俺と契約して、ブリュンヒルデになってよ!   作:シシカバブP

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感想欄からアイディアをもらって、急遽内容変更しました。


第154話 お説教

久々の模擬戦をやり、織斑先生に泣かされた夜。食堂で珍しい光景があった。

 

「は~い、くーちゃん、あ~ん♪」

 

「あ、あの……」

 

「ダメ?」

 

「い、いただきます……」

 

束がクロニクルを膝の上に乗せて、チャーハンの乗ったスプーンを口元に運んでいた。

 

「んぐんぐ……」

 

「やっぱりくーちゃんは可愛いよぉ♪」

 

「た、束さま……」

 

顔を真っ赤にするクロニクルの周りでは、生徒達がまるで猫を愛でるかのように眺めていた。

 

「あ、りったんとかんちゃん」

 

「こんばんわ」

 

「珍しい、というか、一応寮は関係者以外立ち入り禁止なんだが……今更か」

 

「束さんはくーちゃんの保護者だから、関係者でーす」

 

「お、おう」

 

その理屈が織斑先生に通るかは別問題だがな。

 

「そういえば、学期末トーナメントがあるんだっけ?」

 

「はい、日程は明日掲示されるって話ですけど」

 

「クロニクルも出るのか?」

 

「私は……」

 

俺が尋ねると、クロニクルは困った顔をした。なんかマズいこと聞いたか?

 

「(私はISに乗ると、体内のISが競合してしまって、出力が上がらなくなってしまうんです)」

 

「(授業で動かす分には問題ないんだけど、今回のトーナメントみたいなのは、ね……)」

 

小声で事情を説明するクロニクルと束。特に束は、すごく悲しそうな顔をしている。

そうか、IS同士の競合か……。

 

「かんちゃんは出場するの? 聞いた話だと、出禁になったイベントもあったんでしょ?」

 

「うぐっ! こ、今回は出場します。色々制限もかかってますけど……」

 

そう言って、簪は織斑先生から渡された禁止武装一覧の紙をテーブルに広げる。

 

「……」

 

「これは、すごいことになってま――束さま?」

 

「りったん」

 

顔を上げた束……って無表情(本気顔)!? ど、どうしたんだ!?

 

「これ、受け入れたの?」

 

「受け入れるも何も、そうしないと出場できねぇし……」

 

「そうなんだ」

 

だから怖ぇって! 何か束がキレるところあったか!?

 

「ごめんねくーちゃん、ちょっとりったん達と出掛けてくるよ」

 

「はい、いってらっしゃいませ」

 

クロニクルがすすっと立ち上がると、束も立ち上がり

 

――ガシッ

 

「へ?」

 

「え?」

 

俺と簪の腕を掴んで、ズルズルとどこかに連れて行く。

 

「ちょっとぉ!?」

 

「おい束。一体どこに連れてくつもりだ?」

 

 

「この学園で一番偉いところ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

そうして束に連れていかれたところは

 

――コンコンッ

 

「入ってください」

 

「はいはーい」

 

普通はまず縁のない、そして俺と簪も夏休み前に1度だけ来たことのある――

 

「ここ、学園長室、だよね?」

 

「ああ」

 

そして部屋の中央にある応接セットには、先客が座っていた。

 

「用務員さん?」「用務員の爺様?」

 

「来ましたか。宮下君は夏休みぶりですね」

 

「あ、ああ……」

 

臨海学校後に知り合った、用務員の爺様だった。けどなんでここに? しかもいつもの作業着でなく、ビシッとジャケット着こなしてるし。

 

「それでお爺ちゃん、ちーちゃんは?」

 

「織斑先生なら、そろそろ来ると思いますよ。(コンコンッ)ほら。入ってください」

 

「失礼します――束? 宮下達も?」

 

ドアを開けた途端、俺達を見つけて驚いていた織斑先生だったが、すぐ気を取り直すと

 

「それで理事長、このような時間に何かありましたか?」

 

「「理事長!?」」

 

え、織斑先生、今なんて言った? 理事長? 用務員の爺様が?

 

「宮下君と更識さんにはまだ、ちゃんとした自己紹介はしてなかったですね」

 

 

「私は轡木 十蔵(くつわぎ じゅうぞう)、IS学園の用務員と理事長を兼任しています」

 

 

「このお爺ちゃんが、IS学園の実質的な運営者なんだよ」

 

「え? 運営者って学園長じゃ……」

 

「更識さんが驚くのも無理はありません。表向きは妻が学園長をしていますからね」

 

「妻が学園長……妻ぁ!?」

 

あの学園長、爺様の奥さんだったのか! 女尊男卑の風潮が強かったから、奥さんをトップに立てて、自分は裏方に徹してたわけか。

 

「今回、学期末トーナメントについて、篠ノ之博士がお話したいことがあるとのことで集まってもらいました」

 

「束が? お前、今度は一体何を……」

 

「ちーちゃん」

 

「っ!」

 

やべ、ついさっきまでニコニコ笑顔だった束の顔が、また無表情に。

 

――バンッ

 

「これ、どういうことかな?」

 

応接セットのテーブルに、食堂で見せた一覧の紙が叩きつけられる。

 

「『使用禁止装備一覧』、ですか。織斑先生、これは?」

 

「更識妹がトーナメントに参加するに当たり、公平を期すために一部装備の禁止を――」

 

「それはおかしいですね」

 

「え?」

 

説明途中で爺様に一刀両断されて、織斑先生がキョトンとした顔で固まった。

 

「今、織斑先生は『公平』と仰いましたが、何を以て公平だと?」

 

「それは、打鉄弐式の能力が他のISより突出しているため――」

 

「それなら、他の専用機持ちは問題ないと?」

 

「そ、それは……」

 

「もしISの能力に対して公平を期すのであれば、全員が訓練機で行うべきだと思うのですが」

 

「よしんば専用機もありにするとして、どうしてかんちゃんの……というか、りったんが作った装備ばっかり禁止にしたのかな?」

 

爺様と束にジト目で睨まれて一瞬ビクついた織斑先生だったが、

 

「それは、宮下が作った装備が能力突出の原因だから――」

 

「なら、りったんが他の専用機にやった改修も、元に戻すべきだよね? これじゃあまるで、かんちゃんを目の敵にしてるように見えるよ。束さん、そういうのは感心しないなぁ」

 

「織斑先生?」

 

「……」

 

とうとう織斑先生、ダンマリしちまったよ。……俺なんも悪いことしてねぇのに、すっげー責められてる気がする……。

 

「織斑先生」

 

「は、はい」

 

「このルールは、宮下君と更識さんに対して『公平』ではありません。今一度検討をして、再提出してください」

 

「はい……」

 

二人にボコボコにされた織斑先生は、しょんぼり項垂れながら学園長室を出て行った。

 

「ちーちゃん、よっぽどかんちゃんが怖いんだなぁ」

 

「こ、怖い?」

 

束から予想だにしていないセリフに、俺も簪も目が点になっていた。あの織斑先生が、簪を怖がってる?

 

「どういうことですか、篠ノ之博士」

 

「去年の運動会でちーちゃん、かんちゃんに負けたでしょ? それで、かんちゃんに対して恐怖心を抱いちゃったんじゃないかなぁ」

 

「更識さんにだけハンデを付けようとしたのは、その恐怖心の裏返しだと」

 

「たぶんね。なまじ負け知らずだったから」

 

「なるほど」

 

束と爺様が納得し合ってるのはいいんだが、

 

「。゚(゚´Д`゚)゚。私怖くない、私怖くないよぉ……」

 

「おーよしよし、簪は怖くないぞー」

 

怖い奴認定された簪を慰めなきゃいけないことまで考えて、今の話したか?

 

「まぁぶっちゃけ、かんちゃんより、りったん(の作った武装)の方が怖いけどね」

 

「確かに私から見ても、宮下君の作った装備は脅威に感じますね。特にキャノンボール・ファストの件で」

 

「簪ぃ……!」

 

「陸ぅ……!」

 

周りの大人達にボコられて、俺達はお互いを慰め合うように抱き合っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

――寮監室

 

「ということがあったんだ」

 

「それは千冬姉が悪い」

 

ブルータス(一夏)、お前もか!?」

 

寮の部屋でのんびりしてたら千冬姉に呼ばれて、何かと思ったら……。

 

「キャノンボール・ファストの時は、主催者側の都合だから仕方ない。タッグマッチの時も、人数が奇数だったからって理由があった。けど、今回のは言い訳できないって……」

 

だってこれ、下手すれば陸や更識さんに対する私怨と思われかねないぞ。

 

「公平だって言うなら、理事長さんの言う通り、全員が打鉄に乗るぐらいしないと」

 

「うぅ……一夏にまで、一夏にまでダメだしされた……」

 

そんな千冬姉は、缶ビールをヤバいペースで呷ってる。完全にヤケ酒だ。

 

「とにかく、この禁止装備一覧は撤回な」

 

「お前はそれでいいのか?」

 

「確かに更識さんに勝てる可能性は減るけど、それで勝っても嬉しくねぇよ」

 

手加減され尽くされるより、全力同士でぶつかりたい。例えそれで負けたとしても。

 

「一夏……お前ってやつはぁぁぁぁぁ!!」

 

「ち、千冬姉ぇ!?」

 

酔っぱらって泣き上戸になった千冬姉が、俺に抱き着いてって痛たたたたたたたたたっ!!

 

「千冬姉、折れる! 骨折れるからぁ!」

 

酔って力加減の出来ない鯖折りと化した千冬姉の抱き着きから抜け出すことだけを、俺は考えていた。だ、誰か助けて……。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

翌日、学期末トーナメントの日程が掲示板に張り出されたが、そこに使用禁止装備の記載は一切なかった。




束キレる、そしてちーちゃんフルボッコ。別に簪達を庇おうとしたわけではなく、ちーちゃんの穴だらけな理屈が気に食わなかっただけです。これが一夏絡みなら、ちーちゃん相手でも愛のグーパンが飛んでたと思いますが。

轡木さん登場。実は第40話でチラッと出てきてました。以降の出番は……ないかも。

オリ主と簪、心の傷を舐め合う。全然イチャコラじゃないハグ、微妙。

ちーちゃんの泥酔鯖折りが一夏を襲う! ちょっとかっこいいところ見せたらこれだよ。
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