「「「「メリークリスマス!!」」」」
12月24日。IS学園の生徒会室で、俺、簪、刀奈、のほほんのグラスがぶつかる。
「結局、前祝は出来ずに本番来ちゃったね~」
「いやのほほん、普通はねぇからな?」
「ホントはやりたかったな~」
「お姉ちゃん……」
そして今日は、のほほんや刀奈を止めてくれる虚先輩はいない。なぜなら……
「虚は今頃、弾君とレストランかしら」
「確か、ホテル『テレシア』の最上階レストランだっけ~?」
「ああ。前に『金が必要だから、稼げる仕事紹介してくれ!』って頼まれた時に聞いた通りならな」
「あったね。修学旅行の直後ぐらいに」
それで束の下働きを紹介したんだよな。束曰く『馬鹿だけど根性だけはあって良し。特に束さんをただの雇い主だと思ってて下心が無いのが良い』ってそこそこ好評価で、1週間ぐらい肉体労働に従事してたらしい。
「それより、早くケーキ食べたい~」
「本音、少しは落ち着いて」
「私も食べたいわね~、陸君のケーキ。簪ちゃんは?」
「……食べたい」
口を尖らせながらも、最後には簪もケーキを要求してきた。まぁ、作った側としては嬉しい反応なんだが。
「そんじゃ、さっそく出すとしますか」
テーブルの上に乗ったチキンやピザの皿を動かしてスペースを作ると、そこに冷蔵庫から出したホールケーキを置いた。
「ゴクリ……!」
「本音、目が血走ってる」
「かんちゃん、これは心して食べないとダメだと思う……!」
「ほ、本音?」
「いやいや、素人のケーキに何を期待してるんだよ」
材料も近所(と言っても本土まで行ったが)のスーパーで買ったもんだし、レシピもネットで調べたのをそのまま作っただけだぞ?
「まあまあ、まずは食べましょ」
「そうですね」
8等分にしたケーキを皿に乗せて、各人に配る。
ちなみに今回作ったのは、正統派のイチゴショートだ。運動会のイチゴフェアを思い出してな。
「それじゃあ」
「「「いただきまーす!」」」
3人はケーキを一口食べて……え、固まった?
「り、陸……」
「え、まさか不味かったか?」
嘘だろ? まさか俺が、オルコット枠に落ちたって言うのか? 嘘だと言ってよバー○ィ!
「美味すぎる!!」(CV:大塚明夫)
「おい!」
「うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおおお!!」(CV:藤本譲)
「のほほんもかよ!」
お前らふざけてんのか!?
「陸君、もうパティシエ目指したらどう……?」
「楯無さんまで何言ってんですか!?」
だから、素人ケーキに何を言ってんだ。
「そもそも、俺のケーキでそんなリアクションだったら、一夏のケーキ食ったらどうなるんですか」
――カランッ
その瞬間、3人のフォークが皿の上に落ちた。
「お、織斑君のケーキって、これ以上なの……?」
「そうですよ。当たり前じゃないですか」
昨日、寮の調理室でケーキを焼いていた一夏に遭遇したんだが、あいつはやっぱりバケモノだった。
『明日のクリスマス用のケーキ焼いてみたんだけど、ちょっと味見してくれないか?』
そう言って、ケーキを作る際に出てきた切れ端を寄こしてきた。
『俺に味見を頼むかねぇ……んぐんぐ……美味っ! え、マジかよ!?』
『そ、そんなに驚くもんか?』
『マジで美味いぞこれ! 』
『よし、それならこれを出そう』
そう言ってケーキを箱に入れると、一夏は調理器具を洗い始めた。
「ってことがあったんですよ」
「これ以上のケーキ……」
「おりむー、恐るべし……」
簪とのほほんが、皿の上のケーキを凝視しながら戦慄していた。
ーーーーーーーーー
1025号室。一夏と箒の部屋でクリスマス会をしていた僕達は、(乙女の)危機に瀕していた……。
「……」
「……」
「セ、セシリア? 鈴?」
「……」
「シャルもラウラも、どうしちまったんだよ?」
「ん~! いっくんの手作りケーキおいし~♪」
「やはり、私にはまだ遠いか……」
何かを悟った箒と普通にケーキを食べてる博士以外、僕を含む全員が絶望していた。
「なんて……」
「一夏、アンタなんてケーキを用意してきたのよォォォォ!!」
鈴が絶叫したそれが、僕達の総意だった。
「え、ええ?」
「スポンジとクリーム、そして果物の黄金比……! 学生同士のクリスマス会で出てきていい代物じゃないわよ!」
「そうですわ! こんなの、社交界のパーティでも出てきたことありませんわ!」
「嫁よ、お前はなんてものを……」
「……俺、褒められてるのか? それても貶されてるのか?」
一夏が形容し難い顔になった。
本当は褒めたいよ? でも、それをすると僕達の乙女の部分、女の子としてのプライドが……!
「箒、お前はどうなんだ!?」
「何を言っているんだ? 私は小さい頃から、毎年一夏のケーキを食べてたんだぞ? プライドなど、とうに捨てた……」
「うっ!」
箒に詰め寄ったラウラだったけど、箒の遠い目を見て逆に罪悪感が生まれたのか、肩を掴もうとした手が宙を彷徨っていた。
「いっくん、ケーキおかわり!」
「はいはい」
「篠ノ之博士は……」
「ん? いっくんのケーキが美味しいことが、何か問題?」
「あ、はい」
どうやら博士には、そういった乙女のプライドはないようだ。
「シャルもおかわりいるか?」
「え? あ、うん……」
「ほい」
「あ、ありがとう……」
勢いでおかわりもらっちゃったけど……。
「ええい! あむっ!……うぅ……っ」
「シャ、シャル?」
「お、美味しいよ……」
だけど涙が出ちゃう、女の子だもん……。
ーーーーーーーーー
学園の寮監室で、私はマドカと一献やっていた。もちろんマドカが飲んでいるのは、ノンアルコールのソフトドリンクだがな。
「クリスマスに私と飲みたいとは、酔狂な姉だな」
「なんだ、嫌なら断ればよかっただろうに」
「別に嫌ではない。だが、男っ気がないのはどうかと思うぞ」
「ひぐっ!」
こ、こいつ……最近気にし始めたことを……!
「同級生の篠ノ之博士ですら一夏とくっ付いたというのに、我が姉ときたら……」
「な、なら、お前はどうなんだ!?」
「私か? 私はまだ学生だからな。まだまだ出会いもあるだろうさ」
「そう言ってると、あっという間に男っ気とやらと無縁になるぞ。なにせ私のクローンなのだからな」
「おぅぐ……!」
ふっ、やり返してやったぞ。……虚しい。
「わざわざ暗くなる話は止めよう」
「そうだな」
これ以上はさすがに危ないとマドカも悟ったのか、お互い一夏が置いていったツマミをつつき始めた。
「しかし、織斑家で一番女子力が高いのが一夏というのは、納得し難い事実だな……」
「私は諦めた。家にいる時あいつに下着の洗濯を任せた辺りで」
「羞恥心を持て!?」
自分と同じ顔の女に説教された。いやもう、一夏は主夫でいいんだよ。
「まったく……」
「ちなみにお前が今食ったホウレン草のキッシュも、あいつの手作りだ」
「……あいつ、もう主夫でいいんじゃないか?」
「だろ?」
真顔のマドカにニヤリと答える。
「ところで、姉の後輩とやらは誘わなかったのか? あの駄肉眼鏡」
「駄肉言うな。真耶も遅れて来るそうだ」
「すみませーん! 遅れちゃいましたー!」
「ほらな」
「なるほど。さて、確かこういう時は『駆けつけサンバイ』だったか」
「ええっ!? お、織斑さん!?」
マドカ、『駆けつけ三杯』であって、ウイスキーをほぼストレートで飲ませる『駆けつけ(度数)三倍』ではないぞ。
「や、山田真耶、行きます!」
「真耶!?」
クリスマスの魔力にやられたのか、真耶がマドカから渡されたコップを一気したんだが!?
「んぐ、んぐ……ぷはぁ!」
「いい飲みっぷりじゃないか」
マドカが拍手してるが、真耶の目、なんか据わってないか……?
「せんぱぁぁぁい……」
「な、なんだ?」
「むへへぇ❤」
――グニュンッ!
「ふごぉっ!?」
ま、真耶苦しい! お前の胸でこ、呼吸がぁぁ……!
「巨乳眼鏡に抱き着かれるとか、女っ気には事欠かないな」
「ふがががっ!」
そんな感心してないで、助けろぉぉぉ!!
スコールとオータム?……日本の社会人ってさ、クリスマスだろうと平日は仕事なんだよ?(死んだ目
ちーちゃん、まーやんと結婚すればいい(オイ