いつの間にか、評価バーを見て一喜一憂して疲れてる自分がいました。
執筆当初の『ただ書きたいものを書く』からかけ離れてたなーと。反省。
クリスマス会をやった翌日、IS学園は今日から正月三が日まで冬休みになっている。
多くの生徒が地元、祖国に帰省している中、俺は帰る場所もないから、寮の部屋で寝正月のリハーサルをしていた。
「陸くーん、入るわよー」
「入ってから言うな、入ってから」
「ほら、着替えて着替えて。簪ちゃんも待ってるわよ」
「あ? 今日なんか約束してたか?」
簪も刀奈も今日から更識家に帰省するから、何も予定は入ってなかったはずなんだが……。
「特に約束はしてないわよ」
「おい」
「だけど、挨拶は早い方がいいでしょ?」
「……挨拶?」
「お父さん達への挨拶よ。電話では話したことあるって簪ちゃんから聞いてるけど、直に会うのはまだでしょ?」
「……」
やばい、顔や背中から汗が止まんねぇ……!
いや、いつかは来るし、避けては通れねぇとは思ってたが、心の準備が……!
「もうっ、こうなったら向こうに着いてから着替えましょ!」
刀奈がパンパンッと手を叩くと、黒服グラサンのガタイのいい男達が……って、ちょっと待て?
「確保ぉ!」
「「「応!」」」
「ちょっと待てぇぇぇぇ!!」
抵抗むなしく俺は黒服達に担がれて、そのまま更識家にハイエースされてしまったのだった。
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武家屋敷と言わんばかりの
「陸、似合ってる」
「おう、あんがとよ……」
似合ってるか? 正直、自分が和服の似合う奴だとは思えねぇんだが……。
「簪は、まさにお姫様って感じだな」
「そ、そう……?///」
浅葱色の振袖を着て畳の上にちょこんと座る姿は、まさに武家のお姫様だ。
顔を赤くした簪が、顔を逸らしながらもこっちを見る。
「お待たせ……って、陸君、また簪ちゃんを誑し込んでたの?」
「失礼なこと言うな。なんだ、刀奈も着物、結構似合ってるな」
簪の物より少し緑成分の濃い色合いの振袖を着た刀奈も、これはこれでいいな。
「惚れちゃった?」
「ああ」
「そ、そう……どうしてそんなアッサリ言うのよぉ、私の方が恥ずかしいじゃない……」
「それで、準備が出来たのか?」
「うにゅぅぅ……はっ! お父さんとお母さんが待ってるわ。付いてきて」
現実世界に戻ってきた刀奈が先頭で、その後ろを俺、最後に後詰で簪が廊下を歩いていく。
ふと左側を見れば、見事な日本庭園が広がっている。今日日、ここまで日本式なのも珍しい。
そして廊下の一番奥の部屋で刀奈が止まり、襖の前で正座で座り込む。
「失礼します」
刀奈が襖を開けると、そこには袴姿の偉丈夫と、留袖を着た刀奈に似た女性がこちらを見ていた。
「直接会うのは初めてですね」
「まあ、座ってくれ」
声を聴いて確信した。なぜなら聞き覚えのある声だから。
更識家十六代目当主、更識
「はい。失礼します」
和室でのマナー(畳の縁を踏まないとか)を思い出しながら、二人に向かい合う位置まで進んでいき、何とか正座をした。
俺の隣には簪が座り、刀奈は当主だから向こう側に……行かずに、俺の隣へ。
「ほう、そこまで彼に惚れたか、刀奈」
「ええ。それはもう」
刀奈の回答にニヤリと笑う槍峻さんの顔は、まるでガキ大将のそれだ。琴音さんに至っては、終始ニコニコしているし。
「簪については夏休み明けに報告を受けていたが、まさか刀奈もとはな……。君もなかなかの人誑しだな」
「否定は、できませんね」
なにせ、現に二人に手を出してるんだから。
「別に、君が悪いとは言っていないよ」
「正直、一発殴られるぐらいは覚悟していましたが」
「ほう? なぜだね?」
「槍峻さんや琴音さんからしたら、俺は簪と刀奈、二人まとめて誑し込んだ男です。いい印象はないでしょう」
例え、国連やIS委員会から重婚許可を出されていると言ってもだ。
「私はそうは思わん」
槍峻さんは正座から胡坐に座り直すと、腕を組んで俺の考えを否定した。
「刀奈も簪も、ただチャラいだけの男に
「そうですよ。私も簪ちゃんに色々アドバイスした身ですし」
「やっぱりあれお母さんだったの!?」
琴音さんの言葉を聞いて、身を乗り出すように抗議する刀奈。もしかして、キャノンボール・ファストの
「だって刀奈ちゃん、せっかく好きな人が出来たのに奥手なせいで恋が実らなかったら可哀想だもの」
「~~っ!!///」
頬に手を当てて困った顔をする琴音さんに、刀奈は顔を真っ赤にして手で顔を隠すと、正座したまま前のめりに倒れ込んでしまった。
「簪。お前は良かったのか? いくら宮下君の懐が深いとはいえ、刀奈を許容して」
「構わない。陸がお姉ちゃんを受け入れるなら、私はそれを支持する。陸の気持ちが最優先」
「ふむ、そうか」
槍峻さん、俺そんな懐深くないです。そして簪、俺ファーストもほどほどに。マジで譲れない一線は持っててくれ。
「さて宮下君。私達としては、君と娘達との交際について反対しない。むしろ、二人をよろしく頼む」
「え、あの……」
「ふふっ、『娘さん達をください!』と言えなくなって困ったかな?」
「えっと……はい」
まさか、義親になる人からの先制攻撃で封殺されるとは思わんだろう……。
「ただ、一つ問いに答えてくれないか」
「問い、ですか?」
「ああ。ちなみにどう答えようとも、手のひらを返して二人との交際に反対したりはしないから安心してくれ」
「は、はぁ……」
「刀奈と簪が命の危機に瀕している。もしどちらかしか助けられないとしたら、君はどちらを助ける?」
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「刀奈と簪が命の危機に瀕している。もしどちらかしか助けられないとしたら、君はどちらを助ける?」
「簪です」
悩む素振りもせず、まるであらかじめ決まっていたかのような回答に、問うた私の方が固まってしまった。
助けると言われた簪ですら、信じられないという顔をしている。
「俺も刀奈も、簪の命が最優先です。だから刀奈を見捨てても、簪を助けるためだったなら、刀奈は分かってくれます」
「当然ね」
「お姉ちゃん!?」
「逆に俺と簪が天秤に乗っていた場合でも、俺は簪に生き残って欲しいし、刀奈も俺を切り捨ててくれるはずです」
「……」
刀奈の方を見ると、ごく自然体で首を縦に振った。
ここまで、ここまで簡単に選択できるものなのか。ここまで簡単に、自分すら切り捨てられるものなのか。それだけ、簪を愛し、刀奈を信じているのだな……。
「どうして……私、嬉しくない。嬉しくないよ……」
「安心しろ」
悲しそうに俯く簪の頭を、宮下君が優しく撫ぜる。
「槍峻さんが言ったのは、あくまで"もしも"の話だ。ですよね?」
「そう、だな」
そう、もしもの話だ。だが、実際にその"もしも"が現実になるのも事実だ。
「それに、もしそうなりそうになっても、その前に刀奈が元凶を見つけ出して――」
「俺がちゃんと、対処するからよ」
――ゾクッ
刀奈と簪からは、ちょうど見えない位置にある彼の目。
その目が見えた時、私は久々に恐怖を感じた。暗部の人間として、刀奈に当主の座を譲るまで、数々の修羅場を潜り抜けてきた私がだ。
それと同時に、頼もしさも感じた。
あの目は語っていた。簪を脅かす存在は、全て斬り捨てると。一人たりとも生かしてはおかないと。
あの目は語っていた。命尽きるまで、簪と刀奈を守り続けると。
二人のためなら、躊躇いなく血を流す覚悟が、両の手を血で汚す覚悟が、返り血を浴びる覚悟があると、そう言っているのだ。
(まったく、単に『娘さんをください!』と言われるより強烈な挨拶だ。『狂愛』と言っても過言ではないな)
だが、それだけ娘達を想っている彼になら、任せてもいいと私は思っている。
琴音も、それを察して簪に助言したのだろう。あやつは、昔からそういったところに敏感だったからな。
「改めて、娘達をよろしく頼む」
私がそう言うと、最初の目に戻った彼はこちらに向き直り、しっかりとした座礼で返したのだった。
オリ主、ハイエースされる。暗部なのにガタイのいい黒服とは一体……。
更識姉妹の両親と初対面。例のごとく、両親の名前はオリ設定です。
簪最優先。簪が天秤に乗ってるなら、たっちゃんもオリ主を切り捨てると思ってます。
なんて殺伐とした実家挨拶だ……!(オマイウ