という話は置いといて、前回の予告通り、トーナメント開催です。
学期末トーナメント当日。
1学期の時と同じく、全生徒が慌ただしく走り回っていた。
なにせ今回も、各国政府関係者等の来賓が大量にやってくることになったのだから。
「というか、1学期の時より人数増えてね?」
今回も今回で、刀奈に拝み倒される形で生徒会の雑務を手伝っていた俺は、観客席から来賓席を見てポツリと呟いていた。
「それはそう。あれから色々あり過ぎて、今IS学園に来ない国は愚か者とまで言われてる」
「なんだそりゃ」
「陸、2学期入ってからあったこと、覚えてる?」
「なんだよ急に。2学期から……」
「重婚が認められて、GNファング作って、アラスカ条約に条項が追加されて、オルコットさんに並列思考を刻み込んで、VRゴーグル作って、オータムさんの腕をへし折って、キャノンボール・ファストで専用機持ちを壁画にして――」
「ストップ簪。俺が悪かった」
両手を上げて降参のポーズ。もう腹いっぱい。
「これでまだ、タッグマッチや運動会のことは話してない」
「堪忍してつかぁさい」
俺も色々やったなぁ……。簪に言われるまでピンと来なかったが。
「それに、篠ノ之博士もちょくちょく来るようになったからね~。はい」
そこに、様子を見に来たらしい刀奈が観客席に。そしてスポーツドリンクのボトルを寄こしてきた。
「サンキュ。太陽光発電のマイクロウェーブ受信アンテナ、来週から本格稼働なんだっけか」
「ええ。先週、博士立ち合いのもとで試運転をしたんだけど、それでも学園の全電力消費量の9割近くを賄えるほどだったわ」
「9割……本稼働したら、むしろ周辺に電気売れそう」
「そうなったら、簪ちゃんのお小遣いも増えるわね」
「お姉ちゃん、お願いだから学園の予算にしてよ……」
「や、や~ね~。冗談よジョーダン♪」
何学園の利益着服しようとしてんだよ。妹にまで不信の目で見られてるし。
「まぁいいか。奴さん達には本来の目的で驚いてもらおうか」
「……ああ、それは驚くでしょうね」
「本来の目的って?」
「簪ちゃん、学期末トーナメントなんだから、当然生徒達の試合を見るのが本来の目的でしょ?」
「ああ」
刀奈の説明でようやく納得したのか、ポンと手を叩いた。いや、言われるまで気付かないんかい……。
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来賓の誘導が終わり、第1アリーナで開会式が行われた後、すぐに各アリーナでトーナメントが開始された。
各アリーナには別アリーナの映像がモニターに表示されているため、来賓は席を移動することなく、全学年の試合を観戦していた。
(大体が自国の代表候補生を見るため、ロシアとギリシャは2学年の第4アリーナ、アメリカが3学年の第5アリーナ、それ以外は1学年の第1と第2アリーナの来賓席に座っていた)
先ほど話した通り、本来政府関係者は自国の代表候補生を見に来た(ついでに篠ノ之博士に会えたらいいなと思っていた)のだが、彼らの想定は根底から覆された。
「今年の一般生、動きがおかしくないですか?」
「そちらもそう思われますか。 こちらも同じことを思っていました」
一般生同士の試合を観戦していた各国の役人達が、お互い鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見合わせていた。
『どっせぇぇぇいっ!』
『まだまだぁぁ!』
「い、
「しかもそれを躱すのか!?」
瞬時加速で間合いを詰めての斬撃を、寸でのところで回避する。予備候補生ですらない一般生が、しかも1学年が行う試合内容ではない。
『しゃあぁぁ!』
『甘いっ!』
別のモニターでは、2年生がお互いラファールで
2学年ならまだ……と一瞬思った役人達だったが、次の対戦も、その次の対戦も瞬時加速や円状制御飛翔が当然のように使用されていた。
(IS学園のレベルが、おかしなことになってる……!?)
その時来賓席の温度が数度は下がったと、そこにいた全員が感じた。
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……という話を、来賓対応していた千冬姉から聞いて、
「まずいですわまずいですわまずいですわ……」
「これで訓練機に負けたりしたら、あたし達の評価ががががが……」
「デュノア社の信用がぁ……」
「ま、また少将にどやされる……」
セシリア以下、代表候補生はピット内で頭を抱えていた。
「これ、私にも影響があるんだな……『篠ノ之博士の妹の癖に』とか。ああ、昔の記憶が……」
「箒ぃ! しっかりしろ!」
あまり関係なさそうだった箒も遠い目をし始めた。これはまずい。
「織斑君、次の試合……えっと、みなさん大丈夫ですか?」
俺を呼びに来たらしい山田先生だったが、ピット内を見た途端顔を引き攣らせて固まった。
「だ、大丈夫です。時間が経てば、たぶん、おそらく、きっと……」
「ぜ、全然大丈夫じゃないじゃないですかぁ!」
「そそ、それより次の試合ですよね? みんな、俺先に行ってくるわ!」
「お、織斑くぅん!?」
慌てる山田先生を背中に、俺はアリーナに向かって飛び出していった。
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
そして俺の試合が始まったわけだが……
「織斑君! 今日こそ勝たせてもらうよ!」
「いやちょっと待ってよ相川さぁぁん!?」
瞬時加速の応酬で、白式のSEが大変ピンチなんですが!?
「ていうか、零落白夜が怖くないのかよ!?」
「ふふ~ん! 零落白夜はあくまでシールドの無効化。なら、実体盾で受け止めれば問題ないんだよぉ! 肩部の盾なら、装甲が再生するしね」
「マジかよ!?」
打鉄の肩部盾って再生するのか!? それよりも、完全に零落白夜が攻略されちまってるじゃねぇか!
「さあどうする織斑君? このまま零落白夜を使い続けてSE切れになる? それともその腕の銃で私と撃ち合いする?」
「ぐぅぅ……!」
相川さんの挑発に、色んな意味で言い返せねぇ。いっそ、IS実習で岸里さんと戦った時みたいに弾切れを誘って……。
「言っておくけど、私に弾切れを期待しても無駄だよ。岸里さんの時と違って、打鉄にはアサルトライフルしかないから、逆に弾は豊富なのよ」
「ちくしょぉ!」
完全に読まれてやがるっ!
そして、策がない以上は仕方ない。
「成功したことはほとんどないけど、やってやるさ!」
俺はスラスターにエネルギーを溜め込み
「おっと、瞬時加速で近づく気――」
スラスターを一度にではなく、次々に点火させた。
「ぐっ、おおおぉぉぉぉ!!」
「ええっ!?」
今までの瞬時加速以上の速度で近づいてくる俺に、相川さんの顔が驚きと恐怖で引き攣るのが見えた気がした。
「いっけぇぇぇぇぇぇ!!」
最後に残ったなけなしのSE、こいつを雪片弐型に注ぎ込む!
――ザンッ!
『相川清香、SEエンプティ―。勝者、織斑一夏』
最後の零落白夜が打鉄のシールドを切り裂き、審判のアナウンスで俺の勝ちが宣言された。や、やったぁぁ……。
「うわぁ悔しいぃ! もうちょっとだったのにぃ!」
そう言って腕をブンブン振る相川さんは、エネルギー切れで動けなくなった打鉄ごと、整備科の人達に運ばれていった。
「それにしても、今の試合は危なかった……」
俺も白式が第二形態になってからずっと練習していたものの、成功した回数は片手で数えられる程度。正直、この本番で成功するとは思わなかった。
(けどこれで、切り札を切っちまったなぁ……)
今回は相川さんが、通常の瞬時加速だと判断してくれたから勝てたようなもんだ。冷静に対処されたらそれで終わり、いつも以上にSEを減らすだけになっちまう。
「いや、逆に今見せた方が良かったか」
考え直してみれば、そもそも成功確率が1割もない技なんだ。なら『次も使うかもしれない』とだけ思わせて、警戒させて、実際は普通に戦えばいい。
そう考えながら、俺は歓声を上げる観客席に向かって雪片を掲げると、ピットの方に戻って行った。
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「あ、危なかったですわ……」
「ホントよ……」
「僕はラファールが相手だったから、打鉄よりも対応が楽で良かったよ」
「シャルロットは良いな、性能を知り尽くしている機体が相手で」
「私も、打鉄が相手で良かった」
箒達も、なんとか初日敗退は回避したようだ。
陸と更識さんは……
「り、陸、ごめん……」
「謝るな。余計悲しくなるから」
初戦でぶつかってしまい、陸は更識さんにボロ負けしていたらしい。ご愁傷様……。
オリ主、簪に(事実で)ボコられる。振り返れば、色んな超展開をブッパしたなぁと、作者自身思ってしまいました。
来賓の方々、震える。全部妖怪のしわざです。
一夏、土壇場で大技を成功させる。こういうピンチになると強くなる主人公補正。でも簪には勝てん。(確信)
オリ主、簪に(物理的に)ボコられる。そりゃあ機体性能も、操縦者の腕も別格ですから。