何もなかったり内容が合っていないと、読みたい回を探すのが大変。かといって長ったらしいのもよろしくない。正直、本文考えるより大変かも。
一夏をルクーゼンブルグ公国に連れ帰る話は白紙となった。
そして簪によって心を折られた馬鹿姫は、まるで夜逃げするかのように翌週には荷物をまとめて公国へ帰っていった。
「すみませんでした……」
「かんちゃん、よくやった!」
「よくやったじゃない!」
「ま、まぁまぁ織斑先生、落ち着いて……」
生意気姫が帰国した日、生徒会室に俺と簪が呼び出されていた。
悄気る簪、その簪にサムズアップする束、さらにその束にキレる織斑先生、最後に織斑先生を宥める刀奈。……カオスだ。
「はぁ……とりあえず、更識妹は先日の決闘でやり過ぎたため、1週間の自室謹慎……のはずだったんだが」
そこで切ると、織斑先生が俺の方を見る。
「宮下も連帯責任ということで、日数を短縮してそれぞれ5日の謹慎とする。それと反省文もだな」
「な、なんでですか!? 陸は関係ない――!」
「宮下本人からの希望だ」
「簪を止められなかった俺の責任でもあるからな。仕方ない」
決闘をするって決まった時も、ガチギレの簪に言い聞かせるタイミングはあったはずなのに、そのまま放置しちまったからな。
「そんなぁ……ごめんなさい陸ぅ!」
あーあー、そんなにボロ泣きすんなよ。頭を撫ぜても泣き止みやしない。
「織斑先生」
「なんだ、更識姉」
「そういうことであれば、姉である私にも責任があります」
「お姉ちゃん!?」
「いやいや、楯無さんまで泥被る必要はないでしょ」
せっかく俺が一緒に被ることで5日に謹慎期間を縮めたのに、刀奈が増えてもこれ以上日数は減らないだろ。
「……いいだろう。更識姉も今日から5日間、自室謹慎しろ。担任の先生には私から伝えておく」
「ありがとうございます」
「そんな、どうして……」
「今後、更識妹が何か問題を起こせば、宮下達も連帯責任とする。その方がお前の罰になるようだからな」
ああ、俺と刀奈は簪に対する人質ですか。ひでぇ扱いだが、これもまぁ仕方ない。そして刀奈、敢えて
「それにしても、よく謹慎処分だけで奴さんが許しましたね?」
ルクーゼンブルグ公国だっけ? そこの馬鹿姫を心身共々ボコったわけだし、何か抗議でも来てるかと思ったんだが。
「むしろ非公式だが謝罪された。『篠ノ之博士から事前に忠告されていたにも関わらず、トンデモナイことをしてしまった』とな」
「ふ~ん。大公はちゃんとその辺理解できる頭は持ってるんだ」
「束」
「つーん」
束のやつ、窘める織斑先生にそっぽ向いちまった。
「というわけで、国としてお咎めはない。謹慎も『模擬戦中の危険行動』という学園の規則に基づくものだ」
危険行動……確かにあの時の簪は、下手すりゃそのまま馬鹿姫を殺しかねなかったからなぁ。
「いいか更識妹。いくらアラスカ条約でスポーツ競技を謳ったところで、ISに兵器という側面があるのは事実だ。今一度、そのことに……いや、それが分かってて"あれ"なのだろう」
「えっと……その……」
「簪ちゃん……」
「まったく……更識妹だけ自室に戻れ。ああ、束ももういいぞ」
「あ、そうなの? それじゃあアンテナの視察に戻るよー」
「え?」
「ほら行け」
「は、はい」
織斑先生にひと睨みされた簪が、何度もこっちを見ながら部屋から出て行った。
束も一緒に出て行き、生徒会室には俺と刀奈、そして織斑先生の3人だけが残った。
「単刀直入に聞く。心当たりは?」
「ありますね」
かなり端折ってるが、簪が暴走した件についてだろう。ぶっちゃけ直近で心当たりがある。
「俺や楯無さんは簪のために死ぬ覚悟も殺す覚悟もあります。年末にそれに近いことを簪に話したので、おそらく……」
「ああ、そういう……」
刀奈も腑に落ちたのか、俺の隣に座って天を仰いだ。
「つまり、宮下や更識姉と同じように、自分も殺す覚悟を持とうとしたと?」
「おそらく。途中から無意識だったでしょうけど」
「簪ちゃん、そういうところは思い込んじゃうから……」
知ってる。なにせ姉への対抗心から、一人でISを作ろうとしたぐらいだからな。
「なんということだ……申し訳ないが、そういった情緒関係は私では力不足だ。だからお前達二人で何とかしてほしい」
「はい」
「分かってます」
「よし、お前達も自室に戻って謹慎を……ちなみに、部屋に食料を置いてたりしてるか?」
「え? 私は……」
「俺と簪の部屋には1週間分ぐらいは。……もしかして、謹慎中は食堂も使用不可ですか?」
俺が尋ねると、刀奈の顔が青くなった。ああ、部屋に何もないのか。そうなると、ルームメイトに食料調達を頼まないとダメってことになるな。
「なら、更識姉は謹慎中、宮下達の部屋で過ごせ」
「「はい?」」
織斑先生、今何と言いました?
「どうせいつも通りなのだろう? 更識姉は宮下に5日間養ってもらえ」
「い、いいい、いつも通りって!?」
「なんだ、お前がかなりの頻度で宮下達の部屋に泊まっているのを、知らないとでも?」
「あ、ああ……」
何を今更、と副音声が付いてそうな織斑先生の指摘に、刀奈は顔を真っ赤にして固まった。
「気付いてたんですか」
「当たり前だ。これでも私は寮監だぞ。そういうわけで宮下、更識姉妹を餓死しないようにしてやれ」
「なんか俺が5日3食作るみたいな言い草ですが……分かりました」
こうして、俺達の5日間謹慎生活が始まるのだった。
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俺達3人が寮の部屋に戻って3時間が経過した。それから俺達が始めたこと、それは――
「「「いただきます」」」
飯を食うことだった。
「あ、あの、陸?」
「ん?」
「ごくごく普通にご飯食べてるけど……」
「別にいいだろ。ちゃんと部屋から出ずに謹慎してるんだから」
「そうよ簪ちゃん。あ、陸君、お醬油取って」
戸惑う簪を後目に、俺と刀奈はごくごく自然体でアジの干物を食っている。
冷蔵庫の中には2人で1週間分の食材。3人だと5日はギリギリだが、災害用非常食っていう最終手段もあるから、特に食材を切り詰めたりはしていない。
「それに織斑先生から言われた反省文、書き終わっちゃったんだもの」
刀奈の言う通り、謹慎と一緒に出された反省文も、部屋に戻って2,3時間ほどで指定分が書き終わっちまったのだ。
大体こういうのって、定型文が決まってるからな。あとは適当な単語を加えていけば、それっぽいものになる。
「それより俺としては、馬鹿姫をボコった時に使った武装について知りたい」
「そうね。あれって、4月に私と戦った時のものでしょ?」
そう、あの大型ライフル。確かベルゼルガーとか言ったか。
「それは……ううん。陸、お姉ちゃん。私、二人に黙ってたことがある」
俺らの質問に俯いて悩んでいた簪だったが、顔を上げると『黙っていたこと』について語り始めた。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「そんなことが……」
簪の話を聞き終わった時、刀奈が目を見開いてそう呟いていた。
打鉄弐式を作り始めた前後から、謎の声が聞こえてきたこと。
その声の主が、弐式のコア人格だったこと。
そのコア人格の力を借りた時に、あの深紅の弐式が姿を現したこと。
「それにしても、ソフィアーより先に簪がコア人格と接触してたとはな……」
「変な人と思われたくなくて、言えなかった」
「それは仕方ないわ。運動会でソフィアーちゃんを見るまで、誰も存在を信じてなかったでしょうから」
今まで黙ってた罪悪感からしょんぼりする簪の頭を、刀奈が撫ぜる。
「つまりあの時、そのコア人格がベルゼルガーを貸したのか」
「ううん、それは違う」
「違うのか?」
「ランディさん……コア人格は、我を忘れてた私を止めようとしていたの。けど……」
「けど?」
「そこからさらに声が聞こえたの。『いいじゃん、やっちゃいなよ』って」
簪を止めようとするコア人格と、さらに戦わせようとする声。つまり……
「それって……」
「もう一つのコア人格、だろうな」
簪の打鉄弐式には、2つのISコアが搭載されている。
最初に付いていたコアが、ランディと名乗ったコア人格なんだろう。そしてあとから追加したコア、こいつにも人格が形成されて……。
「そいつに踊らされて、簪は馬鹿姫をボコったと」
「面目ない……」
「こら、陸君!」
「いや、別にイジメたわけじゃないから」
とはいえ、箸をくわえて再度しょんぼりする簪という図は、あまりよろしくない。
「そんじゃ、飯食い終わったらその問題を解決するか」
「解決? どうするの?」
「決まってんだろ」
「弐式のISコアにダイブして、コア人格に直接お説教だ」
簪、アウト~。あまりにもボコられた経緯が残念過ぎるので、公国から抗議は出せません。
そしてオリ主とたっちゃんを連帯責任にすることで、簪にダメージを入れる作戦に。
謹慎1日目。さっそく反省文も終わって、あとはアニメ鑑賞会(全話見るまで寝れまテン)で埋めようかなと思いましたが、ここらで簪側のコア人格ネタを出そうと切り替えました。
次回、コア人格説教編