「織斑一夏! おぬしを我がルクーゼンブルグに招く。わらわの世話役として、一生を共にするのじゃ!」
寮の食堂で、馬鹿姫が束の忠告をガッツリ無視して言い放ちやがった。
「は?」
「「「「「はあぁぁぁぁっ!?」」」」」
一夏はもちろん、ハーレムの面々もこれには驚きの声を上げるしかない。
「何を言ってるんですか! あれだけ篠ノ之博士に忠告されたのに……!」
「なればこそ、一刻も早く一夏を我が公国に連れて帰らねばならぬ!公国内であれば、いかな博士といえ、そう簡単に手は出せぬからな!」
ダメだこの馬鹿姫、現実見えてねぇ。というか、束の恐ろしさを理解してねぇ。もしかして、周りの連中がちゃんと教えてねぇのか?
「異議あるものは名乗りを上げよ! さもなくば口を閉ざすがよい!」
「あるに決まってんでしょ!!」
真っ先に声を上げたのは凰だった。相当キレてるのか、手の中で割りばしが真っ二つに折れる。
「ふむ……ならば、わらわと対決するか? 無論、女同士の真っ向勝負。ISでの対決じゃ!」
「望むところよ!」
馬鹿姫の挑発するような提言に、凰もケンカ腰で承諾する。おいおい、一夏本人の意思は無視かよ。
「いけません殿下! このような者と争うなど、王族のすることではありません!」
なんかお付きの護衛女がゴチャゴチャ言ってるが、問題はそこじゃねぇんだが。
「というかよー」
俺が声を上げると、全員の視線がこっちを向く。
「ISで勝負するのはいいが、アリーナの予約はそう簡単には出来ねぇぞ。俺が知ってる限りでも、2,3日は予約が埋まってたはずだしな」
「何だ貴様は! 殿下の御前でそのような口の利き方を……!」
「よい、ジブリル」
「しかし殿下!」
「この学園に男が2人いるとは聞いていたがの。一夏と違い、もう1人は不愉快な鳴き声をあげる獣か。だがその程度で怒るほど、わらわも器量が小さくはないのじゃ」
――バキンッ
馬鹿姫の人を見下したような発言の直後、めちゃくちゃ大きな音がした。
「か、かんちゃ~ん……?」
簪? 振り向くと、先ほどのでかい音は、簪が握っていた金属製のフォークが折れた音だったらしい。……え、それ折ったのか? 片手で?
「面白そうですね、私もその勝負に参加していいですか?」
「さ、更識?」
「いいですよね?」
「ほう、面白い。では二対二の決闘といこうかの! では明日の放課後、第三アリーナで開始する!」
言うだけ言って、馬鹿姫と護衛女は食堂を出て行った。
「えっと、更識さん……?」
「あのお姫様はダメ、潰す」
「更識!?」
「かんちゃんスト~ップ!!」
「そうだぞ! いくら宮下のことを悪く言われたからって」
「大丈夫、決闘の最中で不自然に見えないように……」
「アカーン!!」
一夏ハーレムとのほほんに翻意を促される簪。そして蚊帳の外の俺達男2人。
「なぁ、陸……」
「何も言うな。そもそも今回の導火線はお前だ」
「ぐぉ……!」
どうして一夏の近くにいると、俺や簪が巻き込まれるんだ。本来なら凰達と馬鹿姫らが戦って終わるはずだったろうに……
え? 『アリーナ予約のこととか口にしなければよかっただろ』って? ……Oh。
「というか、明日のアリーナ予約は誰がするんだ?」
俺が言った通り、2,3日は全部のアリーナが予約済みだったはずだ。
「え?」
「あ」
「おい」
あの馬鹿姫、面倒事は全部こっちに丸投げしやがったなぁぁ!!
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突然決まった鈴・更識さん vs アリス・ジブリルさんの決闘。そして俺は寮監室に、というか、千冬姉に会いに行っていた。
「殿下……また面倒事を……」
なにせ予約が入っていたアリーナを、アリスの一存で空けさせようとしてるんだ。
「ごめん千冬ね(ゴンッ)お、織斑先生……」
「お前が謝ったところで、状況は変わらんだろう。というか、更識妹も出るのか……」
「織斑先生、アリーナの予約より、そっちの方が心配だったり?」
「当たり前だ。あいつは笑ってたんだろう?」
「あ、ああ……」
決闘に参加を表明した時の更識さんの顔を思い出して、俺はなぜか身震いしていた。
「その反応は正しい。下手すると、更識妹が殿下を殺しかねん」
「い、いやいや! まさかそんな! だって更識さんが参加した理由って、陸を馬鹿にされただけで……」
「更識妹からすれば十分な理由だ」
「そんな馬鹿な……」
それって、俺が箒達を馬鹿にされたからって相手を殺すってことだろ?……だめだ、理解できない。
「まあいい。アリーナの件は承知した。なんとかしておこう」
「ありがとう、千冬ね(ゴンッ)織斑先生……」
「まったく、毎度矯正する私の身にもなれ」
「出来れば、手より先に口で矯正して戴けると幸いです……」
俺の脳細胞も、無限再生するわけでもないから。いてぇ……
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決闘の日、あたしは更識と第3アリーナのピットにいた。
「今日はよろしく」
「ええ、あの生意気な連中をギッタンギッタンにしてやりましょ!」
甲龍の拳と打鉄弐式の拳がぶつかる。
それにしても……元々おしゃべりな方ではないと思ってたけど、今日は特に口数が少ないわね。
「えっと、相手のISは……」
「『セブンス・プリンセス』と『インペリアル・ナイト』。どちらも第4世代機」
「第4世代機!?」
更識が口にした相手データを聞いて、あたしは焦った。
第4世代機。つまり箒の紅椿と同じってことよね?
「お姫様の方は『
「面倒ね」
おそらく、護衛女が前衛で生意気姫が後衛ってところだろう。しかも新兵器ってやつ、名前からして重力を操る兵器なんでしょうけど……
「凰さん、大丈夫」
「更識?」
何が大丈夫なのよ、そう言おうとして絶句した。
「撃たれる前に、叩き潰せばいい」
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
そしてアリーナで生意気姫達と対峙したあたし達は、試合開始のブザーが鳴ると同時に――
――バキャァァァァンッ!
「な、なにぃぃぃぃぃ!?」
前衛として立っていた護衛女のISが、突然目の前に現れた打鉄弐式の薙刀であっさり吹き飛ばされていた。
そしてインペリアル・ナイトは、アリーナの壁に激突。というか、完全にめり込んでいた。
「く、くそぉ……なぁっ!?」
さらに追撃と言わんばかりに、GNファング10基が群がりSEを削り取っていく。
『インペリアル・ナイト、SEエンプティ―』
「……もう、あいつ一人でいいんじゃないかしら?」
正直白けた。
昨日の怒りより、これから生意気姫に襲い掛かる悲劇を想像して、同情すら覚えそう……。
「ジ、ジブリルー!!」
「よそ見してていいの?」
「ひぃ!」
恐怖に引き攣った声を出しながら、生意気姫が右手を左に振ろうとするけど
「遅い」
――ガァァァンッ!
「きゃあっ!」
薙刀を叩きこまれ、セブンス・プリンセスが地面に縫い付けられる。
「貴女のISは重装甲。その分、あらゆる動作が遅い。前衛がいなければ怖くない」
「こ、この短時間でわらわの弱点を……だ、だが、この『
生意気姫のセリフにISのセンサーを解析モードに回す。……なによこれ! 全方位型で全然死角がないじゃない! 卑怯でしょこれ!
「そう……」
「なんじゃ、諦めたかの? ならそうと――」
「よかった」
「……え?」
「更、識?」
「そう簡単に落ちたら困ると思ってた。だから、よかった」
おかしい。にこやかに笑ってるはずなのに、どうしてあたし、『怖い』って思ってるのよ……。
『凰! 聞こえるか!』
「へっ!? 千冬さん?」
突然プライベート・チャネルに入ってきた通信に、あたしは思わずさん付け呼びしてしまった。けれどそれに対する指摘もなく
『更識妹を止めろ!!』
焦った千冬さんの声が聞こえたのと、ほぼ同時だった。
「貴女は陸を侮辱した。だから――」
「死ね」
さっきの微笑みから一変、デスマスクの如き無表情になった更識。
その手にはいつもの薙刀でなく、大型のブレードが付いたライフルが握られていた。
ガガガガガガガガッ!
「がぼっ! や、やめっ! げはっ! もう、こっ! こうっ! ひぐっ!」
顔面への攻撃で降参と叫ばせてもらえない生意気姫の悲鳴と、ライフルから吐き出される大口径弾の銃声だけがアリーナ中に響いていた。
『凰! 更識を止めろ!! 凰!』
「はっ! りょ、了解!」
あまりの光景に動けなくなっていたあたしは、千冬さんから再三の命令で我に返って、急いで弐式を羽交い絞めにした。
「更識! もう勝負は着いたわ! もうやめなさい!」
「まだ、息の根が止まってない。陸の障害になる者に死を。死を」
「この、ドアホォ!」
――ガァァンッ!
「ぎゃん!」
完全にイッてる更識の頭を、青龍刀の柄でぶん殴った。
すると、薄気味悪い無表情をしていた更識は、正気に戻ったかのようにきょとんとした目になっていた。
「わ、私……」
「やっと正気に戻ったようね」
気付けば、さっきまで生意気姫をボコっていたライフルも消えていた。
あたしは羽交い絞めを止めると、地面に倒れ伏してすすり泣いている生意気姫に近づいていった。
「アンタの負けでいいわね?」
「ひっぐ……! もう、やめてたもれ……」
『セブンス・プリンセス、戦闘不能。勝者、凰鈴音・更識簪ペア』
なんだろう、勝ったのにすごーい後味悪いわー。
馬鹿姫、地雷を踏む。原作通り鈴と箒でもいいかなーと思ったんですけど、もっと狂気がほしかったので、無理やり簪の地雷を踏ませました。(暗黒笑顔
馬鹿姫、殺されかける。簪のようなキャラが、純粋憎悪を前面に押し出して『死ね』っていうの、なんかいいなーと思いました。(キチガイ
そして馬鹿姫様御一行ですが、ログナー以上に思い入れがないので次回で消えてもらいます。(ゲス