俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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最近短めな回が多かったので、今回は少し長めで。


第151話 差し入れと縁切り

生意気姫が国に帰った翌日、あたし達は初めて宮下達が自室謹慎になったことを知った。

 

「千冬姉「織斑先生だ(ブォンッ)」そんなのどうでもいいから! どうして陸達が謹慎処分なんだよ!」

 

「い、一夏、織斑先生の出席簿を……」

 

「躱した、だと……!?」

 

あの亜音速出席簿アタックを、スレスレとはいえ躱したのよ、あの一夏が!

とはいえ……

 

「まったく……回避が上手くなったのはいいが、少しは周りを気にしろ」

 

「周りって……あっ」

 

そこで一夏は初めて気づいたっぽい。

ここが第2アリーナで、他にも訓練機に乗った子達がいるってことを。

 

「す、すみません……」

 

「分かればいい。そして宮下達だったな。単純に『模擬戦中の危険行為』に対するペナルティだ」

 

「危険行為って……でもそれって、更識さんがアリス相手にやり過ぎたってだけだろ? ならどうして陸どころか楯無さんまで……」

 

「保護者の監督不行届ということで、本人達が望んだ。実際、その方が更識妹に対して罰の効果があったようだしな」

 

ああ、分かるわ。二人が連帯責任になった時、更識がどんな顔をしてたか。

 

「あの、織斑先生」

 

「なんだ凰」

 

「3人が自室謹慎なのは分かったんですけど、差し入れとかしたら……ダメですか?」

 

「差し入れだと?」

 

「はい。正直その話を聞いて、私も責任を感じたので……」

 

あの時、千冬さんの命令ですぐに更識を止めていれば、もしかしたらと思っちゃったから……。

 

「そんな、まさか鈴も自室謹慎するとか言うわけじゃ……!」

 

「言わないわよ。ただ、その詫びとして差し入れぐらいと思って」

 

「……いいだろう。ただし、私も同伴するぞ」

 

「分かりました」

 

まぁ、謹慎中の3人に会わせろって無茶言ってんだから、千冬さんの監視付きとはいえOKが出ただけ御の字ね。

 

「な、なら俺も……!」

 

「そうですわ、わたくし達も……」

 

「凰一人だから特別に許したのであって、何人もゾロゾロと面会させられるか!」

 

「「「「「うっ!」」」」」

 

千冬さんの一喝で、一夏を含め皆黙り込んだ。やっぱり怖いわぁ……

 

「それと凰」

 

「はい(バシンッ)ぎゃっ!」

 

「"千冬さん"ではなく、織斑先生と呼べ」

 

「あ、あい……」

 

どうして心の声まで読まれてるのよおかしいでしょ!

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

それから購買で差し入れ(部屋から出られないらしいから、日持ちのする食べ物)を買って、千ふ(ギロッ)織斑先生と二人で宮下達の部屋の前までやって来た」

 

――コンコン

 

「はいよぉ」

 

声の後にドアが開くと、部屋の中なのに制服を着た宮下が出てきた。

 

「珍しい組み合わせだな」

 

「まぁ、そうだろうな」

 

「というかアンタ、部屋でも制服なの?」

 

上下ともにIS学園の白い制服姿で、まるで下校してきたばかりじゃない。

 

「いや、一応俺達謹慎中だからよ、もし寝間着姿で過ごしてて、抜き打ちで織斑先生がやって来た日には……」

 

「うむ、泣いたり笑ったり出来なくしてやったな」

 

「うわぁ……」

 

織斑先生、そんな満面の笑みを浮かべられても……

 

「それで、今回来たのは抜き打ち検査ですか?」

 

「いや、凰がお前達に差し入れをしたいと言い出してな」

 

「差し入れ?」

 

きょとんとした宮下の目が、織斑先生からあたしに向く。

 

「あたしが更識を止め遅れたのが、アンタ達の謹慎の一因でもあるから。その詫びとしてね」

 

「別に気にしてねぇのに。まぁいいや、有難くいただくよ」

 

「はいこれ。それで、更識達は?」

 

さっきから、まったく出て来ないけど。

 

「ああ、簪達なら……」

 

そう言って、宮下があたし達を部屋の奥に連れていく。すると……

 

「ゴーグル?」

 

更識と会長の姉妹が、あのVRゴーグルを付けてベッドの上で横になっていた。

 

「なるほど、仮想世界で訓練中というわけか」

 

「なんでここに……って、そういえばこのゴーグルの作者、アンタだったわね」

 

「おう。各クラスへの配布分の残りを使ってな。今回みたいなことがあるから、ローテで一人留守番役が残ってて、今が俺の番ってわけだ」

 

理解はしたけど、これは……

 

「これはうかうかしてられないな、凰」

 

「う、うかうかなんて!」

 

マズいわ……! まさか謹慎中、あたし達が授業を受けてる間も、こんな訓練をしてたなんて!

 

「こうしちゃいられないわ! それじゃ宮下、残りの謹慎期間も頑張りなさいよ!」

 

「お、おう」

 

相手の返事を聞く前に、あたしは急いでアリーナに戻るために走り出した――

 

「廊下を走るな!」

 

――ゴンッ!

 

「あだっ!」

 

織斑先生の投げた出席簿が、あたしの頭を直撃した……痛い……。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「ん……」

 

目が覚めてゴーグルを外すと、ジュージューという音とお肉が焼ける匂いがしてきた。

 

「陸、今日の晩御飯はぁ……?」

 

「チンジャオロースにしてみた」

 

「やったぁ……」

 

音と匂いだけでもすごい幸せ。そして寝ぼけてた頭も動き出してきた。

陸の作るケーキも美味しかったけど、ごはんも美味しい。乙女のプライド? なにそれおいしいの?

 

「んぁぁ……」

 

「お姉ちゃんも目が覚めた?」

 

「ええ。今回もハードな訓練だったわね……」

 

「うん。ハードだった」

 

お姉ちゃんってば、せっかく幸せだったのに……。

 

陸が『昔同僚(前作オリ主)から聞いた外史の兵器を再現してみた』とか言って、仮想世界でその兵器と戦ったんだけど……。

 

「まずあの巨体があり得ないわ! 一体全長何百mあるのよあの傘のバケモノみたいなの! そして近づく前にミサイルとレーザーの雨! しかも近づいたら近づいたで、ハリネズミのような機関砲の嵐! さらに時々バリアみたいなのが広がって、それに触れたらSEがゴリゴリ削れるし! 完全に『IS絶対落とすマシン』じゃない!」

 

「落ち着いて」

 

興奮するお姉ちゃんを宥める。でも、お姉ちゃんの言うように、あれはない。

いつぞや(第69話)幻視した光景が、まさか仮想世界で目の当たりにするなんて……。

 

「飯が出来たぞー。で、どうだった?」

 

「陸君、あれはないわぁ……」

 

「ミサイルの雨に蹂躙されること3回、あのバリアもどきに落とされること5回」

 

たぶんお姉ちゃんは、私以上に落とされてるはず。

 

「まぁ、そうなるな」

 

「そうなるな、じゃないわよぉ!」

 

頬を膨らませるお姉ちゃん。可愛い。

 

「簪ちゃんからも何か言ってよぉ!」

 

「陸、もっと難易度マイルドなのプリーズ」

 

少なくとも、あれはこの世界の人類には早過ぎる。色んな意味で。

 

「まあその辺は、飯食ってからにしようぜ」

 

「うん」

 

「ぶーぶー」

 

「刀奈は食わんのか?」

 

「食べる」

 

お姉ちゃん、チョロい。

 

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

「は~、お腹いっぱい~ごちそうさま~」

 

晩御飯を食べ終わったお姉ちゃんは、すごく幸せそうな顔で手を合わせた。さっきまでの不満顔はどこに行ったのか。

 

「ごちそうさま。それじゃあ片付けは――」

 

 

「へーいお邪魔するよー!」

 

 

――バッ! ギュッ!

 

 

「もう恒例過ぎて逆に気持ちぃぃぃぃ!」

 

 

「し、篠ノ之博士……」

 

いつもの如く窓から飛び込んできて、陸の対空アームロックを受ける博士が危ない道に。

 

「それで、今日は何用だ?」

 

「そうそう、りったんにこれを見て欲しかったんだよ~」

 

陸がアームロックを外すと、博士は拡張領域から紙を取り出した。……紙?

 

「束が紙媒体とは珍しいな」

 

「なにせ急いで書き殴ったからねぇ。というわけで、感想ちょーだい」

 

「まぁいいや。どれどれ……」

 

陸が渡された紙を見ている間、私達はどうしよう? そう考えていたら

 

「チェシャ猫ちゃん、ISコアって何で出来てるか知ってる?」

 

「え?」

 

「実はね、ルクーゼンブルグの地下にある時結晶ってやつで出来てるんだよ」

 

「博士ぇ!?」

 

突然のカミングアウト!? それって世界で数人しか知らないはずの情報ですよね!?

 

「そ、そうなんですか? 初めて知った……」

 

「なにせちーちゃん含め、世界で数人しか知らない国家機密だからねー」

 

「ちょっとぉぉぉ!?」

 

うん、お姉ちゃんのその反応は正しい。正しいはず、だよね?

 

 

「おいおいおいおいっ! マジかよ!?」

 

 

ずっと黙って紙の中身を見ていた陸が、突然大声を上げた。

たぶん、今までで一番陸が興奮した声だと思う。

 

「り、陸君?」

 

「すごいでしょー?」

 

「えっと、何が書いてあったの?」

 

私が聞くと、陸は紙を私達の方に向けた。

これって……何かの設計図?

 

 

「時結晶を使わないISコア、しかも俺の劣化版と違って、正規品との性能比が97%以上だってよ!!」

 

 

「「ファー!?」」

 

 

時結晶を使わない!? しかも性能比97%って、ほぼ正規品と同じだよ!

 

「実はりったんのパチモンの設計図を見た時、束さんも作ってみたいなぁと思ってたんだよね」

 

「はぁ」

 

「で、この前の"あれ"があったでしょ?」

 

あれ……もしかして、あのお姫様の件? 織斑君を公国に連れ帰ろうとしたっていう。

 

「時結晶の件で、あの国とは個人的に付き合いがあったんだけど、あの件でそろそろ縁を切ろうかなーって」

 

「えぇ? でも博士、あの国からは特に抗議とかなかった上に、非公式とはいえ謝罪もあったのに」

 

「うん。チェシャ猫ちゃんの言う通り、それだけなら束さんも水に流そうと思ってたんだけどねぇ……」

 

そう言うと、博士はエプロンドレスのポケットからボイスレコーダーを取り出して再生ボタンを押した。

 

『殿下、もう織斑一夏のことは諦めた方が……』

 

『ジブリルよ、心配はいらぬ。どうやら篠ノ之博士は、我が国で産出される時結晶とやらを欲しておるようじゃ。それを交渉材料に、今度こそ織斑一夏を我が公国に連れ帰るのじゃ!』

 

「「「ええ~……」」」

 

これには私達3人ともドン引きだった。

あのお姫様、ホントどうしようもなかったんだ……。

 

「というわけで、近いうちにこのことを公表して、正式に縁を切るつもりだから。あ、りったん、その設計図いる?」

 

「いや、もう頭の中に入れたから返す」

 

えぇ、もう覚えたの?……法律系の知識もそれぐらいすぐ覚えられたら、去年の期末テストも慌てずに済んだのに。

 

「それじゃ、りったんの感想も聞けたし、束さんはクールに去るぜ!」

 

「ええっ!? ま、窓から!?」

 

いつも通りの帰り方をする博士を見て、お姉ちゃんが慌てる。そうか、お姉ちゃん、博士が帰るところ見るの初めてだもんね。

 

「か、簪ちゃん。もしかして、これっていつもなの?」

 

「うん、いつも」

 

「そ、そうなのね……」

 

お姉ちゃん、博士はもう"そういう存在"って思ってないと大変だよ?




一夏達、オリ主達の謹慎を知る。鈴が一番決闘の件に関わってるので、そのまま行ってもらいました。

簪、乙女のプライドより美味しいごはん。ちなみに、一夏ほどの味ではないです。

訓、練? 元ネタは言わずもがな。

束、報復準備。あの大天災なら、これぐらいしてくれるでしょう。そして馬鹿姫様の馬鹿は治らない。


次回、『篠ノ之束の憤慨 姫崩壊★一直線!』
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