俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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今度こそクリスマス回だと言ったな、あれは本当だ。


第144話 各々のクリスマス

「「「「メリークリスマス!!」」」」

 

12月24日。IS学園の生徒会室で、俺、簪、刀奈、のほほんのグラスがぶつかる。

 

「結局、前祝は出来ずに本番来ちゃったね~」

 

「いやのほほん、普通はねぇからな?」

 

「ホントはやりたかったな~」

 

「お姉ちゃん……」

 

そして今日は、のほほんや刀奈を止めてくれる虚先輩はいない。なぜなら……

 

「虚は今頃、弾君とレストランかしら」

 

「確か、ホテル『テレシア』の最上階レストランだっけ~?」

 

「ああ。前に『金が必要だから、稼げる仕事紹介してくれ!』って頼まれた時に聞いた通りならな」

 

「あったね。修学旅行の直後ぐらいに」

 

それで束の下働きを紹介したんだよな。束曰く『馬鹿だけど根性だけはあって良し。特に束さんをただの雇い主だと思ってて下心が無いのが良い』ってそこそこ好評価で、1週間ぐらい肉体労働に従事してたらしい。

 

「それより、早くケーキ食べたい~」

 

「本音、少しは落ち着いて」

 

「私も食べたいわね~、陸君のケーキ。簪ちゃんは?」

 

「……食べたい」

 

口を尖らせながらも、最後には簪もケーキを要求してきた。まぁ、作った側としては嬉しい反応なんだが。

 

「そんじゃ、さっそく出すとしますか」

 

テーブルの上に乗ったチキンやピザの皿を動かしてスペースを作ると、そこに冷蔵庫から出したホールケーキを置いた。

 

「ゴクリ……!」

 

「本音、目が血走ってる」

 

「かんちゃん、これは心して食べないとダメだと思う……!」

 

「ほ、本音?」

 

「いやいや、素人のケーキに何を期待してるんだよ」

 

材料も近所(と言っても本土まで行ったが)のスーパーで買ったもんだし、レシピもネットで調べたのをそのまま作っただけだぞ?

 

「まあまあ、まずは食べましょ」

 

「そうですね」

 

8等分にしたケーキを皿に乗せて、各人に配る。

ちなみに今回作ったのは、正統派のイチゴショートだ。運動会のイチゴフェアを思い出してな。

 

「それじゃあ」

 

「「「いただきまーす!」」」

 

3人はケーキを一口食べて……え、固まった?

 

「り、陸……」

 

「え、まさか不味かったか?」

 

嘘だろ? まさか俺が、オルコット枠に落ちたって言うのか? 嘘だと言ってよバー○ィ!

 

「美味すぎる!!」(CV:大塚明夫)

 

「おい!」

 

「うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおおお!!」(CV:藤本譲)

 

「のほほんもかよ!」

 

お前らふざけてんのか!?

 

「陸君、もうパティシエ目指したらどう……?」

 

「楯無さんまで何言ってんですか!?」

 

だから、素人ケーキに何を言ってんだ。

 

「そもそも、俺のケーキでそんなリアクションだったら、一夏のケーキ食ったらどうなるんですか」

 

――カランッ

 

その瞬間、3人のフォークが皿の上に落ちた。

 

「お、織斑君のケーキって、これ以上なの……?」

 

「そうですよ。当たり前じゃないですか」

 

昨日、寮の調理室でケーキを焼いていた一夏に遭遇したんだが、あいつはやっぱりバケモノだった。

 

 

 

『明日のクリスマス用のケーキ焼いてみたんだけど、ちょっと味見してくれないか?』

 

そう言って、ケーキを作る際に出てきた切れ端を寄こしてきた。

 

『俺に味見を頼むかねぇ……んぐんぐ……美味っ! え、マジかよ!?』

 

『そ、そんなに驚くもんか?』

 

『マジで美味いぞこれ! 』

 

『よし、それならこれを出そう』

 

そう言ってケーキを箱に入れると、一夏は調理器具を洗い始めた。

 

 

 

「ってことがあったんですよ」

 

「これ以上のケーキ……」

 

「おりむー、恐るべし……」

 

簪とのほほんが、皿の上のケーキを凝視しながら戦慄していた。

 

ーーーーーーーーー

 

1025号室。一夏と箒の部屋でクリスマス会をしていた僕達は、(乙女の)危機に瀕していた……。

 

「……」

 

「……」

 

「セ、セシリア? 鈴?」

 

「……」

 

「シャルもラウラも、どうしちまったんだよ?」

 

「ん~! いっくんの手作りケーキおいし~♪」

 

「やはり、私にはまだ遠いか……」

 

何かを悟った箒と普通にケーキを食べてる博士以外、僕を含む全員が絶望していた。

 

「なんて……」

 

 

「一夏、アンタなんてケーキを用意してきたのよォォォォ!!」

 

 

鈴が絶叫したそれが、僕達の総意だった。

 

「え、ええ?」

 

「スポンジとクリーム、そして果物の黄金比……! 学生同士のクリスマス会で出てきていい代物じゃないわよ!」

 

「そうですわ! こんなの、社交界のパーティでも出てきたことありませんわ!」

 

「嫁よ、お前はなんてものを……」

 

「……俺、褒められてるのか? それても貶されてるのか?」

 

一夏が形容し難い顔になった。

本当は褒めたいよ? でも、それをすると僕達の乙女の部分、女の子としてのプライドが……!

 

「箒、お前はどうなんだ!?」

 

「何を言っているんだ? 私は小さい頃から、毎年一夏のケーキを食べてたんだぞ? プライドなど、とうに捨てた……」

 

「うっ!」

 

箒に詰め寄ったラウラだったけど、箒の遠い目を見て逆に罪悪感が生まれたのか、肩を掴もうとした手が宙を彷徨っていた。

 

「いっくん、ケーキおかわり!」

 

「はいはい」

 

「篠ノ之博士は……」

 

「ん? いっくんのケーキが美味しいことが、何か問題?」

 

「あ、はい」

 

どうやら博士には、そういった乙女のプライドはないようだ。

 

「シャルもおかわりいるか?」

 

「え? あ、うん……」

 

「ほい」

 

「あ、ありがとう……」

 

勢いでおかわりもらっちゃったけど……。

 

「ええい! あむっ!……うぅ……っ」

 

「シャ、シャル?」

 

「お、美味しいよ……」

 

だけど涙が出ちゃう、女の子だもん……。

 

ーーーーーーーーー

 

学園の寮監室で、私はマドカと一献やっていた。もちろんマドカが飲んでいるのは、ノンアルコールのソフトドリンクだがな。

 

「クリスマスに私と飲みたいとは、酔狂な姉だな」

 

「なんだ、嫌なら断ればよかっただろうに」

 

「別に嫌ではない。だが、男っ気がないのはどうかと思うぞ」

 

「ひぐっ!」

 

こ、こいつ……最近気にし始めたことを……!

 

「同級生の篠ノ之博士ですら一夏とくっ付いたというのに、我が姉ときたら……」

 

「な、なら、お前はどうなんだ!?」

 

「私か? 私はまだ学生だからな。まだまだ出会いもあるだろうさ」

 

「そう言ってると、あっという間に男っ気とやらと無縁になるぞ。なにせ私のクローンなのだからな」

 

「おぅぐ……!」

 

ふっ、やり返してやったぞ。……虚しい。

 

「わざわざ暗くなる話は止めよう」

 

「そうだな」

 

これ以上はさすがに危ないとマドカも悟ったのか、お互い一夏が置いていったツマミをつつき始めた。

 

「しかし、織斑家で一番女子力が高いのが一夏というのは、納得し難い事実だな……」

 

「私は諦めた。家にいる時あいつに下着の洗濯を任せた辺りで」

 

「羞恥心を持て!?」

 

自分と同じ顔の女に説教された。いやもう、一夏は主夫でいいんだよ。

 

「まったく……」

 

「ちなみにお前が今食ったホウレン草のキッシュも、あいつの手作りだ」

 

「……あいつ、もう主夫でいいんじゃないか?」

 

「だろ?」

 

真顔のマドカにニヤリと答える。

 

「ところで、姉の後輩とやらは誘わなかったのか? あの駄肉眼鏡」

 

「駄肉言うな。真耶も遅れて来るそうだ」

 

「すみませーん! 遅れちゃいましたー!」

 

「ほらな」

 

「なるほど。さて、確かこういう時は『駆けつけサンバイ』だったか」

 

「ええっ!? お、織斑さん!?」

 

マドカ、『駆けつけ三杯』であって、ウイスキーをほぼストレートで飲ませる『駆けつけ(度数)三倍』ではないぞ。

 

「や、山田真耶、行きます!」

 

「真耶!?」

 

クリスマスの魔力にやられたのか、真耶がマドカから渡されたコップを一気したんだが!?

 

「んぐ、んぐ……ぷはぁ!」

 

「いい飲みっぷりじゃないか」

 

マドカが拍手してるが、真耶の目、なんか据わってないか……?

 

「せんぱぁぁぁい……」

 

「な、なんだ?」

 

「むへへぇ❤」

 

――グニュンッ!

 

「ふごぉっ!?」

 

ま、真耶苦しい! お前の胸でこ、呼吸がぁぁ……!

 

「巨乳眼鏡に抱き着かれるとか、女っ気には事欠かないな」

 

「ふがががっ!」

 

そんな感心してないで、助けろぉぉぉ!!




スコールとオータム?……日本の社会人ってさ、クリスマスだろうと平日は仕事なんだよ?(死んだ目

ちーちゃん、まーやんと結婚すればいい(オイ
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