俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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年末年始ネタを、7月のクソ暑い中書くという矛盾。
臨海学校の時もそうだった気が……。


第146話 年末の織斑家

「なんやかんやでもう年明けか」

 

クリスマスが終わり、IS学園も冬休みに入ったと思ったら、あっという間に年末になっていた。

煤払いも昨日の内に終わらせたし、明日食べるおせちも用意は終わってる。

 

「あとは年越しそばでも作って、まったりするか。マドカは天ぷらときつね、どっちにする?」

 

「天ぷらがいい」

 

「はいよ」

 

こたつから頭だけを出して紅白を見てるマドカ。まるっきり、昔の千冬姉だな。

そう思っていたら、風呂から上がってきた千冬姉がやってきた。

 

「千冬姉、これから年越しそば茹でるけど、食べるよな?」

 

「ああ。いつも通り、きつねな」

 

「分かってるよ」

 

俺が年越しそばを作るようになってから、千冬姉はきつねそば以外選んだことがないからな。

 

「さて、俺も天ぷらにするか」

 

「一夏、一人前追加してやれ」

 

「は?」

 

「ああ、なるほど。ちょっと待ってろ」

 

千冬姉の意外なセリフにはてなマークを浮かべていると、マドカが何かに気付いたのか、こたつから出て庭に出た。

積もるほどではないけど、ちらちらと雪が降っている。

 

「ほら、出て来い。姉さんにもバレてるんだ」

 

すると、

 

「ら、ラウラ?」

 

冬迷彩のコートを着たラウラが、鼻を真っ赤にして出てきた。

 

「お前、いつからそこにいたんだよ……」

 

「夕暮れ前からだ」

 

「アホかぁぁ!」

 

胸張って言うことじゃないだろ! 風邪ひいたらどうんだよ!?

 

「なんで庭に隠れる必要があるんだよ。普通に訪ねてくればいいだろ」

 

「いや、私は織斑家の安全を陰から守るために……くしゅんっ」

 

「だーもう!」

 

とりあえずラウラを家の中に連行すると、こたつの中にシュゥゥゥ!した。まったく、手も冷え切ってるだろ。

 

「何か温かい飲み物用意するから、しばらくそこに入ってろ」

 

「おおっ、これがこたつか。確か猫の聖域とも呼ばれる、冬の風物詩だったな」

 

「誰だそんなこと言ったのは……一夏、私にもホットミルク」

 

「私には熱燗な」

 

「はいはい」

 

織斑家の女性陣からも注文が入ったし……。

 

「はい、おまちどーさま」

 

ラウラとマドカにホットミルクのカップを渡し、千冬姉には熱燗の徳利とお猪口を渡す。

 

「あつっ」

 

「なんだ、猫舌か」

 

「そ、そんなわけないだろ。ちょっと予想よりも熱かっただけだ」

 

そんなこと言いつつ、恐る恐るちみちみとホットミルクを飲むラウラの姿は、紛うことなき猫だった。

 

「さて、気を取り直してそばを茹でるか。ラウラ、しばらく千冬姉の話相手よろしく」

 

「ま、任せておけ」

 

……本当に大丈夫か?

 

「安心しろ。こいつがダメそうなら、私が適当に場を持たせておく」

 

マドカがそう言ってるし、大丈夫だろう。俺はそばの用意をするために、3人をリビングに残してキッチンに引っ込んだ。

 

ーーーーーーーーー

 

緊張しているのか、ラウラはガッチガチに固まっていた。

 

「えっと、教官……」

 

「家に来てまで教官はよせ」

 

プライベートでその呼び方をされても困る。というか、何度も言ってるが私はもう教官ではない。

 

「そ、それでは……あ」

 

「あ?」

 

 

義姉上(あねうえ)!!」

 

 

「ぶふっ!」

 

マドカが吹いた。私も危うく酒が鼻に回るところだった。

 

「将来一夏と結ばれた時には、そ、そう呼ぼうと思っていて……」

 

「あ、ああ……」

 

確かに、一夏がラウラを始めとした連中と正式に婚姻したら、そう呼ばれてもおかしくはないが……。

 

「ぷくくく……! あと4人、なんて呼び方をされるんだろうな……くくくっ!」

 

マドカぁ、お前他人事だと思って……!

 

「それと、マドカのことはまーたんと呼ぶことにしよう」

 

「はぁ!?」「ぶっふ!」

 

ラ、ラウラ……まさかお前がそんなこと言うなんて想像してなかったぞ……!

 

「な、なんだその呼び名は!」

 

「好感度を上げるためにはあだ名で呼ぶものだと、ドイツにいる副官が」

 

「その副官解任しろ!?」

 

クラリッサめ。相変わらずあいつは、よく分からん知識を周囲に吹聴しているのか。

 

「い、いいか! 私はそんなあだ名を許可するつもりはないぞ!」

 

「なぜだ? そんなに悪い呼び名ではないだろうに」

 

「嫌だ! もしその名で呼んだら……」

 

「呼んだら?」

 

「貴様のこともラウラウって呼ぶぞ」

 

「やめろぉぉぉぉぉ!!」

 

ラウラ、もうすでに布仏妹にそう呼ばれてるだろ……そんなに嫌だったのか?

その後、取っ組み合いをすることしばし。

 

「はぁ、はぁ……ふ、普通に名前で呼ぶぞ。いいな?」

 

「ああ……それで、いこう」

 

ということで決着した。最初からそれで良かっただろうに。

 

「はいよ。そばお待ち……って、なんかあったのか?」

 

キッチンの方から、ドンブリを盆に載せた一夏がやってきた。

 

「気にするな。ちょっとした戯れだ」

 

「はぁ、まあいいか。えっと、千冬姉とラウラがきつね、マドカが天ぷらな」

 

こたつの上にそばのドンブリが載ると、マドカとラウラが目をキラキラさせた。

 

「それではさっそく!」

 

「あっ! お前! い、いただきます!」

 

即そばをすすり出したマドカに対して、手を合わせてから食べ始めるラウラ。う~む、どこかでマドカに教育が必要だな。

 

「おおっ、これはなかなか……!」

 

「つゆの出汁がいいな。うまい」

 

二人が美味そうに食べるのを見て、私もそばをすする。うむ、うまい。

 

「今年は昆布からあごだしに変えたんだけど、好評みたいで良かったよ」

 

「あごだし? なんだそれは?」

 

「なんだったかな……あっ、そうだそうだ、トビウオからとった出汁なんだってさ」

 

「ほう、トビウオのことを"あご"と言うのか」

 

「まったく、どんどん女子力を上げおって」

 

「いや、女子力って……」

 

そんなことを言っていると、ぼーんと除夜の鐘が鳴った。

 

「あ、千冬姉」

 

「うむ。マドカ」

 

「ああ」

 

「「「今年もよろしくお願いします」」」

 

3人で頭を下げる。自分で声を掛けといてなんだが、マドカもちゃんと頭を下げたな。

それにラウラも慌てて倣った。

 

(去年は激動の1年だったが、今年も明けから一波乱ありそうだ)

 

一夏のIS学園入学を皮切りに、無人機の乱入にVTS事件、福音暴走。2学期に入ってからも亡国機業の襲撃、ハッキング事件、エクスカリバー、女権団消滅。大きな事件だけでこれだけある。

さらに1年4組の宮下が巻き起こした小事件も含めればキリがないほどだ。

 

三が日ぐらい学園の面倒事は忘れようと思っていたのだが、私の頭の中には終業式の直前に知らされた案件――3学期にルクーゼンブルグ公国から特別留学生がやってくる――が巡っていた。

 

ーーーーーーーーー

 

除夜の鐘が鳴って1月1日の元旦。ラビット・カンパニーの社長室は、今も煌々と明かりが点いていた。

 

「スコール……あと何枚だぁぁぁ……?」

 

「これで……」

 

ほぼ机に突っ伏しているオータムに問われた私は、最後の書類に印を押した。

 

「お……」

 

「「終わったーーーーー!!」」

 

クリスマス休暇が幻と消えた私達が、なんとか三が日を死守した瞬間だった。

 

「昔の軍人時代でも、こんなにひどい生活はしてなかったぞ……」

 

「私もよ」

 

アメリカの特殊部隊にいた時ですら、潜入任務中でもない限り、10日に1日は非番があったのに……。

 

「ひぃ、ふぅ、みぃ……うわっ、私達35連勤もしてたのかよ!?」

 

カレンダーを眺めてたオータムが声を上げた。それを聞いて私も上げそうになった。

ただの35連勤ではない、"会社に泊まり込んで"の35連勤。地獄だったわぁ……。

 

「けど、これで私達は自由よ」

 

さっきも言ったように、三が日は死守した。しかも、それだけじゃない。

 

「ああ! これまでの代休分も含めて、成人の日? まで休めるんだよな」

 

そう、これから私達は、8連休に突入するのだ。

 

「オータム、リサーチは済んでる?」

 

「当然!」

 

自信満々で、私に端末の画面を見せる。

 

 

「この近辺で、元旦初売りをする店と福袋の内容、全部調べは済んでるぜ!」

 

 

「結構! 大変結構!」

 

この社長室の椅子に座らされてから、まともにショッピングも出来なかった憂さ、ここで晴らさせてもらうわよ!

 

「だがまぁ、とりあえずは……」

 

「とりあえずは?」

 

「久々に、シャワーじゃなくて風呂入ろうぜ」

 

「……そうね」

 

オータムの言う通り、社内のシャワー室ではなく、湯船に浸かりたいわ。

 

「そんじゃ、さっさと帰って風呂入って一旦寝よぉぜ」

 

「ええ。明日……もう今日ね。今日の朝は早そうだし」

 

そうと決まれば話は早い。私とオータムはテキパキと片付けると、借りたままほぼ帰っていないマンションに向かって、車を走らせたのだった。




年越し織斑家。原作にプラスして、マドカもいる光景。しかも性格が原作ブレイクしているからか、とっても書きやすくなりました。(オイ

スコールとオータム、やっとお家に帰れる。35連勤泊まり込みなので、社長と秘書に就任してから一度も帰ってません。そしてその反動で、元旦初売りとか言い出してます。(アメリカには初売りの風習はないらしいです)

次回、初詣をするか、さっさと3学期(新章)に入るか悩み中です。
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