え? 女権団の残党? (みんな挽肉か檻の中になったんで)ないです。
宮下陸は激怒した。必ず、かのラビット・カンパニーの横暴を除かなければならぬと決意した。陸には書類手続きの難しさがわからぬ。陸は、機械馬鹿である。機械を作り、更識姉妹とイチャコラして暮して来た。けれどもモチベに対しては、人一倍に敏感であった。
「てめぇスコール! ISの改造依頼全部受けやがったなこの野郎!!」
「あら、こっちに手続きを回したんじゃないの。それに対して、依頼を受けて実務を所属している貴方に回す。何か問題でも?」
所属してから初めて呼び出されたラビット・カンパニーの社長室でキレ散らかす陸に対して、スコールさんは涼しい顔をしながらエナジードリンクを一気飲みした。
……スコールさんに全部丸投げした結果がこれだよ。
ものの見事に陸は、専用機6機の改修作業をするハメになっていた。
「一応篠ノ之博士が『いっくんと箒ちゃんの分は束さんがやってもいいよ~』とは言ってたわよ」
「いや実際、白式の零落白夜とか紅椿の展開装甲とか、俺でも手に余るからありがたいんだがな」
「そうなると、篠ノ之さんを除く一夏ハーレム4人分?」
「普通個人に任せる内容じゃねぇぞ……」
「そうそう、それが終わったら
「
「なんでロシア語なのよ……」
確か前回はイタリア語だったような……。
ーーーーーーーーー
「というわけで、お前らのISを俺と束が弄ることになった」
放課後の第3アリーナ。いつ面が集まってる中で、俺はやる気なさげに宣言した。ぶっちゃけやる気ねぇもん。
「宮下はいいとして、姉さんも?」
「そうだよ箒ちゃん。いっくんと箒ちゃんのISは、束さんが担当するから」
「実際問題、製作者が弄った方が安心だろ?」
「え? 箒の紅椿はともかく、俺の白式って倉持技研が作ったんじゃ……」
え? 一夏、気付いてねぇの?
「むふふ~、実はいっくんの白式は、倉持だっけ? そこでポイされてたのを束さんが動くようにしたものなんだよ~♪」
「え、ええ!?」
「つまり、倉持技研は一夏の白式を自力で作れなかったってこと……?」
「打鉄弐式の人員を引き抜いて、それか……」
凰やボーデヴィッヒが呆れるのも分かる。俺だってそれを知った時は呆れたもんだ。いつ知ったかって? 学年別トーナメントの辺りだよ。それが倉持に技術提出を拒否った理由の一つだな。ぜってー宝の持ち腐れになるだろ。
「俺も、倉持からそっちに移りてぇ……」
一夏が遠い目になった。残念だが、お前は政府の紐付きだからな。俺と違ってそう簡単に鞍替えは出来んだろう。
「いっくん、落ち込んでる暇はないぞー。ほら、箒ちゃんも」
「え、ええ……。一夏、とりあえず今は」
「そ、そうだな」
現実逃避から戻ってきた一夏。そして篠ノ之と一緒にアリーナの端でISを展開、束が色々計測し始めた。さて、こっちもボチボチやるかぁ……。
「えっと、それで宮下君が、僕達4人の改修をしてくれるってことでいいんだよね?」
「ああ。会社が合意しちまった以上、歯車の俺は従うしかねぇな」
「そんなに嫌なら、ご自分で断ればよかったでしょうに……」
やめろオルコット、その言葉は今の俺に効く。何やってんだよ過去の俺ェ……。
「ま、まあいい。それでなんだが……」
話を仕切り直して、俺は拡張領域から事前準備したものを取り出した。
「こんなこともあろうかと! お前ら4人分の改修キットを用意してある!」
「「「「(;; ゚Д゚)どうして!?」」」」
「陸、いつの間に用意したの? というか、やる気なかったんじゃ?」
「やる気はないが、仕事ならしゃーないだろ。そして実は、アルベールさんに前々からお願いされてたんだよな。デュノア社としてだと周囲の圧力があるから、父親から娘への個人的なプレゼントってことで」
「お父さん……」
まさか自分の父親が、そこまでやらかすとは思ってなかったんだろう。デュノアが顔真っ赤にして、手で顔覆ってしゃがみ込んじまった。
「で、ついでだから弐式改造であぶれた武装を固めて、お前ら用の改修キットも作ったってわけだ」
要は簪やデュノアの余りもんだが、強化されるならなんだっていいよな?
「というか、フランス大企業の社長と仲がいい学生って……」
そこかよ。
「頭おかしいですわ……」
「ああ、頭おかしい」
「おいお前ら、そんなに改修したくねぇのか」
「「「「よろしくお願いしま~す!」」」」
なんて現金な奴らだ……。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
1時間ほどで、改修キットの組み込みは完了した。
「さて、さっそく動作確認していくか。まずはオルコット」
「はい。ですが、見た目は全くと言っていいほど変わってませんわね」
オルコットが首を捻るのも分からんではない。実際見た目は変わってないんだから。
「今回ブルー・ティアーズには、精神感応の感度を上昇させるソフトをぶち込んだ」
「それは、つまり……」
「試しに動かしてみな」
「え、ええ……」
俺に促されて、オルコットは恐る恐るビットを展開した。そして4基のビットを縦横無尽に動かしていく。
「こ、これは……今までより思い通りに動いてくれますわ……!」
「動作自体は上々だな。そんじゃ次、レーザーを撃ってみてくれ、
「そ、それは……」
さっきまでと打って変わって、オルコットの顔色が暗くなった。俺も、お前がフレキシブルを使えないのは知ってるがな。だが
「とにかく撃ってくれ」
「わ、分かりましたわ……」
観念したようにレーザーライフルを構える。そして放たれたレーザーが
緩いカーブを描いて曲がった。
「……え?」
今見たことを信じられないという顔をするオルコット。
「今、曲がりました……?」
「ま、曲がった……」
隣で見ていた簪も驚いている。
「み、宮下さんの助けがあったとはいえ、わたくし、やっとフレキシブルを……!」
「や、やりましたわ~!」
おうおう、そんなに喜ばれると、こっちもやった甲斐があるってもんだ。
オルコットのやつ、感動で震えてるが、一旦置いといとくか。
「次は凰だな」
「ええ。あたしの甲龍も、見た目はほぼ変わってないわね」
「だな。甲龍はどっちかっていうと、ナインテールみたいな改修だからな」
「ナインテールみたいって……龍咆を弄ったってこと?」
「正解だ。どう弄ったかは、撃ってみれば分かる」
「いいわ。見せてもらいましょ」
胴体はこっちを向いたまま、肩部の衝撃砲だけを90度外側に向ける。砲身斜角の制限がないってのは、こいつの利点だよな。
――ドォォォンッ!
そして撃ち出されたのは不可視の砲弾ではなく、白い靄を纏った球体で
――カキィィィィンッ!
「こ、凍った!?」
着弾した地面が、瞬く間に凍り付いた。
「これ、冷凍弾?」
「ああそうだ……って簪、もしかしてこれ、弐式に積みたかったのか?」
「分かる?」
分かるって。すっげぇ目キラキラさせてからに。
「そ、それで、砲弾を変えただけ?」
「んな馬鹿な。甲龍の衝撃砲って、空気を圧縮して砲身を作るだろ? その時に発生した熱エネルギーを再利用できるようにした。で、さらに砲弾からも熱を分捕って、冷凍弾を撃てるようにしたってわけだ」
「ね、熱エネルギーを再利用って……それじゃ、前よりも龍咆を撃ちまくれるってこと?」
「そうなるな。とはいえ、エネルギーの変換効率はそこまで高くないから、無限に撃てると思われると困る」
「そこまで望んじゃいないわよ。けど、これで今まで出来なかった戦術が……いける……いけるわ!」
凰もトリップしちまったか。
「次はデュノアだな」
「僕のはどっちかっていうと、新武装ってことなのかな?」
「ああ。アルベールさん曰く『機体の完成を急いだせいで、武装の開発が遅れてしまってな』ってことらしい」
「あの期間で武装も作ってたらビックリ」
「確かに」
俺の説明に、簪もデュノアも納得したように首を振る。夏休みに設計図売ってからロールアウトまで、3ヵ月なかったからな。そりゃそうだ。
「そしてこれが……」
「おう。まずはショットガン『タラスク』。以前の『レイン・オブ・サタディ』より口径は小さいが、その分十連装になって連射力は上がってるぞ」
「いいね。再装填の隙が少なくなるのは嬉しいよ」
そう相槌を打ちながら、拡張領域に入ってる他の武装も確認していく。
「次に近接ブレード『ジギル・ハイド』だ」
「これ、デュアルブレードって書いてあるけど」
「これはアルベールさんからのリクエストでな。近接武器がブレッド・スライサー1本だと心許ないってことらしい」
「だからって二刀流とか、使いこなせるかなぁ?」
そこはデュノアの力量次第としか。俺はリクエスト通り作っただけですしおすし。
「最後はデュアルパイルバンカー『
「ま、またデュアル?」
両腕に展開されたパイルバンカーを見て、目が点になるデュノア。ちなみにそれも、アルベールさんのリクエストな。
「パイルバンカーでデンプシーロールとか胸熱だな」
「やらないよ!」
「まっくのうち!まっくのうち!」
「更識さん!?」
さっきまで黙ってたのに、そこだけノッてくんの?
「最後はボーデヴィッヒか」
「ああ。私のレーゲンも、見た目に変化はないな」
「レーゲンも甲龍同様、既存機能の強化にしたからな」
「なるほど。それで、何を強化したんだ?」
「それだ」
俺は、レーゲンの右肩部に付いているレールカノンを指さした。
「これだと? 察するに、鈴と同じように新型砲弾を入れたのか」
「察しが良くて助かる。というわけで、さっそく撃って確認だ」
「ああ、分かった」
言うや否や、ボーデヴィッヒは誰もいない方を向いてレールカノンをぶっ放した。
――ドドドドドドドッ!
「……なぁ宮下。これは『榴散弾』ではないか?」
「おうよ。のほほんのナインテールで効果はお墨付きだ」
「アリーナの地面、結構な広さが耕されたんだが……?」
「これでレーゲンも、面攻撃ができるようになったってわけだ」
「お、おう……」
ん? ボーデヴィッヒのやつ、口元引き攣らせながら固まっちまった。まあいいや。
スコールの逆襲。実際受けたら実働するのは、ねぇ?
専用機改修無双。本当なら、原作6巻でフレキシブル撃てるようになってるんですがね、初見さん。
次回は束編の予定です。