俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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第14話 新武装

「……あれ」

 

気が付くと、俺はベッドの上で横になっていた。しかも制服を着たままで。

 

(なんでだ……って、そうか……俺、晩飯食った後、寝ちまったのか……)

 

シャワーの順番を待ってる間にちょっと休もうとしたら、そのまま朝になっちまったのか。

 

「すぅ……」

 

「え?」

 

なんか、自分以外の声が聞こえたような……しかも結構近くから。そう思って掛け布団(俺、布団掛けてたっけ?)をめくると

 

「すぅ……」

 

「……」

 

パジャマ姿の簪が、俺の横で丸まって寝ていた。

 

「な……なんで、簪がいるんだ?」

 

「んん……」

 

俺が思考停止状態になってる間に、掛け布団が無くなって寒かったのか、簪が目を覚ました。

 

「……陸、おはよう……」

 

「お、おう。おはよう」

 

まだ寝ぼけてるのか、普通に挨拶してくる簪に、俺もオウム返ししか出来なかった。

 

「……」

 

「……」

 

き、気まずい……

 

「……」

 

「……か、簪?」

 

やがて意識がはっきりしてきたのか、トロンとしていた簪の目が開いていき

 

「……!?///」

 

今の状況を察したようで、ドンドン顔が真っ赤になって

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

部屋中に簪の悲鳴が響いた。

 

 

 

――学生寮食堂

 

「かんちゃんの悲鳴、寮中に響いてたよ~」

 

「あぅぅ……」

 

「マジか」

 

普段あんまり大声出さないから知られてないが、簪の声はよく通るからなぁ。どうりで、さっきからすれ違う連中にジロジロ見られてるわけだ。辛ぇ……。

 

「それで、一体何があったの~?」

 

「それは――」

 

「な、何でもないから!」

 

そう言って、両腕をバタバタ振る簪。ナニコレ可愛い。

 

「は~……かんちゃん、頑張れ~!」

 

「何その『分かってるよ~』みたいな顔!?」

 

簪とのほほんのやり取りを見ながら、俺はしれっとトーストとゆで卵を食い始めた。

だが、それは無理な相談だったようだ。

 

「ねぇ、宮下君……」

 

「なん、だ……」

 

呼ばれて振り向くと、そこには……猛獣の群れがいた。

 

「更識さんの悲鳴、私達の部屋にも聞こえたんだけど、何があったのかな~?」

 

「ちょっと興味があるな~」

 

「教えてほしいな~」

 

正直に言おう、怖ぇ。

今朝の簪の悲鳴について、質問攻めに遭うのはある程度予想はしていた。だが、話題に飢えた女子生徒があんなに怖いとは思わんかった……。

だが、もっと恐ろしかったのは

 

「みんな、今朝は悲鳴なんて聞かなかった、イイネ?」

 

「「「アッハイ」」」

 

微笑しつつ目は全然笑ってない簪だった。

これにはクラスメイトも水飲み鳥のように首を上下に振るしかなかった。

 

ーーーーーーーーー

 

ということがあった放課後。一度寮の部屋に戻った俺は、段ボール(別外史の産物入り)からお目当てのものを取り出した。

 

「さて、どうしたもんかなぁ」

 

昨日簪達に言った『近距離武装の当て』。それが今、俺の手の上にある。これを使えば打鉄弐式はさらに強くなるだろう。だが……

 

「……リミッターを付けるか」

 

と独り言ちながら、簪達が待つ整備室に歩みを進めていった。

 

 

 

「それで、今日はどうするの~?」

 

「それなんだが……簪、昨日言ってた事、覚えてるか?」

 

「昨日……近距離武装の事?」

 

「そうだ。とりあえず、リミッター有で付けてみようと思う」

 

「リミッター?」

 

簪が首を傾げる。

 

「ああ。通常出力で使うと危なそうなんでな」

 

「どんな武装なの~?」

 

「それは付けてみてからのお楽しみだ。さてのほほん、さっそく武装の作成と取り付け、やってくぞー」

 

「りょうか~い!」

 

 

――1時間後

 

 

「「できたー!」」

 

「相変わらず早い……」

 

でも、打鉄弐式を組み上げた時に比べれば、常識の範囲内かもしれない。

陸は打鉄の右腕部(整備科からもらったパーツの余り)を持ってくると、部屋から持ってきた装置?を取り付けて、本音はその右腕部を弐式本体に接続。やったことと言えばそれだけだ。

 

「どうだ簪。今まで腕部装甲が無かったから、多少違和感があるとは思うが」

 

「大丈夫。少し夢現を握った感覚に違いはあるけど、誤差の範囲」

 

「さっすがかんちゃん~。ところでりったん、右腕に付けたのってなんなの~?」

 

そうだった。まだ陸から新武装について何も聞いてない。

 

「弐式に付けた右手から、高周波を短いサイクルで対象に直接照射する、言ってしまえば"レンチン"だ」

 

「れ、レンチン~……?」

 

レンチンって、"電子レンジでチン"ってこと? つまり……

 

「つまりそれって、『ISを操縦者ごと沸騰させる』ってこと?」

 

「え……?」

 

私が口にした予想に、本音が絶句した。

 

「そういうことだな」

 

「あ、危なすぎる!」

 

「だからリミッター有って言ったろ」

 

それはそうだ。むしろリミッターが付いてなかったら怖くて使えない。

 

「今の時点でリミッターを付けて、ISの絶対防御を抜かない程度の出力に落としてある。そうじゃないとエネルギーを馬鹿食いして使い物にならないって理由もあるし、第一レギュレーション違反になるだろう?」

 

「あはは~……絶対リミッター外しちゃダメだね~……」

 

「うん……」

 

正直私、牽制ぐらいに使えればって思ってたんだけど……。

 

「簪。念のためちゃんと武装が登録されてるか確認してくれるか」

 

「分かった」

 

展開可能な装備一覧を出すと、今まで無かった項目が見つかった。武装名は……

 

「メメント、モリ?」

 

「それだな。俺の方で適当に付けさせてもらった。嫌だったら変更も出来るが」

 

「ううん。嫌じゃない」

 

確かに春雷や山嵐と言った漢字ばかりの中に、いきなり横文字の武装は浮いてる気がする。でも、なんだろう。何か響きが良い気もする。

 

「そういえば~、かんちゃんの弐式が紅くなった時も、横文字の武装だったよね~」

 

「『ベルゼルガー』だっけか? あれも装備一覧に載ってたのか?」

 

「載って……無かったと思う」

 

言われてみれば、どうして私はあの武装名を知ってたんだろう……? お姉ちゃんと距離を詰めた時も、"あれで正しい"ってなぜか確信を持ってた気もするし。

 

「う~ん、やっぱり謎だね~」

 

「まあいいか。今は新武装をクラス対抗戦までに使えるようにすることを考えよう。あと……何日あるんだった?」

 

「再来週だから、あと1週間ちょっと」

 

「切羽詰まってるわけじゃ無いが、余裕があるわけでもないな」

 

「だね~。とりあえず動作確認のためにも、アリーナの予約は取っておこうか~」

 

「そうだな。毎回のほほんに行かせるのもあれだし、今日は俺が予約取りに行ってくるわ」

 

「陸、珍しい」

 

「簪さんや。そのセリフ、地味に痛いから」

 

陸自身も気にしてたのか、何とも言えない顔になった。

 

ーーーーーーーーー

 

「失礼しましたー」

 

簪とのほほんを整備室に残して、俺は職員室でアリーナの予約をした。やはり対抗戦が近いからか、結構予約が入っていた。とはいえ、アリーナ丸々貸切るわけじゃ無いから、予約自体はつつがなく完了した。

さて、簪達とは食堂で合流ってことにしてあるから、さっさと――

 

「やっほー宮下君」

 

「……パイセン、なぜここに?」

 

「ちょっと貴方に話があってね」

 

そう言って、またどこから出したか分らん扇子をバッと広げるパイセン。扇子に書いてあるのは『待伏』。っておい、待ち伏せしてたんかい!

 

「はぁ……で、なんです?」

 

「簪ちゃんの弐式に付けた武装の事」

 

「またずいぶん情報が早いですね」

 

「まぁね~」

 

そう相づちを打つと、ニコニコ顔から一変、呆れたような視線に変わる。

 

「ずいぶんと物騒なものを付けたわね」

 

「自覚はあります。だからリミッターを付けたんですよ」

 

「当然よ。もし制限なしで付けてたら、貴方を殴ってでも外させてたわ」

 

「うわぁ……それはご勘弁」

 

「まったく……それで、そのリミッターって大丈夫なんでしょうね? 簪ちゃんに何かあれば承知しないわよ」

 

「相変わらずですね……それを明日確認するために、アリーナの予約をしに来たんですよ」

 

「ああ、なるほど……」

 

パイセンはそう言って少し考えるような仕草をしたが、すぐにくるっと踵を返すと

 

「ちゃんとリミッターが効くか心配だから、明日は私も見学させてもらうわね~」

 

扇子を振りながら、生徒会室の方に戻っていった。こっちは了承してないんだがなぁ……。

 

「やれやれ……」

 

パイセンが見えなくなってから、俺はその場でため息をついた。神出鬼没かつ忙しない人だ。

 

「簪にも、同じぐらい絡めばいいものを」

 

苦笑しつつ、俺は簪達が待ってるであろう食堂に向かって歩き出した。

 

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