してる場面に出くわしたら」

 

「……まずいっすね」

 

非常にまずい。『陸ぅ……?(ギロリ)』っていう簪を幻視するぐらいにはまずい。

 

「それじゃあね~」

 

そう言って軽く手を振ると、パイセンは空になったティーカップを返却口に戻して食堂を出て行った。

そこから少しして、簪達が食堂に入ってきた。危ねぇ、入れ違いだったか。

 

ーーーーーーーーー

 

シャワーを浴びている間、私は陸の事を考えていた。

 

(陸、絶対部屋に戻ってなかった……)

 

食堂で会った時、本人は『寝て起きたら腹減ったから早めに来た』とか言ってたけど、絶対嘘。だって、目の隈がちっとも薄くなってなかった。

 

「陸、シャワー次いいよ」

 

体を拭いてパジャマに着替え終わり、陸に声をかけたけど返事がない。

 

「陸?」

 

シャワールームのドアを開けると、

 

「……」

 

ベッドの上で、制服を着たまま陸が寝ていた。たぶん限界が来て、そのまま寝落ちしたんだろう。

 

「まったくもう……」

 

そう言いながら、陸のベッドに腰かけた。

いつも頼りになる陸だけど、寝顔は可愛いかも……

 

『りったんとたっちゃんは、()()()仲じゃないと思うよ~』

『だから、かんちゃん頑張って~』

 

「……っ!」

 

どうしよう……あの時本音が言ったことを思い出したら……

 

「……ちょっとだけなら、いいよね?」

 

自分の中で言い訳しながら、私は陸が寝ているベッドの隙間に自分の体を滑り込ませた。ちょうど、陸の胸元辺りに丸くなるように。

 

「おやすみ、陸……」

 

部屋の明かりを消して、陸の鼓動、温もりを感じながら、私も眠りについた――

 

 

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