学期末トーナメント2日目。
2日目ともなると、生徒達も来賓が大量にやってくる状況に慣れてきたのか、前日よりスムーズに開催準備が進んでいた。
「それで、初戦敗退したりったんはここにいると~」
「お前もな」
1日目で敗退した生徒は、全員が観客席に座って今日の試合を観戦していた。
そこには俺の他にも、当然の如くのほほんがいた。
のほほんが負けた理由は簡単だ。
「榴散弾をばら撒き過ぎて、開始10分で弾切れとか……」
「たはは~……張り切り過ぎちゃった~」
ボーデヴィッヒのカノン砲ほどではないにしても、榴散弾には結構な効果範囲はあるはずなのに、どうして弾切れまでに仕留められない?
「それで、最後かなりんに特攻されて負けちゃったんだよね~」
「やっぱお前、閉所以外じゃ戦えないな」
「そういう機体にしたの、りったんでしょ~」
「俺そんな機体にした覚えねぇからな!?」
なんで俺が悪いみたいになってんだ? 解せぬ。
「あっ、次の試合、せっしーとかんちゃんみたいだよ~」
「とうとう一夏ハーレムも専用機持ちとぶつかったか」
その相手が簪というのも残酷な話だが。
ほら見てみろ。オルコットの奴、悟ったかのように微笑のまま顔が固まってるぞ。
そして試合開始のブザーが鳴ったと同時に、瞬時加速でオルコットの目の前まで近づいた簪は
――ガッ!
「ひぃっ!」
「メメントモリ、起動」
「ひょえぇぇぇぇっ!!」
……淑女が出しちゃダメな悲鳴をオルコットに出させて、あっという間に試合が終了した。
「これはひどい」
「かんちゃん、それはないと思うな~……」
仮にも一国の代表候補生を、開始10秒で沈めるとか……。英国の威信とやらが心配になっちまうぞ。ちなみに、俺も初戦でこれを食らったりしてる。
「こんな試合、これからも見ることになるのかな~……?」
「簪が勝ってる間は見ることになるだろうな」
「それ、決勝まで見続けることになるって意味だよね~……」
言うな。簪だって万に一つ、いや、億に一つぐらいで負ける可能性だってあるだろ。……俺は全く信じてねぇが。
ーーーーーーーーー
管制室で試合内容を見ていた私と山田先生は、お互い口元を引き攣らせていた。
「織斑先生……」
「言うな、山田先生」
ゴーグルの件でも冷や汗ものだったが、やはり更識妹の武装禁止を撤回したらこうなったか……。
「というか、開幕メメントモリ以外使ってないんだが……」
「瞬時加速が速すぎて、誰もメメントモリを回避出来ないんですよね……」
更識妹は昨日の初戦の宮下から先ほどのオルコット戦まで、全て瞬時加速→メメントモリで勝利しているのだ。
……これ、撤回する必要あったか? 全然武装使ってないだろ。
「えっと、なんでも解禁されたGNコンデンサーのエネルギーを、全てスラスターの推力に回してるんだとか」
「ああ、なるほど。それで誰も回避出来ない瞬時加速が出来上がったのか」
手品の種は分かったが、それでどうこう出来るものでもあるまい。
ちなみにオルコットだが、更識妹に速攻で倒されたことで、戦々恐々としていたらしい。
『更識さんが相手とはいえ、あんなにあっさり倒されるなんて……女王陛下に何と言って詫びれば……』
……その後、当の女王陛下から『オルコット嬢は悪くない。相手がミズ・サラシキでは仕方ない』という旨の通信を受け取って安堵したとか。
更識妹、英国女王にすら災害みたいな扱いをされているぞ。
「現時点で宮下、布仏、オルコットが脱落か」
「はい。1学年は、これから専用機持ち同士の戦いになりますね」
「だな」
このまま順当に進めば、次は凰とボーデヴィッヒがぶつかるか。
そういった意味では、一夏は運がいいな。位置的に、準決勝まで専用機持ちとぶつかることはないのだから。
とはいえ、油断すれば訓練機に倒される可能性があるのが今年のトーナメントだ。訓練量で機体性能差をある程度埋められることが、今回証明されたからな。
「次の試合は……凰さんとボーデヴィッヒさんですね」
山田先生の声で視線を向けると、先ほど予想していた組み合わせがモニターに映っていた。
ーーーーーーーーー
1学年が専用機持ちの潰し合いになり始めた頃、2学年や3学年はどうなっているかというと
「会長が怖いっスぅぅぅ!」
「だぁれが怖いですってぇ!」
逃げ回るフォルテちゃんを、私が蒼流旋に付いているガトリングガンで追い回す構図になっていた。
「というかフォルテちゃん、ギリシャのお偉いさんも見てるんだから、今日ぐらいは面倒臭がらずに試合しなさいって!」
「え~? めんどいっス」
「も~! これじゃあお姉さんがフォルテちゃんをイジメてるみたいじゃない!」
「そうなると、何か問題があるっスか?」
「陸君への心証が悪くなる! そうなると頭撫ぜてもらえない!」
「ここに来て惚気っスかぁ!?」
私にとっては結構重要なのよ、頭撫ぜてもらえないことは。
「というかフォルテちゃん、貴女がちゃんと本気で戦ったら、いいことあるわよ」
「いいことっスか?」
「生徒会長権限で、ダリル・ケイシーに膝枕してもらえる権利を」
「やってやるっスよぉぉぉ!!」
さっそくコールド・ブラッドから、いくつもの氷塊が私目掛けて飛んできた。チョロい。
ーーーーーーーーー
「更識お前どういうつもりだぁぁ!?」
何勝手にオレがフォルテに膝枕することになってるんだよ!? 普通にフォルテからお願いされたやるっての!
「ダーリル! よそ見してて良いのかなー?」
――ドドドドドッ!
「うおっ! あっぶねぇな!」
アサルトライフルの連射を躱しながら、オレもお返しとばかりに、火炎弾を対戦相手のクラスメイトに飛ばす。
「おっと! 危ない危ない」
「ちっ! 簡単に避けやがって」
「それを言うなら、アンタだってこっちの攻撃当たってないじゃないの」
「これでも一応、代表候補生なんでな。だからそう簡単に倒されてはやれねぇんだ、よ!」
――ブォンッ
「あぶなっ!」
くっそ! 不意打ちの
「ダリルのヘル・ハウンド、頑張って研究したからねぇ。ここらで下剋上じゃー!」
そう言って、空振った方と反対側から攻め込んで来るが――
「甘ぇ!」
――ボンッ!
「うわっつぁぁぁぁ!?」
ははっ、馬鹿め! さっきの火炎弾、一発だけ撃たずに背後に隠してたんだよっ!
「もらったぁぁぁ!」
――ガァァァンッ!
再度薙ぎ払った双刃剣が、相手のSEを削り切った。
「あっちゃ~、最後に下手打ったぁ」
「何言ってんだよ。昨日もそうだったが、こっちもハラハラしっぱなしだ」
去年の学年別トーナメントまでは余裕で勝ち上がれてたのに、今年に入ってから色々おかしくなってやがる。
いや、原因は分かってる。
「3年の専用機持ちはオレだけだからいいが、1年は大荒れなんじゃねぇか?」
それが的中していることをオレが知ったのは、試合後に別アリーナの試合をモニターで見た時だった。
いやこれ、どうなってんだよ?
ーーーーーーーーー
トーナメント2日目は、1年と2年で専用機持ち同士がぶつかり合う試合が発生した。
その結果、1年は英国と中国とドイツが。2年はギリシャが途中敗退となったのだった。
「ああもう! 更識にならともかく、ラウラに負けるとか悔しい!」
「なら私の代わりに、顔面メメントモリを食らいたかったか?#」
「ごめん」
3回戦でボーデヴィッヒに勝ってたら、次の試合で簪のメメントモリを食らってたのは凰だったからな。
ていうか、どうしてそこで謝る。
「メメントモリって、顔面以外に撃てないの~?」
「ぶっちゃけ、胴体にくっ付いてれば手足にも撃てるんだが」
簪の思い込みなのか、頭部以外に使ってるところ見たことないな。……念のため、今晩改めて言っておくか。
のほほんも敗北者じゃけぇ……。前話でも書きましたが、のほほんが勝ち上がる光景が想像出来ませんでした。
本日の犠牲者①、セシリア。もはや鉄板。
2年と3年の試合。専用機持ちが少ないからか、意外と平和……でもない。書いといてなんですけど、これイベント後にIS適性測り直したら、絶対何人か1段階とか2段階上がってそう。
本日の犠牲者②、ラウラ。「もしかしたらラウラ…アンタとあたしが…逆だったかもしれねェ…」
次辺り、最近出番のないマドカを出したいねぇ。